ナイル殺人事件のレビュー・感想・評価
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犯人とその動機が今や古いのかも
前作のオリエント急行殺人事件が有名な話だったので結果が分かっていてもそれなりに興奮したし面白かった。
今回は原作知らずに鑑賞。この手のものはあらすじやKV・キャストのラインナップで内容が予測出来、それでもどんでん返しに期待しましたが事件が起こるまでの伏線長すぎ、そして呆気ない終着となり少し残念でした。
ただ、ポワロは個性的で変り者でも人間味はしっかりあるという部分は当初から好きだったので、ずっと集団の中に居てもポワロが何処で何をしているのか目で追うのは楽しかったです。
良質なエンターテイメント
ミステリー作品なので勿論その部分はしっかりしてるのですが、それ以上に上質な劇中歌がしっかりと用意されておりストーリーにしっかり絡んでいる部分がよい意味で裏切られました。
原作小説を読んだのは30年前なので覚えていないですが、多分映画用の見せ方・設定だと思います。良い意味で恋愛あり、友情あり、ミュージカルありと盛りだくさんの作品だったと思います。
愛の形
原作も1978年版も知らず、初ナイルに死すでございます。
ナイル川を遊覧する相続で富豪になった女性の結婚パーティー兼新婚旅行で巻き起こる殺人事件と、その謎を解くポアロの話。
昔からの友人ジャッキーの婚約者を略奪した形で結婚したリネットと何も無いのにモテモテなサイモン夫婦が催した船上パーティーにジャッキーが現れ巻き起こって行くストーリー。
ポアロのお髭事情をみせるプロローグに始まり、サロメのライブで登場人物との顔合わせ、そしてエジプト旅行から船上パーティー…と人物紹介や複線を張るパートというのは理解するけれど、中々本題に入りませんなぁ。
ジャッキー再びで、トラブルになって、やっと話が動き始めるまで1時間。
まあ、ここまでも特にテンポが悪かったり弛む様な話があるわけでもなかったから良いのだけれど。
ただ、事件が起きてポアロが疑う人物達を個々に尋問して、更に事件が重なって…そしてみえた真犯人と言うにはあまりにも呆気ないというか駆け足というか、謎を解くと言うより答えをいきなり説明されてしまった様な印象。
面白かったけれど、サスペンス部分よりもポアロと彼に関わる人とのドラマがメインと言うつくりでしたかね。
そしてやっぱりエマ・マッキーとマーゴット・ロビーは似過ぎ。
いかに火サスが優れていたか
アガサ・クリスティ(1890-1976)
イギリスが誇る
「ミステリー小説の女王」
19歳から小説を書き始め第一次大戦で
薬剤師の助手をしたことで
毒薬の知識を得て
探偵エルキュール・ポアロシリーズ
を執筆し36歳の時のシリーズ3作目
「アクロイド殺し」でブレイク
語り部が犯人と言う意表を突くオチは
論争を呼びその後に最も有名な
「オリエント急行殺人事件」が
発表された
本作は1937年に発表された
「ナイルに死す」を
ケネス・ブラナーや
リドリー・スコットらの製作で
映画化したもの
2017年にもオリエント急行を
同様にリメイクしたがその
続編的な感じ
感想としては
恐ろしくCGがショボかったり
OPの戦争シーンになんでそんなに
凝ったのか不思議なくらい
(1917のセット流用?)
