罪の声のレビュー・感想・評価
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紐解かれるスピード
運命とは
日本最大の未解決事件の新解釈
予告編を観て面白そうだった上に、レビューサイトでの評価がかなり高かったので今回鑑賞いたしました。しかも個人的に好きな俳優である星野源と小栗旬のダブル主演ということで、私の期待は勝手に膨らんでおりました。
ちなみに原作は未読で、モチーフとなった実在の事件である「グリコ森永事件」についても事件の名前を聞いたことがある程度の知識でした。
結論から言えば、非常に面白かった。会話シーンが多いけどテンポが非常に良くてサクサクとストーリーが進んでいくところも良かったし、事件概要についてキチンと説明があったので「グリコ森永事件」を知らない私にも非常に分かりやすかった。事件を追う二人の男たちが、ある時点で邂逅し、共に事件解決に向かうバディものとしての面白さもあった。ただ、後述しますが終盤にある衝撃の展開があるのですが、それは「唐突過ぎない?」って感じで違和感があって、そこだけ低評価ポイントだったかなぁ…。でも、ボリュームのある原作を2時間20分の短い尺に頑張って纏めたことで生まれた違和感だったのかもしれないですね。それを考えると仕方ない部分もありますね。
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京都で父から引き継いだ小さなテーラーを営む曽根俊也(星野源)は、妻と娘と一緒にごく普通の幸せな生活を送っていた。ある日父の遺品である小物入れの中から、「1984」と書かれたカセットテープと、英語のメモが書かれた手帳が出てきた。俊也がテープを聴いてみると、そこには幼少期の自分が不思議な文章を読み上げる声が収録されていた。手帳に書かれていた「GINGA」「MANDO」の文字を手がかりに調べてみると、その音声は30年以上前に発生した戦後最大の未解決事件「ギン萬事件」で犯人グループが使用していた音声であることが判明する。
時を同じくして、新聞記者である阿久津英士(小栗旬)は、過去の事件を再調査する企画に半ば強引に参加させられ、「ギン萬事件」について調査をすることとなった。
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自分が戦後最大の未解決事件に加担していたかもしれないと独自に調査を進める曽根と、会社の企画で嫌々ながら「ギン萬事件」の調査に乗り出す阿久津。事件の発生から30年以上経過した平成の末期に、偶然にも二人の男が事件の真相に迫るというのは結構熱い展開です。
二人はそれぞれが持っている手がかりから当時の関係者などに聞き込み行ないます。聞き込みを行なう→別の関係者を教えてもらう→聞き込みを行なう→……という感じで、20分くらいは二人の聞き込みを見せられます。この聞き込みが繰り返されるシーンは正直「長いな」と感じてしまいましたが、ところどころ飽きさせない展開がありますし、事件の概要を観客に理解させる意味でも必要なシーンだったとは思います。聞き込みの過程で「どんな事件だったのか」がしっかり説明されるので、私のようにモデルとなったグリコ森永事件について知識が無くても全く問題はありませんでした。
そして、曽根も阿久津もとある共通の証言者に行き当たり、そこで「自分以外にも事件について調べている人間がいる」ということに気が付きます。その後二人は邂逅し、紆余曲折を経て共同で事件の調査に乗り出します。原作よりもバディものとしての毛色が強くなっているらしいですが、個人的にはそういうの大好きなんで、高評価ポイントですね。二人が持っている情報を刷り合わせて、更に真相に近づく描写も良かったです。
過去の未解決事件を通して、マスコミはどうすべきだったのか・警察はどうすべきだったのか・既に時効を迎えた過去の事件を蒸し返すことにどんな意義があるのか・自分の声が犯行に使われた子供たちがどうなってしまうのか等々……。様々な事に対する問題提起がなされる作品でもありました。この作品では、それらの問題提起に関して「映画としての回答」をきちんと提示していたので、そこも高評価です。
1つだけ不満点を挙げるなら、物語終盤で「意外な犯人」が判明するシーンがあるのですが、そこだけが非常に唐突で特に伏線も無いので気になってしまいました。何故父の遺品が入った小物入れからテープと手帳が出てきたのかも最後まで謎でした。
まぁ、多少の不満点はありつつも非常に楽しめる傑作映画だったと思います。それはレビューの点数の高さが物語ってます。最近の邦画には珍しい、重厚で骨太で楽しめる映画でしたので、オススメです!
めちゃくちゃ丁寧に作られた作品…!
