見えない目撃者 : 特集
日本映画の限界を押し広げる、映画ファン必見の骨太サスペンス・スリラー
猟奇殺人犯 VS 視力を失った元女性警察官 この緊張感から、目を背けるな
その“完成度”に映画ファンも絶賛 邦画は、ここまでできるのか…!
猟奇殺人犯を“目撃”したのは、視力を失った元女性警察官だった――。9月20日に公開を迎える「見えない目撃者」は、日本映画界の“限界”を押し広げるに値する、超骨太なサスペンス・スリラーだ。
上質なサスペンスと濃密なスリル、“あえて行き過ぎた”描写……。“スリラー好き”の目の肥えた映画ファンたちも、称賛の声を惜しまない。邦画は、これほどのクオリティを発揮できるのか――。きっと、度肝を抜かれるはずだ。
映画ファンの満足度を引き上げるスリル、セリフ、描写、展開――
極限に張り詰める“緊張感”に、鳥肌が止まらない…!
事故により失明した元女性警察官が、猟奇殺人事件の犯人を追い詰めていく。作品の完成度は高く、スリル、セリフ、描写、展開が有機的に絡み合い、怒涛の展開を見せる。
映画ファンには「デビッド・フィンチャー監督作『セブン』とよく似た感覚が味わえる」と言えば、わかりやすいかと思う。表現の限界に向かって猛進した本作の魅力を、以下に紹介していこう。
■観客の心を掴んで離さない“スリル”鑑賞中、心はずっと、スクリーンに引き付けられっぱなしだ。スリルが、絶え間なく押し寄せてくるからだ。
視力を失った後、誘拐事件に遭遇した主人公・浜中なつめ(吉岡里帆)は、行動をともにする国崎春馬(高杉真宙)の助けを借り、犯人に迫っていく。当初、事件は少女誘拐だと思われていたが、次第に連続殺人だと判明。しかもそれは、想像を絶するほどの猟奇性を帯びていることがわかり、なつめもまた犯人に追われていく……。
高揚感とともに「次はどうなる?」と物語に没入し、時間が吹き飛ぶように過ぎ去っていく。刑事・木村(田口トモロヲ)が容疑者宅の庭から“あるもの”を発見する場面など、その瞬間が持つ“衝撃”を最大限引き出す音楽・演出も強く印象に残る。見る者は、鳥肌が腕のみならず、背中から首筋・後頭部にまでゾクゾクと広がっていくのを感じるだろう。
■説明的ではない秀逸な“セリフ”
わかりやすさを志向する作品では、セリフは説明口調になりがち。一方で本作のセリフは無駄が省かれ、観客の「そういうことか(理解)」「それってこういうこと?(興味)」を同時に引き出す“絶妙なバランス”で配置されている。
観客が登場人物の言動の意味を考え、自発的に先々の展開を“推理”することをうながす。興奮は削がれず、より深く作品に没入していけるのだ。これほどの脚本、執筆した藤井清美(「ミュージアム」など)と森淳一監督(「重力ピエロ」など)は、どれだけ推敲を重ねたのだろうか……。
■限界突破に挑んだ“描写”
プロデューサーの小出真佐樹氏は、製作決定時にこう語っていた。「犯人の異常性を表現するため、通常の日本映画では避ける表現にあえて挑戦しています」。
言葉通り、レーティングはR15+指定。観客を侮らず、規制がかかるほどの描写をあえて実現することで、“日本映画の限界”に挑んだのだという。また、犯人のおどろおどろしい行動や、犯行目的の謎も印象的。目の肥えた映画ファンだけでなく、リテラシーの高いミステリー小説ファンも満足させられる要素も、随所に盛り込まれている。
■予想を裏切る無慈悲な“展開”
そんな描写に連動して、“展開”も昨今の邦画では考えられないほど攻めまくっている。ベタな推理や、「描かれるのはこれくらいだろ」という予想はあっさりと裏切られる。思わず「えっ、ここまでやる?」と二度見したくなるような“驚くべき無慈悲な展開”が、スクリーンで平然と繰り広げられるのだ。
“目が見えない”主人公は、どのように猟奇殺人犯と相対するのか?
見えないからこそ、気づくことがある―― 秀逸な設定にフォーカス…!
「視力を失っている主人公」と「影すら踏ませない猟奇殺人犯」の攻防という、秀逸な設定も目を引く。わけてもユニークなのは、視力がないからこそ、なつめが感覚を研ぎ澄ませ、手がかりをつかんでいく過程だ。見えないからこそ、気づくことがある。彼女が“見ている”世界を表現した映像は、一見の価値アリだ。
①停車する車に近づいただけで、少女誘拐に気がついた… どうやって?自動車とスケートボードの接触事故に遭遇したなつめは、様子をうかがうため現場に近づいたとき、この車で少女誘拐事件が発生していると確信。スケボーに乗っていた春馬は「運転手以外は誰も乗っていなかった」と証言したが……。誘拐に気がついた、その理由とは?
②あるものに触れただけで、容疑者が近くに潜伏していることがわかった… なぜ?春馬とともに独自の捜査を続けるなか、容疑がかかる桐野圭一(柳俊太郎)の家を訪ねたなつめ。もぬけの殻だったが、テーブルに置かれた“あるもの”に触れた瞬間、「桐野はまだ近くにいる」と指摘する。なぜ、そんなことがわかったのか――?
③向き合っただけで、刑事がなつめの“能力”に圧倒された… どうして?誘拐事件発生を知らせるべく、なつめは警察署へ。応対した刑事・吉野直樹(大倉孝二)は目の見えない彼女の“目撃談”を信じず、まともに取り合わない。それでも、なつめは吉野の吐息から“ある事実”を指摘し、ベテラン刑事をも驚かせる。主人公の聡明かつ芯の強いキャラクター造形が、ことさら魅力的に映えるワンシーンだ。
この完成度、この描写… 邦画は、ここまでできるのか――!
映画ファンも絶賛に次ぐ絶賛「すごく衝撃的」「とにかくハラハラドキドキ」
映画ファンにも、本作は極めて好意的に映っている。スリラーを好む目の肥えた観客が集った試写会では、緊張感やスリル、そして謎解きの高揚感に対する称賛の言葉が多く寄せられていた。
・最初の目撃証言から広がるストーリーが面白くて。展開が読めなかったところが、ワクワクしました!・事故で弟を亡くした、主人公の葛藤や勇気。それが伝わってきた。いろんな人にオススメできる映画だと思います。・吉岡里帆が体を張っていて、とにかくすごい!・目が見えないことで誰からも信じてもらえなかったなつめが、犯人を見つけ出すところで、「やった!」と声を上げそうになりました。・とにかくハラハラドキドキ――凄かった!・R-15を侮っていました。見終わった後も、足の震えが止まりませんでした。・「誰が犯人なんだろう」と、推理しながら見ていました。そうしたら……まさかの犯人! ・予想できない人が犯人だった……。すごく衝撃的でした。映画は怖かったですが、緊張感も、感動もありました。・目が見えなくても、果敢に立ち向かっていくなつめが、すごくかっこよかった。・最後の洋館のシーン……。めちゃくちゃ怖かった……!肩の力を抜いて行くもよし、気合いを入れて行くもよし、とにかく映画館へ足を運び、この衝撃に度肝を抜かれてほしい。「邦画は、ここまでできるのか!」。久々に快哉を叫びたくなる、冒険と野心に満ちた作品が現れた。