すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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今年の最高傑作ではないでしょうか
前評判が高かったこの映画を先日、ようやくAmazon Prime Videoで観て以降、毎日、映画の各場面の映像が頭から離れません。主演の役所広司さんをはじめとして見事な演技をみせる俳優陣もさることながら、この映画に込められた深いメッセージに心を揺さぶられる思いです。愛情に飢えたまま若いころから暴力に頼って生き、その結果、長い刑務所暮らしを経て出所してきた主人公にとって、この世の中は最初とても生きづらい。巷に垣間見る悪や不条理に対してキレてしまい、刑務所のほうが生きやすかったとも思ってしまう。しかし、次第に彼の周りには彼の人生を理解し、罪を再び起こさないよう励まし続け、再生を助ける人々が増えていく。この世界はたとえ不条理な出来事や孤独が襲っても決して絶望する必要はない、生きていれば生きていてよかったと思えることも必ずある、普段他人と思える人が実はつながっていて、互いに支えあいながら生きている、この世界はすばらしい世界で人生捨てたもんじゃない、ということが映画に込められたメッセージではないかと思いました。今後、長い間、日本人の記憶に残る名作ではないかと個人的には思います。
誰かの大切な人
役所広司の見本市
三上を演じる役所広司が凄い。圧倒的だ。なんなんだこの人は。
暴力に明け暮れ、暴力を悪びれず生きてきた男が何故こんなにも愛おしいのか。時代に取り残されたヤクザが生き悩む姿に、何故こんなにも胸を打たれてしまうのか。何度も後退しながらも少しずつ前に進む彼の姿に、子どもの成長を見守るかのような期待と不安が入り混じる。手に汗を握る。
そして彼は嘘をつく。その姿を観て、歯を食いしばり、爪を立て拳を握った。弱者を見放す嘘と弱者を守る暴力。この世は一体どうなってしまったんだろう。皆が思うのではないだろうか、この世の中は「すばらしき世界」と言えるのかと。
英題の「UNDER THE OPEN SKY」はシャバとも読める。13年間の刑務所暮らしを終えて、三上は広い空の下で小さな一歩を踏み出した。それは十分にすばらしい世界なのではないか。せめてそう思いたいのだ。
それにしても圧巻なのは役所広司の死の演技。孤狼の血と言い、あの人はもしかして自由自在に魂を取り出せるのではないだろうか?恐ろしさを感じるほどの演技に感服。これぞ俳優。
すばらしき役所広司
かつてヤクザの扉を叩いた男が、希望の光と扉を開く
西川美和が、またやった!
役所広司が、またやった!
この2人の初タッグ! この2人のタッグでつまらない訳がない!
タイトルに掛けて言うなら、“すばらしき傑作”!
今年は近年稀に見るヤクザ映画の当たり年。
『ヤクザと家族』はヤクザの世界に入った男の一代記。
『孤狼の血 LEVEL2』は警察vsヤクザの直球。
本作は視点を変えて。
ノンフィクション小説を基に、殺人を犯した元ヤクザの男が社会復帰する様を描く。
三上正夫。
福岡で産まれ、幼い頃に芸者の母と生き別れ、少年の頃から早くも粗暴の面。
若い頃からヤクザの扉を叩き、以来その世界に。前科10犯。人生の大半はムショの中。
とある殺人事件の13年の刑期を終え、今度こそ気質になろうと決意するが…。
まずは、三上というキャラ像。
短気ですぐカッとなる。大声上げて怒鳴るモンスター的な面も。それ故トラブルもしばしば。
苦しめられている弱者を見過ごせない。実直過ぎる許せない。それ故トラブルもしばしば。
ムショで技能を学び、ミシンや手芸の才能はなかなかのもの。
