リチャード・ジュエルのレビュー・感想・評価
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じんわりあたたかいラスト
無実であるのに容疑者にされてしまうジュエル、どの様にそうなってしまったのかが ジュエルという人物の生活を描きながら ゆっくりと理解出来、わかりやすい。ブライアン弁護士がはじめ、傲慢な人物だと思ったのだが、すぐ違うという事がわかる。ジュエルが無罪を勝ち取る 重要な役所、ブライアン役のサム.ロックウィルも主役で良いのではと思ってしまうくらい 人間味溢れていて素晴らしい。スーツでビシッと決めているブライアン、ラフなブライアンと とても自然に演じていた。キャップを被っていたり ラスト近く ネクタイをしめてもらっているブライアンのなんとお茶目なこと! イーストウッド監督作品はしらじらしくなく、ほのぼのとあたたかく優しくて少しホロッとするラストが好き 監督の人柄なのでしょう。
秀逸で事実で、かつ、エンタメ性MAXで、『映画』でした。
いい映画でした。もう一回観たい。
主人公のリチャード・ジュエルはテレビのリモコン投げる時も携帯電話投げる時も、柔らかいソファの上に投げていた。優しい人だとわかったよ。
ワトソンと秘書のナディアもよかった。(観ながら)覚えておくよ、と思った。二人とも、いい役者さん。
ラスト近くのシーン。
お母さんの会見。
そして、FBIの尋問でのジュエルの主張はすごく説得力があった。
尋問が終わって部屋を出るときのワトソンの表情が素敵。『こいつは、本当に本物だ』って表情でした。
アトランタの新聞の女子記者や、その他のメディアやFBIの(リチャード・ジュエルが無罪と証明された後の)その後を観たかったけど、終わりは、しっとり。あれでよかった。
自分も、いたずらに振る舞わないようにしようと思った。
引きこまれ感がいい。
イーストウッドらしさ全開
クリント・イーストウッド監督。
最近は、近年実際にあった事件、事故を元に作品を作り続けています。
最近の出来事なので作中の登場人物や関係者の多くは普通にご存命です。
もし私が監督ならどうなるか?
彼らに配慮して、聖人君子として配役してしまうでしょう。
しかしイーストウッドはその人物達を実に人間味のあるままに描きます。
今回の主人公リチャードもそうです。
彼は最初から完璧な人間などではなく、頼った弁護士の言いつけすらも守れません。
人間関係だってぜんぜん完璧ではない。しかしそれが見事に構築されていく様が爽快であり、それを描くイーストウッドの上手さだと思います。
また私は、メディアリンチに対する強烈な一撃を期待してしまいました。FBIにも、記者にも。
ですが、それはリチャードも望んでいないのです。
それが最後の彼の捜査官への言葉で解ります。
「ハドソン川の奇跡」の最後のアメリカンジョークと同じような、最高にスカッとするシーンです。
円熟のイーストウッド作品。
たいへんな高齢ですがまだまだ私達に「人間」を届けてください。
濃密
【”スニッカーズ”が結んだ太めの”レーダー”と気骨ある弁護士との強き絆。冤罪の恐ろしさと、国家権力に対する激しい怒りを静かなトーンで描いた作品でもある。】
恐ろしい映画である。
実話である事が、恐ろしい。
現代でも同様な社会風潮である事が尚更、恐ろしい。(過去の誤りが、繰り返されている事実・・)
ジュエルの母ボビ(キャシー・ベイツ 名演である・・。)が、誇りの息子が突然、爆弾テロの容疑者にされ、家の前に詰めかける蝿のようなメディアの多数のカメラ、差し出されるマイクに驚愕する姿。
そして、彼女が勇気を振り絞って、メディアの前で涙を浮かべ息子の無実を訴える場面・・。
ジュエルがそれまで憧れていた法執行人の前で静かに言い放った言葉。
サム・ロックウェル演じるワトソン弁護士のFBI 捜査官達及び傲慢なジャーナリスト、キャシー(オリビア・ワイルド)に対する毅然とした態度。
そのキャシーもある事を確認し、自らの過ちに気付いた時の表情。
だが、一番腹立たしかったのが、FBI捜査官ショウ(ジョン・ハム)の自らの過ちを認めず、ジュエルに謝罪もせずに、ワトソンに捨て台詞を吐いた後ろ姿。そして、ジュエル宅から押収した品々を無言で宅に運び入れるFBI職員たち。品々には証拠品ナンバーが書きなぐられたままである。呆然と品々を見つめるボビ。
”きちんとジュエル親子に謝罪しろよ!と心の中で公権力の奢った連中を痛罵する・・・。キャシーもきちんと謝罪していないよな・・・。散々疑って、”疑惑”に曝された人々のプライヴェートを無茶苦茶にして、”間違ってました。” と書式一枚で済むことではないだろう!”
