幸せへのまわり道
劇場公開日:2020年8月28日
解説
トム・ハンクスが、アメリカで1968年から2001年にわたって放送された長寿子ども向け番組の司会者フレッド・ロジャースに扮し、アカデミー助演男優賞にノミネートされたヒューマンドラマ。雑誌「エスクァイア」に掲載された新聞記者ロイド・ボーゲルによる記事の映画化で、ボーゲル役を「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」でもハンクスと共演したマシュー・リスが演じた。雑誌記者として華々しいキャリアを築いてきたロイド・ボーゲルは、姉の結婚式に招待され、そこで長らく絶縁していた父ジェリーと再会する。家庭を顧みず自分たち姉弟を捨てた父を、ロイドはいまだ許せずにいた。数日後、仕事で子ども向け番組の司会者として人気のフレッド・ロジャースを取材することになったロイド。フレッドは、会って間もないロイドが抱えている家族の問題や心のわだかまりを見抜き、ロイドもそんなフレッドの不思議な人柄にひかれていく。やがて2人は公私ともに交流を深めていくが……。監督は「ある女流作家の罪と罰」「ミニー・ゲッツの秘密」のマリエル・ヘラー。
2019年製作/109分/G/アメリカ
原題:A Beautiful Day in the Neighborhood
配給:イオンエンターテイメント
スタッフ・キャスト
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フレッド・ロジャースという全米では知らない者はいないというオジサンのことをこの映画で初めて知った(その後伝記ドキュメンタリーは観た)。長寿子供番組のホストであり、映画も子供番組の体で始まる。まず街のミニチュアが映り、トム・ハンクス扮するミスター・ロジャースが撮影スタジオのセットに入ってくる。何十年と繰り返されたお決まりの仕草を再現するオープニングから、ちょっとおかしな匂いが漂っている。
このアメリカの名士の取材をすることになったやさぐれ記者が、ロジャースの影響で変わっていく、というのが本筋なのだが、本作の凄みを体現しているのは、助演的存在のハンクスの方だ(ラストも彼が締めるのだから主演と言っていいと思うが、アカデミー賞では助演男優賞にノミネートされた)。
ロジャースの作り上げた子供番組の世界は、完全に子供に向けた作り物に見えるのだが、主人公の記者は、それだけでは収まらない何かを感じ取る。癒やしと解放の感動ストーリーではあるのだが、他人を癒すほどの立派な人間であり続けるには、実は恐ろしいほどの努力と葛藤が水面下で渦巻いていることを、この映画はしっかりと描いてしまっている。
美談ではあるが、『ハクソー・リッジ』にも似た、狂気に近い美談であると、ラストの“音”で教えてくれる。背筋がゾッとするような、とんでもないものを観てしまった。
2020年9月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
いつでも物腰やわらかく、過剰なまでに人を敬うフレッド・ロジャースを指して主人公の記者が「聖人」と形容すると、傍にいたロジャース夫人がそれを否定する。あの人は生まれながらの聖人ではなく、努力によってそれを為しているのだと。日々、怒りを溜めながら生きる現代人からすれば、ロジャースは異端であり、どことなく怪奇ですらある。その張り付いた笑顔の奥にあるはずの闇を想像せずにはいられない。ただ、同時に彼の信条に畏敬の念も感じるだけに、そんな闇はあってほしくないとも願う。映画はロジャースの真実を断定することこそしないが、薄暗いスタジオの中で彼がひとり行う「努力」に、観客はゾッとして背筋を凍らせることに。
2022年12月14日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
この役は彼にしかできないですね。リアリティと理想と夢の間で行き来する人間模様を演じるとそれが説得性をもってやってくる。
日常生活でのトム・ハンクス自身はどんな人なのだろう、と思ったりするのは少し意地悪でしょうかね(笑
2022年11月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
「幸せへのまわり道」というタイトルとトム・ハンクス、これだけで良い作品だろうと思いながら観ました
こういう作品でのトム・ハンクスにやはりハズレなし
はずれてるのは邦題…
作品の内容は本当に良くて、1分間の沈黙のシーンやトム・ハンクス演じるフレッド・ロジャースのいろいろな言葉に涙がポロリ
ロジャースはいわゆる「良い人」で、確かにそんな人になりたいと思うけど、あまりにも聖人すぎて、最初の方のロイドのロジャースへの接し方に共感していました
いつも良い人すぎると建前だけの本音を隠した人のような
心があったまる作品で本当に良かったけど、ラストのロジャースがズシンときたままで、「心があったまる作品」で終わりませんでした