すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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死ぬわけにはいかない
刑務所から出たヤクザが更正しようと必死に生きていく話。役所広司の耐える演技が良かった。怒りを耐える、理不尽を耐える、生きていくことに耐える。ひいてしまうような瞬間的にキレる狂暴さを、社会から孤立させまいと順応させていく人々の優しさがありがたかった。最後は、ずっと、社会の片隅のどこかで、ひっそりと色んなことに耐えながら生きている終わりかたが、今の自分にはありがたかったかな。でも、ヤクザが普通に生きていく選択肢を選ぶ映画は新鮮で、泣いてしまった。
スルメの味わい
見終わった後は、なんだかちょっとガッカリした様な不足感があったが、感じた事をまとめようとすると後から後から、あの時のカット台詞動きは、「こんな意味があったのかもしれない」と西川さんの映画は、いつも何かを考えさせ、沢山語りたくなる。スルメの様に味わい深い。
何気ない映像は、絵画的でストーリーを膨らませてくれる。
バス、電車、飛行機が映し出される。
いずれも引きのカメラで遠くから動いている様子を見せる。それは、出所後時間は動いている、変化している事を現し、新しい世界へ行く事を現していると思った。
また、東京タワーとスカイツリーの対比、空、雲、丸い雲の中の青空は、三上が希望に満ちて新しい世界へ歩もうとしている事をイメージさせた。
出所後、社会からの疎外感から、昔の仲間に再び入ろうとする三上に対して、キムラ緑子扮する女将さんが、「コッチ側で見る空と自由な世界で見る空は違う、だから、帰れ」と劇中で諭す。
中々社会に馴染めて行けない三上だが、彼を心配するヒトは、本当に少しだが、居た。
「カメラ止めて仲裁に入るか、取り続けるのよ、だから中途半端なのよ」と怒鳴られた津乃田役の中野大賀。途中カメラを持って逃げ出したシーンからグッと良くなって来た。
きちんと三上と向き合って痛みを持った彼の人生、出所後の日々を書こうとしていた。
映画の最後は、三上に関わった人達を上空から映す、まるでそこは、未だ狭かったけれど素晴らしかった世界のように。
三上が見た空は、ムショの窓から見たより素晴らしかったはずだ。ヒトは、他者と繋がってこそ生きる、生かされていく。コミュニティの中の自分。何か失敗をしたヒトでも、それぞれの少しの寛容さがあれば、ちょっとづつ繋がって生き直して行ける筈だと言っている映画だと思った。
タイトルなし(ネタバレ)
ラストシーン、虐げられてる不器用で純粋な者から花をもらい、元妻から再会の電話を受け、希望に手を伸ばそうとしてる中、嵐のなか洗濯物一つ取り込みそびれたまま花を握りしめて亡くなるその空は快晴で
そのあと「すばらしき世界」のタイトルがでる
その全てが、この世〜〜〜!!って感じだった
普通の物語だったら小説が仕上がり書店に並ぶ所までは生きてるだろうけど、志半ばで亡くなるなんてこと現実では山ほどある。
この映画はとことん現実だった…
だけど、どうしようもなく理不尽も無関心もある一方で、ここまで手を差しのべてくれるあたたかい場所も必ずあることを示してくれてるから、見終わった後生きようって思える
大事なのはわかりやすいハッピーエンドでも、綺麗に人生を終わらすことでもないのかもしれない
三上が亡くなる前に変われたことは間違いなく希望だった
突然生き方は変えられない
カタギの自分達からはもう少し我慢すれば…とじれじれするけど、これまでの自分の当たり前が通用しない世界はなかなかしんどい
見渡すと周りの人間はみんな働いてて、自分だけが職にすら就けないのはどれだけ劣等感芽生えるだろう
右も左もわからないままに自分の常識が通用せず嗜められたら敵に見えるかもしれない
三上は見てて子供と同じだと思った
人の根源的欲求ってそういうものかもしれない
誰か一人でもいいから自分に心を尽くしてくれる人が欲しい
それが無かったり、みんな他に自分以外に優先する大事な人がいて、焦って上手くいかないときに弾かれたり嗜められたら孤独感がすごいし簡単に手を差しのべてくれる所にすがってしまうし、自暴自棄になる気持ちもわかる
