ハリエットのレビュー・感想・評価
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私には少し真面目過ぎたのかも知れません
ハリエット・タブマン (1821-1913)
自由の尊厳を問うひとりの女性がいた。今作はそれをストレートに伝える実に真面目な作品だ。
メリーランド州の農園で奴隷として生まれたミンティ(後のハリエット)は自由を求め1849年に奴隷制が廃止されたペンシルベニア州へ逃れた。それ以降、奴隷解放運動を行い、南北戦争では黒人兵士を率いて南軍と戦った。
奴隷制度が廃止され150年以上経つが、2020年の今も基本変わらない人種差別、差別主義。これは人間の性なのか、それとも神様の悪戯なのか?
感動は微妙ですが見る価値はあります。
ハリエット (2019)
奴隷解放運動家ハリエット・タブマンの伝記ドラマ。
史実を基にしたこの映画は当然ながら奴隷目線で過酷な労働環境や冷酷な白人の姿をメインで描いてます。
しかし同時に奴隷に次々逃亡されて困窮する農場主や逃亡奴隷解放を手助けする白人達。
逃亡奴隷を追跡して捕獲する黒人の賞金稼ぎもいたりしてストーリーは飽きずに最後まで見れました。
神の声を信じて行動するハリエット・タブマンの女性ヒーロー像に感動するかどうかは別ですが、
アメリカの歴史で解決できない人種問題の複雑さが多少は垣間見える作品でした。
フィクション? ノンフィクション?
この方…実在している方なんですね。しかも、お札に採用されてるなんて…。自分が、いかに、歴史の勉強をしてこなかったんだろうと反省しながら鑑賞しました。
どこまで忠実な話なんでしょう。予知夢みたいなことが起こってましたが、本当に、そんな力を持った方だったんでしょうか。それとも、そんな力を持っていると思わせるくらい、すごい所業をしてきたから、話を盛ったのでしょうか。まあ、エンタメ要素としては、悪くないと思います。でも、ちょっと単調に感じましたね。ノンフィクションともフィクションとも、どっちつかずな気がしました。
あと、個人的には、歌が気になりました。歌にのせて伝えてたけど、毎回、あんなことしてたら、白人にも気付かれないのかな?まあ、それも、映画ならではのフィクションですかね。
気になる点はありましたが、やっぱり感動もしました。こういう人種差別がなくなるといいですね。
映画を観る喜び
久々に映画館で映画を観ました。ほぼ貸し切りに近く寂しい感じですがコロナ、マナーの悪い客などから解放されて気持ちよく鑑賞できました。
作品は期待して観たのですが、割とピンチも無く自由を手にしてしまうところや、オカルトチックな部分が割と根幹にありちょっと冷めてしまうところがありました。しかし、この頃は神の導きが何よりもこの人々の拠り所で、むしろそれだけしかなかったかもしれないことを想うと仕方がないのかもしれません。もしかしたら本当にエスパーだったのかも。ハリエットについての知識もないのでこれから調べてみようかと思います。
役者はみな個性的で存在感がありこれからも追っかけてみたくなりました。
なんか快適でこれからも一つ空けで観せてくれたら嬉しいなあ。
一種のヒーローもの?
オスカーで見たシンシア・エリヴォは、大柄で貫禄があって年配に見えたが、実は1987年生まれの身長150センチ?この映画ではあどけなさも感じられる。最初は普通の黒人奴隷の少女(既婚)の1人だったミンティが、生まれてくる子どもも同じ農場の奴隷だと言われ、更に自分が売りに出されていることを知り、立ち上がり、どんどん成長していく。
虐げられている奴隷を延々と見るのは辛いが、映画はトントンと話が進むし、ところどころでミンティに手を貸す人が現れ、見やすい。
これは19世紀半ばの話。その100年後もまだ公民権運動が続いており、更にその半世紀後もまだ差別が解消しておらず命を奪われる黒人がいるとは、ハリエットも呆れているだろう。
奴隷解放は神の声のおかげ?
