ブライトバーン 恐怖の拡散者 : 映画評論・批評
2019年11月5日更新
2019年11月15日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー
超人が捻じ曲がって成長したら? もちろん地獄絵図になるんだよ!!!
今や数多くの超人たちが世に出ている。彼らは皆、当たり前のようにスーパーパワーを世の為人の為に使う。でも、中には自らのパワーに酔いしれてクソ野郎に成り下がるヤツもいるのでは? というのは、藤子・F・不二雄原作「ウルトラ・スーパー・デラックスマン」や、ドラマシリーズ「ザ・ボーイズ」等でも描かれたテーマだ。本作もそうしたIFを描いているが、その中身は更に邪悪に振り切ったものとなっている。本作に登場するスーパーパワーを持つ少年ブランドン(ジャクソン・A・ダン)は、クソ野郎とかいう次元ではなく、完全悪の殺人マシーンである。
夫婦の家の近くにブランドンが落下してくる冒頭から、嫌でもスーパーマンを想起させる。ブランドンの能力もほぼスーパーマン。しかし彼はヒーローとはならずに、次第に歪んでいく。本人の性格面に難があったり、周りの環境にも少なからず問題があったりと、様々な要因がブランドンを悪に導く。本作はその過程をとても丁寧に描く。絶対に悪に堕とす! という製作陣の強い意志を感じる話運びがとにかく最高。ナイス捻じ曲がり!
ブランドンは、パワーを自覚すると一気に狂気を加速させていく。周りの大人たちも怯えるばかりで、真正面から向き合ってくれない。こうなったらもう止まらない。力を使って邪魔な人たちを次々と殺す立派な殺人マシーンの出来上がりだ。地獄のお膳立てが済んだ後は、いよいよ殺戮が始まる。一般人に対して躊躇なくパワーを使うブランドンの無慈悲ぶりに痺れる。痛覚に訴える描写も見事な出来。目に刺さったガラス片を取り出す様子をじっくり映すシーンは、あまりにも痛すぎて思わず目がキュンとなりますよ。
想像を遥かに超える悪堕ちっぷりで、ここまで突き抜けてくれるともはや痛快ですらある。超人が捻じ曲がって成長したら? という疑問に対して、もちろん地獄絵図になるんだよ!!! と力強く答えを叩き付けてくれる、アンチヒーロー映画の快作だ。