「"映画とファイナルファンタジー"という意味でも感慨深い」劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
"映画とファイナルファンタジー"という意味でも感慨深い
ようやくこういう時代がきたか・・・という感慨。しみじみとホッコリ、それでいて泣けるドラマ作品である。
初期ゲームセンター世代や初代ファミコン世代は、確実に50~60代。この世代の小学生の頃は、学校で"ゲームセンター立ち入り禁止"とされ、不良のレッテルだったりもした。いまどきの"夜22時以降・・・"なんて、やさしすぎる配慮だ。
初代ゲーム世代が定年に差し掛かり、その子供が就職して社会で活躍している現代を象徴している。
本作は、有名なRPG"ファイナルファンタジー"の単なる実写版ではない。
会話の途切れた父子が、オンラインRPG上のアバター(ユーザーの分身キャラクター)を介して、家族の繋がりを回復していく、実話ベースのストーリーである。
仕事一筋だった60代の父親が突然、会社を辞めた。単身赴任から家に戻り、1日中テレビを見て過ごす父が何を考えているかわからない家族。息子のアキオは、”退職記念”として、父親にオンラインゲーム、"ファイナルファンタジーXIV"をプレゼント。
アキオは自分の正体を隠して、"ファイナルファンタジー"の世界に父を導き、一緒に冒険する。そこではじめて知る父親の本音や意外な一面。そして退職の本当の理由が明らかになる。
主人公の父子は、吉田鋼太郎と坂口健太郎が演じる。
原作は、"マイディー"というハンドルネームの青年が「一撃確殺SS日記」で連載していた「光のお父さん」というタイトルのブログ日記である。ブログから書籍化、そして2017年にドラマ化(毎日放送/TBSの深夜ドラマ枠)された。
タイトルは、「ファイナルファンタジーXIV」ではゲームプレイヤーのことを"光の戦士"と呼んでいることから、その父親を"光のお父さん"と呼んだことから。
実年齢も60歳の吉田鋼太郎の役作りが魅力的。自身もちょうど初代ファミコン世代で、不器用だけれどお茶目な父親を演じている。
実際のゲーム画面と、実写ドラマが交互に展開していくが、それぞれに監督・俳優(ゲームプレイヤー)がいるハイブリッド構造というところが新しい。
また"映画とファイナルファンタジー"という面でも意義深い。
約20年前に興行的な大失敗を記録した、世界初のフル3DCG映画「ファイナルファンタジー」は、今のスクウェアエニックスの2社合併のキッカケとなってしまった。しかし、今年のディズニーの「アラジン」や「ライオン・キング」そして、キャメロンの「アリータ」があるのは、この大失敗から始まっている。
本作は、オンラインゲームをやったことのない人にも、アバターを介して本音のコミュニケーションが取れるユーザー心理がよく理解できるし、少しはやってみようかと興味がわくかもしれない。
クライマックスのオチは予想しやすいのだが、途中までの笑える展開からの感動落差に、まんまと泣かされる。実話ベースとはいえ、よくできた作品だ。オススメ。
(2019/6/21/TOHOシネマズ新宿/ビスタ)