逃亡の大事な部分は主(神)の声に導かれ、南北戦争の戦いは描かれていない為、ちょっと肩透かしでした。
題材は、現代にも残る黒人差別であり、考えるべき重要なテーマを扱っているため、興味がある方にはオススメだが、せっかくのスクリーンを堪能したい方には特に勧めない。。
よくわからなかった
・全体的によくわからなかった。黒人奴隷を解放した英雄のお話という事はわかったけれど、各々の感情がよくわからなかった。
・冒頭で自由になれるかもしれないとドキドキしていた黒人奴隷のミンティが地主の男に馬鹿馬鹿しいと一蹴された後、これは緊張感のある話だなぁと思ったらすぐに亡くなって驚いた。その後、その白人の息子がミンティに執着しているという風に母親に言われたけど、執着しているのかしていないのかがよくわからなかった。していたとしてどうしてしていたのかってのとどんくらいしていたのかってのが全然わからなかった。
・ミンティ含め、自由になったら改名するっていうのがなるほどなぁと思った。
・奴隷狩りの黒人が白人に依頼されて得た報酬で白人の売春婦を抱きまくる!って挑発的に言っててそれが社会などに対しての復讐っていう感覚なのかぁと思った。ジャッキーブラウンの時にもサミュエルLLジャクソンが白人の女を囲ってる事をステータスな感じで言っていたのを思い出した。そのせいか、何となくそのセリフに哀愁を感じた。
・奴隷が南から北に逃げるのが最初のミンティの時、物凄い大変そうだったのにミンティがハリウットとして夫を救いに向かう際は何だかあっさりと家に近づいてすんなり助けた感じがして大変なんだろうけど、とても簡単そうに見えてよくわからなかった。
・父親が観ていないぞと目隠しまでして家族を逃がしていたのがわからなかった。あれで見てませんでしたって言って許されるわけないようなと思った。
・ハリウットに神のお告げが聞こえる能力があるっぽかったけど実際にあったのかがとても気になった。ジャンヌダルクとかけていたのかなぁと思ったけど実際の人物なのに空想上の人のような印象が強くなった。
・自由黒人というのを初めて知った。そういった人たちはどうやって自由になったのかっていうのが気になった。最初から自由だとしてどうやってなのかなとか。
・ハリウットが北に逃げて一年後に夫を助けたいと申し出た時に君には無理だといわれて決めつけないで!と言ったシーンが良かった。
・奴隷の両親から生まれたミンティっていうのが悲惨な境遇で苦しかった。そのミンティが自由の尊さを実際に語っていると思ったら返す言葉がないなと思った。
・奴隷の価値がかなり高いことに驚いた。5人を売却したら農場を売らずに済むほどの価値があったのかと。何となく下の下に扱われているような気がしていた。
・奴隷の受けた仕打ちがあんまり描かれていなかったのが残念だった。タランティーノのジャンゴを観ていたので、様々な不条理な仕打ちがあったはずなのに。奴隷主の男も何となくその社会においてはしょうがない立場って印象を感じた。白人にも黒人にも気を遣って撮られた映画っていう印象を受けた。
いますぐ逃げ出そう
夜が最も暗いのは夜明け前だという。使い古されたフレーズだが、本作品は南北戦争の13年前からスタートする。まさに奴隷にとって最も苛酷な時代であった。
アメリカの独立宣言が1776年、合衆国憲法の成立が1787年だ。福沢諭吉の「学問のすすめ」の有名な冒頭である「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと言えり」として紹介されているのがアメリカ独立宣言の思想なのだ。尤も、福沢はその後に、そうは言っても差別はあるから、学問をして自分を向上させなければならないと書いて、現実主義者らしい主張をしている。
フランスのパリバスティーユ監獄襲撃が1789年で同じ年に所謂「人権宣言」が採択された。そこにはすべての市民は平等で差別されないと書かれている。独立宣言も人権宣言も、人間が作り出した権威や王位などに立脚する封建主義を全面的に否定して、法のもとにはすべての人間が平等なのであると謳う。出身地や家柄などによる差別から人間を解放し、自由に行動する権利があることを高らかに宣言したのだ。