こういうのを見ると、元極道もんであっても決して極悪人じゃないと感じる。
ちょっとユニークだったのは、出生地は違うが、芸者の母、ヤクザもん、放浪癖、短気、人間味がある…何処か寅さんに通じるものを感じた。
出所して早々、高血圧で倒れる。
仕事探しに苦労。免許の再取得にこれまた苦労。
かつてヤクザの世界では一匹狼として幅を利かせていたが、ひと度気質の社会に出れば…。
“すばらしき世界”どころか、“くるしき世界”。
三上が体験するこの社会。
くどくど言うまでもない。役所広司が名演。喜怒哀楽を体現。
出所した三上は社会復帰と共に、母親との再会を願う。
そんな三上の事を記した“身分帳”に興味を持ったTVプロデューサーの吉澤から三上を取材するよう半ば強制的に押し付けられたディレクターの津乃田。
その母親との再会探しの手伝いは口実で、感動ドキュメンタリー製作。
特に吉澤はTHE TVマン…いや、ウーマン。スクープ優先。
本来なら“理解者”である立場の津乃田。
しかし序盤は第三者/客観的な目線。
前科者の元ヤクザに対し、「罪の意識は無かったんですか?」と直球過ぎる質問。我々の代弁者かもしれない。
あるシーンで改めて思う三上への畏怖。
対立、言い争い…。
が、ある事がまた2人の親交を深め、津乃田も本当に三上の理解者となる。
活躍著しい仲野太賀が好助演。
一度社会のレールを外れた者が再び戻ろうと必死に努力する。
いい話ではあるが…
社会はそう優しくはない。…我々も。
三上は元ヤクザの上に前科10犯の殺人犯。
そりゃあ誰だって偏見の目で見てしまう。身分帳を見た津乃田の最初のリアクションが正直。
厳しい言い方かもしれないが、そう生きてきた自業自得。
しかし、身元引受人の弁護士先生が言っていた。社会が彼らに救いの手を差し伸べないと、救われず網の目から落ちた者たちは再び元居た場所に戻ってしまう。それもまた社会の無責任、不条理。
一時、三上は何をやってもダメな時があった。
むしゃくしゃむしゃくしゃ、虫の居所が悪く、今にも爆発しそう…。
そして彼はかつての“兄弟”の元へ。(白竜、僅かな出番だけどさすがの役所!)
こんな“くるしき世界”とは違う、やはり自分が生きてきた世界。
皆々が喜んで迎え入れてくれたが、実はこの組も苦境。
ヤクザが生きていくには辛すぎる今の時代。
兄弟にピンチが…。
助太刀に行こうとするが、奥さんに止められる。(キムラ緑子も出番僅かだけど、印象に残る)
そう。苦しいが、ここが踏ん張り所。
再びヤクザに戻るか、くるしき気質の世界で生きるか。
そして三上が選んだのは…。
ヤクザの殺人犯の更正話を美談にした偽善と思う人もいるだろう。
挫けるか否かは、本人の心の強さ弱さ。
周りのサポートもあって。
そんな姿と関係に、胸打つ。
オリジナル脚本もしくは自身の小説を映画化してきた西川美和にとって、初めて他人の小説を映画化し話題に。
徹底的に取材したという社会システム。リアルな人物&心理描写。一見シリアスな中にもユーモア…。
巧みな手腕はいつもながら天晴れなもので、本当に2時間があっという間だった。
監督が作品で一貫して描く、社会に適応出来ない者。疎外者。弾かれ者。
そんな彼らへの優しい眼差し。
…だが、ただの甘い話だけには終わらないのが現実的。
母親との再会はならず。が、失われた過去の思い出に触れる事に出来た。
紆余曲折あって、堅実に晴れて仕事を見つけた三上。
介護施設の助手。
生き甲斐を見出だし始めるが…、施設内で知能遅れのヘルパーへのいじめを目撃してしまう。
そのヘルパーと交流もあり、助けに行ってこそ三上。
が、ここでまた揉め事を起こしたら…。
どうしても“注意”だけが出来ないのが三上という男。
“逃げるが勝ち”という言葉があるが…、またまた苦しいが、ここが堪え所。
