「この作品は、昔ながらの道徳を説いてるのが良い」劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 yoneさんの映画レビュー(感想・評価)
この作品は、昔ながらの道徳を説いてるのが良い
鬼滅の刃の映画版。
無限列車の戦いと、猗窩座と煉獄杏寿郎の一騎討ちまで。
まぁ、漫画は何度も読んでるのでストーリーは知ってる。
あとの楽しみはアニメーションの演出。どこまで表現力豊かにこの戦いを描けるか。
観た結果、やはり炎や水の表現は素晴らしい。
テレビアニメ版と同じではあるけど。映画館の大きなスクリーンだと迫力があって良い。列車のCGも違和感なくて良かった。一騎討ちも作画に力が入ってるのがよくわかる。
あと、何度かウルウルときた。そういうストーリーだしね。煉獄さんは好きなキャラ。
なんか、この無限列車の話は映画の2時間尺がちょうど良いです。
そして、映画館の帰りで反芻してて、この作品って昔のジャンプに戻ってるんだよな、とふっと思った。「友情・努力・勝利」みたいな価値観。昔は基本的にスポ根だったけど、2020年現在では主人公の竈門炭治郎はとにかく優しい。相手を褒めるし、強気なキャラを立てる。この辺が現代っぽい。けど、通底している価値観は一緒だと思う。
煉獄の母親が杏寿郎に説く話は、昔の人が日常的に言ってたことだ。
昔の漫画や本には当たり前のように出てきていた価値観。行為態度(エートス)と言うか。いつの時代から持ち始めたのかはわからないが、おそらく儒教に連なるものだろう。一般人から企業家から政治家まで、当たり前に持ってた価値観のように思う。
右とか左とか思想・信条の話ではない。
「まとも」か「クズ」かという人の根本の価値(道徳)観の話。
煉獄の母親が説くのは「杏寿郎、あなたはクズになるな」ということだ。
しかし、今はそれがない。
政治家を見ればわかる。道徳心など一ミリも感じられない。
説明責任からみっともないくらい逃げ回っている。
企業家も一緒。CSRとかSDGsとかESGとか何とか言ってるけど、全く信用できない。
だからこそ、ストレートにそれを語る鬼滅のような作品の価値が高まる。
まぁ、漫画キャラにそれを託すなよ・・と言いたい気持ちはあるが、伝える手段があればそれで良い。無いよりはマシ。何倍も。
これを観た子供達が、「強く生まれた人は弱い人を助けるのが当然」という価値観を持って成長してくれれば、今より多少はマシな社会になるかもな・・そんなことを考えながら、家路に着いた。