ところが人間は、ドストエフスキーが「カラマーゾフの兄弟」のイワンの台詞として書いているように、せっかく勝ち得た自由をパンと引き換えに投げ出してしまう。パンを与えてくれるのはすなわち権威であり、権威は差別の基幹だ。人間は長いものに巻かれるのが大好きであり、権威のパラダイムによって自信を得たり生きがいを覚えたり、ときには他人を差別する。
独立宣言の4年前、ジョン・ニュートンが「アメイジング・グレイス」を作詞した。かつて奴隷貿易で儲け、たくさんの黒人を見殺しにしてきた彼は、難破しかけた嵐から奇跡的に生還したことから、考えを改めて敬虔なクリスチャンとなり牧師となった。曲が付けられて「われをも救いし」というタイトルの有名な賛美歌となった。
アメリカ独立戦争の前から、黒人はたくさんアメリカに「輸入」されており、キリスト教の権威を叩き込まれ、神の前で欲望を恥じ、従順と勤勉を徳とするように洗脳されてきたのだ。一方で「輸入」し購入した側は、黒人を奴隷として「所有」していると当然のように考えている。言葉が理解できる人間は、動物よりも遥かに役に立つ。家事でも農作業でも一度命じれば繰り返し働くし、練度も向上して生産性も上がる。当時のアメリカの白人にとって黒人奴隷はAIロボットのように便利なアイテムだったに違いない。
さて本作品の主人公ハリエット・タブマンは奴隷解放に尽力した数多くの有名人のひとりだ。熱心なキリスト教信者であり、ナルコレプシーと癲癇の持病がある。多分に神がかった人なので無宗教の日本では狂人扱いされたかもしれないが、クリスチャンが主流のアメリカでは信じられたようだ。
キリスト教信仰の是非は横に置いておくとして、ハリエットが大変に勇気と行動力のある女性だったことは確かだ。いくつかの場面で繰り返される「自由か死か」という台詞は、彼女の人生観を端的に示す言葉であり、本作品の世界観でもある。その人生観に従って勇気を出して生きるハリエットの生き方はとても爽快であり、共感できる。
逃げることは恥ではない。束縛から逃げ、隷属の状況を脱することは寧ろ自然な行動だ。「石の上にも三年」は好きな石に限られる。荊棘(いばら)の上に三年もいたら人格が崩壊してしまうだろう。嫌な上司、嫌な会社、嫌な政治家、嫌な国からはとっとと逃走するのがいい。人類の歴史は戦争の歴史だが、同時に逃走の歴史でもあった。自由のない状況では生き続けるより死ぬほうがましなのだ。無一物、徒手空拳で放り出されても、運がよければ生き延びれるかもしれない。ハリエットの幸運を羨ましがる前に、いますぐ逃げ出そう。
タブマンは、オバマ政権時代に新紙幣の肖像にすると決定されていた。数十万人にアンケートを取っての1位だったらしいから、統計学的に言えば全米にアンケートを取っての1位と同じである。さすがオバマだ。やることがいちいち民主的である。政権内部の井戸端会議でコソコソと渋沢栄一に決めたどこかの小国とは大違いなのだ。ところがトランプがこれを延期していて、もしかしたらそのまま消滅するかもしれない。アンケート結果を踏みにじる暴挙だ。連綿と受け継がれていく人種差別の先頭に立っているのが最高権力者である合衆国大統領なのである。そんな時期にこの映画が公開されたことは、大変にエポックメイキングである。もしかすると21世紀のアメリカ史にとって重要な意味合いを持つかもしれない。
タイトルロールを演じたシンシア・エリボの幅のある歌声は、遠くまで聞こえる口笛のようであり、地面から伝わる地響きのようでもある。歌で別れを告げる場面は感動的で、原始宗教が語り継がれるのではなく歌い継がれてきたものであることを思い出した。
夜明けの来ない夜は無いさ・・
神に導かれ歩き続け、神を信じ闘い続け
・・自身の命をも厭わず・・皆の居場所を見つけ造り上げたハリエットの生き様に心の真ん中を乱暴にかき乱される程、月曜の夜に観るには衝撃的な作品・・
間違いだらけのあの時代を知り学べた事は確かでした・・
自分史上最高に震えたアカデミー賞での圧巻のパフォーマンスを見せてくれたシンシアの「スタンド・アップ」録画保存してあるので
今夜は改めて堪能したいと思います✨
・・現在ハマっているドラマ「アウトサイダー」天才探偵役をシンシアが演じていますが
ミステリアスな彼女の演技にも注目しております!
