ナイル殺人事件のレビュー・感想・評価
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ポアロの髭…殺人クルーズに愛はあるか?
ポアロ・シリーズ(ケネス・ブラナー版)第2作。
Disney+で鑑賞(吹替)。
原作は未読、旧作映画は鑑賞済みです。
愛憎渦巻くナイル川遊覧船で発生した美しき富豪夫人銃殺事件。全員にアリバイがあるものの、犯人は外部から来たとは考えられず、前作「オリエント急行~」同様、限られた空間(密室と化した船内)でポアロは自慢の灰色の脳細胞を駆使し、事件の解明に挑むが、事態は混迷を極め…
ピーター・ユスティノフ主演で映画化されたバージョンとは違い、ポアロの人生が掘り下げられて、彼の過去や髭に隠された秘密が描かれるのがとても興味深かったです。
愛と欲が複雑に絡み合って引き起こされた今回の事件を通して、彼自身が抱える悲しい過去とも向き合うことになると云う展開が斬新で、単なる推理機械では無い、人間としてのポアロの魅力を見事に引き出した脚本が秀逸でした。
ポアロのドラマは一応の終着となりましたが、第3作が製作されると云うことなので、どのような事件、どのような人間ドラマが待ち受けているのか、今からとても楽しみです。
しゃべりすぎ
この人が監督.主演のハムレットは良い映画ではあったけれど、最初から最後までのべつまくなしにしゃべりまくり、非常に疲れた。
ポワロも同じようにしゃべりまくるのは、ちょっと違うと思う。米で大ヒットしたので又
同じようなものを作るのか?誰も何も言わないのかな。どんなに酷くてもヒットした映画が良い映画という風潮は、どうにかならないのかな。
ケネス・ブラナーかっこいいです!
そして、ガル・ガドット素敵です!
ポワロの髭の始まりのエピソードが切なかったなぁ。
アガサ・クリスティのからくりは本当によく出来ていて、実に面白いです。
事件が起きるまで長いので、焦らずにゆったりとナイルの旅を楽しむように観ることをおすすめします。
映像美が素晴らしい!!
たまたま原作を読んだすぐ後だったので楽しく見ることができた
とにかくゴージャス! 映像の美しさ、広がりは目を見張るほど
特にカルナック号の外観、デザインは素晴らしい
今回、登場人物の数を凄く絞って少なくし、関係性も変えて
更には人種も変えたのは新しさの強調だったようで
それも又面白いと感じた
特にサロメ・オッタボーンをブルース歌手として登場させたところなど
興味深い演出 声は吹き替えのようだったが、、
キャスティングも新鮮味があって面白かった
ただポアロの昔の恋の話を冒頭に入れたのは蛇足の感じがした
ケネス・ブラナーのポアロは小説のイメージとは違うけど
それはそれで別の味があって良かっただけに、入れすぎないほうがよかった
長い
この映画自体にお金がかかっているのはわかる。
流石に景色も美しく映像美はピカイチ。
ただ原作と比べると大幅な変更点があり、本国デビッドスーシェ版にはあった犯人の大元の回想シーンもカット。初めから最後まで原作に忠実な演出が足りなくなっていて、2時間超ある長さからするとちょっと…。
キャラクタそれぞれの事情や想いも長さの割に掘り下げられてない気がしてデビッドスーシェ版の方が映像美では負けるものの初めから最後まで原作に忠実、ドラマティックだと感じました。
異国情緒を味わう
正直な感想は・・・ポワロ、犠牲者が増える前に事件解決してほしかった・・・(涙)
