ジョジョ・ラビットのレビュー・感想・評価
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現代に生きるわれわれに向けたワイティティの本気。
この映画が大好きですと最初に断った上で言うと、かなりスレスレな作品だとは思う。タイカ・ワイティティがホロコーストの歴史を茶化すつもりでコメディ調に仕立てたわけではないことは、この映画を観た人にはよくわかると思うが、冒頭からビートルズ、トム・ウェイツ、デヴィッド・ボウイなど、第二次大戦下では存在すらしなかったポップソングを流しまくり、色調もポップなら、極端に戯画化されたキャラクターも多い。まさかそのまま「コレが歴史だ」と勘違いする人はいないだろうが、題材が題材だけに、人類史上未曾有の悲劇をここまでポップにしていいのか、という疑念は湧く。ほんの一瞬だけだけど。
一度浮かんだ疑念が消し飛んだのは、本作が決して「歴史を再現しよう」という意図では作られていないから。もちろんナチスがホロコーストが背景にあるが、当時の世相が抱えていた社会の問題は、容易に現代に生きるわれわれ自身と重ねることができる。全体主義がもたらす同調圧力、国家的高揚や熱狂の落とし穴、信念の大切さと個人レベルの無力さ……。この映画が歴史に忠実なホロコースト映画だったら、過去の重みに圧倒されたかも知れないが、ここまで自分たちと結びつける親和性を獲得できただろうか。つまりワイティティは、あくまでも現代に生きるわれわれのためのこの映画を撮ったのだと思う。甘い口当たりと同じくらい、切実な本気が宿っている。
メルヘンチックな姿を借りた、奥深くて油断ならない物語
「ナチス」というと冗談では済まされないタブー感が突き刺さってやまないが、本作は幕が上がるやナチュラルにその世界へと誘われる。子供の純粋さを利用して巧妙に忍びよるプロパガンダの恐ろしさが、このメルヘンチックなドラマから痛いほど伝わってくるのだ。そうした特殊構造を深く知るためにも、我々はこの映画を警戒するのではなく、まずは思い切って乗ってみるべきなのだろう。
思春期というものが純粋さから穢れへの移行期だとするなら、本作が描くのはその反転だ。少年が純粋だと思い込んでいたものは実は違った。彼は多くの大切なものを失う過程で、穢れの中から手探りで真実を見つけ出そうとする。真実とは何かを判断できる位置までたどり着こうと必死に手を伸ばすのだ。そういった意味での成長ドラマがここにある。上映中『ライフ・イズ・ビューティフル』のことを思い出していた。真逆の世界ではあるが、どこか通底している気がしてならない。
エルサはアンネ・フランクの化身!?
第二次大戦下のドイツで、幻のヒトラーと対話しながら暮らす小心者の少年、ジョジョの物語は、描き尽くされてきたホロコーストにユーモアを持ち込んで異色の世界の構築している。アートワークはウェス・アンダーソンのそれを彷彿とさせるジオラマ的でシンメトリーな作りで、ファッションも小粋。音楽のエッジィさは言うまでもない。ユーモアや凝ったプロダクション・デザインの隙間からこぼれ落ちてくる戦争の悲惨が返って観客の心を打ちのめすことも確かだが、監督のタイカ・ワイティティは、ジョジョの家に隠れ住むユダヤ人少女、エルサに希望を託すことで、見る側の心も気持ちよく解放してくれる。エルサはナチスによってその命を奪われたアンネ・フランクの化身であり、アンネに代わってその後の人生を開拓していったであろう希望の証なのだ。
対立や分断は乗り越えられる、と信じさせてくれるチャーミングな逸品
冒頭、ヒトラーに熱狂する群衆の記録映像に、ビートルズの「抱きしめたい」のドイツ語版をかぶせる風刺のセンス!現在の視点から当時のドイツ人を批判するのは容易だが、彼らにとってヒトラーはまさにロックスターのような崇拝の対象、偶像=アイドルだったのだ。
本来シリアスなナチスやユダヤ人迫害を題材にした映画でも、近年は作り手・観客ともに相対的、客観的に扱える世代が増えたせいか、ユーモアを活かしたコミカルな作品が増えてきた。そうした作品群の中でも、本作のユニークさ、チャーミングさは格別。ドイツ人少年ジョジョとユダヤの娘エルサを演じた2人の魅力に負うところが大きいし、とりわけジョジョの変化や成長を精妙に描写したタイカ・ワイティティ監督の手腕にも感嘆した。
デヴィッド・ボウイがベルリンの壁のそばで会う恋人たちに着想を得たという「ヒーローズ」のドイツ語版が流れるラストも最高。洋楽好きにもおすすめしたい。
愛は最強
全てを経験せよ 美も恐怖も 生き続けよ 絶望が最後ではない
主人公のジョジョは軍人を目指すもその道を断たれる
教育と環境が作り出した自分の中のナチが空想の中のヒトラーとして描かれていく
そんな中ひとりのユダヤ人と出会い、ジョジョは自ら経験をしていく
キャラクターに愛着がわき
その後の描写で戦争に対する悲しさが自ずと引き出される
多くの人が愛を持っているが、環境が過ちを産む
戦争により人種などのくくりに囚われていただけで、中身は同じ人間
ジョジョの思うユダヤ人はジョジョの頭の中にしかいなかった
戦争映画でここまで引き込まれたのは初めて
自由になったらまず何をするか?