笑顔で語り掛けて来たそのヘルパー。
彼への三上の眼差しが、自分を重ねたのか何処か悲しい。
偏見、いじめ、肩身が狭く生きづらい。
かなしき世界。
くるしき世界。
しかし、サポート者、理解者、最初は誤解あっても分かり合えば応援してくれる人たちが必ず居る。弁護士先生の橋爪功とその奥さん・梶芽衣子、万引き疑いをきっかけに親しくなったスーパーの店長・六角精児、ケースワーカーの北村有起哉らとの交流。元奥さん・安田成美も見捨てておらず、終盤に掛けてきた電話が心温まる。
やさしき世界。
やっと辿り着いたスタート地点。その矢先…。
序盤からの伏線とは言え、悲しいラスト…。
が、
人生の大半をムショで過ごした男。しかも、元ヤクザの殺人犯。
人生の最期の僅か一時でも、社会の酸いも甘いも、己の不甲斐なさ、やればまだまだ出来る、周りの優しさに触れて、悲しいが、誰にも開かれもたらされる扉と、希望の光の空を見た。
すばらしき世界。
皆に優しい世界であってほしい
殺人の前科で出所したばかりの三上。
鑑賞前は、娑婆の世界を素晴らしいと表現したのかと想像してたのだが、西川監督やはり皮肉が効いてた。笑
はっとさせられた。介護施設でのいやーなあのシーン。誰もが一度は似たような場面に遭遇して三上のように処せざるをえなかったことがあるのではないだろうか。ああいった差別やからかいや偏見は娑婆の世界の方が醜悪なかたちで蔓延っている。
どっちの方が人間らしくて優しい世界なんだと問いただされるような重くて辛いシーンだった。
規格外のものたち、レールを逸脱するものたち、出る杭たちを認められない不寛容な社会構造を、私たちは変えていかなくてはと切に思った。
最近のヤクザ関連のドキュメンタリーなどをみていても、
ヤクザへの締め付けを極端に急激に厳しくしたことでの歪みが顕著だと感じる。
役立たずだと、育ちが悪いからと、親がいないからと、頭が悪いからと、様々な理由で排除されてきて、ヤクザの世界でしか生きられなかった彼らの更なる逃げ場は?ヤクザをやめろと言われてもその後のセカンドライフは?八方塞がりになってしまうのがやはり今の現状なのだと思う。
本作みたいに周囲の親切な人に恵まれてとんとん拍子に行くことはほぼないだろうなと素人目にもわかる。
ヤクザの世界の厳しさや恐ろしさはあまり描かれていなかったが、別の作品で十分表現されている。
三上が最期に観たものが、あの可愛らしい素敵な青年が丹念に育てた秋桜であることが、本当に救いだった。生きづらかっただろう世界を憎むことなく、生を全うした姿は悲しくも希望とあたたかさを残してくれたラストであった。
そして三上を囲む優しい人々。
結果、すばらしい世界なのかもしれない、悲観しきることはない、と最後には思えるふんわり優しいラスト。ただし落涙は必須。
社会派ドラマなんだけどコミカルなシーンも多く、重すぎない仕上がりはさすが西川監督。
役所広司の演技が素晴らしすぎて。三上の魅力も怖さもさみしさも憤りも、ここまで表現できるものかと。心震えました。
仲野大賀もよかった。
絶対すばらしき世界などならないが願望を混めて3点
役所広司は相変わらず演技が上手く、
脇を固める俳優陣も素晴らしい演技を披露する
そこまで涙を頂戴するベタな展開ではなく、
ギリ現実にありそうな物語が進行していくが、
どうしても山場がないので個人的にはインパクトに欠けて
鑑賞者を圧倒する何かが足りない
老いた刑務所あがりの元ヤクザが
生活保護を受けながらも世間と関わり合い
知り合う人々と交流を繋ぎながらも
途中で元ヤクザの血が騒ぐというのが
大きな流れだが、
だからどうしたの? という感じだ
なぜなら、この映画を絶賛する人に問いたいが、
あなたは刑期を終えた人殺しと親密に付き合う事は出来るか?