今も続く黒人差別
まず映画を観て驚いたのは奴隷制下においても、同じ黒人同士がハンターとして雇われている点であった。
にしても主人公のハリエットは芯が強い。根底にあるのは同じ民族同士の愛情である。過去の暗部をさらけだすアメリカ映画は、さすが自由と民主主義の国と言わざるを得ないが、最近の出来事で未だ、黒人差別が続く病めるアメリカの部分も垣間見える現実問題として、そのことと、どこか重なる映画でもあった。
ソウルミュージカル
オバマ政権下で新20ドル紙幣の肖像に選ばれた、アフリカ系女性の奴隷解放運動家ハリエット・タブマンを描いた伝記映画。
冒頭から、いきなりのオカルト展開。
タイミング的にたまたま今の黒人差別に対するデモと合致してしまったが、差別や解放がテーマではなく。
ジャンヌ・ダルク的なヒロイン像を魅せるため、神秘性を重視した方向の作りに感じました。
観客サイド(特にアメリカ人)は「後に南北戦争で看護婦、スパイを経て、アメリカ史上初の女性指揮官として兵士を動かし、南軍側の奴隷750人を助けた」という史実を知っているわけで。
そのため、作り手は「奴隷の所有白人たちに捕まるかどうか」というあたりに、緊迫した物語の山場を持ってこれなかったので、キャラに振ったのだと思いました。
それと、ある種のミュージカルでもありました。
それも、アカペラのソウルナンバーを主体にした。
キャラを立たせるという点に特化しているのも、ミュージカルならうなずける。
ストーリー主体の観方をすると、話がとっちらかり飛躍し、盛り過ぎ感が出ていた。
共感もしにくくなり、面白味も減っちゃった感じ。
ミュージカルとして観た方がいい。
ところで、あの白人至上主義者たち支持するトランプの政権になって、新紙幣の話が有耶無耶になっているっぽく、本当に彼女の肖像が使われるかが不透明に。
このことこそが、本作が映画になった理由かもしれません。
わかりやすい。
奴隷解放運動リーダーの人生。奴隷制度から南北戦争まで、奴隷から解放運動のリーダーになるまでの史実が駆け足で描かれます。駆け足過ぎて人物描写が薄い感じはするけれど、反面わかりやすい。アカデミー賞ノミネートの唄もさすがに聞き応えあり。
愛しのマリー
現在、全米各地に広がる“BLACK LIVES MATTER”の抗議活動。人種差別の根本的な歴史を探る意味でも価値ある映画を観た気分になった。思い出すのは1977年に日本でも大ヒットした『ルーツ』だった。主人公のクンタ・キンテとその子孫の物語で、自分もアメリカ奴隷制度に興味を持つきっかけとなりました。そのおぞましい史実の中でも、逃亡しないように足の先を切られるシーンが今でも鮮明に思い出されます。
映画の各所で黒人音楽のルーツ、黒人霊歌、ブルース、ゴスペルを堪能できる上に、自然発生的に歌う主人公ハリエット=ミンティ(シンシア・エリボ)のスピリチュアルな歌が心に響いてくる。もちろん主題歌の「STAND UP」が心にぐさりと来るのですが、序盤からtraditionalの歌が満載で、奴隷たちの魂の響きが伝わってくるのです。
ストーリー的にはちょっと単調なところもあり、色んなキャラの描写も脚本も雑な気もするのですが、残酷な描写でインパクトを与えるよりも繊細な心で訴えようとしているところが女性監督ならではの優しさを感じられます。
何度もメリーランド州の農場に戻り、黒人奴隷を解放する功績もさることながら、徐々にモーゼと呼ばれるほど神がかり的なイメージがちょっとマイナス。そんな中でも、ウォルターというスパイみたいな子がハリエットに協力するようになっていくのも面白いし、もう一人の黒人は自ら奴隷狩りに加担していく対照的な描き方はよかったし、何といってもフィラデルフィアの“地下鉄”という組織のウィリアムや下宿屋マリーがとても良かった。泣けるシーンはマリーだけだったけど・・・
差別はなくなるのだろうか?
黒人に対する差別的な行動のニュースと結びつけてしまいそうになる自分がいるのも確か。
でも、そこはちょっと違うかも、とブレーキを踏んで。
「自由か 、死か」2つに一つと言い切るハリエットは、あの時代の女性にしては向こう見ずで潔い。
すべての奴隷を開放したい、家族を助けたいという、ハリエットの熱い思いと「みんながお姉さんみたいに勇気があるわけではない」という、妹の思い。
不確かな未来を恐れるのは、当然かもしれない。
それにしても、人が人を支配したいという気持ちは現代だって、なくなったわけではないでしょ?