とはいえ、(たとえセットやCGだと分かっても)ピラミッドやスフィンクス、アブ・シンベル宮殿など、雄大なエジプトの景色を大画面で見られたことに感動した。
なかなか旅行にも行けないこの鬱屈した情勢の中、まるで海外旅行に行ったような気分を味わえて、それだけでも見た価値があったと思う。
(2022年3月鑑賞)
愛に死す 愛に報いる
シェイクスピア作品が定番だったケネス・ブラナーが、新たな金脈を掘り当てたのが、前作『オリエント急行殺人事件』。
ミステリーの女王、アガサ・クリスティーが生んだ名探偵、エルキュール・ポアロを再演。
『オリエント急行殺人事件』は旧作版も見て犯人やオチも知っていたが、今回の『ナイル殺人事件』は旧作版は見てないような…。犯人やオチを知らなかった。見た事あるのは別の“事件”だったかも…。
なので、シンプルにこの“ミステリー・クルーズ”に乗船。
そう。前作が列車なら、今回は船。(船の中で起きる事件…今ならあの事故で不謹慎かもしれないが)
大富豪の娘リネットは結婚したばかりの夫サイモンとハネムーン。
豪華客船でエジプトのナイル川を行く。友人、知人、親族…多くの招待客を乗せて。
友人ブーク(『オリエント急行殺人事件』から引き続き登場)とばったり出会い、ポアロも招かれる。
美しいエジプトを巡りながらの贅沢クルーズは申し分ない。
気分は最高だが、船の中は…。
金も美貌も兼ね備えている“ワンダーウーマン”な新婦に対し、新郎は文無し。逆玉。
そんな結婚に冷ややかな目も…。
招待客の中には、新婦一族に苦水を飲まされ、人生をメチャクチャにされた者も…。
さらに、新婦新郎それぞれの元婚約者の姿も…。
幸せと祝福に見えて、実際は憎しみ、恨み、ギスギスした人間模様。
何か起こらない訳がない。
発狂した新郎の元婚約者ジャッキーが、サイモンに小銃で発砲。サイモンは足に怪我を負う。
この元恋人同士であった男女のいざこざは、これから始まる“事件”の幕開けに過ぎなかった。
翌朝、新婦リネットが小銃で撃たれ殺された姿で発見される。
それを皮切りに、第2、第3の殺人が…。
ポアロは“灰色の脳細胞”を駆使して、捜査を開始するが…。
舞台は川を行く船の中。
言わずもがな、犯人は乗客の中にいる…!
凶器は小銃。所持していたジャッキーに疑いが掛かるが、彼女は犯行時刻、アリバイが。足を負傷したサイモンも然り。
聞き込みを始めると、次から次へと飛び出すリネットと彼女の一族への憎悪。つまりは、乗客ほぼ全員に動機がある。
そんな中発生した第2の殺人。被害者は、リネットのメイド。彼女は、犯人の姿を目撃していた…?
そう証言したのが、第3の殺人の被害者。
その被害者はポアロにとってまさかの…。しかも、ポアロの目の前で…!
愛憎と哀しみ乗せたこの謎を、ポアロは解決出来るか…?
前半1時間はじっくりと、容疑者たちと怪しい動機やエピソードを見せる。
容疑者は…
新郎サイモン、その元婚約者、ポアロの友人、その母で画家、ブルース歌手、その姪でマネージャー、リネットの元婚約者の医師、リネットのいとこで財産管理人、リネットの後見人、その友人で看護師…。
消えた凶器。無くなった幾つかの持ち物。勿論それらは事件に関わり…。
新婦新郎の愛憎関係だけではなく、ポアロの友人ブークとブルース歌手の姪の恋愛関係なども同時進行。
ミステリーのキーの一つは、“愛”。
人は愛の為なら…。
後半は一気に謎解き。
犯人やオチを知らなかったので、純粋に犯人捜しを楽しんだ。
ズバリその犯人は…、新郎サイモン。
何を言ってるんだ、ミスター・ポアロ。足を負傷した僕がどうやって…?