バランスが悪い作品
改変もそんなに必要だったかと
思うしどこを重点的に見せたかった
のか首をかしげる出来と
なっていました
話はロンドン社交界の絶世の美女
リネットが親友ジャクリーンから
たまたま紹介された婚約者サイモンと
恋に落ちジャクリーンを差し置いて
結婚してしまいます
ジャクリーンはストーカーと化し
親族関係者だけを集めた
エジプトの新婚旅行にまで追いかけて
きてリネットは気味悪がります
結婚式に招かれたポアロはサイモンに
相談されジャクリーンを説得しようと
しますが22口径のピストルを
ちらつかせてあの人を殺して
ウチも死ぬかも~と宣言
ドン引きのポアロは夫妻に
ロンドン帰れば?と言いますが
それも受け入れられません
一同はナイル川を辿る汽船に
乗り込みますがジャクリーンは
そこにも追いかけてきて
リネットが自室に寝入った後
サイモンが君とは終わったのだと
挑発するとジャクリーンは発砲
膝を打たれたサイモンは
介抱されジャクリーンも
錯乱したためモルヒネを打たれて
寝かされます
するとこめかみを打たれて
ベッドで絶命しているリネットが・・・
犯人は誰ぞやと思っているうちに
どんどん殺人が起こっていきます
ポワロは容疑者全員に
その人が犯人であったらという過程で
ネチネチ総当たりで追い詰めて
いくのでみんなキレます
結末は最初にあーコイツ犯人か
と思わせておいて違うんでしょう
と思いつつやっぱりそうでした
的な意表の意表を突く感じですが
こじつけくさくなってしまってます
原作は便利なレイス大佐と言う存在が
いたのですがブークと言う事件に
深く関わってしまう親友という
キャラに変えられてしまったのですが
そんなに面白くなった感じもせず
何よりミステリー的展開まで
映画の尺の半分くらい使って
実質さくさく60分くらいで
後半は駆け足で終わってしまう感じは
ちょっと拍子抜け
思えば
火曜サスペンス劇場は100分くらい
たっぷり事件の発生・捜索・推理・
仕切り直し・真相発覚・崖と
ほんと良く出来ていたと思います
たまにBSデジタルとかでやってると
見ちゃいますが途中からでも
そこそこ見やすいし
まあ今作はミステリーとしては
古典だし今更そこを楽しむ映画じゃ
ないだろうと言われればそれまでですが
ありゃ出来良かったんだなと
痛感する次第です
イケメンには 気を付けよう。(^_^;
愛も色々とあって 複雑怪奇 注意が必要です。
一目惚れには 更に注意が必要です。
計画性は見事でしたが あの男にそこまで
.....(~ヘ~;) ウーン
豪華なセットや 遊覧船は見事ですが
遺跡の部分で セットなのかCG....なのか
今は凄過ぎて 区別がつきませぬ。
映画館で観るべき作品ですね。
浅い。
浅い。
金田一、古畑、更に科捜研に比べ格段に浅い様を見て寧ろ安心した。
それでも平板凡庸大味だった1978版よりは格段にマシ。
殺人に動機とトリックを後付けた原作がそもそもアガサで下位だが。
変に活躍し過ぎで暗いポアロの前日譚も余分で蛇足。
ま、こんなもんかな。
非支持。
原作物である意味があったのか
ポワロがあまりにも感情的で推理シーンは少なく途中真実に迫っている感が全くなかった。
あとポリコレ意識しないといけないのかもしれないが、全員が後ろ暗いことがあるという舞台設定の中で1人だけ後ろめたいところもなくやることなすこと正しいいい子を出して、責められたらポワロも何も言えないシーンを作る必要があったのか。灰色の脳細胞どこにいった。
全体的にポワロの知的な雰囲気やウィット、エジプトを舞台にした意味が感じられず、やたらと扇情的で、わざわざポワロを下敷きにせずアクションや恋愛ができるオリジナル探偵物にした方がよかったんじゃないかと思う。
物語知らないで見たので楽しめました
トータル、物語知らないで見たので楽しめました。
ただ、伏線の演出方法がわかりやすいかなあ
絶対何か裏がある!と思ったら裏があったし。
あとエジプトピラミッドの青空の映像が嘘っぽく感じた。
けども、愛って怖いねえ。と痛いほど痛感し、
ちょっとしたあわよくば…!の気持ちで悪い行動を取ろうとすると、こんな目に合うのか。っていう教訓?にもなる物語。ほんと、ストーカーには現代も事件が起きてからでないと警察も対応出来なかったりするから、前半のストーカー具合には、(裏があるんだろうと思いつつ)怖いこわいやめてくれーと思った。(演技が上手だった)
そんなこんなで演出等はちょっと分かりやすさとか嘘っぽさがあって物足りない気もするが、
それぞれの演技はとても楽しめました。
もはや冒涜!!ケネス・ブラナー最低です!!ネタバレ含む。
オープン早々呆気にとられました。もう原作無視の滅茶苦茶な脚本。前作アンソニー・シェーファーも登場人物を絞り簡素化してましたが許容範囲。今作はサロメ・オッタボーンが作家からクラブ歌手、その娘ロザリーはリネットの友達、そのロザリーの彼氏が原作に出てこないブーク、前作老富豪ヴァン・スカイラーとその使用人バウーズが今作ではレズビアン、ドクター・ベスナーはリネットの元フィアンセ等々原作とは全く別物に開いた口が開きっぱなし!
