すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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役所映画。映画好きなら必見。
少しコミカルなところと、凄みのある部分のギャップが
素晴らしい。
三度目の殺人では、三隅だったっけ?
どっちも訳ありの殺人犯。
短気で、攻撃的な、暴力的な性格は、
遺伝子なのか、生活環境なのか?
ただ、同じ環境でも全員ヤクザになるわけでは無い。
つづく
西川美和の三上への"愛"。
西川監督の、三上という特殊な人間に対する暖かい視線を終始感じることができる作品でした。三上はいわゆる「社会不適合者」と言われても仕方がないような人物である。犯罪常習者で、感情的で短気、すぐに暴力で解決しようとする。こんな危なっかしい人間が、出所してまともに生きていけるのだろうかというのがまず興味の一番である。案の定、あちこちで衝突しもめごとに巻き込まれるが、次第に彼自身も、彼に関わる周囲も変わっていく。三上にはどこか力になってあげたいと思わ せる人間性みたいなものがある。それは例えば、身元引受や生活保護の対象者であったり、テレビ取材の対象者に過ぎないうちは気づかないが、彼の人柄に触れ一人の人間として向き合うことで初めて理解されるものだ。 そんな三上という人間を、役所広司が実に魅力的に演じてくれた。西川監督の三上への思い入れも十分に伝わってきたように思う。この世界は、表面的には不寛容であったり、利己主義や独善主義がはびこっているが、皆が少しづつ「善意」や「好意」を持ち寄ればきっとよくなる、そんなメッセージがこの「すばらしき世界」というタイトルに込められているように思った。
俳優の皆さんの演技に吸い込まれます
この世の中は、生きづらく、あたたかい。 このキャッチの通りで、この言葉とともに、さまざま考えさせられる。 出演俳優の皆さんの演技にも吸い込まれました
本当に良い映画
本当に良い映画だと思った。 生きづらさを抱える、今の世の中を生きる人の気持ちにスポットを当てている。その冷徹な現実を見つめ、寄り添い、時に突き放し、なだめて、背中をそっと押してくれる、そんな風に思えた。 主人公は、真っ直ぐで一本木な男だ。人生の多くの時間を刑務所で過ごし、ずっと社会の裏にしか自分の居場所がなかった。そんな一見特異な人物にも、自然と感情移入ができて、なんとか人生がうまくいってほしいとハラハラしながら見ている自分がいた。予想していたよりも見ていて心を揺さぶられたし、泣けた。 救いはあった、といえるのかな。。 ラストシーンは賛否が別れると思う。 それでも、この映画が気持ちが揺さぶられるすごく良い映画だったことには、疑問の余地がない。
ただ淡々と
これまで元犯罪者の生きづらさをテーマにした作品は多々あるが、ここまで現実的な作品はなかったと思う。 映画的な展開やショッキングな事件やおおげさな描写がないが、それが逆に物語にリアリティをもたらしている。 また観客的な視点をもつ、仲野太賀が巧く、 影の主役になっている。
はじめてのおつかいを見ている気分
主人公・三上がヤクザの映画はあまり好きじゃない。なぜなら、反社というレッテルで周りの対応が予想できるので、結末もお涙頂戴の展開になると思っていた。期待してないけど映画館で何度もPVを見たので思い切って見に行きました。 結果良い映画だったけど、主人公に感情移入しすぎてハラハラしました。三上は純粋で人間味あふれる人物なんですが、理性が育ってない、いわばブレーキのない車という印象でした。なので三上がやることにハラハラしっぱなしで、見終わった後疲れました。 私が特に三上に対してドン引きした瞬間は、不良二人がおやじ狩りをしているシーンです。三上は不良をやっつけるために力を振るうんですけど、相手の腹に嚙みついて撃退した時に血まみれの歯をにっこりと友人に向けるシーンが印象的でした。 最後には私も三上に感情移入してしまい、下唇を噛みしめながらこの映画を見終えました。
エンディングが安易過ぎてちょっと許せない
