「ロマンチズムの結晶」窮鼠はチーズの夢を見る 美咲さんの映画レビュー(感想・評価)
ロマンチズムの結晶
映画館で観るか、配信されるまで待つか、最後まで迷ったけど
近所に新しい映画館ができたことと、番宣で成田凌くんが音を楽しんで欲しいと言っていたのを聞いて、やはり映画館で観ることに。正解だった。
音や光が本当に綺麗で、集中して大切にひとつひとつ見つけられました。
成田くんが言っていた、音。雨の音。唾を飲む音。吐息。まるで音が聞こえるように交わす視線。
随所で効果的な光。例えばあの椅子に座ったたまきの白い脚が朝の光で輝いて、同じ場所で夜、猫背を丸めて座っていた今ヶ瀬が対比されるように思い出され、そのあとの大伴の表情からは感情が一層増幅されて響くようでした。
ふたりが部屋に入ったあとの、ドアだけを映したカット。ふたりを捉えた、窓の外からのカット。朝焼けの海。それらは特に印象的でした。
なんと言っても成田凌くんの演技が圧倒的。濡れた瞳も、口角の上げ方も、ゆっくり首の角度を変えるときの睫毛の揺れ方も、すべてそこには今の今ヶ瀬の感情とそれまでの今ヶ瀬の歴史が乗っかっていて、どんなリアルよりも現実的な表情。
3人の修羅場シーンで、大伴に、お前を選ぶわけにはいかない、と言われたあとのあの表情は、圧巻です。
正直、中学生のときセカチューを観てから、行定勲監督って大衆受けの感動映画の人って思っていたんですが、わたしがこの圧倒的なロマンチズムに触れられていなかったんだと知りました。
この映画が本当に美しくて綺麗で、特にふたりの最初のラブシーンは涙が出てしまいました。
そしてきっとこれも、わたしがまた中学生であるなら、ただイケメンのラブストーリーなんです。それはそれで良さがあるでしょう。でも、大なり小なりの、人と関わることで得る痛みや苦しさや欲望や快感、そしてその葛藤など、共感や共鳴する要素を持ち合わせた年齢になると、また違った感想が生まれるのだと気付かされます。
もう一度、セカチューを観なおそうと思います。