逆に自分のためにそこまでしてくれるんだって自分を気にしてくれる人が一人でもいてくれたら、がんばろうって思えるんだよ
ヤクザの兄弟の元から逃げて施設に行ってから泣きっぱなしだった
歳を重ねるほど、昔の自分の記憶を共有できる相手がいることは貴重だ
施設で歌った歌を一緒に歌うだけで少し救われる
母に会えたら「生まれた時どうだったか聞きたい」っていうのに、うあぁってなった
親と当たり前にいれる人はまず聞こうと思わないささやかな質問すぎて
それすらも叶わなくて
本当はただ一緒にサッカーして笑うような、そんなささやかなものが欲しかっただけなのに
癇癪起こさず運転することも、障害のある同僚に優しく接することも
これまで彼が我慢できなかった描写がしっかりされてるから、小さな事がどれだけ尊いか伝わっていちいち泣いてしまう
人のあいだの感情を描くのがうまい
ヤクザにもカタギにも馴染めない半端な所にいる、どちらにも少し違和感を感じる描写がうまい
真っ直ぐに生きることは苦しいし、そのわりに返ってくるものは少ない
周りの人間は、他人に対して不寛容だし無関心だし、そんな人でも怒った理由は誰かの命のためだったりする
善悪をハッキリわけられない、落とし所を見つけきれないのがこの世だ
それでも、優しさはあって、自分が変わったり信じようとすればそれに気づける瞬間があって、意外と人は人を見捨てないこともある
辛い描写や残酷な現実があっても、やっぱりどこか残るのは優しさだった
対比の妙
役所広司が素晴らしい
身近な人が絶賛していたので見た。
それが少し純粋な感想を持つことを邪魔をしたかもしれない。
役所広司さんがものすごく魅力的で、ひとときも目を離せなかった。
北村有起哉さん、六角精児さんは、本当にそういう人がそこにいるとしか見えなかった。
仲野大河さんの演じるつのだ、彼の最後のふるまいは、自分の成功が夢に終わった残念な気分も、多分に含まれているのかもしれない、と思った。
更生の道は遠い
ヤクザと家族に次いで更生ものかなと思って観るの止めてた
観てみたら割とすんなりと観れたな
一度底辺を味わうとなかなか元には戻れない日本の社会
この物語の主人公である三上も同様で社会復帰に苦労する
運転免許や携帯、仕事などみんなが当たり前に行ってることが
社会復帰をしようとする者にとって障害になっているのが描かれている
我慢ができず暴力を振るってしまったりするのは暴力に明け暮れてきた者のサガか
しかし仕事を見つけ更生出来たことは素晴らしいよね
そして希望に満ちたまま死ねたのだから
最後は悪くない人生だったのかも
何か色々と共感する所のある物語だったが
悪くない出来だと思いました
「どう生きるか」
自分のこれからを考えちゃう
名優、役所広司さんの名演が味わい深い作品です。
予告編を観た時から気になっていた作品を鑑賞しました。
で、感想はと言うと、切ない。切ないなあ〜。
ヤクザとして足を洗うと決意した男が出所後、懸命に真っ当なカタギとして生きようとする様が描かれていますが、単純に清く正しくと描かれていない所が生々しく、また何処か憎めない感じで、名優役所広司さんの演技が光る作品です。
自身の罪を不当と感じながらも出所後は真っ当に生きようとする三上。それでも世間の風が冷たく、生活保護の申請や就職活動もなかなかままならない。また荒くれ者の気性も変わらす、様々なトラブルを巻き起こす。だがそれでも周囲の人と理解や援助もあり、三上は徐々にカタギとして歩もうとするが…
ヤクザとしての生き方と言うより、現代風に「反社」(反社会勢力)として扱われる不当な感じが見ていても痛々しい。
正直“こりゃカタギになるのは無理じゃね?”と思うぐらいの不当な扱いが様々にのしかかっていく。
自業自得と言ってしまえばそうなんだけど、社会がカタギの道を不本意に閉ざしている様にも感じられるんですよね。
この辺りが先日公開された「ヤクザと家族 The Family」と対を成している感じがして面白い。
ヤクザと家族 The Familyはヤクザとして生きたくとも生きられない悲哀を描いているが、すばらしき世界はヤクザを辞めようとしてもなかなか難しいと言うのを描いている。
