罪の声のレビュー・感想・評価
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緊張感の途切れない秀作
原作は未読である。忘れ難いグリコ森永事件をベースに、その犯人像を想像して話を展開させる手腕には感服した。非常に良くできた話であり、脅迫で持って来させた金の受け渡しに失敗しても、実は他にも金を手に入れる方法があったという点は、見ていて目から鱗だった。いかにも有りがちな話だと思った。犯人たちの目的と動機がバラバラだったというのも頷けるし、金以外の目的で参加した者たちの薄っぺらな正義感と復讐心には心底から憤りを覚えた。50 年以上前の学生運動で革命とかほざいていた連中の思慮の足りなさ、独善性を痛烈に指摘した描き方が痛快であった。
テキストの読み上げ機能など遠い未来の話だった当時、話者特定を困難にすべく、脅迫文の読み上げに3人の子供を使った犯人グループとその協力者は、その子らが後でどんな不幸を引きずるのか、全く理解も想像もしていなかった。その想像力の欠如、我が子を不幸にしてまで、社会に一矢報いたいと語る身の程知らずの行動には、非常に腹が立った。3人のうち、最年少の1人を除き、あまりに悲惨なその後の話は目を覆うばかりであり、胸が痛み、深い同情を禁じ得なかった。
上映中、途切れることのない緊張感は、子役を含む俳優陣の好演の賜物であろう。小栗旬は、原色好きの変な映画監督の太宰役で見て以来だったが、力みのない演技が別人のようで、いかにあの女監督が異常な演技を強いていたかがよく分かった。成人後の聡一郎役の俳優は、特に印象的で、悲嘆に暮れる際の血管を浮き立たせた演技の迫力には度肝を抜かれた。望役の原菜乃華さんの美しさは、物語の痛切さをいや増していた。あと、聡一郎の子役のほうが星野源に似ていたので、やや混乱した。
佐藤直紀の音楽は、登場人物たちの不幸に想いを寄せて寄り添っているようで、非常に好感が持てた。演出は非常に見事で、根っから根性の腐り切った悪人から、インテリを気取っているくせに他人の人生にまで考えが及ばない無自覚な悪人まで、良く描き分けてあった。事実が次々に明らかになる度にカタルシスが落ちる想いをし、それが連打で来るので、大変に見応えがあった。
(映像5+脚本5+役者4+音楽5+演出5)×4= 96 点。
大作ではあるがやや物足りない
予告編を見た時は殺人事件を捜査する刑事物のミステリーなのかなと思って期待していたのですが実際はグリコ森永事件をベースとした物語だったのでちょっと肩透かしを食らいました。
結局半分実話、半分フィクションな訳ですからなんか中途半端さを感じてしまいました。
もちろん本作品はかなりの大作ではあるのですが、怖さ、悲しさ、せつなさみたいなものが少し物足りないと感じました。
また、登場人物が多くて全体的に少し間延びしている感がありました。
違和感も多少ありまして、そんなに小さな頃ではないはずなのにいつ誰のお願いで録音したのか覚えていないというのはちょっと変かなと感じました。
グリコ・森永事件を知らない世代の方のほうがむしろ楽しめる映画なのかもしれませんね。
途中でアイコムのIC-232というアマチュア無線機が出てくるシーンがあったのですが、私も大昔に同じ無線機を使っていたのでめっちゃ懐かしかったです。
最後に小栗旬が若い時の原辰徳に似ているのが気になってあまり映画に集中できませんでした。
さすがの野木亜紀子脚本!