少しの意見食い違いで激高する男と
俺は腹を割って定期的に付き合うのは絶対に無理だ
で、そのような現実・事実がありながらも
なぜかこの映画に登場する一般人は皆、
妙に親切で温かい
そして半グレや現役ヤクザや半端者には
やけに現実の残酷さを突き付ける
タイトル・すばらしき世界とはまるで
こんな悪者を排除した世界こそが理想のように
語っているように思えてならないが、
でも違うだろ
そんなヤクザがいるからこそ、こんな作品が
誕生したのではないのか?
ラストシーンも含めて、どうも小市民が求める
安心安全な世界を作ろう作ろうとする気持ちが
強すぎる
腑に落ちないシーンはいくつもあり、例えば
生活保護を受給するのは良いが
だからといって今時あんなボロアパートに住む
保護者はまずいない
家賃補助があるのだからいくら東京でも
風呂付のもっと良い物件がいくらでもある
それをしないのは橋爪演じる弁護士の怠慢
免許証失効で役所広司が警察署?の受付で文句を言う
シーンなどはその典型で、
長年ムショぐらしの男がこんな常識を知らない訳がない
なぜなら囚人同士の会話で免許失効は鉄板中の鉄板だからだ
白竜演じるヤクザが立ち上がるまで片足切断に
役所が気付かないのも強引過ぎて辟易
そして極め付けは生活保護のケースワーカーが
役所アパートに何度も足を運ぶ点で、
現実的には精々半年に一度ぐらいで
それも元ヤクザのムショ上がりに進んで訪問するなど有り得ない
これらを無視して絶賛するほど素晴らしい映画とは言えず
ただただ役所広司が頑張る映画で完成している
最後に俺なら
カップラーメンではなくマルちゃん正麺を叩きつける
良い行いとは何か、何を幸せというか
いろいろと考えさせられた作品というのが一番の感想です。
正しいことをする者が罰せられることがあり、逆に悪い行いをする者が罰せられない場合もある。
そのような不条理な世界がテーマである。
この作品のエンドは好みが別れると思うが、私は好きです。
ネタバレになっちゃうと思いますが、
電波的な彼女というラノベの幸福ゲームという話に出てくる某人物と同じエンドを主人公は迎えます。
承認を求め続けた男の物語
テーマは承認されることの大切さ。
* 三上(役所広司)のストーリー
主人公の三上は親からの承認を得られず、放浪した末、承認を与えてくれるヤクザの世界に居場所を見つける。
暴力で「敵」を叩くことで褒めてもらえるんだという世界観は、刑務所で長きを過ごした後でも上書きできなかった。
しかし、出てきたシャバでチンピラを撃退して、得意げに振り返ってみても、褒めてくれるはずの人はそこにはいなかった。
そして福岡で、もう暴力で褒めてもらえる世界ではなくなったのだということを悟る。
そんな彼は、これまでと違うやり方で承認してくれようとする人々によって変わり始める。
* 吉澤(長澤まさみ)のストーリー
三上を承認しない悪役として描かれていたTVプロデューサーの吉澤は三上の対立軸ではない。
彼女もまたマスコミというヤクザ界で承認を得るために、平凡な感覚では承認を得にくいような言動をとるようになってしまったという構造は、三上と同じ。
彼女に石を投げる者は、三上に石を投げる者でもあるだろう。
* 津乃田(仲野太賀)のストーリー
三上の部下?の津乃田についてはもう少し分かりやすいキャラ設定があってもよかったかも。
衝動的に危害を加えてくるかもしれない三上に対する愛の強さの出所は少々分かりづらいと感じた。
お風呂でのシーンで彼とその父との関係が暗示されていたのがヒントかも。
不適合者としての自分を三上に代弁させて執筆に昇華させたかったのか、あるいは吉澤の言葉に「俺は彼を救って文も書いて見返す!」となったのか。
* 以下ネタバレ
三上はシャバに出て、たくさんの困難に出会うものの周囲は敵ばかりではないことを知った。
歌のすばらしさ、花や空の美しさを知った。