謎解きに大切な動機も前作は被害者が殺される前に上手く散りばめられてたのに今回は殺された後に口頭でベラベラ説明する始末。
「J」の文字、犯人の射撃の腕前は父親譲り、共犯者に知らせる大声と初めから話される大切なシーン等はことごとく削除。
もう何してくれちゃってるの!!
さらに前作の壮大なスケールは皆無、それどころか品格も何もない!セットっぽいシーンや「オリエント急行~」同様CG乱用とドンパチシーン!そして無意味な川底のCG魚ww
アガサ・クリスティ自身、また私のようなクリスティ・ファンの大好きな「ナイルに死す」をよくぞ「ドーバー海峡殺人事件」並みの駄作に仕上げてくれました、この罪は重い!!ジョン・ギラーミン監督の手腕の素晴らしさを改めて再認識!ピラミッドやアブ・シンベル神殿に突如現れるジャッキーの演出も見事でしたね。そんな素晴らしいシーンは今回全くない!
ケネス・ブラナーにアガサ・クリスティ作品を映像化する資格無し!!と法律で裁いて欲しいものです。
前作ファンとしてはまだまだ文句は尽きませんがもう疲れたので別の機会にします(笑&怒)
これはこれであり
第一次大戦後第二次大戦へ突入する前の時代に起きた殺人事件だとすれば科学的操作は無理なので、推理しながらの犯人探しになる訳で、過去作や原作に拘らなければ十分楽しめる内容だったと思います。
なんだかだらしないアーミー・ハマーも良い雰囲気を醸し出していましたし☺
ストーリーは見る方の乾燥にお任せするとして、当時の旅行や服装などは魅力的であるし、共産主義的な思想が広まっていた頃か、なんて、生まれていない頃の生活に想いを馳せることができて楽しかったです。
少々巻き巻き過ぎるのが難点
前作の出来が大変に良かったために期待値を上げての鑑賞だった。面白かったが、少々ポワロの語りが巻き巻きで、場面展開もかなり早い。状況やキャラクターの動きを把握させるためのカメラワークもあまりに早すぎるので、追いつけない程ではないが考える間は殆ど無い。そのためかキャラクターの動きが予定調和的なのが際立ってしまい、これからキャラクターが死ぬために他のキャラクターが動いている感が強くなってしまっているのが残念。まぁ、有名作品なので今更隠しても仕方ないという考えもあるのかもしれない。
しかしケネス・ブラナー版のポワロはとても感情的で原作やドラマ版のポワロよりも気難しく癖の強い人物像に仕上がっている。名探偵はどうしても事件を機械的に解決するキャラクターになりやすいのだが、このポワロは人間臭く、そしてどこか未熟さがあるため好き嫌いが明確に別れると思う。
個人的に、灰色の脳細胞のセリフが出てくれて嬉しかった。
プロローグが一番良かった
ポアロの捜査方法がとりあえず全員に〝お前が犯人だろ!〟と決めつけて恫喝し相手の出方を伺う昭和鬼刑事スタイルなので正直知的に見えないし、段々とロシアの時間装置を駆使するマフィアに見えてくる。謎解きも証拠を全く提示しないので説得力がイマイチ無い。
登場人物も無駄に多いだけでミスリーディグな描写も特に無いので自ずと容疑者は絞れて来る。
しかし一番気になったのは、これらの一連の作品って「美食家ポアロの推理紀行」的な意味合いも有ると思うのだが(仕方がないとは言え)屋外でさえもセット撮影と、遠景は実景にCGで加工しているので抜けの全く無い閉塞感の強い気持ち悪い景色になっている事だ。
またそのCGのクオリティも微妙で、遠景の砂漠がパターンの繰り返しみたいだったり陰影は有るのに立体感が全く無かったりだし、見せ方も空撮シーンはパンして来るとレンズフレアがキラリみたいな二昔前の表現になっているのが残念だったな。
全体として「優雅なナイルクルーズでミステリー」といったロマンチックな雰囲気ではなく「現実感の無い悪夢の様な空間で陰惨な殺人」みたいな、サイレントヒルみたいになっていた…。
ポアロとヒゲの秘密
ポアロも含めて今回の映画は愛が重要。
きれいな女優さんにきれいな映像で見ていてよかった。
1937年に作られた原作とは思えないほどのトリックに驚いた。
鋭い洞察力と全てを疑い可能性を考える推理力のポアロのすごさに驚愕した。
ゴージャス ✨ 〜 魅惑のナイル川クルーズ
冒頭の戦場シーンがリアルで胸に迫る。
個性的な役者陣、美しい景観、中でもジャクリーン役のエマ・マッキーの艶やかな魅力に魅了された。
前作の「オリエンタル急行殺人事件」(2017) より格段に良い。
ギザのピラミッド、スフィンクス、ソフィテル レジェンド オールド カタラクHotel、アブ・シンベル神殿…ため息の出るような美しい映像に魅了された。
映画館にて鑑賞
無理して前作と違う所を見せたかったのか?
