赤い闇 スターリンの冷たい大地でのレビュー・感想・評価
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真実を伝える者と真実を隠蔽する者。
「権力は腐敗する」とはイギリスの歴史家ジョン・アクトンの言葉だ。彼の言葉通り権力が腐敗するのならばその権力を監視するはずのマスメディアも腐敗するのだろう。
マスコミはその報道により時には世論を誘導し国を動かすほどの力を持つことから司法、行政、立法に次ぐ第四の権力と言われる。
この権力が正しい方向に行使されれば世界を救うことにもつながるが、逆に行使されれば世界に悪影響を及ぼす。
本作では対照的な二人のジャーナリストが描かれる。一方は事実を真摯に伝えようとした主人公のガレス・ジョーンズ、もう一方はピューリッア賞を受賞しながらも権力に加担し事実を隠蔽しようとしたウォルター・デュランティである。この二人の構図は時代を超えた今でも普遍的な問題として位置づけられる。
事実を伝えようとするマスコミと権力側の有利に世論誘導するマスコミ、あるいはSNSの時代はさらにこの対立構造は複雑化している。個々の発信者により真実が伝えられたり、デマが流されたりといった具合に。
何が真実で何が虚偽の情報なのか、この無数に情報が飛び交う時代においては受け取る側にその判断能力が要求される。信頼できる情報発信者の存在は重要だが、受け取る側がその情報発信者を信頼し育成することも重要である。
日中戦争初期、戦争に反対する旨を表明していた朝日新聞は当時軍部を支持していた国民からの不買運動に会い、経営のためにその社論の転換を余儀なくされた。その後戦争賛美へとその論調を変え、他の新聞各社も国民を煽り立てて無謀な大戦へと突入していった。
この国民一体となって戦争へと向かわせた世論形成に新聞報道が貢献したのは疑いようがない。報道各社は戦後反省を強いられることとなる。
しかし、当時の反戦を訴えた朝日新聞を国民も信用し支持しなかったのであるから、これは情報発信者だけのせいとは言えないだろう。情報を受け取る側にも責任はあったということである。
本編冒頭、ナチスによる第二次大戦勃発の可能性を訴えるジョーンズの報告を政治家たちは誰一人相手にしない。そして彼がソ連ウクライナで目撃したホロドモールの報告についてもそれを否定するデュランティの発言のみを鵜吞みにして誰も信じようとはしなかった。
確かにナチスの件にしろウクライナの件にしろ、その情報の信用性を何を持って担保すべきかは難しい。ジョーンズの人柄というだけではなく、写真やその他の証拠資料からその信用性を積み上げていくしかないだろう。そうして信用できる情報ならばそれを尊重するべきである。
今の時代、マスコミは信用できない、ネットの中にこそ真実があるなどとよく言われるが、そんな単純なことではない。マスコミにもネットにも噓もあれば真実もある。肝心なのは内容の真実性をいかに担保するかだ。
ネットだから信用できるとしてネット上の陰謀論に翻弄される人々を見ていてよりそう考えさせられる。
本作でもジョーンズの詳細な報告よりもピューリッア賞を受賞したデュランティの言葉を無条件に信じてしまう人々が描かれていることから、これは現代でも十分通じる問題なのである。
情報の出どころだけでなくその情報の真実性をいかに見抜けるか、情報の受け手側は今の時代さらにその能力が要求されるのである。
権力に加担し腐敗してしまったデュランティに対してジョーンズはその命を失うまで事実を伝えることに生涯をささげた。
本作で描かれたウクライナ人たちへの虐殺ともいえるホロドモール。世界中でいまだに繰り広げられる虐殺、中国でのウイグル人の虐殺、ウクライナでのロシアによる無差別殺戮、イスラエルによるパレスチナ人の虐殺等々、これらの実態はジャーナリストたちが現地から報道することによってしか知るすべはない。これら発せられる情報を最大限生かすには我々情報を受け取る側が正しい情報を見極め、それら情報発信者を信用できる目を養う必要がある。
そしてその正しい情報から世論が形成され、虐殺の加害者に対して国際的非難を訴えていくことができるのである。
民主主義の母国といわれるイギリスでは元々このガレス・ジョーンズのように命を失うことも恐れず事実を伝えようとするジャーナリズム精神が強く、報道のための紛争地帯への渡航を国が禁じることはないのだという。日本なら政府が危険だと渡航を禁じた国に行こうものならたちまち批判されるため報道各社は所属する記者を送ることはできないのだという。だからフリーの記者を使うことが多いらしい。
