ザ・ピーナッツバター・ファルコンのレビュー・感想・評価
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一風変わったロードムービー
ブリーフ一丁のダウン症の青年と、他人のものを盗んで追われる漁師が出会い、旅をともにする一風変わったロードムービー。大昔の悪役のプロレスラーに憧れるダウン症の青年ザックは、そのレスラーの開くレスリングスクールに入るために寮を逃げ出す。お尋ね者同士の二人はいがみ合いながらも次第に意気投合、川をくだってレスラーのいる地を目指す。
孤独な二人が絆を深め合う旅というのはよくある話だが、妙に心地よいテンポ感のある作品で、飽きずに引き込まれる。プロレスの虚構性を巧みに用いているのも面白い。ザックの見ているプロレスビデオは古いもので、そのレスラーもとっくに引退しているのだが、寂れた街でプロレス興行に関わっている。プロレスという虚構が人夢を与え、それがザックを動かす原動力になる。虚構は人間にとって大事なのだ。夢を信じる力があるから前を向いて進めるのだ。夢見ることを忘れてしまった人に観てほしいと思う。
プロレスというモチーフがもたらしたもの。
ちょっと甘すぎるロードムービーだとは思う。予定調和的な作りが、いさかか物足りなさを感じた理由のひとつだと思うのだが、随所随所で予定調和を壊すような不安定さがあり、それが映画の緊張感に繋がっている。ひとつは(ジョージア州で撮影されたらしい)湿地帯というロケーションがもたらす奇妙な異世界感。プロットだけ取り上げると「プロレス教室を目指すお話」なのだが、旅はどんどん文明社会から隔絶され、ファンタジー度を増していくのだ。
そしてたどり着いた先にはこれまた世間から隔絶された人たちが寄り添って暮らしているようなコミュニティがあって、そこで住人たちは青空プロレスを楽しんでいる。本当にこういうコミュニティがあるかは知らないが、本当に異世界に迷い込んだような気になってくる。
主人公が憧れるレスラー役は俳優のトーマス・ヘイデン・チャーチだが、レスラー仲間には本職のレスラー、ジェイク・ロバーツが、そしてレフリー役にはこれまたレスラーのミック・フォーリーが演じている。彼らの複雑な生き様はドキュメンタリー映画『ビヨンド・ザ・マット』や『ジェイク・ザ・スネークの復活』に詳しいのだが、特にジェイク・ロバーツという人物の危うさがそのままクライマックスの不穏さに繋がっていて、メタフィクショナルな効果をもたらしている。するりとアメリカン・プロレスの闇が紛れ込んでくる瞬間に本気でハラハラした。
最高の温かさで包み込んでくれるロードムービー
雄大な河が、海へと注ぎ込む辺り。この映画のあらゆる登場人物は心に何かを秘めて生きている。ここからどこかへ旅立ちたい。目の前の壁を突き破りたい。でも現実を考えるとそんなことは不可能・・・。そんな思いを全て背負いこむかのようにダウン症の青年が介護施設を飛び出し、途中で出会った仲間とともに、夢にまで見たあの場所をひたすら目指す。
本作は障がいといった要素を扱いつつも、しかし決してお涙頂戴には陥らない。むしろそこに生きるあらゆる人々の姿を平等に見つめ、全てを温かなユーモアで包み込みながら旅を続けていく。その視座がなんとも素晴らしい。目的地で待ち構える一人の俳優もまた素敵だ。もしや本作の監督は、同じロードムービーの先輩にして大傑作『サイドウェイ』へのありったけの敬意をここに込めたのだろうか。一人で始まった旅は、いつの間にか二人、三人へと増えた。海へ注ぎ込む河のように、その姿は堂々と光り輝いている。
亡くなった兄の想い
多くの人がザックのことについて、ザックとタイラーの関係についてレビューを書いているが、この作品は、すでに亡くなっているタイラーの兄とタイラーの和解?とそこからタイラーが成長する物語だ。
シャイア・ラブーフ演じるタイラーは自身が運転する車の事故で兄を亡くした。
その事で自分を責めているし、孤独になったことで自暴自棄にもなっている。
カニ漁も上手く出来ないタイラーは「ウスノロ」なのだ。
そこへザック登場。
自分と同じ「ウスノロ」であるザックに対し最初は助けもするし嫌悪感も示す微妙な反応をする。
しかしザックも自分と同じ「お尋ね者」であると知り、旅の道連れとする。
この時まだタイラーは気付いていない。ザックの中に自分を見て、自分が、今まで助けてくれていた兄のポジションになったことを。
タイラーの夢はフロリダで船を買い釣り人を乗せることだ。兄はその事を強く応援してくれていたに違いない。だからザックの夢も叶えてやりたいと必死になる。
お前はウスノロなんかじゃない。お前は強い。お前は出来る。とザックに向けて言う言葉は、兄が自分に向けて言っていた言葉であり、タイラーが自分を鼓舞する言葉でもある。
タイラーが兄を慰めていたフラッシュバックと同じように、ザックがタイラーを慰めるシーンがある。
