「続編が楽しみ」ブライトバーン 恐怖の拡散者 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
続編が楽しみ
宇宙からの侵略者の話である。空から落ちてきた赤ん坊を、田舎の夫婦が、コウノトリが運んでくれたみたいに勘違いして育て、すくすくと育った子供は、十二歳の誕生日に自分の本当の使命を知る。予告編の通りにストーリーが展開するが、その先が想像とは違っていた。ホラー映画だからハリウッドの定番である正義の味方が登場しないのは当然として、非力な登場人物が都合のいい偶然に助けられることもない。ハリウッド映画なのに予定調和のラストでない作品に少し驚いたのである。
人は創造することが好きだが、同時に壊すことも好きである。しかし器物を損壊すると罪に問われる場合がある。それにまだ使えるものを壊すのは勿体ない。他人の命や身体を壊せば文句なく刑事罰が待っている。人間関係を壊したら窮屈になる。何かを壊したいのに何も壊せないからストレスが溜まる。
その点、本作品のブランドン・ブレイヤーはやりたい放題だ。気持ちがいいくらいどんどん壊し、どんどん殺していく。ホラー映画は普通、モンスターやゴーストやサイコの被害に遭いそうになる普通の人が主人公になって、その主人公と一緒に恐怖を味わうのだが、本作品はブランドンの両親には感情移入できず、宇宙から来た破壊者であるブランドンに感情移入してしまう。だから壊していくシーンに快感を覚えるのだ。微妙に共感できない母親のキャラクターをエリザベス・バンクスが上手に演じる。ブランドンと共有している口笛の合図の回収のシーンもうまく出来ている。
本作品の主人公はブランドンであって、ブランドンが赤ん坊の状態で発見されたのは、送り出した存在の深謀遠慮かもしれない。その惑星の支配生物の赤ん坊の姿であれば警戒されにくいし、攻撃もされない。うまく育てばその惑星の社会構造などがわかり、破壊者として必要な知識は自然に身につく。そうして時期が熟したら破壊をはじめればいい。
Bというアルファベットにこだわった作品で、主人公の名前はBrandon Breyerだし、土地の名前はBright Burnだ。明るく燃える土地柄なのである。この地名は制作者の洒落だろう。
ブランドンの破壊はまだまだ続きそうで、本作品の続編があるのは間違いないだろう。反抗期の少年らしく、社会的な地位や権威のあるものから壊していくことになるかもしれない。ブランドンが徹底的に破壊して人類が殆どいなくなったとき、残った人間たちがどのように振る舞うか、あるいは人類が消滅したあとの地球はどうなるのか。それが続編のテーマになるのであれば、ぜひ観たいと思う。