〈クリント・イーストウッド監督の無責任なメディアや横暴な国家権力に対する激しい怒りを、静かなトーンでじわりと描いた見事な作品である〉
実話だからこそパンチが弱かった
正義は戦わなければ得られない
ついでにホモ疑惑まで・・・なんでもありか、過熱報道
やっぱり思い出してしまうのが、94年に日本で起こった松本サリン事件だ。河野義行さんが真っ先に疑われて、重要参考人として何度も取り調べを受けた事実。被疑者不詳だったはずなのに、マスコミが先走りすぎて河野さんが怪しいと印象操作した事件でもあった。この頃は坂本弁護士一家殺害事件や異臭事件などもあり、(失業中につき暇だったため)新聞記事等を追っていたのでオウムが怪しいとずっと思ってたのに、この過熱報道のためにすぐに犯人は河野さんだと信じてしまった愚かな俺。人間なんて、誰でも一方的な大多数のメディアの報道を信じてしまうものなのだ・・・とにかく、この映画を観ている間、ずっと松本サリン事件のことが頭に浮かんでいたのです。
冤罪のパターンも色々あると思うのですが、FBIの早すぎるほどの対応がバカ捜査員を見ているようで辛かった。。第一発見者がまずは疑われるのはわかるとしても、証拠もないのにズカズカと踏み込んで家宅捜索、押収、さらには盗聴器まで仕掛けるという徹底ぶりだ。連日のように大勢の取材陣が小さな家庭を取り囲み、母バーバラ(キャシー・ベイツ)が可愛そうでしかたがない。
そんなシビアな描写の中でもFBI捜査官と切っても切れない縁となっていた地元紙のトップ記者キャシー(オリビア・ワイルド)がまた憎たらしい演技をしてくれる。彼女の「証拠はあるわよ」という自信の裏には、FBI捜査官の言葉というものしかないのだ。リークするのも平気、スクープ狙いや功名心だけで動いている、どちらかと言えば腐敗していく典型的な記者といったイメージ。ただ、終盤には涙を流すシーンもあり、やっぱり人間性善説に戻らなきゃと自ら反省。
なんだかんだ言っても一番カッコよかったのはサム・ロックウェル演ずるワトソン弁護士。「絶対に喋るんじゃないぞ、いいな!」と念を押すのに、法執行者のプライドがつい口を割らせてしまうリチャード・ジュエル。犯人が残した電話の台詞を何度も強要されるシーンは、心の中で「喋るな!!」と叫んでしまいそうになる。ただ、冷静になって考えれば、電話がかけられる状態じゃなかったんだから証拠にもならないんですよね・・・共犯説も唱えてたし。
もう、何回かに一回は素晴らしい作品を残してくれるイーストウッド監督。この作品も権力者と戦う正直者と弁護士の物語、しかも実話。ただ、権力者の横暴とマスコミの腐敗を暴いたのも、当時がクリントンの民主党政権だったからというのもあるかもしれないし、こんなのがあるからトランプに「フェイクニュース!」を連発させちゃうのかも・・・。
イーストウッドにハズレなし
一言で「素晴らしい!」
クリント・イーストウッド監督40作目の「リチャード・ジュエル」を見てきました。
クリント・イーストウッドファンと言う事を抜きにして本作品素晴らしい出来栄えで大変に見応えがありました。
2時間11分と言う正直、映画としては長い方に感じますが、その長さを感じさせない程、その映画の内容に引き込まれて行きます。
考えて見るとクリント・イーストウッド監督作品って実話に基づいた人間ドラマが多いですね。
「アメリカン・スナイパー」「ハドソン川の奇跡」「15時17分、パリ行き」など・・・・またどれをとっても社会問題になり、そのテーマをしっかり見ている私たちに問いかけて考えさせてくれる。
本作品も、国家とマスコミの餌食と言うか、ある意味暴力により、ひとりの善人とその家族の平穏な生活が崩されてしまう話をリアリティいっぱいに見ているこちら側に訴え問いかけてくれる。