雑なところが全然なくてとても丁寧に作られた良い映画だった…。
作り手からのたくさんの問題提起とメッセージが込められてるのを感じて胸が詰まった。
モチーフとなった事件を知らない+原作は未読だったのだけど、野木亜紀子さんが脚本をされているということで鑑賞。
事件や人の不幸をエンタメにして消費するマスコミと大衆への疑問。
「正義」という大義名分をかかげた暴力によって傷付けられ翻弄される、社会的弱者の立場にある人々へのまなざし。
解決しなかった事件によって人知れず痛みや何かを背負い続けた人たちへのまなざし。
(社会的弱者へのまなざしや、裁かれるべき者が裁かれないことで生まれる社会や誰かの人生の歪みや痛みは、同じく脚本を担当した野木さんのドラマ、MIU404でも描かれていた気がする。)
意図せず犯罪に加担した者たちの痛みと苦悩。
昭和(古い時代)の学生運動や暴力の価値観の否定と脱却と、過去を教訓にしようという想い。
実際は未解決らしい事件をベースによくこんな物語を生み出すなあと感動してしまった。モチーフになっているのは過去の事件だけど、提起される問題を今の時代にも十分当てはまるものにして、今の価値観で落とし所へ帰着させている(阿久津や曽根は昭和や過去の価値観を持たない今のアップデートされた価値観の持ち主だ。)
マスコミ側(当事者ではない新聞記者)と一般市民(しかも社会的弱者だったために巻き込まれた事件当事者)、双方の視点から描かれて、両者が絡み合い、最終的には共に寄り添いながら動くようになる、という物語の構図もすごくうまいし良い。
阿久津と曽根が相棒のような関係になっていくところは胸が熱くなったし、この重い物語の清涼剤にもなっていた。ラストシーンも良かったな…。
序盤はサスペンス要素が強くて物語がずっと緊迫し、底知れない恐ろしさみたいなものがあってずっと怖かった。
真実が明らかになるにつれ、「罪の声」や事件に人生を翻弄された人たちが抱えた想いが表に姿を表して切なさで胸が苦しくてたまらなかった。
誰かのことを想って、または自分の人生を守るために口を閉ざしてきた人たちが阿久津と曽根に動かされて、ずっと秘めてきたものを吐露するところは苦しかった。
事件に直接関わらなくたって、何十年を傷付いて苦悩して人たちがいた。たぶん現実だってそうなのだろう。
途中でだれることなく最後まで観れたし、エピソード積み上げとその帰着のさせ方が素晴らしい。
あと証言者をはじめ俳優さんが豪華で、うまい俳優さんばかりなのも良かった…。業界のドンみたいな人の話し方がすごく静かなのがすごくリアルな感じで怖かった。
本当に良い映画だった…。
罪の重さ
主演の小栗旬さん、星野源さん、出演されたキャストの皆さんの演技がそれぞれに素晴らしく見応えが有りました。
中でも小栗旬さんが演じられた新聞記者の、温かみの有る表情や眼差し、他者と誠実に向き合う姿に魅力を感じました。
犯罪に巻き込まれた者が背負うものの大きさや苦しみ、事件を追い取材を重ねる新聞記者の真摯さ、葛藤、内に秘めた思いがリアルに描かれており、エンドロールの切ない歌声に胸が熱くなりました。
映画館での鑑賞
面白い視点からのストーリーです。
硬派な本格的社会派ミステリー
グリコ、森永事件は子供の頃に連日報道されていたのは何となく覚えてました。誰も殺されたり、大金を奪われたりしたわけではなく、迷宮入りさせた警察がだらしないと感じたくらいの事件の印象でした。
たいして気になる題材ではないですが小栗旬と星野源の初共演と言うのも気になり観賞。かなり良質な社会派ミステリーでした。野木亜紀子の脚本も光ります。全く事件を知らない人にも伝わりますし、土井監督も演出も秀逸。犯罪に加担することによって人生が狂ってしまった子供たちを描いており、単に迷宮入りした事件を追う単純なストーリーじゃないところが非常によく練られている。キャストもまたよく、個人的には宇野祥平は一世一代の好演だと思います。
一冊小説を読んだような価値を感じる珠玉の作品。
あくまでもフィクションでしかないエンタメ作品。真相に迫る映画ではない。
「日本中を震撼させた劇場型犯罪の真相に迫る!」という映画のキャッチコピーに釣られてしまいましたが、実際に観てみると、真相に迫るような作品ではなくて、正直ガッカリしました。
グリコ森永事件(映画内では架空の会社名が使われています)は当時リアルに報道に接していた世代ですが、この映画を観ながら、あの事件を思い出す事はほぼ皆無でした。
メインは犯行に使われた録音テープの声の主だった人や関係者の物語であって、事件はあくまでもエンタメ小説の題材にされている面が大きい。