滋賀県草津市のイオンシネマ草津にて、公開初日の初回上映を鑑賞。
かつて日本中を震撼させ迷宮入りしてしまったグリコ・森永事件をモチーフにした塩田武士氏のミステリー小説を小栗旬さんと星野源さんのダブル主演により映画化。
あたかも「たぶんそうだったんじゃないか劇場」的なリアリティーをもって、この未解決事件の真犯人像と事件の真相に迫るミステリー。
物語としては、小栗旬さん演じる35年前に時効を迎えていた劇場型犯罪の真相を追う主人公の新聞記者・阿久津と、幼少期にこの事件の脅迫テープに自分の声が使われていたことを知ってしまう、星野源さん扮する、京都在住のテーラー店主・曽根俊也を軸に、35年も前に迷宮入りした事件を掘り起こして一体どんな意味があるのかと自問自答しながらも、知らぬ間に犯罪に加担させられ、ある意味、被害者でもある「声」の主たちを巻き込んで事件の真相を巡る謎解きを行っていくというヒューマンミステリー的なお話し。
あいにくとベストセラー小説の原作は未読でしたが、私自身も、グリコ・森永事件については、京都府という、あの事件の顛末に関わる地域に住んでいる土地柄から、事件の当時はすごく怖かった印象が残っていますが、一体どの様に、この事件を料理されるのか楽しみにしていましたが、さすがに野木亜紀子さんによる脚本担当の作品だけあって、見事なバディムービーとして昇華させてくれていました。
あくまでも原作者の憶測によるフィクションであるのは分かりながらも、とても重厚なストーリーに、長尺な事もつい忘れてしまうほどお話しに引き込まれてしまいました。
お話しの展開や内容が内容だけに、「グリコ・森永事件」の真相とは謳えなかったのも理解出来ましたが、劇中の事件の犯行グループの行動のあらましはあの事件そのままでしたので、未だにあの事件をよく覚えている私からすれば、よく些細についてまでも調べ上げてあって、スリル溢れる内容にもなっていて面白かったです。
小栗旬さんの自然体な演技や、星野源さんもさすがにミュージシャンだけあって音感に鋭いのか、京都弁を上手く駆使してられて素晴らしかったです。
また端役に至るまで、中高年代の昔ながらのオールド映画ファンには懐かしく嬉しい豪華キャストだったのも堪らなかったですね。
私的な評価としましては、
現実のグリコ・森永事件を知らなかった世代でも楽しめるミステリー映画になっていたことでしょうし、 勿論、あの事件を鮮明に覚えている世代にとっても楽しめる作りの映画になっていましたので、文句なしの満点評価も相応しい作品かと思いました次第です。
この国の大人たちは未来を信じている
過去の欠片を丁寧に紡いで辿り着く答え
実際の歴史的事件を下地に、あくまでフィクションとして描かれた本作ですが、造りが非常に丁寧で細部まで矛盾がなく、且つ、大袈裟になり過ぎない物語になっているため、これが真実ですと言われても信じてしまいそうなくらいです。
ミステリー的要素よりも、時効を迎えたとはいえ日本中を巻き込んだ事件の真実が明らかになるにつれて変わっていく登場人物の心理描写に重きをおいて描かれていました。
真実を知らない方が幸せだった人もいれば、知ったことで少しは傷が癒えた人もいて。動機を聞くと「そんなことで」と思うけど、それは時間が経った今だから、当事者じゃないから感じることで。
令和の時代に見るとなお、昭和という時代の異常性が際立ちます。
でもラストは、哀しみや虚しさの中に少しの希望を感じることができ救われました。
動乱の70年代を過ぎて、どう生きて来たのか(狂った化石)
え。闘争?逃走じゃん。ってなりましたけど。何はともあれ年一候補でした。
製作陣営に名を連ねる面子で、この内容ってのはかなりの驚き。団塊世代の「闘争」を否定はしてませんが、変わらない姿を「化石」なんて呼びます。1984年のままだ?いえいえ、1970年のままでしょ。ってのは置いといて。
製作費をたっぷり使いました感が良いです。やっつけ感が全く無くて迫真。画も丁寧。役者さんはですね。星野源が気にならないならば、ちょい役の脇役さんまで、全く手抜き無しで、邦画ファンなら「豪華」と言う言葉を使いたくなるであろうくらいに贅沢です。ストーリーも好きな類い。堪能してしまいました!
全ての始まりは、生島の警察と社会に対する復讐心。生島の誘いに曽根達雄の「正義心」は奮い立ち、株の空売りで金を得ようと計画を練る。それは「金持ちから金を巻き上げる」事にはならないし、何より誘拐監禁も、脅迫も、毒入り菓子も、卑劣極まり無い。35年間、それは正義だったと思っていたなんて。まさに化石だよ。しかも狂ってます。
自分は正しい。正義は我にある。だから何をやっても許される。的な。大嫌いですわ、この手合いが。
少年時代。目の前で事故で姉を亡くし、それは自分のせいだと自分を責め続け。母親を一人残して逃げたと自分を責め続けたソウイチロウ。この母と息子の再会シーンが染みますだよ。ソウイチロウのヘビーな人生には胸が詰まりますだよ。
亜久津さんを見ていて思います。新聞社に、彼の様な矜持や良心を持った記者が、どれだけ居るんだろうか?