メインタイトルがラストカットまで出ない。そしてこの世の中は全くのクソで素晴らしくもなんとも無いという逆説的表現なのだがもしかして「ちょっとはいいとこもあるよね」とゆーことなのだろうか?クライマックス前に役所広司の就職が決まって青空を見上げるシーンが劇中唯一観ちゃいられないベタで陳腐で恥ずかしい演出なのだがこれこそが嘘っぱちの「すばらしき世界」と言いたかったのであろう西川美和監督恐るべし。役所広司は相変わらずメーターを振り切ることができないのだが今回の役どころはまさにそこにあるので「孤狼の血」よりずっとハマっておりました。こんなオーソドックスな映画を撮る監督もやはり必要である。
愛おしすぎる三上さん
怒りも大事な感情だけど、自分の感情を抑えず怒り狂うのは簡単で どんなときでも相手の気持ちも考え、優しさ思いやりといった愛をもった行動が できる人こそが最強なのだと最近「ある人質」を観てつくづく感じ、 職場での心ない人たちの会話からのコスモス(でしたっけ…?)、 最後、あのやりとりがあって本当に良かった… 正直、映画館で観るか迷っていたのですが、 こういう作品こそ全集中でじっくり浸れる映画館で観るべきなのだと思えました。
自己責任社会への警鐘
この映画が伝えたい事を簡潔に言うならば、現代の日本が抱える自己責任論への警鐘だろう。 犯罪を犯した者だけでなく、一度躓いた者達への不寛容な風潮がどれほど社会を危険なものに陥れているか。現代に蔓延る様々な問題の諸悪の根源は、この不寛容さにあるのではないか? それを最後のすばらしき世界という皮肉を込める事によって問題提起しようという強いメッセージを感じることができる。 演技は役所広司始め、脇役に至るまで熱演であり、大変素晴らしかった。 しかし長澤まさみ演じる女性はノイズ気味、かつ主人公との繋がりも薄く心的描写も少なかったので必要だったか?という疑念も生じたのが正直な感想である。 このコロナ禍だからこそ、人との繋がりを再認識することの大切さを感じさせてくれる作品である。少しでも興味があるなら是非、劇場に足を運んでいただきたい。
流石の役所広司
役所広司の演技に終始見入ってしまった
刑務所出所後の厳しい現実が突きつけられてもちょっとした小さな幸せを見つけて生きていくハッピーエンドかと思っていたら最後で衝撃を受けた
三上が自殺した後、出所して手に入れたはずの自由な青空に「すばらしき世界」このラストは最高だった
役所広司惚れ直しました。また、西川美和監督大好きです。
まずこの映画を作った、西川美和監督に大拍手…!!素晴らし過ぎる。毎回想像を遥かに超えてくるし、自分自身の経歴をぐんぐん塗り替えてくる作品を作ってますね、素晴らしいのはまずあなたですと言いたい…尊敬しかしない。 西川監督の映画はどれもこれも面白い。でもこの作品が一番好きかも。いやどれも良いし甲乙付け難いんだけどさ…。 役所広司演じる人生の大半を刑務所で過ごしたヤクザ上がりの殺人犯が、13年の刑期を終えて久し振りにこの社会に戻って来て、普通の暮らしをする為に奮闘する。 この映画を観る数日前に「ヤクザと家族」を観ていたおかげで、如何に今のこの世で反社上がりや刑務所上がりの人間が健康で文化的な最低限度の生活をおくることが難しいかが分かるので変に共感ポイントが多かった。でもこの映画はそこだけがポイントでは無い…。 私が散々良作映画の条件のひとつとして挙げている、「魅力的なキャラクター・人間性」を、この映画の登場人物は主人公を筆頭に皆が皆、メインキャラクターから脇役の脇役まで、みんな持っていた。映画によっては、「この人は元ヤクザだからそれっぽい感じに」「この人はスーパーの店員だからそれっぽい感じに」「この人はテレビディレクターだからそれっぽい感じに」「この人は教習所の教官だからそれっぽい…」と、●●っぽいキャラクターにしておけばそれで良い、というキャラクター設定や演出がされている作品も割と多い。で、この映画はその真逆で…。ひとりひとり、詳しく描かれている人は居ないんだけど、家庭環境や生活スタイルやこれまでの経験、色んな人生を生きてきた人達なんだろうと言うことが伝わってくる。