劇場公開日 2020年10月30日

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「数奇な運命を背負わされた子供達」罪の声 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0数奇な運命を背負わされた子供達

2020年11月18日
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鑑賞方法:映画館

見応えのある映画だった。

まず、脚色がうまいと思った。
実際の未解決事件をモチーフにした原作の膨大な情報量が見事に整理され、大胆に省略しつつもストーリーに説得力があった。

犯罪に声を使われた姉弟の行方を記者・阿久津(小栗旬)とテーラー・曽根(星野源)がコンビとなって追う、一種のバディムービー。
小栗旬と星野源は出会いの最初の場面だけは対立する。
二人は出会う前にそれぞれ独自の調査を行っていたが、それがやがて結びつき行動を共にするに至る過程や、二人に信頼関係が築かれるエピソードなどが、簡潔で無理なく描かれている。
真相が解明された後がやや冗長な気はしたが、悲惨な人生から救済される後日譚はこの物語には必要だったと思う。

演出は堅実で丁寧な印象。
過去の事件を追う話だから半分は過去のシーンで構成されているのたが、現在と過去をテンポが良く切り替え、解りやすい。
星野源が女の子の元担任教諭にたどり着き、そして同級生から話を聴く場面は涙を誘う。
やっと弟にコンタクトが取れる場面、携帯電話の着信音が薄暗い部屋で鳴るところからのカメラワークが素晴らしい。
そして、小栗旬が宇崎竜童に、星野源が梶芽衣子に、別々に真相を聴く場面が同時進行でクロスするクライマックスの演出が圧巻。

おそらく大抵の人が、実在するはずのかつての子供達がこれを観てどう思うか気になったはず。
彼らの人生模様は完全なフィクションだが、自分が犯罪に巻き込まれたことを知っていた子と知らなかった子がいたという設定は、原作者の視点の鋭いところだと思う。
実在する彼らは、今もその事を知らずに平穏に生きていて欲しいと願うし、もし映画のように悲惨な目にあって、未だに引きずり続けているのなら、あなたたちに罪はないというこの物語のメッセージが伝わればいいのにと思う。

劇場型犯罪と呼ばれたこの事件では、犯人グループは身代金を全く受け取れていない。
緻密で大胆だと思われた計画の裏側では、実はお粗末なドタバタ劇が繰り広げられていたというユニークな発想は、あながちあり得るのかもしれない。

kazz
pipiさんのコメント
2021年7月6日

罪の声についてはこちらに。

私、この作品はダメでした〜。
脚本自体は上手いと思いましたが、学生運動について非常に上っ面のイメージで軽々しく扱われた印象が拭えません。

野木さん1974生まれ、塩田さん1979生まれ。
彼らにとって学生運動とは、幕末の新撰組や志士、戦国時代の信長達武将と変わらない存在なのだなぁ、と少し苦々しく腹立たしく思いました。

原作未読なので、どこまで書かれているのかわかりませんが、
史実を扱う時には、可能な限り真実に近づけるか、反対に完全に作り話だと誰でもがわかるように振り切って欲しいと思いました。

でも、脚本の出来自体は良いと思います。

pipi