「主演ウィル・スミス、共演ウィル・スミス」ジェミニマン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
主演ウィル・スミス、共演ウィル・スミス
2012年のライアン・ジョンソン監督の『LOOPER/ルーパー』も自分vs自分であった。
しかしこの時は、今の自分をジョセフ・ゴードン=レヴィット、未来から来た自分をブルース・ウィリスが二人一役であったが、本作は違う。
引退を決意したDIA(米国防情報局)の凄腕スナイパー、ヘンリー。
引退を決めた最後の仕事にDIAの陰謀がある事を知り、真相を追求しようとする中で、何者かに狙われる。
自分の行動をことごとく知り尽くすその敵は何と!クローンで作られた若い頃の自分だった…!
文字通りのウィル・スミスvsウィル・スミス!
若い頃のウィルはCG処理や顔の入れ替えではなく(『アイリッシュマン』の技術)、完全フルCG。
驚くほど違和感ナシ! ついつい『バッドボーイズ』や『インデペンデンス・デイ』や『メン・イン・ブラック』の頃のウィルを思い出した。
表情や演技やアクションは現ウィル本人のモーション・キャプチャーで。
現代ハリウッドの映画技術には改めて驚かされる。もはや不可能など無いのでは…?
その映画技術はエンターテイメントの尽きる事の無い夢と可能性だが、劇中のクローン技術は現代の行き過ぎた科学技術を訴える。
今やクローン技術はSFの絵空事…と単に言えないのが事実。
羊のクローンは有名だし、そう思うと、人間のクローンもいずれ…いや、ひょっとして私たちに知らされてないだけでもう…?
いつの世も、科学技術と人間の傲慢は紙一重、表裏一体。
作品自体はエンターテイメント。
現ウィルと若ウィルの息詰まる激しい闘い!
銃撃戦、バイク・チェイス、そしてバイクとカンフーを合わせた本作オリジナルのアクション“バイ・フー”。
そのアクロバティックで斬新なアクションは迫力と見応えあり!
現ウィルの視点で話が進んでいくので、となると若ウィルは敵のように思えるが、若ウィルにもドラマあり。
任務に忠実で、年長者を敬う好青年。
孤児である自分を引き取り育ててくれたDIAのヴァリスを父として敬愛していたが…、
ある時自分がヴァリスの“ジェミニ計画”で作られたクローンである事を知って…。
任務と自分自身の存在に悩む若者。
彼を救おうとするヘンリー。
自分vs自分から終盤は、和解のドラマと、共にヴァリスと闘う展開へ。
別に悪くはないのだが、何となく展開は読めてしまう。黒幕クライヴ・オーウェンもステレオタイプ。
最後まで自分たちで殺し合う鬱展開より救いはあるが、話に斬新さや意外性は無かった。
製作ジェリー・ブラッカイマー×監督アン・リーの異色のタッグ。
本作の企画は遥か昔からあったそうだが、技術的に不可能。(候補に上がったキャストはとんでもねービッグスター揃いで、興味あったらWikipediaを)
やっと技術的に可能となり、その長かった苦労は察するが…、
企画が上がった時の新時代のSFアクションの期待は薄れてしまった感は否めない。
2度のオスカーに輝く名匠リーだが、ハリウッド・アクションを手掛けると精彩に欠け…。ポン・ジュノもこうなって欲しくない。
つまらなくはない。
メアリー・エリザベス・ウィンステッドも魅力的だし、ベネディクト・ウォンはやっぱりナイスキャラ!
でも、それ以上でもそれ以下でもない。
科学技術への警告は込められているが、ラストはハートフルなハッピーエンドで少々ご都合主義。
結局はハリウッド技術と、ウィルとウィルの共演を見せたかっただけの作品のような気がした。
近大さんがおっしゃるようにハリウッドのCG技術を見せたかっただけなような気がします。ストーリーがお寒いのは本末転倒ですね。
『アリータ バトル・エンジェル』のCG技術と映像の凄さは目を瞠るものがありましたが、『ジェミニマン』では、こんなこともできるんだ、ふーんぐらいにしか受け止めることができませんでした。