確かにサイモンには一見完璧なアリバイや、第3の殺人の時追うポアロから走って逃げる姿が目撃されている。
サイモンには無理。第2、第3の殺人は。サイモンはリネット殺しの犯人。
共犯者がいる。その共犯者は…、ジャッキー。
彼女にも完璧なアリバイあるが、それこそ犯人二人による巧妙なトリック。
ジャッキーがサイモンに発砲した小銃は空砲。サイモンは怪我を偽造。
騒ぎで一人になった時、サイモンはリネットを弾を入れた小銃で殺害。その後、自分で小銃を撃って足を負傷。
二人の犯行計画を知ったリネットのメイドを、ジャッキーが口封じで殺害。さらにその場を目撃したある人物も彼女が…。
彼女こそ黒幕と言っていい。
リネットとサイモンの結婚に嫉妬し、船にまで乗り込む目障りな元婚約者。
が、本当は、ジャッキーとサイモンはまだ恋人同士。愛し合っている。
サイモンがリネットと結婚し、財産を手に入れて、彼女を殺害。
その後人知れず落ち合い、金も愛も私たちのもの。
自分勝手…と言うより“二人勝手”な動機と犯行だが、これも愛故。
歪んだ愛の形ではあるが、最期心中する二人の姿は哀しい。
人は愛の為なら…。
明かされていくトリックや犯人は、さすが“アガサ・ミステリー”。面白味あった。
コロナ禍云々だからではなく、おそらく私は人生の中で行きたくとも行けないだろう。
だからこそ、エジプト旅行の気分だけでも味わえる。
70mmフィルムで撮影されたエジプトの美しい風景。
ゴージャスな船内、華麗なファッション。
これらも醍醐味の一つ。
正直キャストは前作の方が豪華。旧作版同様のオールスター・ムービーであった。
それでもこちらも、ガル・ギャドット、アーミー・ハマー、アネット・ベニングらビッグネーム。知名度はまだ低いかもしれないが、中でもジャッキー役エマ・マッキーが光っていた。
彼らが織り成す嫉妬、怒り、哀しみ、愛の人間関係図は、前作より色濃かったと思う。
2作目ともなると役や演技に余裕が出てきたばかりではなく、よりポアロ像が語られる。
開幕の第一次大戦時のエピソード。顔に深い傷を負い、奇抜な口髭を生やしたのはそれを隠す為。
当時恋人がおり、その悲恋…。
この『ナイル殺人事件』は、ポアロの運命を変えたとも言われているよう。確かに彼の心に深い悲しみの傷を遺した悲劇が…。
第3の殺人。友人ブークの死。
乗船前のブークとのばったり出くわしは、偶然ではない。実は、ある人からの依頼。ポアロは友人の幸せの為に。
が、友人は事件に巻き込まれ…。
ある時犯人の姿を目撃した友人から犯人を聞き出そうと追い詰めてしまったばかりではなく、死なせてしまった。
何が名探偵だ…? 友も救えず。
ポアロにとって苦く、痛々しい悲しい事件。
だからこそ、解決する。友の無念を晴らす為に。
友情も愛と言うならば、本作のポアロもそうだろう。
人は愛の為なら…。
ミステリーや旅気分の醍醐味は勿論、積み重ね始めたブラナー版ポアロ。
灰色の脳細胞、ユーモア、滲ませる渋みや悲しみ…。
また次なる事件と名推理も見たい。
「人々は愛のために殺しを犯す」 「あなたは分かってない。 人は愛のために何でもする」
あゝ、愛…いつくもの愛(と事件)の秘密が絡み合う本作は、例えば前作ほど豪華キャスト的側面は押し出されていないかもしれないけど、間違いなく前作より面白くパワーアップしていた。愛は盲目とはよく言うけれど、動機含め今日まで通ずる愛の力あるいは怖さがある意味で普遍的(ヒモ?尽くす体質?)。
題材テーマ的にもエルキュール・ポアロの昔パートから始まるのも納得、あの特徴的なヒゲの謎。度重なる映像化であまりに有名な真相の前作が一種答え合わせだったのもあるかもしれないけど、それに対して今回は異なり純粋にその場に乗り合わせた一観客・乗客としてすこぶる楽しめたし、昔ながらのミステリーのロマンチックな雰囲気に充分酔いしれられた。ロン・ハワード監督にとってのラングドン教授シリーズ並みに、いや、もっと映画人ケネス・ブラナーの手によって続けていってほしいシリーズだ。
多少エンジンがかかり出すまで時間がかかっても豪華客船に乗り出せばフルスロットル。乗り合わせる乗客 = 容疑者たちのキャラ設定など少し本シリーズ映画的前作『オリエント急行』とも重なったけど、起こる事件数やその幅含め前作からの振り幅で余計に楽しめる。にしても後ろのスクリーンに実景乗せて同時撮影していたという前作の雪山と違って流石に、今回は始終CGだらけの世界だった気がする。カラコレなど映像の質感が少し気取りすぎて、たまにやらかしている気もしてくるほどだったけど、まぁ当時のエジプトとなると仕方ない。一乗客といえば、なんて後味の悪いクルーズ。『野性の呼び声』『ジャングルクルーズ』そして本作と、マイケル・グリーン脚本船旅3部作ここに完結か
"People kill for a love."