俊哉の父、光雄はテーラーとしての道を誠実に歩み続けた。その兄は活動家として奮い立ち、罪の無い人々を巻き込んで犠牲にして来た事を、正義だったと言い放つ。
生き方の話だよなぁ、この兄弟の対比。前を向いて、足元を見て、自分の足で立っている。そんな生き方をした光雄と、している俊哉。と、英士が素敵に見える映画でした。
望には生きてて欲しかった。
良かった。とっても。
真実を追う意味
フィクションだがノンフィクションのような作り方
流転
中途半端はいけないよ
ヨークの撮影が素晴らしかった。映画を見るのはああいうシーンが見られるところだね。
もう一ついいのは、エンデイングに流れるUruさんの歌!
前半はイマイチだなぁ・・・
小栗旬が「何のために報道するのか?」みたいなところに行き始めた頃から、引き込まれていくかな・・・
学生運動闘争とか、一つ一つが物足りなくて、中途半端、事件の動機の背景を網羅したにすぎない感じがした。
まあ、星野源、小栗旬を見たい方の映画だと言っていいかな。
予告動画ではもっと緊迫感があると思ったのだけれど、少々肩透かし感が残った、残念。
もう少し言えば、大道具や小道具、美術の統一感にかけていた(私個人の感想)。
映画の楽しみはセットにもあるからね。堤幸彦監督の映画みたいな、ああいう絵は見応えがある。
脇役もいい
声
あの事件は私が幼かったので、うる覚えだが記憶はある。
見応えのある作品でした。
素敵な役者さん揃いでした。
ソウイチロウが放った言葉『曽根さんはどんな辛い人生だったんですか』と
曽根は言えるわけがない。
幸せな人生だったなんて…。
余談にはなりますが、ソウイチロウの幼い頃の写真が星野源さんに似てるなぁと思ったのは私だけでしょうか。
今日もまた素敵な作品に出会えて感謝致します。
【”無垢な声を化石のような理念実現のために使うな!”「グリコ・森永事件」をモチーフに、国家権力への反発思想を持つ人々と烏合の衆に人生を狂わされた人々の姿を描いた物語。重厚で見応えある作品である。】
■印象的なシーン
1.自分の幼き時の声が、30年前の恐喝事件で使用されていたと分かった時の、曽根俊也(星野源)の驚愕した表情。ネットで再現する声と自宅のラジカセで亡き父の保管箱から出てきたカセットテープの声を聴き比べる姿。
- そして、再後半、その声を録音した人物が誰であったかが判明するシーン。国家権力に対する怒りに駆られたとは言え・・。-
2.且つては社会部記者として奮闘していたが、ある日虚しさを感じ、今は文化部記者として日々を過ごす男、阿久津(小栗旬:今作の演技は、良かった・・と思う。虚しさを感じながら漠然と生きてきた姿から、徐々に”且つての情熱ある記者魂を持った自分の姿”を取り戻していく過程を、絶妙に演じている。)が、30年前の未解決事件に再び向き合って行く姿。そして、全く違うアプローチから”偶然”出会った俊也と阿久津。
3.俊也と阿久津が且つての未解決事件の真相に徐々に迫っていく過程の描き方が、とても良い。数々の関係者への粘りあるアプローチにより、徐々に言質を捕らえ、真実に迫っていく過程がスリリングであり、グイグイと物語に引き込まれていく・・。
4.俊也以外に、恐喝事件で声を使われていた二人の女の子と男の子のその後の苛烈な人生は観ていて、キツイ。愚かしき父親のために”声を勝手に使われ”、自身の人生が崩壊していく過程。
俊也はオーダーメイドテーラーとして父の跡を継ぎ、幸せな家庭を持つ一方、生島望と生島聡一郎姉弟と母親がたどった過酷な人生は、正に紙一重である。
父親がキチンとした人物であったか、なかったかの違いである。
ー 家庭を持つ男は、”愛すべき人達をしっかりと守らなければいけない”という、至極当たり前のことを、改めて実感する。ー
5.阿久津が英国に、俊也の叔父である曽根達雄を探しに行く際に会った英国の大学教授の女性が最初は、阿久津の問い”30年前、親しくしていた中国人の現在の居所を知りませんか?”に対して、素っ気なく”中国人何て、知らないわ・・”と答える前半のシーンと、後半阿久津が再び”真の犯人を引きずり出す・・”と言い残して英国に飛び、彼の女性に再び”親しくしていた”日本人”の現在の居所を知りませんか?と、問うシーン。
