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映画「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」 ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像
劇場公開日:2020年2月28日
解説
「こころに剣士を」のクラウス・ハロ監督が、作者不明の「運命の絵」に魅せられた老美術商とその家族を描いたフィンランド発のヒューマンドラマ。年老いた美術商オラヴィは、家族よりも仕事を優先して生きてきた。そんな彼のもとに、音信不通だった娘から電話がかかってくる。その内容は、問題児の孫息子オットーを、職業体験のため数日間預かってほしいというお願いだった。そんな中、オラヴィはオークションハウスで1枚の肖像画に目を奪われる。価値のある作品だと確信するオラヴィだったが、絵には署名がなく、作者不明のまま数日後のオークションに出品されるという。オットーとともに作者を探し始めたオラヴィは、その画風から近代ロシア美術の巨匠イリヤ・レーピンの作品といえる証拠を掴む。「幻の名画」を手に入れるべく資金集めに奔走するオラヴィは、その過程で娘親子の思わぬ過去を知る。
2018年製作/95分/G/フィンランド
原題:Tumma Kristus
配給:アルバトロス・フィルム、クロックワークス
スタッフ・キャスト
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冒頭のピアノ曲から、好き系の映画だっていう安心感を抱く。期待を裏切らない作品。この作品、ハリウッドなら山場がまったく違うんだろうなと何度も思った。歓びやカタルシスはこのフィンランド映画にとっては、けして重要じゃない、そこじゃないんだ。
救いようがないような商売への執着、家族との溝、失意、人生は楽じゃないって思い知らされる。でもけして、何もないわけじゃない。幸運を祈るって言い残す相手がいるのだから。
サインのなされない絵画がそのものが聖画だったように、何も残してないように思える人生でも、きっと何かあったのだ。口笛を思わずふきたくなるような歓びが。
2022年8月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
人生の苦さ惨めさが身に染みるけれど、地味だけど良い映画でした。
(フィンランドの2018年作の映画です)
老いたる画商・オラヴィが最後に一万ユーロを工面して買った署名のない名画。
「キリストの肖像画」
果たして本当にイリヤ・レーピン作なのか?
はたまた贋作なのか?
オークション場面もハラハラしたし、サスペンスもそこそこあります。
フィンランドのヘルシンキで美術商を営むオラヴィが15歳の孫のオットーと、一攫千金を夢見て奮闘する姿は、悲しくもみっともない。
だいたいに、一万ユーロの工面が出来ないって、どう言うこと?
たった百二十万円ですよ。
友だち、公的機関、貴重品を売り、挙句に孫のオットーに投資を持ちかけて、
オレオレ詐欺の孫だまし娘だましとは?
(福祉国家フィンランドでは貯蓄はまったく必要ないらしい・・・羨ましいと言えば羨ましいですが、)
でも窃盗の履歴のある問題児のオットーだけど、意外と役に立つし可愛い孫なんですよ。
家族の絆を思い出しただけでも、オラヴィは人生勉強になったと思う。
シングルマザーの娘や孫の方が、よっぽど人生を知っているのね!!
それにしても、だだっ広い店舗に《絵画の山》なのに金目のものが一つも無いって、
オラヴィ爺ちゃん、あまりに目利きでなさ過ぎるよ。
苦い人生だけど、そこはかない人生訓もあって、
《お金より地道に家族を愛せよ!!》
って映画でした。嫌いじゃないです。
フィンランドの映画というやつを初めてみた。
年老いた画商の末期。絵画の売り買いを生業として生き抜いてきた老人。自分の目利きの優秀さをとことん信じ切ることができずにこの業界で年月だけを重ね、過去の小さな成功と失敗を反省するわけにもいかず肯定さえもできずこの歳まで生き抜いて、生き抜いてきたことだけを自慢に画商仲間とカフェで談笑していることが日々の愉しみ。そんな風情が絡みついた老人。
演じるのはとても厄介なことだったろう。しかし、見事に演じ切っている。実にあっぱれ。
映画が始まってすぐに主人公は最後に死ぬと思った。そして、どんな死に方をさせるのだろう・・と、そんな考えに取りつかれて最後まで見てしまった。
ビジネスと生きがいは相容れないことは十二分に理解しているはずだけれど、この老人には最後のディールを成功させてやりたいと強く思ってしまった。
人の一生は80%が後悔。と、するならば20%は肯定できる瞬間があると言うことなのだ。しかし、その瞬間を生きているあいだ、もしくは死に際にでも味わうことができれば最高に良い人生だったと言えるはずだ。この映画の唯一の救いは、主人公が日々の何気ない暮らしの一コマの中で口笛を吹きながらこの世を後にしたことだけだ。
このような死に方が、やっぱりいい。
2022年4月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
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美術商という職業は、常に生死の境目で生きていることなのだと感じさせられた。
「これは価値がある」自分自身がそう思ったら、それを最後まで貫き通す信念がいる。そして自分の全てを投げ打っても構わないと言わんばかりに、絵に全身全霊を欠けられる。それほどまでにアートに魅せられている。美術商とはいわば絵の「狂人」なのだと思った。
オークションのシーンなどは特にハラハラさせられ、手に汗握っていた。オラヴィが名画と疑わないあの絵を落札してからは、作中に漂う不気味な気配と落ち着かない挿入曲…見ていて常に胸騒ぎがするような感覚に常に襲われた。
最終的に、美術館からの連絡により自分の美術商としての目利きが正しいと分かったこと、そして孫からの心からの感謝(賞賛)があったことが、彼にとっての救いになったのではないかと思え安心した。
最期に大きな取引に果敢に挑戦できたことは、彼の長い美術商としての人生の幕引きとしては十分及第だったのではないか。最後に絵画を飾り始めていたシーン?を見る限り、おそらくこれからも美術商としてやっていくつもりだったのかと思うと少し寂しいが…