元気の出るクスリがなくても、(それが親でなくても)自分を応援してくれる人のために頑張れることを知った。
最後、チンピラが仕返しに来て悲劇的なことになるのではないか…といった懸念を観客は持っただろう。
でも、そうはならなかった。
もちろんもっとよい事後ストーリーはあり得ただろうけれど、すばらしき世界の片りんを見つけたことを素直によかった、と思った。
*
今の刑務所はあの頃と違ってもう少し出所後の社会適応を視野にいれて運営されていると知って少し安心。
でも、あんな風に、お母さんみたいに見送ってくれたらまた戻って来たいって思わせてしまうかもね。
素晴らしい。役所広司と西川美和
もがいて生きる
人は良いがカッとし易い元受刑者三上を演じた役所広司さん、組長の妻を演じたキムラ緑子さん。お二人のその役柄になりきった演技が秀逸。役所広司さんが元受刑者、キムラ緑子さんが組長の妻にしか見えませんでした👀
元テレビディレクターの津乃田を演じた仲野太賀さん。三上と本気で関わり、気にかける姿に引き込まれ、背中越しに三上に話しかけるシーン、ラストシーンで涙した。
他者の声に耳を傾け始めてからの三上の人懐っこい笑顔が印象的で、周囲の人々の真の優しさにも救われる作品でした。
映画館での鑑賞
完璧で素晴らしい作品
自由を求めるのは、人間だけでなく動物の本能だ。散々自由にやってきた代償として刑務所という不自由があり、刑期を終えてシャバに出てきたら自由になる代わりに我慢という不自由がついて回る。時に正義感をも我慢しなければ社会とうまくやれない。自由な発言をすればやがて社会で居場所がなくなっていく。やくざをしてきた人がいかに生きづらい社会か、テーマ自体はやくざと家族ととてもよく似ていて、どちらも非常にリアリティがあって素晴らしい作品だ。そもそも十人十色である人間という存在をヤクザというラベルで一括りにし、社会から排除するのが本当の正義なのか。素晴らしき世界を生きているテイをとっている私たちもまた窮屈さを感じながら自由で本能的な正夫のような人間に憧れている部分もある事も遥のセリフを通して残る。登場人物の良い面、悪い面を見せたり、設定やストーリーに過剰にショーアップされた要素が少ないことでドキュメンタリーを見ている様な多面性のある世界を描いている点が好みだった。極め付けに映像作品として、展開のスピード感や音楽、美しい映像が挿入されるタイミングなども心地よくて久々に完璧の作品に出会えた。
タイトルなし
役所広司、いつにもましての熱演。
脇を固めるスーパー店長役の六角精児、ドキュメンタリーディレクター役の仲野太賀が素晴らしい。
生きにくい社会に直情を抑え込み溶け込もうとしたその時に、一面だけでは見えない物事の複雑さに直面する。
そしてこれからというときに逝ってしまう。
見応え十分。
残酷な自分に気がつく
人は純粋すぎると正論を言いすぎると、社会では上手くやっていけない。私達は自分の中にある正義と折り合いをつけながら社会の中で生きていき、いつしかそれは日常となります。
いじめはダメというけれど「仕事ができないくせに俺と給与が同じである」という理由のいじめであれば、なんとなく周りも許してしまう。ムショ帰りや障害者は仕事があるだけマシと思ってしまう。三上の様な生産性のない人間は感動コンテンツとして消費することがいいことだとされてしまう。
本作を鑑賞していて、己の中で気がつかない間に醸成されていた『生産性至上主義』の残酷さに改めて気づかされてしまいました。生産性の無い人はとことん排除する社会。最も象徴的なのは、三上ですらも生活保護を受給したがらないシーンにありました。行政のネガティブキャンペーンが隅々まで行き渡ってますね(嫌味です)。
でもこの構図は恐らく変わらないだろうし、このままの社会だと今後もっと加速するのではないかと思います。