"We can be strong."
裕福になってお気の毒です
「愛憎」
「愛狂」なのかな。
一作目「オリエント急行殺人事件」がかなり面白かったので、二作目も楽しみにしていた。
感想としては、オチに衝撃性や意外性はあまりなかったものの、前作よりも「愛」について色濃く描かれていて、終始胸が苦しかった。
また、エジプトの描き方、外輪船の描写が美しくて、エジプトへ船旅に出たくなってしまった。笑
いやーやっぱりポアロは面白い!
容疑者達の化けの皮が剥がれていく様を見ているのがとてもゾクゾクする。
ポアロの過去ってそんな感じだったのか。
だから髭がね、、、
ただ、やっぱり前作と比較すると、一作目の方が好きだったかなー。
でも面白かったです。
まとまりのない印象
前作「オリエント急行殺人事件」が好みに合い過ぎていたのか、本作は期待外れ。
原作は未読ですが、おそらく映画側の問題ではなく、原作のせいでしょう。
閉鎖環境下での密室殺人事件というポイントは同じなのですが、どうも展開がダラダラして、何となく流れで解決してしまったように見えました。
さらには、虚飾にまみれたお金持ちたちのダンスパーティーシーンが多く、こういったきらびやかなシーンが好きな人には良いのでしょうが、私は登場人物への感情移入が困難でした。
映像は美しく、ちょっとしたエジプト・ミステリーツアーの味わいは楽しめましたが。
ケネス・ブラナーのポアロ役、好きなんですが、本作では事件に追われているような印象で、あまり落ち着きが感じられないのが残念。
次回作があるなら、リベンジを期待したいです。
リメイクした新鮮さは少ない
本格ミステリーのリメイクなので楽しみに見たが、特に新鮮さを感じなかった…
原作が優れているだけに話を変えるのは困難であろう想像はつくが、もう少し演出を考えてほしかった…
ガル・ガドットの美しさは相変わらずであったが、ディズニーチャンネルの作品紹介にガル・ガドットの名前が無いのが気になりました。準主役なのに…
エママッキーを最後までマーゴットロビーだと思ってた…
ガルガドットとマーゴットロビーがメインか、DC映画色が強いんだなーと思っていたら、マーゴットロビーではなくエママッキーというNetflix「セックスエデュケーション」でブレイクした女優さんと知ってびっくり。意外と話題にしている人が少ないので無知な自分がお恥ずかしい。。
内容ですがオリエンタル急行殺人事件も今作にしても、個人的にはポアロが事件を解決してもなんだかスッキリしませんでした。一番の理由は犯人が割と早めに犯行を自供してしまうからだと思っています。殺人事件に入るまでの導入が長すぎて犯行から解決までが早足すぎる気がします。
その時間配分ですが、ミステリー映画に馴染みがない人にとってはプラス要素かもしれません。豪勢な服装、インテリアで目を楽しませてくれますし、エジプトの綺麗な景色も脇役ではなくメインとして引きのシーンでたくさん見させてくれます。ミステリー映画として身構えるのではなく娯楽映画としてみれば好きな作品でした。
ポワロの成長
原作は未読で、
犯人はだいぶ初期から判ってしまいましたが、
それでも、ポワロがどうやって解決していくんだろうという
謎解きの楽しさと
エジプトの壮大な景色と、船上の豪華さと諸々の華やかさで、
娯楽ミステリーとして充分楽しめました!