私自身、この事件の事を知りませんでしたが、映画ラスト近くのリチャード・ジュエルが、FBIの尋問に、「僕のような事案を残してしまったら、誰も人を助けなくなってしまう」と言う台詞にグッと来ると共に、間違えに気づかない、また自分達が正統だと思っている国家権力やマスコミに怒りさえ覚えます。
強いて、本作品の難と言うか、足りなさを感じた部分も、その後、FBIやマスコミは、リチャード・ジュエルに対してどう謝罪したのか、疑った人たちはどうなったのかを知りたかったな・・・・・
他の作品を全部見た訳ではないので何とも言えませんが、本作品が、ゴールデングローブにも、アカデミー賞の候補にならないのが不思議かな・・・・
しかし、クリント・イーストウッドは90歳になってもこんな素晴らしい作品が作れるのだから正に凄い人だと思う。
本作品、数年前から制作を考えていて、元々配給権を20世紀フォックスが持っていて、ワーナーと共同で制作を申込み話が進んだらしいけど、20世紀フォックス側でクレームを出した人がいて、一時は制作が中止になり、その後、20世紀フォックスがディズニーに買い取られ、ディズニーの現在の社長が、元ワーナーの知り合いだった事から、話し合いで配給権を譲渡して貰い今回の制作、公開に至ったらしいけど、去年の6月に撮影、11月に試写、12月下旬に公開とそのスピード作業で本作品を作り上げたエピソードにも驚かされる。
何でもテストを行わない方法で、撮影を進めるのが、クリント・イーストウッド流らしいけど、早く次回作品も楽しみです。
さすがイーストウッド☆
さすがの“イーストウッド☆クオリティ”!楽しく観終わった後にじわじわと匠の手腕に唸ります。
満を持してのポール・ウォルター・ハウザーの主演作。こんなはまり役もなかなかないくらいジュエルはちょっと変わってるけど真面目な愛すべき青年。弁護士も決して敏腕なんかじゃないし、お母さんも息子を愛する普通の母親。普通の人が普通に暮らして、ある日事件に巻き込まれていく。解決方法も至極まっとうな主張で、情報に踊らされて判断が鈍った人たちには、こんなシンプルなことさえ見えなくなるのかとハッとする。
人の人生をエンターテイメントとして消費していくマスコミやSNSの恐ろしさ。だれもがどちらの側にもなりえる事を肝に命じたい☆
メディアリンチの怖さと冤罪の怖さ
テレビ朝日主催の試写会で鑑賞。
1996年のアトランタ爆破事件の実話を基にした物話。
メディアリンチの怖さと一度犯人と思い込んだら状況証拠や物的証拠が無いにも関わらず逮捕しようとする捜査官に背筋が凍るとともに怒りを感じました。
スリービルボードでは嫌な保安官役を演じたサム・ロックウェルが本作では彼を無実と信じる弁護士役で出演しているのがとても興味深かったです
フタを開ければ、やっぱり100%イーストウッド映画
ここ数十年のクリント・イーストウッド監督作は実話をベースにしたものばかりだが、本作を観て改めて確信したのは、そのテーマ選びの上手さ。
メディアによる言われなき誹謗中傷の怖さや、善きことをしたはずなのに一転して糾弾される側になってしまう不条理。『恐怖のメロディ』や『ハドソン川の奇跡』といった過去作にも通底するように、本作もフタを開ければ、やっぱりイーストウッドらしいテーマ。
クライマックスでのリチャード・ジュエルが、『ハドソン川』のサリー機長とダブって見えたのは自分だけではないはず。
母親役のキャシー・ベイツの名演は涙を誘う。
他人の人生を描いているのに、サラッと自身の作家性を盛り込んで映画化してしまうマジック。まさに映画作りのお手本。
新作が発表されるたびに思うことだが、イーストウッドには気力が続くまで映画を作り続けてほしい。
あと余談として、今回の試写の主催がテレビ朝日だった。テレ朝関係者、特に報道部は、本作をちゃんと人材育成の教材にしてほしいもの。
全てが詰まった完璧な映画!