三上の身許引受人やスーパーの店長をはじめとする人情に厚くお節介を焼く人間は、世の中では極少数です。それに、政府が犯罪者を本質的に自立させようと考えれば、普通はIT技術とかを学ばせるのではないでしょうか。今時あの技術を政府が学ばせているのも、利権絡みか、単に受刑者を馬鹿にしているだけかと勘ぐってしまいます。そんな世の中でこのタイトルは、なかなかパンチが効いていると思いました。
コメディ&サスペンス&・・・
元喧嘩屋のやくざが、カタギの世界になじもうともがく話。特に大きな事件が起こるわけでもない。
ただ、原始的な暮らしをしていた種族が、初めて文明社会に足を踏み入れたギャップで笑わせるコメディ要素と、主人公三上(役所広司さん)が直情的になってどんなことをしでかすかわからないサスペンス要素が混じっていて、飽きさせることなくストーリーが展開していく。
で、私たちはカタギの世界に馴染めない三上を笑いつつハラハラしながら見守るが、実はおかしいのは三上ではなく、この世界ではないか、三上は人として当然のことをしていて私たちのこの世界のほうが歪んでいるではないかと思わせてくる。
そして、津乃田(仲野太賀さん)の成長物語でもあり、風呂場で三上の背中を流すシーンは、あえて三上の顔を入れることなく撮られていて、痺れる切り取り方だった。
自分は100%「歪んだ世界」の住人であることが恥ずかしいと思いつつ、仕方ないと思いつつ・・。
西川美和監督の新たな傑作であることは間違いない。”ヤクザ映画”だからと躊躇うようなら、そんなことはないので是非観てほしい。
ヤクザと家族の別角度からの作品
考えさせられる。余計に答えが出ない。 でも思い込みはほぐされた気がする
「人間」と「社会」について考えさせられる重いテーマ。
考えさせられる。余計に答えが出ない。
でも思い込みはほぐされた気がする
色んな考えの人が出てくる。
でも誰も正解じゃない。誰もが正解と間違えを持っている。
いい映画でした。
作品全体の空気は不思議とドンヨリはしてない。
映画でもヤクザ/チンピラの口調って苦手なんですが、この作品は憤りは感じなかった
イキってる、暴力が仕方がないモノとして描かれてないからだろうか。
三上は親しみがある。でも彼を良しとはしたくない。
短気なとこあるけどいい人……で済ませては駄目なきがする。だからこそ深い。
役所広司は神がかり的な名演。
三上を応援したくもなるし、絶対に認めたくないとも思う。
あと六角精児さんのあるシーンでの笑顔が1番きた。
表情一つで号泣させられた。すごいな、この人。
ギターを弾く場面でピンク・フロイドのTシャツ着てるのもなんかよかった。
三浦透子もさりげなく出演。この人は主演級でも光るけど3番手ぐらいの役のときがすごい。
特徴ある顔なのに”あ、いたの?”って潜み方。まったく目立たない。クレジットで気づく。でもものすごく意味がある存在。
樹木希林に近いレベルでスクリーンの中で自然に生きてると思う。
ラストシーンも面白い。
あのタイミングで、か。空の色との組み合わせといいすごい。
直前のシーンを受け取るのか。それとも皮肉だと受け取るのか。
”私達ってもっといい加減に生きてるのよ”って言葉がすごく印象に残ってる。
すべてが良い方向に動いていく象徴のような聞こえる言葉だけど、最後まで見ると必ずしもポジティブには受け取れないのがすごい。
なんだか最後まで絶望を覚えるブラック・クランズマンを思い出した。
物語と演技がいい。そのうえでカメラワークも素晴らしい。
飛行機のシーンはうまいなー、と。雰囲気と気づきが流れるようにやってくるのは鳥肌モノだった。
や、ほんと良作です。
社会(制度)なんてすべて悪か?
人間は本質的には善か?
社会も救いはあるのか?
人間が1番の悪なのか?
素晴らしい役者と見せ方で、とても考えさせられる物語を。
そしてシンプルにコンテンツとしても惹き込まれる。
いい映画でした。
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