「東欧の戦火を生き延びた子供の物語。」異端の鳥 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
東欧の戦火を生き延びた子供の物語。
因習の村を追われ、
敵対する各軍の前線をラリーさせられ、大人たちの無関心と排斥防御と性欲の慰みものとなったひとりの少年。
こんな悲しい流浪の旅があるだろうか、
死のオンパレードなのだ。
鳥飼いのおじさんにはあのような形で恩返しをなし、
湖畔の娘にはあのような形で復讐をなし、
死を見すぎて、そしてけだものの大人たちの犠牲になって、少年の顔面が次第に“鉄面皮”になっていく様が本当に痛ましい。
目付きが変わってしまった少年は威圧感が凄い。殺られる側から⇒殺る側にスイッチし、孤児院の古株からも一目置かれ・・
心が壊れてしまった彼は、お母さんに会って子供の心を取り戻すことが、果たして可能なのだろうか。無理と思う。
救いのない
暗澹たるエンディングだった。
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子役のペトル・コラールが、この撮影後に正常でいられるのかも心配で胸騒ぎだ。
その点で「ライフイズビューティフル」とは別コンセプト。その狂気は「ブリキの太鼓」に近いかもしれない。
◆人間は「レッテル貼り」で人を選別する。
自分の肌の色を隠して生きたのは「白いカラス」。
そしてpainted の原題で思うのは
レッテルづくしの“黄色いダビデの星”を他人に付けて回るのは私たち人間の元々の性らしいということ。
◆本作品にはユニセフが関わっている。これは戦災孤児~浮浪児を生み出す大人たちへの激しい怒りと、「子供には戦争を見せてはいけないのだ」という強いメッセージなんだと思う。
責任を忘れて「ハッピーエンド」など大人が期待しちゃ駄目だ。
「大人が責任をとれ」と言っているのだ。
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お母さんに会えても、このモノクロのフイルムは、桃色とかのカラーにはならないだろう。
流浪の旅程が、「十字の切り方」でも表されています。
すなわち東ヨーロッパ~ロシアの東方正教会式の上下、右→左から、上下+左→右に十字を切る西方教会の土地への少年の移動。
そしてドイツ侵攻下でのカトリック教会。そしてプロテスタント教徒まで。
これは宗教の堕落への痛烈な告発映画でもあります。