主人公リチャード・ジュエルのヤバイ感じが絶妙。
仕事熱心なのはわかるけど、やや行き過ぎの感が否めない。
悪い人じゃないかもしれないけど、思い込みが激しく、人との距離感が上手く取れていないような…
会話が微妙に噛み合っていないような部分も怖いし…
「正しい」を振りかざして人を従わせる事で、鬱憤を晴らしている風にも見える。
趣味も普通にヤバイしww
この危ういバランスが本当に素晴らしい!
プロフェッショナルな英雄が不当に糾弾される姿は『ハドソン川の奇跡』でも描かれていましたが、危うい人物のグレーゾーンを描く事で、冤罪と戦う物語だけに留まらないテーマが広がっていました。
家族の愛、信頼、友情などの人間の普遍的なテーマはもちろん、社会的なテーマも鋭く、さすがはクリント・イーストウッド監督!
FBIとメディアに噛み付く90才!!
過去の出来事を描きながら、現代社会に物申す!
多様性の受け入れが問われる世の中ですが、そもそも一人の人間の中にもいくつもの顔がある事に気づかされ、
わかりやすいレッテルを貼るメディアの罪深さ、
わかりやすさに飛びつく大衆(←私を含めて)の罪深さも浮き彫りになっていました。
今やメディアは個人の「つぶやき」がニュースとして成り立つレベルだし
裏も取らずに視聴率や部数欲しさにネタに飛びつくなんて、「いいね」欲しさに噂レベルや憶測のゴシップを垂れ流している個人と何ら変わらない。
不確かな報道によって、傷つく人や人生を狂わされる人が生まれる事への責任の無さ。
情報を受け取る我々も、ネットニュースやワイドショーを鵜呑みにしているようでは同罪で、報道とエンタメの線引きをきちんと持たなければいけない。
さすがに「新聞」はそれらとは一線を画している「報道」だと信じていましたが、本作は新聞の先走り報道が全ての始まりでショックでした。
下世話なゴシップ要素も相まって、メディアの報道合戦が物凄いスピードで加速してゆく様は、見えないモンスターが巨大化していくようで恐ろしかった。
FBIの強引さも、報道の影響を受けていると思えるし。
「報道とは?」メディアのモラルに苦言を呈する作品でした。
でも、クリント・イーストウッド監督が本物の巨匠だと思えるのは、そこかしこに散りばめられたユーモア!!これに尽きます。
ゴリゴリ問題提起を押し付けるのではなく、サラリとしなやかに描いているところが、本当にすごい。
クリント・イーストウッド監督の豊かな人間性と、人を見つめる深い眼差しを感じました。
監督の手にかかると、主人公のグレーゾーンも、人間味あふれる感情に思えます。
怒りを表に出さないのは、何も感じていない訳ではなく、人々の言葉に傷つき、不当な扱いに対しては怒りを抱えている。
ヤバイ趣味も、その怒りやストレスの捌け口だろうし、そう考えると社会の闇を表した人物とも言えます。
でも、自分を卑下することなく、自分は自分だと言える自信や強さは、良くも悪くも母親の愛を受けているからでしょうね。
もちろん、母親役のキャシー・ベイツには泣かされましたとも!!(T-T)
スピーチのシーンだけでも見る価値あり!
いくつになっても母親は、息子を守りたいと願っているものなんだなぁ。
クリント・イーストウッド監督の映画は、立ち姿や佇まいで物語るシーンが印象的で、役者に芝居をさせないイメージでしたが、珍しくガッツリ芝居させているのも驚きでした。
『ジョジョ・ラビット』に続き、サム・ロックウェルのやさぐれ弁護士が良い!!
リチャードとは別のグレーゾーンを感じる役どころで、組織に馴染めない感じがリチャードとの距離を縮めたのかもしれません。
二人の関係の変化も見どころ。
無駄が一切ない完璧な映画でした。
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