描く側のスタンスが違うので一概に比較は出来ないが同時期に描かれたヤクザのその後を描いた作品なので対で観ると面白いです。
三上を助ける様々な人達もいろんな思いがあるが、皆言えるのが不器用で粗暴ながらも真っ直ぐな三上の人柄に惹かれて、様々にフォローしていく。
それをさまざまな名俳優たちが演じていて、安定感もバッチリ。
三上役の役所広司さんはもう言う事無し。
役所さんが名を連ねているだけで安心感が半端無いw
また決して良い人と言う訳でなく粗暴で短気。一見すると付き合いたくない人ではありますが、付き合ってみると実は良いヤツだったと言うのを絶妙で役所広司さんの振り幅の広さと懐の深さが光ります
取材を通して三上と心通わしていく津乃田役の仲野太賀さんも良い感じ。
万引き疑惑の疑いから同郷という事で心通わして行くスーパーの店長・松本役の六角精児さんがいるだけでなんか微笑ましくなるんですよねw
その他にも橋爪功さん、梶芽衣子さん、白竜さん、キムラ緑子さん、長澤まさみさん、安田成美さんと鉄壁の布陣。特に長澤まさみさんの使い方なんて贅沢ですわ。
原作は佐木隆三さんの長編小説で実在の人物をモデルに描かれているとの事ですが、佐木隆三さんは様々な事件・事故を扱った小説やノンフィクションを出されていますが、映画化になった作品も多く、「復讐するは我にあり」や「海燕ジョーの奇跡」「南へ走れ、海の道を!」と言った映画化された作品も多数。
事件・事故を取材した著書は多数で骨太な作品である事のバックボーンも頷けます。
気に入っていると言うか印象的なのは、兄弟分がいる九州から戻ってきて、母親の行方が一応決着した感じはアンニュイな感じではありますが、夕暮れのシーンがとても印象的。
また、介護仕事にパートで入った職場での年下の同僚のイジメを身震いしながらも爆発せずに社会に溶け込もうとする三上の苦悩が印象的。
あそこで“何やってんじゃー!”と制裁していたら、スカッとするけどそれではダメ。この作品の骨太さを表しているシーンです。
難点があるとすると、ラストの終わり方。
三上のアパートに帰るまでならとても爽やかで清々しく、三上の人柄が報われる感じなですが、ああなってしまうとちょっと個人的には?が付いてしまう。
これが悪い訳ではないが、こうでなければいけなかったのか?と言うとそうじゃないと思うんですよね。
なので、あの終わり方は切ない。切な過ぎる。
「ヤクザと家族 The Family」でも、綾野剛さん演じる賢治が非業の死を迎えましたが。反社と言う烙印が押されて、それでも懸命に立ち直ろうとする者に対しての結末はペニミズムと考えても悲しい。また津乃田の慟哭が悲し過ぎる。
往年のヤクザ映画の様なヒロイックさはさほどなく、今の時勢に合わせたヤクザ映画とも言えますが、この辺りはさすが佐木隆三さんの作品なだけあります。
役所広司の演技がとても光り、他の出演者の方々も熱量もすごい作品ですが、それでも最後だけはハッピーエンドで終わって欲しかったなぁw
観る価値は十分にある作品です。お勧めです。
西川組に結集した最高峰の役者たち
障害者の同僚の優しさに涙が溢れそうになり帰宅する三上(役所広司)に、元嫁から電話がかかってくるところで終われたら清々しかったなぁ。
それでも、彼の死を心から嘆いた人たちがいたことに、僅かながら救いがある。
西川監督は、人物を多面的に描き、社会を鋭い目で見つめながらも、どこか優しさがある。
仲野太賀がこの映画の良心だ。『ダークナイト・ライジング』のジョゼフ=ゴードン・レヴィットのように。
嫌味な人物に見えながら、父親の同郷人に対して過剰なまでの優しさを見せるスーパー店長の六角精児。これまたお役所仕事に見えながら、彼なりに助けてくれようとする真っ直ぐな職員の北村有起哉の二人が光ってたなぁ。
役所広司の凄さは計り知れない。毎回どの作品でもホームランをかっ飛ばす。寡黙な正義の人でありながら、キレると何をしでかすかわからない狂気が宿る。でも実在の人物のように見える。今1番好きな日本俳優。
サントラの民族やJAZZYな雰囲気も、独特でよかったな。
トーフォーの日にTOHOで この監督クセ者 前作より好きだ ゆれる...