ただ音楽を楽しみ、踊る
それができる幸せ
靴ひも
コロナになり、解熱してやっと配信を観たのがこちら。劇場で観た時は、さして感動しなかったが、妻から是非もう一度観るように言われ鑑賞。確かにナチスの悲惨な事実を、このような(ちょっとした)コメディタッチで描いたこの映画は凄い。そして、靴ひものインパクトに感動。
ちなみに4回目ワクチン終わったあとでも、コロナは相当つらかった。
少年の成長
第二次世界大戦の終盤のドイツの町で暮らす少年の戦時下で少年の成長が描かれています。
題材てきに重い話ですが、空想のヒトラーの過激な思考にも対応し成長する様は伝わりやすく、よかったです。
大尉との兼ね合いがすきです。
サム・ロックウェルが
「スリー・ビルボード」に続いて重要な役で出ています。
私にとってはとても好きな作品になりましたが、賛否両論あるそうですね。
見終えて、みんなが思うことは「ヨーキー○○○○○○○○ね」だと思います。
第2次世界大戦下の子供の視点からのナチスドイツ。 ナチスに心酔して...
第2次世界大戦下の子供の視点からのナチスドイツ。
ナチスに心酔していた子供が戦争を見て、体験し、ユダヤ人の女性に恋をして、愛を知り成長していく。
強気でいながらも臆病で優しいジョジョが可愛らしい。一緒子供の純粋な目から見た戦争はとてもメッセージ性が強く思える。そして、戦争という重いテーマであるのにかかわらず、コミカルにユーモアに溢れた視点で描かれていて新鮮に思えた。ヨーキーも可愛くておもしろい。芯のある母親、スカーレット・ヨハンソンも良かった。
場面ひとつひとつが暗いイメージでなく、絵画を見ているような芸術的に観えるのがまた素敵でした。
少年の目を通して見るナチスの栄枯盛衰
『ライフ・イズ・ビューティフル』と『アンネの日記』をミックスしたようなお話なのに、テイストは『イングロリアス・バスターズ』に近い。全体を通して、タイカ・ワイティティの味付けが行き届き、極限状況や絶望をすごく薄めてある。そして、乾いた笑いや大人との関係性が、時に美しく、時に哀しく胸に響く。それは必ずしもリアリティだけが観衆の心に訴える手段ではない、という監督のこだわりに思える。
たとえばジョジョだけに語り掛けてくるヒトラーは実体として存在していながら実は少年の心の声を強調するためのスピーカーに過ぎない。ナチズムという運動体が少年の心にどのように届いているのかを表現するためのひとつの手段なのだ。監督自らがヒトラーに扮し、当時の子供たちがいかに戦争によって歪んだ価値観を植え付けられていたかを一瞬で説明できるうまいやり方だ。まるでピノキオにくっついてくるジミニー・クリケットだ。少年にとってはヒトラーは悩みをなんでも打ち明けられる親友で、最も遠い存在のはずが、すごく身近にいる。
そしてユダヤ人に抱いている誤解や偏見も、あくまでコメディのテイストで語り掛ける。ユダヤ人の少女に「どうして角が生えていないんだ?」と、大真面目で質問する少年を怒ったり呆れたりすることなく「まだ子供だから。20歳になったら生えてくる」なんて軽口で片付けてしまう。非常にデリケートな問題を、鮮やかな切り口で見せ、一つのファンタジーとして成立させてしまう手腕は見事だ。
その細部にわたるまで実に様々な味付けが行き渡っているのがわかる。少年のセリフはドイツなまりっぽく聞こえる英語を使うが、サム・ロックウェル演じる出世コースを外れてやさぐれている軍人はこてこてのヤンキー英語を喋っているように聞こえる。大けがを負ったジョジョの傷跡も、あえて痛々しさを出さないようひっかき傷程度にしか映してない。母親とのファンタジックなつながりや、家族構成も必要最小限にしか描いていない。それなのに、靴ひもを結んであげるシーンでは思わず涙が溢れてしまうほど残酷で哀しく美しい。