アガサの作品はオリエント急行と誰もいなくなったの3作しか観てないが横溝正史同様に原作が古いし無理矢理感がある計画犯罪なら事前に塗料用意しろよあんな側で目撃して空砲撃ってぱっと脚抑えて騙せるか頭撃ったら出血しないの?あんなに素早く出来るかな?これまでのポアロは金田一みたいにおっとりしたイメージだったが今回は警察の強引な取り調べの様で 冒頭の戦時下のシーンや解決後の歌唱場面は不要だと?!
スピード感あるね。 簡単な事件なのかなと思ってしまうくらい。 まあ...
スピード感あるね。
簡単な事件なのかなと思ってしまうくらい。
まあ描きたいのはそこではないと思いますが。
ポワロのスタイル、、ストロングスタイル過ぎて笑った。
序盤の第1次世界大戦での出来事が最後の最後につながるが・・・
①冒頭、ポアロの第1次世界大戦での戦闘が描かれます。この戦闘で△△をxxしたので特徴ある〇〇をはやすことになります。
②場面変わってエジプト旅行中のポワロ。いろいろあってナイル川の遊覧船に乗船中に殺人事件に出くわします。
その犯人を推理し犯人を明かすポワロ。さすが名探偵。
③彼は第1次大戦で婚約者を亡くしたことにより、心に傷を負い心を閉ざして独り身でした。
最後に心を開いて気持ちを伝えるため特徴ある○○を捨てます。
①と③がつながるわけですが、コレ必要ですか?
原作は遥か大昔に読んだきりであまり詳しく覚えていないけど、こんなのあったかなあ・・
ほかの印象として、
・エジプトの風景綺麗です。
・前半がゆっくりしすぎ。後半の推理はあわただしい。
・犯人判明後の拳銃の描写は??です。小口径の拳銃でまとめて◇◇できる?
・今風のポリコレ要素結構入っていますが、時代的にあわないような気がします。
(異人種間の交際、LGBT)
公開延期が続いた本作品、公開出来て何よりでした。
(アガサ・クリスティ原理主義ファンとして一言)天国のアガサが怒鳴り込んでくると思う。(一映画ファンとして一言)原作が『ナイルに死す』だと思わなければそれなりに巧く作った映画だとは思う。
①一つ前の『オリエント急行殺人事件』は映画としても酷い出来でケネス・ブラナーの演出には映画作りの上手さも感じられなかった(あまりにも呆れたのでそこまで気が回らなかったかもしれないけど)。今回は実際に犯行がどう行われたのかを再現したシーンは流れるような演出が巧いと思ったし、原作の改悪ぶりがよくそこまで弄ったと思うくらい徹底していたのが却って誉めて上げたいくらい。しかし、この映画で唸らされたのはこの二点だけ。あと失敗点を挙げ連って行きます。②一番大きな失敗はケネス・ブラナーがポアロをハムレット気取りで演じたこと。本格探偵小説・推理小説の探偵はハードボイルド小説の探偵とは違いあくまでも事件を外側から見る傍観者の立場。ミステリーファンが楽しみたいのは、不可能と思える殺人事件の謎が提示され、さてどんなトリックが使われているのか真犯人は誰か探偵と謎解きゲームを競い、最後にアッと驚く種明かしに「騙された~」と唸ることである。誰も探偵自身の身の上話を知りたい訳ではない(それはまた別の話)。それが今作ではやたらポアロが一人で喋って観客が謎解きに参加する暇さえ与えてくれない。アガサ自身も自分が作り上げたこの希代の名探偵を途中から嫌になったらしいが、それでもポアロ=立派な口髭なのに、それを剃ってしまうとは。原作への冒涜でしかないでしょう。③原作の『ナイルに死す』のメインテーマは“人を愛しすぎるのは決して良いことではない、賢明なことではない、時には危険で恐ろしいことになる”ということ。今作が言っているように“愛のためであれば人は何でもする”というのとはちょっと違う。「いくら愛していても度が過ぎるのは良くない」というアガサの実人生からの教訓を、最初の結婚の破局⇒謎の失踪事件を起こしてから10年立ってやっと冷静に自分の作品中で描けたのが『ナイルに死す(Death on the Nile)』なのだと私は思っている。