以前、イスラム国に拉致されたフリーのジャーナリスト後藤健二氏に対して日本の政治家が自己責任という言葉を初めて使用したのがこの時である。
イギリスではジャーナリズム精神を尊重するため危険地帯に足を踏み入れて拉致されても非難するような世論は湧きあがらないそうだ。これも国民性の違いなのだろう。
ムナクソわるー
史実をまったく知らずに見まして、ピーター・サースガードって情けないけどいい人役のイメージあったから最後は誠意を見せるんでしょうと思ったら何とも救いのない結末。中学生の頃ソ連崩壊の報道で、商品の置いてない商店や日常品を買うだけでも行列に並ぶソ連民、え!ソ連てアメリカと張る大国だったんじゃないの!終戦直後の日本みたいじゃん!とたまげたことを思うと、ガレスがウクライナで見たものに驚愕するのは、ほんのひとかけらでも分かる気がする。知らなかったことを知らせてくれたことは感謝します、が、映画としては面白いとは言い難いなー。エイダとの微妙な恋愛感情いらないよね、描きたいならもっと描かないと、中途半端。あとガレス、若者扱いされてるけどアップになるとシワシワで4〜50代の中堅記者に見えるんだよ、そうなるとストーリーに雑音が混じる。こういうの、うまい映画ならやらない、もしくはそんなの気にならないほど話に引き込むのかな。ジョージ・オーウェルとの接触は実話?じゃないよねきっと、だとしたらこれくらい他の部分も作り込めばもうちょっと見やすい映画になったのでは?
🌀『ウクライナの子供が歌っていた歌詞がホラーすぎた‼️』
赤い闇 スターリンの冷たい大地で
🌀『ウクライナの子供が歌っていた歌詞がホラーすぎた‼️』
1933年。ソビエト連邦支配下のウクライナ
世界恐慌の中ソビエト連邦だけは繁栄している事を疑問に思ったイギリスのフリー記者。
スターリンにインタビューを願い、単独でソ連とウクライナに渡り、やがてソ連の偽りの虚像に行き着く。
実話ベースで進むホロコーストに並ぶ虐殺
ホロドモールと言う史劇ストーリー。
◉65点。
★彡史劇としては勉強になったがスターリン政権などの背景から知識を入れないといまいち響かない内容でした。主人公の実際のジョーンズさんの遺族の方が実際の内容と歪曲していると訴えを起こしている様です。
🟢感想。
1️⃣後半雪の中で歌う子供達の讃美歌?歌詞の内容はまさにホラーでした。
★彡震え上がりますよ。😱
2️⃣自分なら真実は言えなかったと思いました。★彡正義の為に、家族や大事な人の命までかけられない。情けないがこれが本心かも…😢
🗞️㊙️😱📝🤮👧🏻👦🏻🧒✍️🪱🥩❄️🌨️
🈲ネタバレ保管記憶用
スターリンの方針で重工業化を推進で農業は個人から集団計画が進み、農民は土地を奪われる。さらには天候や無理な計画のせいで、農民は不満。国境を越えてはならずや食べ物を規制され、完全に包囲し、情報を隠蔽する様にしていた。
草や虫などを食べる生活で凌いでいたが、自分の子供を殺して食べたりと人間を食べる事で飢えを凌いだり、疫病などで数百万人の農民が餓死や殺された。
イギリスの記者6人の命と目に見た記事を書くなと天秤にかけられ、なんとか帰国する記者。
国に戻り、新聞社に真実を話すが、圧力でねじ伏せられる。
ニューヨータイムズに強行突破で真実を話、新聞🗞️に掲載される!
約3年後、満州で盗賊に捕まり殺される。
記者のガイドがソビエト連邦と繋がっていた事を示唆して終わる。🔚
🌀この事実は1980年代頃までソ連は隠蔽していた様。
📝子供達の歌の歌詞
飢えと寒さが 家の中を満たしている 食べるものはなく 寝る場所はない 私たちの隣人は もう正気を失ってしまった そして、ついに自分の子供を食べた もう〜食べた 。
とかだったかな?曲もクリスマス風で歌詞が際立ちます😱
ホロモドールの話だった。 ニューヨークタイムズのピューリッツァー賞...
ホロモドールの話だった。 ニューヨークタイムズのピューリッツァー賞受賞記者までもが、スターリンに協力し、隠蔽に荷担していたとは…。
虐殺はナチスだけではない
ヒトラー、特にホロコーストに関する映画は数多くあれど、スターリンの(飢饉による)大虐殺に関する歴史は、あまり知られていないので、とても興味深い内容の映画であった。 ちなみに戦前、日本の東北地方においてもひどい飢饉により、まともに生活できなくなった農村では、地元の行政が娘の身売りまで斡旋していた。しかしながら当時の日本政府は「自力更生」ということで地方の農村を切り捨て、都会のみ経済復活を果たしていたという事実がある。こういった惨状が元で発生したのが、かの有名な「二・二六事件」であるが、歴史の教科書では単なる青年将校によるテロリズムのように紹介されている、というのはいかがなものか?
