ホテル・ムンバイ : 特集
もし自分が宿泊しているホテルが、突然テロリストに占拠されたら?
衝撃の実話&圧倒的な緊迫感 これは、あなたにも起こり得る“真実の物語”
五ツ星ホテルマンの“おもてなしの心”が“奇跡の脱出劇”を呼び起こした
9月27日から公開される「ホテル・ムンバイ」は、インドで起きた“ムンバイ同時多発テロ”が題材だ。テロによって罪なき市民が犠牲になる。これは決して、「海を隔てた遠い国」に限った出来事ではない。ラグビーW杯や2020年の東京五輪など、国際的なイベントを次々にホストする日本が、いつ標的となってもおかしくないのだ。
本作は、占拠された五ツ星ホテルからの“奇跡の脱出劇”を描く。ホテルマンたちの歓待の心が、多くの命を救った知られざる逸話。この映画は、あなたにも起こり得る“真実の物語”だ――。
2008年に起きた“ムンバイ同時多発テロ” 五ツ星ホテルが占拠された――
武器のない“人質”の多くは、いかに生還したのか? その意外な脱出劇とは
2008年11月26日。突如としてムンバイに銃声が鳴り響いた。ごった返す駅や旅行者に人気のレストラン、病院、映画館などで10件のテロが同時に発生した。29日に事態が終息するまで、死者は少なくとも172人、負傷者は239人にのぼった。イスラム過激派組織による犯行だった。
□世界を震撼させる“惨劇”の裏で起きていた、名もなき英雄たちの“奇跡の実話”を映画化本作は惨劇の舞台のひとつでもある、タージマハル・ホテルでの出来事を映画化している。ライフルを携えた多数のテロリストが占拠し、500人以上が絶体絶命の危機に見舞われた。
ホテルマンたちは決断を迫られる。宿泊客を守らなければならない。しかし、自分たちも死ぬかもしれない。大勢が避難した一室が、今にも破られようとしたそのとき……。“名もなき英雄たち”が呼び起こした奇跡を、劇場で目撃してもらいたい。
□ホテルマン“ならでは”の心構えが、多くの命を救った―― その驚きの過程とは
結果として、このホテルでは多くの命が救われた。ホテルマンたちが震えながらも勇気をもって立ち上がり、命がけで奮闘しなければ、死者は何倍にも膨れ上がっていただろう。
では、ホテルマンたちは具体的に何をしたのだろうか? その過程に、本作の最大の魅力が詰まっている。真心と、ゲストファーストの精神――、物語に宿る人間の崇高な精神に、熱い涙がこみあげてくる。
□呼吸を忘れるほどの緊迫感… テロを再現した迫真の映像
もうひとつ特徴的なのは、描写の迫真性だ。乾いた発砲音が何十と重なり、人は倒れ、床は鮮血に染まる。テロリストによる殺りくは、意外とも思えるほど無慈悲に描かれ、観客は一気に絶望のどん底に叩き落とされていく。
アカデミー賞3部門ノミネート「ボーダーライン(2015)」の製作陣が創出した、迫真の映像。スクリーンを見つめる観客は、いつの間にか占拠されたホテルに身を置き、息を殺して物陰に隠れているような錯覚を覚えるだろう。
「この俳優が出演していれば、ハズレなし!」
「スラムドッグ$ミリオネア」デブ・パテル、今回も胸を打つ“安定の名演”
主演にはこの男、デブ・パテル。映画ファンには「この人が出ているなら、ほぼ確定で良い映画」とメルクマールにされている、いわば“鉄板”の俳優だ。今回も、毎度おなじみともいえる安定の名演を見せている。
□「スラムドッグ」「チャッピー」「LION」… “すべらない俳優”その名はデブ・パテル彼の実力は、これまでの出演作が雄弁に物語っている。アカデミー賞作品賞に輝いたダニー・ボイル監督作「スラムドッグ$ミリオネア」では、スラム街出身の無学の青年をエモーショナルに熱演した。
ほかAIロボットの成長を描いた感動作「チャッピー」、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた「LION ライオン 25年目のただいま」など。どれもこれも豊かな感動が詰まった、名作と呼ぶにふさわしい映画ばかりだ。
□今度は“ホテルマン”役! 人生で最も“魂”を込めた熱演
そんなパテルが今回演じたのは、宿泊客を脱出させるためホテルに残った、心優しい給仕アルジュン。最大の窮地が訪れたとき、アルジュンは最大の決断を下すことになる。
ムンバイ同時多発テロは、パテルにとっても生涯忘れ得ぬ事件だ。デビュー作「スラムドッグ$ミリオネア」のダンスシーンは、ムンバイの駅で撮影された。その数か月後、その場所が、テロの標的となった。
「これまで出演した作品以上に(今回は)自分の意見を言った」。パテルのこの言葉には、当時抱えていた忸怩たる思いがにじみ出ている。製作総指揮にも名を連ねているのは、単なる出演作にはしたくない、そんな強い思いの表れだろう。
□アーミー・ハマーら共演陣も光る “料理長”の存在感も印象的
共演には、「君の名前で僕を呼んで」の好演も記憶に新しいアーミー・ハマーら。なかでも、実在の人物でもあるオベロイ料理長を演じた、インドの伝説的俳優アヌパム・カーが印象的だった。彼が従業員に協力をあおぐシーンは、感動的の一言に尽きる。
目の肥えた映画ファンは、本作をどう見た? 試写会でわかった
驚異的な満足度、テロに立ち向かうための教訓、考えさせられる物語…
試写会で実施した観客アンケートでは、満足度は平均で約90点と高水準だった。目の肥えた映画ファンが着目したポイントを、ここで紹介しよう。
□「完成度は予想以上に高い」 驚異的な“満足度”作品の完成度が、満足度に直結していたようだ。「完成度は予想以上に高い」(30歳・女性/自由業)、「恐怖と緊張と感動の波状攻撃がすさまじい」(47歳・男性/塾講師)、「最初から最後まで、ほぼ感動の連続」(48歳・男性/治験コーディネーター)などの声が寄せられた。
□「自分だったら、どうするか」 テロに立ち向かうための“教訓”が得られる
自分事に置き換え、物語に没入した観客も多くみられた。「自分だったら、じっとしていられず、でも間違った判断で殺されそう」(37歳・女性/会社員)、「家族が、愛する人がいかに大切なのか、思い知らされた。普段から人間関係を大事にしたい。とにかく、生きるための行動を」(39歳・女性/主婦)。
□「メッセージ性に考えさせられる」 “問題を提起”する奥深い物語
そして、メッセージの奥深さに対するコメントが際立った。「少年のような実行犯を、一方的に悪人にしていないところが共感できた」(54歳・女性/保育士)、「今も捕まっていない首謀者に怒りを感じる。テロを許してはならない」(40歳・女性/テレフォンオペレーター)、「イスラム社会の言い分ほか、メッセージが整理されて詰められていた」(56歳・男性/公認会計士)、「こういう映画を見る選択肢が、日本の観客にも広まっていけば良いと思った」(35歳・女性/会社員)。