実はアガサはカップルを犯人にしたミステリーは他にも何作か書いている。しかし、ジャクリーンほど「サイモンを善悪も憐れみも何もかも越えてただ愛していたが故に犯罪に手を染めた」犯人像にしたのは『ナイルに死す』以外にない。それを際立たせないと『ナイルに死す』にならないのにポアロに自分の恋物語を語らせてどうする。④ガル・ガドットもミスキャスト。リネットを演じるにはスター過ぎるし、カップルの仕掛けた偽りの愛の陥穽に落ちるにはとうが立ち過ぎている。初登場シーンは確かに美しくゴージャスではあったが、それは映画スターのゴージャスさであって若くして大富豪になった娘のゴージャスさではない。1978年版のロイス・チルズくらいの準スターレベルのキャスティングがちょうど良く、ロイス・チルズの方が初登場シーンでリネットの人間像を短いシーンの中で上手く活写していたと思う。リネットが死の直前にジャクリーンに向かって『貴女とは友達でいたかった。貴女だけがお金目当てで近づいて来たのでなかったから』と言いジャクリーンが涙ぐむ(この後殺すわけだから)シーンは原作にも1978年版にもなかったシーンで悪くなかったが、元はと言えばあんた(リネット)が“入っては行けない道(原作の表現)“=“友達の恋人を奪う”からだろうが自業自得だ、とあまり同情は出来ない。⑤アーミー・ハマーのサイモンは柄といいネームバリューといい1978年版のサイモン・マッコーキンデールよりは良かったとは思うがイギリス人らしさがないのが玉に瑕。口髭も色悪っぽさを醸し出し過ぎで、ジャクリーンがリネットに初めてサイモンを紹介するときの内容と合致していない。リネットの死に大泣きするシーンがあるが自己抑制の強いイギリス人があんなに人前で感情的になるか違和感があった(アメリカ人ならわかるけど)。⑥エマ・マッキーのジャクリーンは柄としては1978年版のミア・ファローより原作のイメージに近い。ミア・ファローはどうみてもサイモン・マッコーキンデールの年上の恋人にしか見えなかったから。しかし、犯行を決行する前夜、前にポアロから「心に悪を入れてはいけない」(「愛が無ければ代わりに悪が入るわ」という原作の台詞が好き)と言われていたミア・ファローが、止めたい気持ちと(サイモンへの愛から)決行する気持ちとの相克に苦しんでいるような、もう少しでポワロに真実を話してしまいたいような忘れがたい表情をした演技を見せてくれたが、今回はそういう芝居がなかったのが物足りない。⑦21世紀になったとは言え、クリスティ映画で『やりまくった』とか、『昨夜は2回した』『いや3回』だとか、踊りや服を着たままとは言えdoggy styleとかを見たくなかった(そう言えば石が落ちてくる前にリネットがサイモンのズボンの中に手を入れようとしてましたね)。天国でアガサが卒倒していると思う。⑧戦前のイギリスで白人とインド人とがいとこだなんてあり得たのか?⑨同じ様に「黒人と同じプールで泳げるか!」ということはあっただろうと思うが、アメリカより差別の少ないイギリスとはいえ戦前に白人と黒人とが同じ寄宿学校に入るということがあり得たのだろうか?⑩1974年版の『オリエント急行殺人事件』が本格推理小説の映画化はオールスターキャストというのが主流となる契機となった。同じレベルのスターを並べないと犯人がすぐ分かってしまうという理由からだが、日本の市川昆監督の金田一耕助シリーズのお手本になったくらいだもんね。世代が違うからあまり言うのもなんだが、1974年版『オリエント急行殺人事件』、1978年版『ナイル殺人事件』、1981年版『クリスタル殺人事件(邦題は最悪