アカデミー賞にノミネートされたスカーレット・ヨハンソンの、これほど豊かな表情の母親ぶりもとても新鮮だった。それを引き出したのも、監督の功績の一つと言えるだろう。結末のあっけなさだけはもう少し何とかしてほしかったが、とてもよく出来た少年の成長物語を見ることができた。満足だ。
2020.1.27
少年と愛と崇拝の物語🇩🇪
凄く面白かったー!!観てて楽しい作品です!!
少年の葛藤と時代背景からは想定できないユーモアが含まれており、心に響くシーンが印象的でした。
幅広い層におススメの作品だと思います😁
劇場版優しい世界
盲目的にアドルフヒトラーを崇拝する10歳の少年ジョジョが自宅に隠れ住んでいたユダヤ人の少女エルサと出会い、少しずつ変化していく様子を描いた愛と勇気に満ちた感動作。
第92回アカデミー賞において脚色賞を受賞した今作は人類史上最悪の出来事を信じられないほどポップでカラフルに描きつつコミカルでシニカルな演出で表現された予想外な感動作だった。
中でもひときわ存在感を放っていたのがジョジョの母ロージーを演じたスカーレットヨハンソンだった。
かつての優しかったジョジョに戻ってほしいと切に願う母役として愛に溢れた演技を見せる一方、反ナチス運動を根気よく続けていく芯の強い女性像も見事に表現し、近作にあたる『マリッジストーリー 』と同様に彼女の一つのキャリアハイを堪能できる素晴らしい存在だった。
またジョジョの上官役のキャプテンKを演じたサムロックウェルも素晴らしい演技を披露していた。
戦前から退いた高慢な指導官の印象を最初は持っていたが、話が展開するにつれロージーに頭が上がらなかったり、実は優しい一面もあったりと人間味溢れる存在でジョジョの成長を不器用に見届ける人物を好演。
オスカーを受賞した『スリービルボード』のディクソン同様に彼の代表作と言える存在感だった。
また監督兼俳優としてアドルヒトラーを演じたタイカワイティティも独特の存在感だった。
常にコミカルにジョジョの良き友として居続けた一方、ジョジョの思想が次第に自らの思想と離れていくにつれ、顕著になっていく怒りの姿勢と命令口調の怒号で隠していた本物のヒトラーの素顔を垣間見せる演技が見事だった。
MCUデビュー以降引っ張りだこの彼が賞レースでも戦える作品を送り出してきたことも印象的だった。
長々と書いてしまったがトーマシンマッケンジーが最高に美人だからとにかく見てほしい笑。
あとヨーキーに友達になってもらいたい笑。
シリアステーマのコメディ
演出はコメディの手法ですが、テーマは反ナチでシリアス。
相反する二つの要素がうまく融合しました。映像センスも最高水準です。
しかしヒトラーが監督とは知らなくてびっくり。
導入部のカッコよさとラストの詩情がとてもよいです。
重い題材を扱っているのに明るい力をもらえる映画
熱狂的なナチ信者のジョジョは、母親が家に匿っているユダヤ人と関わっていく中で、それまでの自分の考え方やナチスに対して疑問を持つようになっていきます。
この作品では、ナチス支配下でのドイツ国民の心情や行動が伝わりやすくなっていました。重い題材扱っているにも関わらず、映画の印象が明るいのは、ジョジョの空想の友達のヒトラーや、所々の微笑ましいシーンなどの、親しみやすい演出が多かったからなのではないかと思います。
