「僕ら “ きょうだい ” の物語」マローボーン家の掟 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)
僕ら “ きょうだい ” の物語
「僕らはひとつだ」
兄・ジャックのこの言葉に
物語のすべてが集約されていた。
弟妹を救えなかった呵責が
【虚構の家族】をつくりあげた…
いや、亡き弟妹の人格が、思念が、魂が、
兄の身体に宿ったと言うべきかもしれません…
けして〈多重人格〉なんかだけでは語れない
“きょうだいの絆”を、わたしは強く感じました。
終盤、たとえ理解されず拒絶されるかもしれないのに
こころの拠り所であるアリーに
すべてを明かすことにより
家族の尊厳を守るため、守り通すため、
【現実の家族】生きながらえる諸悪の根元たる
父親との対決を決意する…
それは同時に、弟妹を自己に投影していたことを
認識し乖離(カイリ)させる
ことにもつながるかもしれない
悲しくも勇気のある決意…
そんな覚悟を持ちうる彼、ジャックが
単なる〈多重人格〉であろうはずがない!
と、思うのがわたしの論拠です!
ジェーン、ビリー、トムたち弟妹は
いつも兄、ジャックの心と共にある…
これはただのホラー作品ではなく
きょうだいの絆や父親との決別といった
極端ではありますが
家族の在り方がテーマの作品であって
(その極端さがサスペンスホラー要素なのでしょうが…)
最近よくある〈掟を破ったらダメ!ていうか死ぬ!〉
みたいな “ 縛りモノホラー映画 ” や
『へレディタリー / 継承』みたいな
〈逃れられない家族環境〉がもたらす
恐怖感なんかを期待して観賞に望むと
少々肩透かしを喰らうかもしれません…
そのどちらでもないし、
そのどちらでもあると言えるのでしょうが
わたしは、それらを愛で内包した
本作『マローボーン家の掟』を
温かい気持ちで観ることが出来ました。
わたしも時々…
こんなとき、もし姉が生きていたら
「あんなことやこんなことを
言ったりやったりしたのかな…」
と、想像したりするので
なんか他人事には思えず目頭が熱くなりました。