奴隷という形はなくなっても、人の心のなかにある支配や執着、排除はあるじゃない。
支配された人間にしかわからない、生まれてから自由を味わったことがない人にしかわからない、だからハリエットの言葉には重みがあるのだろう。
当事者にしかわからない、というジレンマ。その当事者にも温度差があるということ。そのあたりがよく描かれていたように思います。
コロナ明け
コロナ明けに観た映画がこれで良かった。
久しぶりだから評価高いのかも(笑)
内容は勿論のこと、映像、音楽、全て良し。バランスご良かったと思う。
ちょいちょい好きな俳優さんも出ててなんか嬉しい。
こんな英雄が居たのを始めて知りました。
名前を伏せていたのもあったのかな。
映画館は人が少なかったけどオススメの一本です。
ラストの曲もステキ。
実はハリエットの新20ドル紙幣は発行されていない
2020年のアカデミー主演女優賞と主題歌賞ノミネート作品。2020年3月公開予定だったが、コロナ禍により6月5日公開となった。
映画館の営業自粛によって公開延期となった作品は、優に100本を超えている。年間公開スケジュールは渋滞しており、メジャー作品以外は、"ビデオスルー"も否めない。何本が無事公開されるだろうか。
本作は19世紀のアメリカ南北戦争の直前の黒人奴隷解放運動を背景としている。主人公として描かれるハリエット・タブマン(Harriet Tubman / 1821-1931)は、アフリカ系アメリカ人女性として初めて新20ドル紙幣の肖像画に採用された奴隷解放運動家・女性解放運動家である。
20ドル紙幣はもっとも使用頻度の高い紙幣であり、たいへん名誉なことである。オバマ政権下で、女性参政権100年目の2020年発行予定とされたその新20ドル紙幣だったが、それを「純粋にポリティカル・コレクトネスだ」と発言したドナルド・トランプ大統領政権下で、"偽造を防ぐためのデザイン作成の遅延"という理由で2028年以降に延期されている。
ちょうど作品公開直前の2020年6月25日に起きた、白人警官による黒人被疑者ジョージ・フロイドさん殺害事件でも、トランプ大統領の発言が物議を醸している。独立国家としてわずか250年の国にも関わらず、人種差別問題は200年を経てもくすぶりつづける米国の病である。
ハリエット・タブマンを演じたのはミュージカル女優シンシア・エリボ。主題歌も彼女が歌っている。ミュージカル映画ではないが、劇中で登場人物たちによる黒人霊歌が挿入され、歌詞がストーリーを補完している。シンシアの演技力と歌唱力をまざまざと見せつける。見事だ。
映画は、黒人奴隷だった少女ハリエットの大脱走からはじまり、やがて"黒人のモーセ"(Black Moses)と呼ばれるほど、多くの黒人奴隷をひそかに救出した"地下鉄道の指導者(=車掌)"となっていく半生を描いている。
同じ黒人でも、生まれながらの自由黒人と、奴隷の娘という身分の違いなど、歴史的事実を淡々と伝える。女性監督ケイシー・レモンズが、スリリングな逃走劇の要素と、奴隷と所有主の価値観の衝突を演出。ハリエットはジャンヌ・ダルク的なヒロインとしての存在感を持つが、余計な誇張なく、等身大の彼女を再現しようと努めており、程よいメリハリが効いたドラマになっている。
(2020/6/5/TOHOシネマズ上野 Screen1/シネスコ/字幕:古田由紀子)
「自由か死か」そんな究極の選択をしなくて良い時代・場所に生まれてこれたのは幸せなこと
「基本的人権。なんじゃそれ?」と、現在とは考え方がかなり異なっている170年ほど昔のアメリカのお話です。
そこでは、奴隷制度が(州によっては)認められていて、その制度の下では奴隷は所有者の「物」あり、所有者の意のままにされる存在でしかなく、コキ使われても傷つけられても他に転売されても逆らうことができなかったと、現在ではありえないことが当然のこととされていたそうです。
歴史の知識として、アメリカの奴隷制度やその経済的背景、南北戦争について知っていたけど、映像で見るとあらためてその惨さを認識させられますね。
ただ、映画としてみると、主人公のハリエット自体は感情的・無計画に行動するけど特殊な才能(第6感)に助けられて何とか任務を遂行するような人物に描かれていて、今一つ魅力的ではない。八面六臂で活躍する姿を描いたほうが映画としては面白いんだけど、それだと「フェイク」とされるのかな。
オバマ前大統領の時代に彼女を新20ドル紙幣に描かれれことが決まったけどトランプ大統領が差し止めたそうで、最近の騒動をみても人種間の融和は口で言うほど簡単ではないんでしょうね。
映画を観た感想は、「自由か死か」そんな究極の選択をしなくて良い時代・場所に生まれてこれたのは幸せなこと、というごくありふれたもの。悪くはないと思うんですけどね。
シンシア・エリヴォの圧倒的な存在感と歌唱力が魂を奮い立たせる!!