周りに流されず、自分の正しいと思ったことを信じる強さがジョジョにはあり、その姿に力をもらえます。個性豊かな登場人物たちが作品を彩り、様々なメッセージ性がありました。「何を信じるべきか」、現代の世界情勢にも繋がりのある内容で、まさに今見るべき映画だと感じました。
ショッキングなシーンが忘れられないかも
戦争や虐殺って本当にむごい。
「ライフ・イズ・ビューティフル」を思い出す
戦争批判の映画ですね
どちらもパパが、ママが、現実の苦しみを子供に見せず夢を失わないように諭し
演技をして明るく振る舞います…
匿われていたユダヤの女子がとても賢いし
ジョジョも本当にしっかりしていて
なんとか生きていくことでしょう
今だからこそ観てもらいたい
全体を通してコメディータッチで描かれ、主人公ジョジョにだけ見えるヤンチャでまるで子供のような総統と一見楽しげに見えるが、これは年端も行かぬ少年までもが政府のプロパガンダによる洗脳を受けていることを意味する。
ジョジョの回りには、強く美しい母親、面倒見のよい上官、達観している友人、そしてジョジョの初恋となるユダヤ人の少女と魅力的な人物が登場するが、物語は悲しみへと進んでいく。
自分達とは違う人、よく分からない人たちのことを、こういう人たちだと聞いたから、きっとこういう人たちなんだろうと実際に見ず憶測で決めつけてしまうことの恐怖。直近の世界情勢を考えると冒頭のコメディー部分ですら涙が止まらなくなる。
戦争の虚しさが1番伝わった映画かもしれない
前半はイマジナリーフレンドのヒトラーとのやりとりが可愛かったりファンタジー要素強め。私の想像する戦争映画の違うな?と思いましたが、無邪気な子供にとってはみんなと訓練することに抵抗もなく、ナチスは正しいと信じるのは、ファンタジーでもなくリアルだったのだと思います。
戦争の現実を見せ、決してジョジョの考えを否定しない、母親の強さや、信念を貫く美しさを感じました。
最後の30分、突然首吊りされた母親の足が映るところで急展開。そこからは涙が止まりませんでした。
一気に現実に引き戻され、爆撃の中逃げるジョジョを観ていると、なんでこんな戦争が起こってしまうのだろう、と率直に悲しくなりました。
無根拠にユダヤ人を憎んだジョジョが、家に隠れる本当のユダヤ人と出会い、同じ1人の人間として人を判断し、思う事を知る、ジョジョの成長も良かったです。
教育現場で使える名作
第二次世界大戦末期、幻想のヒトラーと会話するほどナチスに心酔する少年が主人公のお話。テーマは重いのに、コミカルに描かれていて面白い。冒頭の手榴弾の件は、えぇ〜って笑えた。でもコミカル一辺倒ではなく、大切な人が処刑される等、戦争の悲惨さも伝えていて良作でした
ユニークなシリアス映画
上映中から評判がめっちゃ高かったからずっと見たかったけどどこにも配信されてなくて、Disney+にきたからやっと見れた。
主人公の男の子がかわいい。想像上のアドルフのタイカワイティティが似合ってる。母親役で息子の思想を否定しないで密かに反戦運動を行っている気丈なスカーレット・ヨハンソンがぴったり。終盤は笑いどころがほぼなくシリアスな雰囲気に。
サム・ロックウェルが良い役だった。
ユダヤ人がお姉ちゃんと偽って、誕生日を間違えても見逃してあげたり、最後男の子を庇ったり、、。
アルフィーアレンとサム・ロックウェルはゲイの役だった。
当時のゲイはユダヤとほぼ同じ扱いを受けるため隠していたらしい。
スカヨハが吊るされてるシーンで靴だけ映されるのは作り方が上手だなと思った。それまでのシーンに靴がよく出てきたから一瞬でわかった。その時の男の子の演技がとても良かった。
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