作者の脳内での作り事が多過ぎて、あの事件を懐かしく知る自分には、余りピンと来ない筋書きのドラマでした。
残念ながら、心に響くような内容では無かったですね。
ただ、美しい映像と音響は素晴らしく、アンビエント映画として観てしまいました。
登場人物に共感する事も少なく、感情移入も特に出来ず、スッキリしない終わり方で締め括られた感があり、作り手側が結局は何を伝えたいのかも微妙で、メッセージ性も薄い感じがしました。
学生運動など時代背景を照らす場面も出てきますが、ここは作品内での重要な要素でありながらも描き方が物足りず、これは原作者が若過ぎるために表現しきれてなかったのでしょう。
キツネ目の男が出てきますが、自分が長くイメージしてた犯人像とは違って、惜しかった。
自分がイメージしていたキツネ目の男は、もっとガッシリとした体格で、もっと不気味な迫力を放つ男。
俳優陣は豪華で演技も良かったし、有能な監督や制作陣によるプロフェッショナルな映像美などは楽しめたのですが、肝心のメインとなるストーリーが個人的にはイマイチ納得いかない点が幾つもあって、あの事件が起こるに至った重要な動機自体が、作者の脳内で薄っぺらな質感のものに成り下がったような、お粗末な印象も受けました。
結局は何を伝えたいかという肝心な所がぼやけた印象で、モヤモヤしたままの気分で消化不良。
それが正直な感想になってしまいます。
観に行く前から良い評価レビューがやたらと多くて、実際に観たら、何だか騙されたような気分にもなりました(苦笑)。
映画はやはり自分の目で観ないと分からないものだ、と改めて感じました。
良き!
映画館でうるっときたのは久しぶり!3人の声に焦点併せ、こういうアプローチの映画だったのかー。『罪の声』だもんね。とりあえず、感謝の心を持って大切に生きないとなと思わせる映画(いい映画をみるとだいたいこうなる)
前半1/3は登場人物や説明を追うのに少し疲れたけど、後半からは引き込まれました。
星野源の何気ない表情がとても素敵でした。終盤母親と話す時も責め立てない感じが余計にぐさっとくる。
エンドロールの曲も良かったです。
落とし所が凄い?以外!
罪の声
このレビューでこの映画もとい原作小説が基にした実際に起きた事件の名前を出すのはタブーだろうか。2016年に原作が出版され、その中身の濃さに引き込まれてあっという間に読破してしまったのを覚えている。件の事件についてはWikipediaで得た知識しか持ち合わせていなかったが、その事件が想像を絶するほど日本中を震撼させたであろうことは、当時まだ影も形もなかった私ですら容易に想像できる。
その事件における直接的な犠牲者はいなかったという。しかしながら今作でスポットを浴びた「犯行に使われたテープに録音された子供の声の持ち主の人生」を想像した人が当時どれだけいたのだろうか。曽根俊哉のように何も知らないまま大人になり、幸せな家庭を築いたかもしれないし、生島姉弟のように凄惨な人生を強いられていたのかもしれない。単なる「子供の時分に声を録音されたテープ」ではないのだ。「日本中を震撼させた犯罪に使われたテープ」なのである。いわば彼らは陰の犠牲者なのであり、この事件において「犠牲者なし」と言い切るのはあまりに軽率なことだろう。どんな事件も様々な角度から光を当てるべきなのである。コロナウイルスが流行し、不安を煽るかのように偏った報道をする、そんな昨今のジャーナリズムの在り方を正そうと奔走したのが阿久津英士なのではないだろうか。かつていち新聞社が真相解明できなかったことだけが問題ではないのだ。
2000年に時効を迎え、すべてが迷宮入りしてしまった未解決事件。詳らかにならなかった現実を塩田武士氏が補完した作品というイメージ。ただ単に想像で書いているのではなく、これが事件の真相なのではないかと思わされるほど綿密に描き込まれている。原作を読んだ時から、きっと実写映画化するのだろうなと思っていたので、映画化の報せが届いた時はとても嬉しかった。主演のキャスティングにやや違和感を覚えたものの、こんなに深い余韻に浸れる映画は久しぶりで、文句の付け所が無く満足度が高かった。
胸がぎゅーっと痛くなりました。
結論から言いますと、とてもいい映画でした。
実際に子供の頃、ニュースで盛んに流れていたニュースですし、たしかに表立って誰も死んでないし、1円も被害にあっていない事件で、ただただ近所のスーパーにも毒入りお菓子が置かれているかも、そして脅迫の時の子供の声に不気味さと恐怖を感じていたのを思い出しました。その事件を知ったうえでこの映画をみると、本当に面白いと思います。