)』と、ハリウッドのレジェンドと言える銀幕の大スターから名優・名女優までをズラリと揃えた正に豪華俳優陣の競演がそのまま映画の楽しみに繋がった映画たちであった。(『クリスタル殺人事件』は前二作より映画の出来はいまいちだったし、『地中海殺人事件』以降は段々地味なキャストになってしまったけど。)2017年版『オリエント急行殺人事件』はまだ現在のスター俳優や名優と言える人たちも混じっていて辛うじて豪華俳優陣と言える配役であったけれど、今回はスターと言えるのはガル・ガドットとアーミー・ハマー(映画俳優生命は風前の灯だけど)、それとアネット・ベニング(老けたね!)くらいで、後は初めて見るような人ばかり。でも、何度も言うようにこの映画の主役はケネス・ブラナー演じるポアロであって残りは脇役みたいなもんだから、これはこれで理にかなったキャスティングだったのかも。⑪ヴァン・スカイラー夫人とバアウワー看護師との間に意外な関係性があるという設定は、同じクリスティの『予告殺人 (A Murder Is Announced)』からヒントを得たのかも知れないが、犯罪に関係が無ければ(明らかに関係は無いという描き方)あからさまに暴露すべきでは無いだろう、ポアロの態度にはデリカシーが無いと言わざるを得ない。(本来のポアロや他のクリスティ作品の探偵たちでも犯罪と関係があると明確に断定されない限りは無闇に暴露しないデリカシーは持っています)。⑫第二・第三の殺人に関する設定や描写も杜撰。人を殺すことを命ずるのに普通メモで伝える?誰かに読まれるリスクが高いのに。ブークが撃たれる前にサイモンが叫んだのは一度だけ。たったそれだけでジャクリーンに危険が伝わるか?原作や1978年版での通り不必要と思えるほどの大声で状況を伝えないと。この辺り、やはり1978年版を脚色した名手アンソニー・シェーファーとの力の差が感じられる。⑬最後に、アガサ・クリスティはシェークスピアではない。前作『オリエント急行殺人事件』も何かどんよりたしたラストだったが、本作も髭を剃った(!)ポワロが物思いに沈む沈鬱なラスト。何もアガサの作品にラストがやるせないものがないわけではない。最高傑作の『そして誰もいなくなった』もそうだし、少し幅を広げれば『アクロイド殺し』『邪悪の家』『溺死(「火曜クラブ」の中の短編の一つ)』『雲の中の死』『メソポタミアの殺人』『物言わぬ証人』『杉の柩』『五匹の子豚』『愛国殺人』『忘られぬ死』『ホロー荘の殺人』『ねじれた家』『予告殺人』『魔術の殺人』『マギンディ婦人は死んだ』『ポケットにライ麦を』『死者のあやまち』『無実はさいなむ』『鏡は横にひび割れて』『バートラムホテルにて』『終わりなき夜に生まれつく』『ハロウィーンパーティー』『復讐の女神』『像は忘れない』『カーテン』『スリーピング・マーダー』などみんなそうだ。しかし、『ナイルに死す』は、リネット/サイモン/ジャクリーンの三角関係の悲劇がメインとは言え、その後にロザリーとアラトン夫人(原作『ナイルに死す』で最も魅力的な人物)の息子との幸せなツーショットを挿入して、アラトン夫人『恋って時には恐ろしいものになりますのね』ポアロ『だから有名な恋物語多くは悲劇なのですよ』(ここでロザリーとアラトン夫人の息子とのツーショットを描写して)アラトン夫人『でも世の中には幸せもありますのね』ポアロ『そうですよ。感謝しなければなりませんよ、奥さん』、と理性も道徳も忘れてしまうような過剰な愛との対極として穏やかな愛こそ幸せもを運ぶものというオチの付け方を忘れていない(アガサもマローワン教授との再婚で穏やかな愛というものを知ったのでしょうね)。1978年版も、ジャクリーンがサイモンを撃った後自害したときにはポアロに『悲劇だ!』と叫ばせたが、ラスト、ロザリー(オリヴィア・ハッセー!)とファーガソンとの地味ながら幸せそうなカップルの姿を映した後、『女の最大の野心は愛を燃え上がらせることである』とジャクリーンへの(もしかするとリネットへも)花向けの台詞で幕を閉じている。
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