この時、ザックが自分であり、自分が兄と同じであることに気付く。そして、兄の気持ちを理解したタイラーは涙する。
ザックの夢であるプロレス学校がなくなっていることを知り、一番憤り落胆しているのはタイラーだ。応援したい、叶えてやりたい夢が破れ途方にくれる。
しかしその後、形は違えど、レッドネックに会うという夢をザックが叶えた時、もちろんザックは喜ぶが、一番興奮しているのもタイラーなのだ。
更に、ザックが対戦相手を持ち上げて投げる技を繰り出すことで、ウスノロなんかじゃない、弱くなんかない、「出来る」ことを示す。
それはタイラーにも「出来る」と気付かせるには充分な大技だった。
兄が自分の夢を応援してくれたこと、タイラーの夢が叶うことを誰よりも喜ぶだろうこと、そして自分にも出来ることに気付く。
自暴自棄になっている場合ではない。亡くなった兄のため、落胆させないため、喜ばせるため、夢を叶えるしかない。
しかし、タイラーはダンカンに襲われ病院へ。
エレノアは頭を抱え、ザックはカップケーキのロウソクを吹き消す。
タイラーのメタ的存在であるザックが夢を叶え、兄のメタ的存在であるタイラーが歓喜したことで、メタ的にタイラー兄弟の物語は終わったとも言える。
ならば、タイラーの兄と同じようにタイラーも亡くなってしまうのか?な演出。
フロリダに着き、現れるタイラー。
ザックの誕生日に生まれ変わった。もしくはザックの願い事のおかげか、タイラーが生きていることに安堵する。
この作品のルールその1は「パーティ」一つしかないルールをいきなりは破れないよね。
タイラーの兄が登場するフラッシュバックは全て無音だ。セリフもない。
現在のタイラーとザックを見せることでタイラーと兄の関係を想像させる演出は粋だった。
「ピーナッツバターファルコン」はザックのリングネームであり、タイラーの名前でもある。
逃亡劇アドベンチャー
ひょんな事から出会った二人の男の逃亡劇アドベンチャー。久々にとても良い映画に出会えた。純粋な心を持ちプロレスラーになる夢を追いかけるザックと偏見を持たずなんでも挑戦させるタイラー。二人の友情に心が温かくなる。
3人の再出発を描く
タイラーいいやつ
ザックがダウン症を打ち明けた時に「そんなことはどうでもいい」といった返答をしたことに全てが詰まっていると感じました。
彼にとっては障害があろうがそんなことはどうでもよく、ただ1人の人間として関わっていていいやつ。
放火は良くないけど
良作!だけどライトな作品ゆえ残るモヤっと感・・
私がタイラーなら、最初にエレノアに出会った時に、さっさとザックを引...
アメリカのダメな部分を描いてるが
社会の洗礼は受けた
ダウン症の少年の旅
こんなに温かいラストを他に知らない
素晴らしい映画です。
ダウン症のザック。
老人介護施設で暮らしている。
保護されて衣食を保証されても彼は不幸だった。
《籠の鳥は、御免だ!!》
すり切れるほど、1000回も観たレスラーのビデオ。
ザックの夢は憧れのプロレスラーに会いに行ってレスラースクールに入ること。
《自由と独立》
時間割と強制のない空をファルコン(ハヤブサ)のように飛びたい。
ピーナッツバターファルコンとはザックにがタイラーと考えたザックのリングネーム(強くなさそう・・・笑)
施設を脱走したザックは漁師のタイラー(シャイア・ラブーフ)に拾われて、
一緒に旅することに・・・。
タイラーが実に優しい・・・ふたりは相棒になります。
魚の窃盗や放火の罪で追われるタイラーとザックは、筏で川を下る・・・まるでハックルベリーフィンとジムみたいだよ。
そこにザックを心配して追ってきた施設の看護師・エレノア(ダコタ・ジョンソン)が、加わります。
ロードムービーは2人から3人へ(2+1が、解決策だったよね)
ザックの見てたビデオテープは古すぎた!!
憧れのレスラー《ソルト・ウォーター・レッドネック》
彼は過去の人だった・・・けど、プロレスを草野球のように楽しむ風土は残ってたんだね。
ザックのリングシーン有り!
試合シーンも有りですぜ!!
エレノアに気を揉ませるザックとタイラーだけど・・・だけど・・・
こんな幸せなラスト、みたことないです。
「友だちは選べる家族」
カールじいちゃんが教えてくれた金言は、本当だったね。
逃避行が、思いがけない冒険へ…
Amazon Prime Videoで鑑賞(吹替)。
ザックとタイラーの間に友情が生まれていく過程がハートフルでした。ザックを追って来たエレノアが加わり、絆を深めた3人の思いがけない冒険は衝撃のハッピーエンドへ…
常に前向きなザックの発言に影響され、過去を見つめ直すタイラー。ザックとの交流で変わっていったタイラーに、ザックへの関わり方を指摘されたエレノアも変わっていく。ザック自身もふたりと過ごす内に強くなっていきました。
再生と気づきの連鎖が温かくて心地良かったです。
まさにロードムービー
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