そんな人達がひょんなところだったり、たまたまだったり、情だったり、仕事のためだったり、色んな理由から絡み合っていき、小さなドラマから大きなドラマまでどんどん展開を見せていき、もうこっちはスクリーンから目が離せなくなってしまっていた。 役所広司演じる主人公・三上は、経歴が経歴だけに、直ぐにカッとなってしまい手を上げそうになったり手を上げてしまったりして、最初は「やはりこれまでの人生がそうさせるんだな」なんて浅はかに思ってしまってましたが、真面目に生きようとする姿や人に心を許す姿、曲がった事が大嫌いなとこや弱い者イジメが嫌いなところや細かい作業が得意なところなど…徐々に彼の正体が見えていく度に、気になり、人間としての魅力が伝わってきて、直ぐにカッとなる性格にも色々納得がいくようになっていった。犯罪を犯したから長年を過ごした刑務所だけど、刑務所生活が長い分、現代の社会の闇や刑務所以上に地獄だな…と思うような事からは少しだけ遠い場所に居た人間だからこそ、今のこの社会に入っていったときに、色んな矛盾や腑に落ちないこと表から裏まで見えてしまった人間の邪悪さとか三上は耐えられなかったんだろうとも思った。私もそうだし、誰もが、道徳を学ぶことがメインの場所にずっと居て、長年居て、今のこの世界に生きるってなったら精神的に辛いと思う事が多過ぎるから…三上のような真っ直ぐな人間にとっちゃ発狂したくなることばかりだよなそりゃ、と。 そんな三上を助ける人、優しくする人、罵倒する人、面白がる人、色んな人達が登場する。ほんとに色んな人がいるんだけど、優しい人達の優しさには心をえぐられるような良い人達が居て…私は特に六角精児の存在と梶芽衣子の言葉にはやられたね。涙が止まらなくなった。 太賀の立ち位置も、ある意味この映画のエンタメ性を上げるための役どころかと思ってたけど、…あ、そんな風に関わっていくんだ…と意外な方向に進んでいき、結局心がぎゅっとなった。辛いシーンや展開もあるから悲しい涙も沢山出たけど、あったかい気持ちの涙も沢山流れたよ。 こういう重たい人間ドラマって、重たいだけの作品になる場合もあるのに、西川監督は「あー面白い!とまらない!」と最初から最後まで思わせる魅力をたっぷり詰め込んでくる。何度でも観たくなる傑作◎こんな映画、ずるいよ… 2021年を代表する1本!
2021/3/4
前科持ちに対して不寛容な社会に対して、『すばらしき世界』という皮肉的なタイトル。考えさせられる映画ではあったのだけれど、その世界の理不尽さを表現するためにラストに持ってきた出来事が短絡的すぎて、シャバイ脚本だなぁと思ってしまった。
純粋で生きるのが下手な三上の人柄に助けたくなる気持ちもわかるけれど、それにしたって周りの人たちが他人に寄り添えるいい人ばっかりなのも気になってしまったし、そんな周りに支えられ社会になじむために障がい者を笑う同僚に同調するのがめちゃくちゃ気持ちが悪かった。
あそこで三上が気付くべきなのは、障がい者の同僚をリンチしたのは「仕事をさぼった事に対して怒った」という理由があったことを知って、自分自身の暴力も理由があったって事と照らし合わせることと、どんな理由があれ暴力はダメだということじゃないのかな…。
後味は「うーむ」って感じにはなってしまったのだけれど、役所広司さん演じる三上の純粋かつ瞬間湯沸かし器的な性格故の緊張感ある感じと、キムラ緑子さんと安田成美さんの凛とした女性感とか、役者さんたちの演技はとっても良かったです。
最高最高傑作。 怪物
ラストのタイトルの辺りで相手のパンチが入ってしまったようだ。 エンドロールがテンカウントを数えるようにスクリーンに流れている。 動けない。 この映画が素晴らしく、こんなに凄い作品が有るのだろうかと過去に観てきた映画のリストから探す。 なかった。 試合に負けたのだ。 こんなに完膚なきまでに倒して貰えて 凄かった。 母が家の冷蔵庫にある残った食材で作ったものをみんなで食べた事が一番幸せだったと思えるような映画
階層
最後に流れるタイトルコール
「すばらしき世界」
皮肉めいた終幕で、全編通して愚痴のような印象を持った。
「身分帳」という原作から着想を得たらしい。
服役する囚人の経歴をこと細かに記したものだそうな。犯罪を犯した者は区分けされ、その生態を記される。まぁ…それはいい。そういうシステムだ。
