「【閉館する「瀬戸内キネマ」に集った若者3人が、日本戦争映画特集のオールナイト上映を鑑賞し、経験し、学んだ事。故、大林監督の強烈な反戦思想を可視化した、実験的風合を帯びた集大作。】」海辺の映画館 キネマの玉手箱 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【閉館する「瀬戸内キネマ」に集った若者3人が、日本戦争映画特集のオールナイト上映を鑑賞し、経験し、学んだ事。故、大林監督の強烈な反戦思想を可視化した、実験的風合を帯びた集大作。】
ー 物語は、混乱する幕末期から、戊辰戦争、日中戦争、そして第二次世界大戦の沖縄戦、広島への原爆投下と近代日本で起こった様々な戦争が、劇中劇で描かれる。
そして、観客の若者3人(厚木達郎、細山田孝人、細田善彦)も、いつの間にか、劇中劇で戦争の悲惨さを経験する・・。ー
■感想
・劇中劇の時代変遷につれ、映像もモノクロ無声映画から、トーキー、カラーと変遷していく。
・劇中劇の描き方も、大林監督らしい奇抜な合成がいつもより倍加して、駆使されている。
ー これを、良しとするかどうかが、今作の評価の分かれ目であろう・・。ー
・俳優の数も、ワンシーンだけ出演と言う方も含めて、何名出演されているのか・・。皆、夫々の想いを持って参加したのだろう・・。
ー 但し、役者さんによっては、劇中劇で、一人4役を演じている方もあり、鑑賞側は少し混乱する。ー
・日本が軍国主義に傾倒していく事を憂いながら、多数の詩を残した中原中也の詩が、字句で画面で語られる。
ー 各シーンごとに見合った中原の詩が、効果的に使われている。ー
◆クライマックス
移動劇団「桜隊」を率いる恵子(常盤貴子:後期の大林監督作品の常連である。)と8月初めに邂逅する、3人。彼女達をのせた列車は尾道を越え、広島に向かっていた・・。
8月6日に広島で、劇を公演するという彼女達を、3人は何とか助けようとするが・・。
ー 過去に起こってしまった事は、変えられないが映画の力で未来は良き方向に変えることが出来る!と言う監督のメッセージとして、鑑賞する。ー
<故、大林監督が余命宣告を受けた事で、”二度と戦争を越してはならない”と言う強い想いの元に制作された大林映画の集大成的作品。
戦中の映画「無法松の一生」の一部が、軍の検閲により削除され、戦後もGHQにより削除されたと語られるシーンや、きな臭い現代日本の行く末を危惧する大林監督の想いが込められた作品。>