今作は、ミュージカル映画ではない。かつてバズ・ラーマン監督の『オーストラリア』が美術と演出、しかも主演はヒュー・ジャックマンということで、歌い出しそう詐欺をしていたが、今作でも歌い出しそうな雰囲気が全面的にあって、また歌い出しそう詐欺かと思えば、実際に歌うシーンもある。だったらミュージカル映画にしてもよかったと思うのは私だけだろうか。
奴隷にされていた黒人が仕事場や教会で歌うシーンというのは、様々な映画やドラマで描かれていたし、教育が満足にできなかったことで字を書くことも読むこともできない人たちにとって歌というのは、大きな意思疎通の手段であったこともあり、物語上で不自然ではないのだが、もっと聴かせてほしい…と思ってしまう。というのも主演のシンシア・エリヴォの圧倒的な歌唱力と迫力があるからなのだ。
シンシア・エリヴォという人物は、ただ者ではない。『シスターアクト(天使にラブ・ソングを…)』『I Can’t Sing! The X Factor Musical』などに出演していたミュージカル舞台女優であり、スピルバーグの映画としても知られる『カラーパープル』のミュージカル舞台版では、共演のジェニファー・ハドソンに負けずとも劣らない圧倒的歌唱力と演技でトニー賞を受賞している強者なのだ。
シンシアの顔にフォーカスが当たると、どうしても次のセリフが歌なのではないかという錯覚をさせられてしまうことこそが、彼女をキャスティングした理由ではないだろうか。内に秘めた勇気と決意がシンシアの表情とソウルフルなセリフ通して伝わってくるのだ。
黒人奴隷を解放に導いたハリエット・タブマンという、黒人にとって「母」のような存在を演じるというプレッシャーを跳ねのけて、堂々たる演技をみせており、物語の尺の都合上、ドラマ性や盛り上がりとしては、どうしても物足りない感じがしていまう部分をシンシアの演技によって、短い尺の中でも奴隷解放へと導くプロセスに圧倒的説得力をもたせている。
主題歌にもなっている「Stand Up」は映画史に残ると言っていいほどの名曲である。アカデミー賞では歌曲賞ノミネートされた。予告編で「Stand Up」を聴いたことで映画を観たいと心動かされた人も少なくないのではないだろうか。
この「Stand Up」には、内なるものを奮い立たせる力強さがあり、それをシンシアが歌い、演じることでハリエット・タブマンの壮絶な人生がリンクするという構造は見事!!
今作は題材が題材なだけに、黒人中心に描かれている様にも思えるのだが、実は奴隷として扱っていた白人側の視点も描かれているのだ。
中でも象徴的なのが、ハリエット達を奴隷にしていた家の息子であるギデオンの視点だ。ギデオンは13歳で病気にかかった際に、ハリエットが神に願っていた姿を見てから、その光景が忘れられないでいた。
ギデオンも小さい頃から黒人は奴隷で所有物であるとインプットされてきたことで、ハリエットを捕まえようとしている宿敵のような描かれ方をしているが、実はそれが一種の「恋」による執着であることに、時代的概念によって、ギデオン自身が気づくことも、気づいたとしても表の感情に出すことできず、決して交わることのない価値観と感情が切ない。
最終決戦でみせたギデオンの表情が全てを物語っており、演じたジョー・アルウィンの表情でみせる演技が『女王陛下のお気に入り』『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』同様に今回も炸裂しているのだ。
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