システム・クラッシャー

劇場公開日:

解説

社会に居場所をなくしてしまった9歳の少女の姿を繊細かつ強烈な描写で描き、2019年・第69回ベルリン国際映画祭アルフレッド・バウアー賞(銀熊賞)など世界各地で数々の賞に輝いたドイツ映画。

父親から受けたトラウマを抱える9歳の少女ベニーは手のつけようがないほど攻撃的で、里親やグループホーム、特別支援学級など行く先々で問題を起こしていた。ベニー本人は母親のもとへ帰ることを望んでいたが、母親はベニーに愛情を持ちながらも接し方がわからず、施設に押しつけ続けている。そんな中、非暴力トレーナーのミヒャは3週間の隔離療法を提案し、ベニーと2人きりで森の山小屋で過ごすことに。はじめのうちは文句を言い続けていたベニーだったが、徐々にミヒャに対して心を開き始める。

本作出演後に「この茫漠たる荒野で」でハリウッドデビューを果たしたヘレナ・ゼンゲルが主人公ベニーを熱演し、「西部戦線異状なし」のアルブレヒト・シュッフがトレーナーのミヒャを演じた。監督・脚本は、本作が長編デビュー作となるノラ・フィングシャイト。

2019年製作/125分/ドイツ
原題または英題:Systemsprenger
配給:クレプスキュールフィルム
劇場公開日:2024年4月27日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第69回 ベルリン国際映画祭(2019年)

受賞

アルフレッド・バウアー賞(銀熊賞) ノラ・フィングシャイト

出品

コンペティション部門 出品作品 ノラ・フィングシャイト
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(C)2019 kineo Filmproduktion Peter Hartwig, Weydemann Bros. GmbH, Oma Inge Film UG (haftungsbeschrankt), ZDF

映画レビュー

3.5少年とケアラーが築く関係性のドラマに引き込まれる

2024年4月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

子供をめぐる状況に真摯に向き合った良作である。思い通りにならないと感情の歯止めが効かず周囲に牙を剥き暴走してしまう一人の少年がいる。その思いを十分に受け止めきれない母親がいる。そして彼の精神状態をどうにか良い方向へ導こうと懸命にサポートするケアラーがいる。本作は決して安易なハッピーエンドで問題をうやむやにしようとせず、少年と父子にも似た関係性を築く男性ケアラーの視点を介して「この子に何をしてあげられるのか」の試行錯誤や現実に私たちの意識をしっかりと参加させていく。そこで両者の心が通じあって心が安らぐ瞬間もあれば、逆にすべての努力が無に帰したかに思える瞬間もあって、さらにケアラーにはケアラーの守るべき生活があるわけで、その線引きも大切なのだということを痛切に突きつけられた気がする。希望や絶望ではない。これだけの選択肢とサポート体制があることに興味が湧いた。日本の現状についても知りたくなった。

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牛津厚信

4.0ベルリン国際映画祭 銀熊賞、その他各国の賞を総ナメにしました 。 ...

2024年10月25日
Androidアプリから投稿

ベルリン国際映画祭 銀熊賞、その他各国の賞を総ナメにしました 。

主役のヘレナ・ツェンゲルは5才でデビューし10才でこの役を演じてドイツのアカデミー賞で史上最年少で主演女優賞を受賞。この後トム・ハンクスと2人でロードムービー『この茫漠たる荒野で 』に出演しゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネートされた。 とにかく演技が凄い。こんなに小さい子供がこれ程の演技をするのか?と強烈な印象を受けました。今後が楽しみな女優さんでした。

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snowwhite

誰がどうすればいいの?

2024年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 顔に触れられただけで怒りが爆発しパニックに陥る少女と、彼女に向き合う施設の人々のお話です。突然絶叫する彼女には母に愛されたいという思いがあるので、それを何とか救ってやりたいという施設の人々の思いも分かる一方で、彼女の暴走に辟易として関わりたくない気持ちも分ります。彼女の行動が手に負えないから母は遠ざけようとするのか、母が遠ざけるから彼女が感情を爆発させるのかの因果関係も分かりません。

 そして、様々な状況が膠着した中で、孤独な叫びをあげる彼女自身が何より切ないのでした。一体誰がどうするのが良いのかとスクリーンから問いかけられてドギマギしてしまいます。

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La Strada

4.0最初から最後まで見逃せない「救いのない」作品

2024年7月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ヘレナ・ゼンゲル演じるベニー(バーナデット)の攻撃性が凄まじく、
正直めちゃめちゃ怖かったです。
もうホラー映画といっても過言ではないくらいの恐ろしさであることに加え、
私自身、人生の折り返しを過ぎ、いまだに知らないことがあるのかと
本作を観たことの意義をあらためて感じた次第です。

ベニーのふつうの時と、キレたときのギャップが大きすぎて
本当に恐ろしくなりました。
身近にベニーのような子どもがいたら、まともに接することができるのか?>自分・・・
と、自問自答しながら観ていたのですが、
ベニーに寄り添う通学付添人のミヒャには心を開いたか!?と思わせつつ
そういうことではないという、本当にどうしようもない、解決しない、出口が見つからない
といった閉塞感しかない作品です。

それでもベニーは少しずつ成長してはいるものの、
やはり親なんでしょうね。
母親も完全にビビって一緒に住むことにひより、結局突き放してしまいますし、
そもそもベニーは父親からの虐待を受け(オムツを顔に押しつけられる)、今のようになっているわけですから
ベニーが悪いわけではないんです。でも、でも、モンスター級の子どもになってしまった。
それはやはり両親に原因があるのだと思います。
最近の邦画が顕著ですが、だいたいこういう子ども(から成長した青年・大人もですが)は
やはり親にその原因があるというのは、一貫して間違いないところです。

『あんのこと』のレビューにも書きましたが、本当に子どもに愛情を注げるご両親のもとに
子どもを授けてほしいと切に願います。

それにしても主演のヘレナ・ゼンゲルの演技は凄まじかったですし、素晴らしかったです。
今後にも期待しています。

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ひでちゃぴん