トーフォーの日にTOHOで
この監督クセ者
前作より好きだ
ゆれると同じくらいよかった
役所広司上手いなぁ…
監督が興味ありそうなテーマがちりばめられている
田舎のヤクザ 介護業界 外国人労働者 東日本大震災
それぞれスピンアウトで1本の作品ができそうだ
宮城生まれのソープ嬢の話とか観たい
共演者も多彩
オラが好きな北村有起哉 いい役で嬉しい
梶芽衣子妙演
あと長澤まさみ ありがとうございます
いつの間にかこの監督と伍する女優になっていた
若いディレクターに放つ啖呵は本質
ある意味監督の分身かもしれない
タイトルは皮肉めいていながらストレート
主人公が感じたシャバの出来事はシャブより気持ちよかった
商店街を疾走する姿は素晴らしかった
映画終了後
暖かくなったし気分が良くて駅のベンチで昼間から缶ビール
ノーマスク これまたすばらしき世界だ 鳩が寄ってきた
果たして「すばらしき世界」とは
『ヤクザと家族』も鑑賞済みで、とても素晴らしかったので気になっていたこちらも鑑賞。
どちらもヤクザの世界から身を引き社会に馴染んで生きていこうとする男の話ですが、前者はとことん社会に受け入れられず、居場所を探してもがく姿がとても切なかったのですが、今作はやはりなかなか社会に馴染めないものの(そもそも短気でキレやすい主人公の性格もあり)、周りに助けてくれる人が次々と現れる。必死に自制心を働かせてやっと手に入れた「普通」の生活であったはずが、、
ラストを見終わって「すばらしき世界」というタイトルは皮肉だったのかと思うほど、今のこの世の中が本当に素晴らしいものなのか考えさせられる。
暴力や力で人を捩じ伏せようとすることはどんなに相手が間違っていてもダメはダメ。でも見て見ぬふりをしたり、相手に合わせて愛想笑いすることが本当に正しいのか。
出演者が脇役やチョイ役の方含めて全員上手い方ばかりなので入り込めたし、やっぱり役所広司さんはスゴい。あと大賀さんもとても良かったです。
もうすぐ終わりそうなので映画館で観れてよかった。
全うな人生とは
主人公の感じる「生きづらさ」に共感した
主人公が(やっと就職出来た福祉施設で、他の職員の下品な振る舞いに「作り笑い」を必死に作って同調しなければいけない)という場面は、観ていて苦しくて辛かった。
僕の場合はいつもそのような状況になると辛さに耐え切れず、職場を離れる事をいつも選択してしまう。
今の言い方をすればそんな自分の事を「HSP(敏感な人)」といって自己分析出来るのだが、分析できたからといって「行き辛い環境」から逃れ続ける事は難しいと個人的に感じている。
映画の中で「幼少期に親からの愛を十分に受けられなかった経験は、自分の人生を長期的に考えられず、刹那的な選択をしがちである」という愛着障害についても少し触れられていた。その点についても僕は主人公と同じく当てはまっている。
30代までの自分は「太く短く生きたい」と虚勢を張っていたものの、実のところ「細くてもいいから、力強く生き続けたい」というような人生に対する希望を抱けていなかっただけなのだろうと今ではそう考えている。
僕は主人公のように人生の大半を刑務所で過ごすことは嫌だけど、主人公のように(少なくて良いので)人から大切に思われる人間になりたいと感じた。
すばらしき映画!
役としてはあまり演じて来なかったようなイメージの役所広司のヤクザ役。
だからこそ所々で本人の真面目で誠実そうな人柄が役に生きている。
同時期に公開された元反社会的勢力構成員のカタギになる苦労を描いた作品と確実に比較されるでしょうが、個人的にはこちらの方が圧倒的に好きです。
向こうは前半で派手なヤクザ稼業を、後半から不幸のどん底に落ちていく姿を見せることでやたらと社会派を主張し、結果、一番の見所としているラスト10分で逆にリアリティーが崩壊していて自分はダメだった。
その点本作は、家族がいない、信頼出来る人は出来るが基本的には孤独、というベースがとにかく自然で、いつぞや週末深夜に観た元反社構成員が出所後苦労し結局ヤクザに戻って行くTVドキュメンタリーのリアルさそのものだった。
特に大きな幸せがある訳でもない、ある意味地味だけど我々と同じ平凡な日常生活で苦労するヤクザを自然に描きつつ、客の集中力も切らさず最後までジックリ見せた俳優陣と脚本の出来も含め西川監督に拍手!!
これ、好きだな
メンタル面に問題アリの家内に、朝っぱらから、5年位前の出来事を蒸し返され、涙と怒声と人格否定、いわゆる罵詈雑言の雨あられ。こういうときはひたすら堪えるしかないのですが、今日は僕のメンタルまでやられそうで、「これまずいぞ、何とかしないと」という時に思いついたのがこの映画鑑賞でした。結論から言えば大正解。また、妻と向き合いやり直そうという気になれました。いい映画でした。タイトルにある"すばらしい"は皮肉でも何でもなくて、プラスもマイナスもひっくるめた世の中のこと。"嵐が来る前に、刈り取られたコスモス"を心優しき人に手渡されるまで、僕は家族と共に、この生を謳歌しよう。
タイトルなし(ネタバレ)
(原作未読で映画単体の感想です)
■フジテレビ「ザ・ノンフィクション」への強烈な皮肉。
■役所と仲野が素晴らしい。長澤まさみは浮いている。浮いてる存在として描かれているのはわかるが、TVマンとしては綺麗すぎる(笑)
■母親に結局会えなかったのは良かった。現実はそんなもの。
■施設の出来事に対し自分の感情を押し殺した、その直後に命を失ってしまうという切なさ。
■最後のアパート、まさかチンピラ達に待ち伏せされて刺されるようなありがちな結末なのか…と嫌ーな予感がしたけど、違ってましたね
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