「愛なき街パリ・モンフェルメイユ」レ・ミゼラブル りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
愛なき街パリ・モンフェルメイユ
カンヌ国際映画祭審査員賞授賞作品。
『噫無情』の邦訳タイトルでも知られるヴィクトル・ユーゴーの同名小説と同じタイトルなので、はじめは、てっきり現代版のアレンジ作品かと思っていました。
小説の舞台となったパリ郊外のモンフェルメイユが舞台なだけで、小説とは関係ありません。
移民や低所得者が多く住むパリ郊外のモンフェルメイユ。
シェルブールから新たに配属された警官のステファン(ダミアン・ボナール)は、ふたりの先輩警官とともに地域パトロールに加わり、ここが犯罪多発地域であることを実感する。
そんな中、ロマのサーカス団からライオンの子どもが何者かによって盗まれる事件が発生。
事件の調査に乗り出し、犯人の少年を特定し尋問するも、不意を突いて少年は逃げ出してしまう。
先輩警官のひとりが咄嗟にゴム弾を放ったが、そのゴム弾は少年の顔を直撃してしまう。
さらに運悪く、一機のドローンがその一部始終を撮影していた・・・
という物語。
黒人、ムスリム、ロマなど多人種が入り乱れ、それぞれがそれぞれの縄張りを持っていて、とにかく厄介な地域であることがわかるが、監督のラジ・リは、このモンフェルメイユの出身であり、空気感を実に見事に撮らまえている。
新配属されたステファンが倫理的で、ふたりの先輩警官は腕ずく派(特に、リーダー格の警官)というあたりは、この手の警官もの映画では定石的がだ、その定石が舞台となる地域の不安定さを描くのにはいい方に働いている。
ドローンで撮影された映像データを取り戻そうとふたりの警官たちは躍起になっていくうちに、事態は複雑化し、最終的には住民の一部(若者)が暴徒化していく。
そして・・・
と、この後がどうなるのか興味津々だけれども、映画はユーゴーの言葉、「悪い草も悪い人間もいない。育てるものが悪いのだ」を引用して終わるが、うーむ、この結末はいかがなものかしらん。
フェルナンド・メイレレス監督の『シティ・オブ・ゴッド』を少し思い出しましたが、さて、どうでしょうか。
なお、ポスターに使われている凱旋門前の群衆シーンは、ワールドカップでのフランスの活躍に沸き立つ群衆のもの。
なんだかちょっと宣伝方法としてはズルいのではないかしらん。