異常な事とは思わない。
異常な事をした人なので、本人の為にも周囲の為にも必要なのだろう。
問題なのは「世界」のあり様だ。
鑑賞後、凄く具体的に個人の数だけ世界は存在すると思えた。世界は1つだけれど1つではない。
俺にも、電車で居眠りしてる眼鏡をかけたおじさんにも当たり前のように存在する。
同じ世界に生きてはいるが、同じ世界を見てはいない。
そんな感想を持ったのも、想像だにしない三上の世界に衝撃を受けたからだろう。
役者陣は皆様熱演だった。
役所さんは方言を話しているだけなのに、役所広司ではなく三上に見える程だった。
恫喝する眼差しや、台詞の扱い方…ちょっと今まで見てた役所広司ではないように思える。
素晴らしかった。
彼は出所後、更生の道を模索する。
だが生来の気質がそれを正しいと判断してくれない。メディアにほだされ、その気質を解放した時は水を得た魚のようだった。まさに自分が生きてきた世界に帰ったのであろう。
カメラマンの不在が分かった後は、自分が負かしたチンピラに「おう、立てるかー?飯でも食いにいこやー」と天真爛漫に声をかけてそうだ。
カメラマンは逃げ出す。
違う世界の住人と関わる事を拒絶したのだろうか?
彼を追うディレクター。
彼女にも彼女の住む世界があり、その世界から彼は拒絶されたようにも見えた。
紆余曲折を経て、三上は更生の道を歩き出す。
彼が選んだ世界は、自分を殺す事から始まるようだった。周囲の人間は三上を諭す。
「我慢するのよ」「今までみたいな事しちゃ駄目よ」
至極真っ当な正論である。
だがそれは、ありのままの自分を否定する事と同義で、それを誤魔化す為に「成長」なんて言葉に変換されたりもする。
彼は従い、自らを変革していく。
彼の世界は一変する。
世界自体は変わらない。彼の世界だけが変わるのだ。
そして、遂には自分を殺した。
そうしなければ、三上の選んだ世界は三上を受け入れてはくれないのだ。
同僚に相対し涙したのは、悔しさだろうか?それとも謝罪だろうか?
支援者から就職祝いに貰った自転車をこぐ三上の目はとても穏やかだ。だけど生命力は皆無であった。
かつての溢れんばかりに漲っていた命の荒々しさは、その眼差しに宿る事はない。
そこにかつて愛した女性からの電話。
ささやかな、ホントにささやかな幸せを目前に、三上は死ぬ。
「これからじゃん…三上さん、これからじゃんかよ?」
と、支援者達の声が聞こえてきそうだ。
その直後にタイトルコール
「すばらしき世界」
…絶句。
前科者のヤクザって設定だから、振り幅は多いものの…三上に限った話じゃない。
この世界は、ありのままの自分では生きられないように形成されているのだ。
我慢を根底に、ルールを覚え調和に細心の注意を払う。自分の世界とは、違う世界と折り合いを模索しながら生きていかなくてはならない。
いや、自分の世界を違う世界の価値観に変換し続けなけば生きていけないのだ。
最後に彼は死ぬ。
安堵したような目が印象的だった。
「これでようやく生きていかなくて済む」とか「良かった。死んだようにではなく、ちゃんと死ねる」だろうか?
解き放たれたかのように映し出される空。
三上のようにはなりたくないと思うだろうか?
俺は違うと胸を撫で下ろすのだろうか?
不安に思う事はない。
もう既に、三上の状態にはなってる。
知らず知らずの内に。
自覚が伴わない分だけ幸せなんじゃなかろうか?
これが「すばらしき世界」の詳細なわけだ。
映画館を後にし、個人を鮮明に意識した。
この人にも、あの人にも世界がある。
素晴らしいかどうかは分からないのだけれど、素晴らしいと思いたい世界は、俺と同じような尺度であるんだと考えられた事が、何よりの収穫だった。
King Gnu
カップ麺を一口食べてからぶちまけるシーンがすごくよかった。見せない部分は見せないという撮り方もすばらしい。要所要所で挟まる食事シーンが良い。 見て良かった。 最後のシーンとタイトルの出方も良かったです。 メガネの彼が走ってるところはKing GnuのMVかと思った
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