「互いの殻が赤裸々に剥かれる事を刺激する作品かと思います。」窮鼠はチーズの夢を見る 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
互いの殻が赤裸々に剥かれる事を刺激する作品かと思います。
公開前から結構話題の作品だったのと行定監督の前作の「劇場」が個人的にはかなり良かったので結構期待して観に行きました。
で、感想はと言うと、様々な成り行きで情事を重ねる先輩後輩の関係を丹念に描いています。
が、思ったよりも絡みの描写が結構激しくてちょっと面食らったw
最近では城定秀夫監督の「性の劇薬」が振り切った過激な描写と綿密に描かれた同性愛のドラマが受けてスマッシュヒットしましたが、こちらもなかなかな振り切り具合w
LGBTに関しては世間での認知は以前に比べて認識はされているかと思いますが、映像描写に関してはここまで描かないとダメなのか?もしくはここまで描くから同性愛を真っ向から捉えているのかが勉強不足な為、分かりませんが、現役アイドルで「関ジャニ∞」の大倉さんといろんな作品に名を連ねている成田凌さんの女性人気の高い御二人がかなりな感じで文字通り身体を張った演技されているのにやっぱりビックリ。
"これ、R15でも大丈夫か?"と言うぐらいに自分的には過激に写りました。
また、劇場は約9割りが女性の方ばかりで、オッチャンにはなかなか場違いの様な、こっ恥ずかしい様な感じでしたw
いろんな意味で駄目だけど、自身の殻を破られていく事で自身の本質に苦悩しながらも目覚めていく大倉さん演じる恭一と自身を素直に生きつつも実は純粋で好きな相手を思いやる事から自身の殻を剥く事に苦悩する今ヶ瀬の二人が互いの殻をゆっくりと剥いていく様に落ちていきつつも本質を見つめていく様は、同性愛と言うテーマを持ちつつも、純粋な恋愛ドラマに浄化させてます。
この辺りが波に乗ってる行定監督の妙技かなと思いますが、そこに見事に応えている御二人も素直に"凄いなぁ"と感心。
二人が半同棲と言う感じで過ごす様子にいろんな同性愛の薫りを焚き付ける様に匂わすアクセントが散りばめられていて、多分好きな人はニヤニヤするんだろうなぁと観賞しながらも推測。
恭一が引っ掛かる晩御飯の「グラタン」にはなんか笑ってしまいました。
食事をする様子には暗に性行為と相手の性衝動を匂わす事を連想させると言うのを聞いた事がありますが、そう考えると作中にいろんな食事や会食のシーンが沢山。
深読みなのかも知れませんが、そう考えるとまぁ性要素が沢山。エロいですなぁw
また、女性陣の好演も良い感じのアクセントになってます。
個人的には夏生役のさとうほなみさんが良い感じ。
夏生と今ヶ瀬の対決シーンはヒリつく感じで面白い♪
恭一がカールズバーグを選んだだけで二人がざわっとするのが楽しい。
まぁどっちを選ぶかに振り回される側の気持ちってそんなもんですわなw
恭一に寄り添いながらも健気に別れる岡村役の吉田志織さんが可哀想。
いや~そう考えると恭一は悪いやっちゃw
丁重に描いていて、同性愛を通じての恋愛の悲哀を描いてますが、些か間延びしなくはない感じ。
130分と言う尺をたっぷり使ってますが、個人的にはあと20分ぐらいコンパクトにまとめられたかな?とも思ったりします。
あと、成田凌さんの微妙な髭の剃り残しがなんか気になったかなw
タイトルにある窮鼠は実は今ヶ瀬だったと言うのも味噌。
でも恭一も解き放たれていても、今ヶ瀬と言う檻に閉じ込められた鼠。
ラストにはどちらも窮鼠でどちらもチーズに恋い焦がれているのを丹念に描いていて、同性愛と言うフィルターを外してみても良い感じの作品かと思いますが、一般的にはやっぱり二人の絡みの描写がちょっと過激かなと思います。
行定監督は観る側を刺激するアクセントを散りばめながらも、作品の本質をきちっと描いていて、それでいながらも丁寧かつ丹念にテーマに沿うような感じなのがとても好きですね。
ただ、どの作品も丁寧過ぎるきらいがある感じでもう少しコンパクトにもまとまるのでは?と思えたりとしますがどうでしょうか?
大倉忠義さん、成田凌さんのファンの方は足を運ばれるかと思いますが、LGBTのいろんな悩みと本質を考えるのにも良い作品なのかなと思います。
同性愛のフィルターを少し外して観るととても純愛な作品。
でも、やっぱり描写は結構過激w
淡く、なだらかに堕ちていきながらも、過敏に心の襞をなぞる様な作品です。
好みはそれぞれにあって、劇場では女性の方が圧倒的に多い作品かと思いますが、興味がありましたら、如何でしょうか?
なかなか刺激的な作品です♪