ラストの髭を落としたポワロがステキだったな。
彼が新しい人生を歩むようで、少し嬉しくなって涙出てしまった。
でも、もう、次回はないのかなぁ…。
心臓の傷は、一発の銃弾で治るかも……
1978年のピーター・ユスティノフの『ナイル殺人事件』も当時、劇場で観た。
つい最近、DVDで久しぶりに観て、よくできた映画だったんだなぁ、超娯楽大作だったんだなぁと再度実感した。ミア・ファローはやっぱ素敵で魅力的だったし。
だったので、本作もすんなりと鑑賞できた。
(落石事件のあった)「アブ・シンベル神殿」は雄大で壮観だったし、ナイル川に浮かぶ船、カルナック号の明かりが夜の川面に映るシーン等々、また、優雅でゴージャスなナイル川クルーズに連れていってくれました。ありがとう。
ワンダーウーマンのガル・ガドットも元カノのエマ・マッキーも、どちらも貫禄の美しさだった。
ポワロは皆から嫌われますね。きっと。
もめる原因は
男女の関係、友人関係、金、地位、肉親との関係が多いかな?と思います。映画のなかで、いろいろと渦巻いています。犯人はまさかのあの人が⁉️びっくりだわ。愛=お金や地位は必ずしも=イコールではないのですね。いかなる時もタフじゃないと生きていけない。映像的にはきれいで、ちょっとした旅気分にひたれます。ぜひ、映画館で観ていただきたいと思います。テレビだとちょっとスケール小さく感じるかも?です。
交錯する愛情が招く悲劇
原作小説の邦題は「ナイルに死す」なのに、わざわざ'78年のジョン・ギラーミン監督作と同じ邦題にしなくても良かったのではないだろうか。これでは、アガサ・クリスティの小説の映画化というより、'78年版のリメイクだという印象を持ってしまう。
ケネス・ブラナーはポアロ映画の続投に意欲的らしいので、過去のシリーズを踏襲するなら次作は「地中海殺人事件」(原作の邦題=白昼の悪魔)になるのだろうか…
本作は、登場人物が原作からかなりアレンジされていて、一本の映画に落とし込むための整理ができている。
特に、黒人の歌手とマネージャーであるその姪を登場させたことの効果が高いと思う。金持ち主人と侍女の関係や、有色人種差別などの時代性を示しておいて、白人と黒人の恋愛や女性どうしの同棲というエピソードを織り込むことで、現代でも違和感を抱く人たちに対して時代錯誤であることを訴えているようだ。
冒頭、ポアロの従軍時代が写し出され、そこには当時の恋人が登場する。
原作小説でポアロの恋の話があったかどうかは知らないが、少なくとも「ナイルに死す」の小説にはこの件はなかったはずなので、映画オリジナルのエピソードだと思う。
前作でもイントロで過去のポアロの活躍を見せていた。本編に関係のないエピソードを開巻において人間ポアロを炙り出す、監督ケネス・ブラナーと脚本マイケル・グリーンのコンセプトなのかもしれない。
劇中、ポアロが恋人の話を少しだけする場面がある。愛憎劇の様相を呈する本作にあって、ポアロはロマンスが理解できる人間として描かれている。
前作に続いて、映像美は見事だ。ロケーション(一部はCG合成だろう)による風景・背景、客船の装飾や女優たちの衣装は、豪華で艶やかで、壮観だ。
本編の序盤、ジャクリーン(エマ・マッキー)とサイモン(アーミー・ハマー)のダンスのシーンがなんともエロティックで、迫力がある。続いてサイモンはリネット(ガル・ガドット)とも踊り、これも妖艶なのだが、エマ・マッキーの情念にみなぎった表情と動きが印象的で、この後の恋路のもつれを予告するに充分だ。
この物語は、人間が他人の愛憎ゴシップに興味をもつ心理が事件の撹乱に用いられていて、自分への愛情を図らずも利用してしまった人間の悲劇が描かれている。
大抵の名探偵は犯人を突き止め犯行のトリックを暴くが、悲劇は止められない。傲慢で自信家のポアロもまた、防げなかった死に無力感を抱いただろう。
その一方で、密室で自分が事実を暴露した関係者たちが、事件前とは異なる人生観を持って船を降りる姿に満足げなのもポアロなのだ。
全328件中、61~80件目を表示