それに対する、彼女の答え”彼は、”fossil"だから・・”
ー このシーンは、今作の胆の一つのシーンであろう。
阿久津の取材の仕方の変化(それは、彼自身の変化でもある)と、
英国の大学教授の女性が、且つての恋人である曽根達雄を、”fossil"だから・・と答える事で、達雄の”30年経っても変わらぬ思想”を否定していることが分かるからである・・。
そして、その考えは”今作品の根底”にもなっている。ー
6.阿久津が漸く、イギリスの田舎町で本屋を営む、曽根達雄と会うシーン。達雄の且つての理想、理念を捨てきれない姿と、そのために多くの人が悲劇に見舞われた矛盾を指摘する阿久津。絶句する達雄の姿・・。
ー 余りにも大きい、若き日の理想、理念を貫いた代償・・。-
7.職を失い、自死しようとしていた生島聡一郎(宇野祥平:このような役が絶妙に会う・・。失礼ながら頭髪の薄さ、やせ細った身体・・)の携帯電話に俊也から、電話が入るシーン。
一度は切り、命を絶とうとするが、俊也の言葉 ”僕も声を使われた・・”を聞いて。
ー 映像で見ると、リアルである・・。このシーンもこの作品の胆の一つであろう。生島聡一郎が世間に真実を話し、長き間生き別れていた母と再会出来たのだから・・。そして、記者会見に臨む聡一郎が着たスーツは・・。-
8.真実が明らかになった後、阿久津が俊也の店を訪ね、にこやかな表情で頼んだ事・・。嬉しそうに応える俊也の言葉・・。
ー 二人が徐々に再生していくだろう事を、暗示しているシーンである。-
<重厚で、見応え充分なヒューマン・ミステリー&サスペンス作品。
実際に有った、彼の有名な事件をモチーフに、土井裕泰監督が見事な手腕で、30年を超える人間ドラマを見応えある映像作品として仕立て上げた作品。>
■蛇足
・コロナ禍により、ハリウッド大作が次々に公開延期になる中で、邦画の良作(含むアニメーション映画)が続々と公開される僥倖感に浸る日々である・・。
原作以上
原作を超えたと思う。
母親から頼まれたものを探している時に見つけたって原作と違い偶然に見つけたテープと手帳。
曽根俊也自身が独自に真実を求め歩くので物語の進行が早くて観やすかった。
何故そこまで辿り着けたのか?協力者が居た原作と違うのだから少し説明あっても良かったけどね。
阿久津が文化部から引っ張られる等の面白いシーンはそのまま阿久津と曽根俊也が絡むシーンには厚みを持たせて引き込みやすく魅せる。
学生運動シーンも結構みせて反社会的思考の芽生え⁈みたいのを隅に置かせておく。
キャスティングも含めて素晴らしい出来だと思いました。
ただ子役がちょっと厳しかったかな?
私は、メチャメチャ面白かった
キツネ目の男が目撃されている、製菓メーカーのあの未解決時間を、よくここまで真実であるかのようなフィクションに作り込んだ。
現実かと混乱するほどの緊迫感。
女の子から夢も命も奪い、男の子から青春を奪い、大人になった男からも、平穏を奪った、その罪の重さを問われて尚、逃げた男を演じた宇崎竜童の、何ともいえない渇ききった演技。
とても不快なのに、グングン引き込まれる、派手さはないけど見応え抜群の作品でした。
救われたのは、男の子がお母さんと再会できたこと。
しかしそこで聴かせる声が、女の子から全てを奪ったテープであることの皮肉さが、胸をえぐります。
罪の声が唯一の形見
すごくきちんとまとまってた。
小栗旬サイド
星野源サイド
ふたりがまじあって
全貌がみえ
一気に物語がすすむ。
物語もわかりやすく
辻褄もあい
しっくりくる。
ひとつの理想や野望が
少しづつ周りに影響をあたえ
最後には不幸にする
人に復讐、報復などをした結果は
必ず周りにも本人にも良いものを生まない。
やっと自由になれた声の主は
声を証拠に家族と再会し
声を亡き姉の形見として涙する
手堅く、社会派な映画
だれにでもオススメできる
良き作品でした
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