次から次に証言が出てきて、最後まで飽きることなく鑑賞しました。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、胸がぎゅーっと締め付けられるような感覚が映画を観終わった後もしばらく続きました。
歴史の1ページの映画です。
観ておいて損はないと思いますし、新たな発見もある映画だと思います。
胸がいっぱいになった。
もし、伯父さんやお母さんの父親が理不尽な濡れ衣で、社会から抹殺されていなければ、警察や社会に対する怒りを持ち続けることなく、事件も起きていなかったかもしれない。
事件の残酷な運命が、また子どもに降り掛かってしまったことに胸が張り裂けそうな想いがした。
メディアの役割とは?報道とは?ということが問われ、マスコミが一括りで批判されてしまうことも多い昨今。
なぜ報道するのか、そこに疑問を持ち社会部を離れた阿久津。
でも、一人の命は救えた。
そこに意味を見出したからこそ、社会部に戻ったのではないだろうか。
脇を固める役者さんが、皆良かった。
総一郎を演じている俳優さんは誰だろう!?とすぐ調べてしまった。
それくらい、母親に呼びかけるシーンが涙腺にきた。
「重版出来」や「逃げ恥」で信頼できる監督と脚本家だと思い観に行ったが、それ以上に何か心に残る作品だったと思う。
数奇な運命を背負わされた子供達
見応えのある映画だった。
まず、脚色がうまいと思った。
実際の未解決事件をモチーフにした原作の膨大な情報量が見事に整理され、大胆に省略しつつもストーリーに説得力があった。
犯罪に声を使われた姉弟の行方を記者・阿久津(小栗旬)とテーラー・曽根(星野源)がコンビとなって追う、一種のバディムービー。
小栗旬と星野源は出会いの最初の場面だけは対立する。
二人は出会う前にそれぞれ独自の調査を行っていたが、それがやがて結びつき行動を共にするに至る過程や、二人に信頼関係が築かれるエピソードなどが、簡潔で無理なく描かれている。
真相が解明された後がやや冗長な気はしたが、悲惨な人生から救済される後日譚はこの物語には必要だったと思う。
演出は堅実で丁寧な印象。
過去の事件を追う話だから半分は過去のシーンで構成されているのたが、現在と過去をテンポが良く切り替え、解りやすい。
星野源が女の子の元担任教諭にたどり着き、そして同級生から話を聴く場面は涙を誘う。
やっと弟にコンタクトが取れる場面、携帯電話の着信音が薄暗い部屋で鳴るところからのカメラワークが素晴らしい。
そして、小栗旬が宇崎竜童に、星野源が梶芽衣子に、別々に真相を聴く場面が同時進行でクロスするクライマックスの演出が圧巻。
おそらく大抵の人が、実在するはずのかつての子供達がこれを観てどう思うか気になったはず。
彼らの人生模様は完全なフィクションだが、自分が犯罪に巻き込まれたことを知っていた子と知らなかった子がいたという設定は、原作者の視点の鋭いところだと思う。
実在する彼らは、今もその事を知らずに平穏に生きていて欲しいと願うし、もし映画のように悲惨な目にあって、未だに引きずり続けているのなら、あなたたちに罪はないというこの物語のメッセージが伝わればいいのにと思う。
劇場型犯罪と呼ばれたこの事件では、犯人グループは身代金を全く受け取れていない。
緻密で大胆だと思われた計画の裏側では、実はお粗末なドタバタ劇が繰り広げられていたというユニークな発想は、あながちあり得るのかもしれない。
実に見応えのある作品
未読で申し訳ないのだけれど(当時の新聞を全部読んでいたらしいし、作者の並々ならぬアプローチがあった事は知っていた)原作が秀逸なのだろう。
事件の解釈の仕方が見事で、観ていてとても引き込まれる内容だった。
「声」に焦点を当てた点も素晴らしく、事件当時同じような年だったこともあり実に興味深かく観れた。
また当時は何とも思わなかったが、「声」によって狂う人生は確かにあったであろう。観ていて本当に怖いと思いました。
また主演の二人も良いが、脇を固める役者達が実に良いんですね。
梶芽衣子や宇野祥平などの存在感が強く、よく集めたと思います。それとキツネ目の再現度は見事。
当時の事件を知る人には、時代を経て全て解決してくれたような爽快感すらあるでしょう。私にはありました。
謎だった部分や不可解な行動が段々と紐解かれる様は、脚本の素晴らしさを感じます。
ただ、事件を知っていると知っていないでは作品の受け止め方がだいぶ違うと思うので、知らない世代は軽くでも調べておいた方がより楽しめると思います。
骨太な作りで実に見応えのある作品でした。
絶対の正義はない
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