劇場公開日 2019年10月5日

ホームステイ ボクと僕の100日間 : 映画評論・批評

2019年9月24日更新

2019年10月5日より新宿武蔵野館ほかにてロードショー

あの名作がタイで転生。翻案の巧みさ、演技の瑞々しさが胸を打つ

優れたストーリーは時を超え、形を変えて幾度も転生するといわれるが、実写版、アニメ版を経て、このたびタイで三度目の映画化を迎えた小説「カラフル」(原作:森絵都)はまさにその最たるものだ。原作小説がかの国でベストセラーになったこともビックリだが、出来上がったこの映画を観てさらに驚いた。そこには原作のエッセンスを真心込めて翻案し、大切に届けようとする作り手たちの情熱が溢れていたからだ。

物語は、死んだはずの“ボク”が病院で目を覚ますところから始まる。どうやら彼の魂は“ミン”という自殺した少年の体にホームステイしながら、あと100日間だけこの世に留まるのを許されたらしい。その代わり与えられるのが、ミンが自殺した本当の理由を突き止めるという任務。失敗すると魂は永遠に消えてしまう。果たして、彼の運命はいかに————。

たとえ原作を読んでいなくても、原恵一監督によるアニメ版などでストーリーや世界観を把握している人は多いはず。となるとタイ版はきっとその繰り返しだろうと高を括りがちなのだが、実際の印象は大きく違っている。冒頭場面では、ダークでミステリアスな雰囲気が立ち込め、思わぬところで最新鋭のVFXがふんだんに投入されたりもする。

また、ホームステイ生活が幕をあけると、日常描写の一つ一つがタイの風土に合わせて根っこの部分からしっかりと再構築されていて、これまた見応えたっぷり。それゆえ、ある種のカルチュラル・スタディとして楽しめるし、こういった物語としての輪廻転生によって別角度から光が差し込み、本来のメッセージ性や普遍性がより明確に浮かび上がってくる印象すら覚える。

そうしているうちにも映画は刻々と表情を変える。身近な手がかりを手繰り寄せていく“謎解き”の面白さがある。憧れの女子生徒と育む甘酸っぱい恋愛がある。家族の秘密がある。徐々に明かされる息苦しい現実がある。さらに大ヒット映画「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」でおなじみのティーラドンやBNK48のチャープランらが3カ月間のワークショップを通じて演技を磨き上げただけあって、若者たちの瑞々しく切ない青春群像が見事に結実しているのも見逃せない。

傷つき、知らぬ間に人を傷つけ、波のように揺れ動く心を経験しながら、人生の階段を駆け登っていく彼ら。その果てにたどり着く“ボク”の表情は、国や文化に関わらず、多くの同世代の観客たちの心を震わせるはずだ。

牛津厚信

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る
「ホームステイ ボクと僕の100日間」の作品トップへ