「実際にありそうな話」トラフィッカー 運び屋の女 Teiranさんの映画レビュー(感想・評価)
実際にありそうな話
アイスランドとデンマークとスウェーデンの合作
この映画を一言でいうと
「麻薬密売に失敗する話」
邦題は内容と合っていません
運び屋の女ソフィアは、特に自分から行動を起こす訳ではなく
麻薬を運ぶ為に移動したり、
大量の麻薬タブレットを飲み込んで気持ちが悪くなったり、
そのせいでアトリから逃げようとしただけで、
密輸に関わる兄弟の話の方がメイン
刑務所帰りのアトリはスキンヘッドで筋肉質、
見た目暴力的に見えるけれど
実際は、お金の為に麻薬の運び屋をやっているシングルマザーの
ソフィアを気遣ったり
悪になりきれない情があったり、状況判断力にやや欠けていて
それゆえ逮捕されるような「ヘマ」をやらかしてしまう
如何にもエリートで頭のきれそうな弁護士の兄のエリックの方が
暴力に躊躇いがなく、人への思いやりに欠けていて、
平然と殺人を犯す、死人に自分の罪をなすりつけて難を逃れる
この対比が、ありがちなのに説得力を持っているのは
役者が役どころをよく理解していて、演技を演技と感じさせない
リアリティが感じられるからでしょう
とても地味な話なのに展開が気になって目が離せない
言葉少なに多くを語るスタイルがいい
それぞれの登場人物の心情がよく伝わってくる中で
麻薬捜査官レナがひとりで危険を冒すのはちょっと
無理があると感じました
結末ありきのような
レナという人物が描き切れていないのか、私が何か
見過ごしたか
映画全体に漂っている、どうしようもない重苦しさや
緊張感や不快感やハラハラ感・・・
麻薬の密売の現場で、「失敗」する場合は結構こんな感じ
なんだろうな・・・
凡ミスや情や思惑が絡んだり・・・とても人間臭い
そして、実は、こういう事が実際に少なからずあるのではと思った
麻薬絡みの映画って、大体組織的に手慣れた感じで
話が展開することが多いじゃないですか、
そこに外部から妨害が入るパターンで
そういう意味では、視点に目新しさを感じた
登場人物を絞り込んだのも良かった
負の感情や場面が多いのでお薦めとは言いにくいのですが、
見て損したとは思わない
二度見ようとは思わないけど一度は観てもいい
映画ではないかと思いました