真実を伝えることの難しさ、歴史の残酷さ
実在のジャーナリスト”ガレス・ジョーンズ”の活躍を描いた作品
繁栄するソ連の謎を探るべく潜入し悲惨な飢饉の現状に遭遇し真実を報道するも政府の関係上、取り消され周りからバッシングされるもめげずに強引に真実を新聞に載せる。
そして次は満州に潜入するもソ連の息のかかった山賊に命を奪われてしまう
劇中ガレスは「記者は崇高な仕事だ。誰の肩も持つことをなく真実のみを伝える」と言っていたけれどまさにその言葉の通りの生涯で、第二次世界大戦の写真を撮りインドシナ戦争で散ってしまったロバートキャパにも通じるモノがあるなと感じた。
地方で大勢の餓死者を出すも中央が栄えたから成功だと吹聴するスターリンの罪深さ
当時はイギリスやアメリカも世界恐慌から立ち直れず、やむ負えずソ連と国交を樹立してしまった。
映画の冒頭に出てきたけれど同じようにイギリスは余力がなかったからチェコスロバキアを併合したナチスドイツと宥和政策を結んでしまった。
歴史的に言うとこれらは間違ったことだと思うけれど当時はそれが平和的解決になる。残酷だけれどトロッコ問題のように少ない犠牲で多くを救うのが正しいと当時の上層部は考えてしまったんだろうか。
ただこの映画を見て感じたのがコレが過去の怖い話では終わらない。
今でもイランや北朝鮮では報道の自由がなく戦争中のロシアでは政府を批判すると投獄されたり命を奪われてしまう。今のロシアの上層部のやり口は映画で描かれるような中央が良ければそれでいい体質に似通っているものがあるなと思う。
その一方で現在ウクライナを世界中が支援し、アルメニアやカザフスタンのようなロシアとの同盟国も関係を見限ってきている。
過去と比べると世界は変わりつつあるなと感じる
んー、
ま、話や展開はわかるけど、中盤からの「旅」以降の展開も、好みの問題かもしれないけど、個人的にはそこまで見入るほどではなかったかな、と。 なんにせよ、いつの世も、国の真実と記者やマスコミの忖度やしがらみはあるもんだな、と。
ジャーナリズムの根源をみた思い
ウクライナ大飢饉のことは1980年代半ばに知ってました。毛沢東の大躍進との比較や類似性からですね。しかしながら、ガレス・ジョーンズ氏は全く知りませんでした。 この映画を観た後で主人公であるガレス・ジョーンズ氏とその周辺を少し調べてみましたが、概ね、映画に反映されているようで、事実をもとに組み立てていると思います。結構、盛り込んだ話でもあるのでストーリーは多少とっ散らかって流れていき、人間関係や社会的背景の把握にまごつくところもありましたのでそこを注意して観るといいと思います。(阿片窟はいらないんじゃないかな。デュランティとの対比でも必要性を感じない。) そして、電車(貨車)での食料の奪い合い、コートよりパン、駅に死体が転がっていても誰も見向きもしない、当然、村には行き倒れが多数、などなど、現実なら絶対に出会いたくない、観たくもないシーンが次々とやってきます。 兄弟の死体をスープにして食べる、なんて、天保天明の大飢饉、攻城戦での飢え殺しなど日本にもありましたが、まさに地獄そのものです。 そして、ラストのガレス・ジョーンズ氏のその後の説明にも衝撃を受けました。真にジャーナリストとして行動していた氏に対しては敬意しかありません。 どこかの日本アカデミー賞受賞作品なんてクソにもならない凄さが、ここにはありました。
3.9映像が美しい
映画的な映像が美しい作品、カメラワークや切り取り方、美術背景からカラコレ、演出までもが映画らしく見ていて飽きない作品で、個人的にハマった。
序盤の荘厳さ、狂ってる感じからの貧困の場面の切り替わりは衝撃的で、目が話せなかった。また主人公の英国紳士っぷりも見ていて演出がハマっていて好きだった。
作品を見ているなかで、実は現実世界もこうした現実が広がっているのではないかと想像すると、少し怖さも感じた。「あの国は栄えている、将来が人口ボーナスで明るくなる、それに比べて日本はオワコン」というニュースばかりを耳にするが、実はそれをリアルに感じ取っている人は少ない。現場がどうなっているのか、それを目にすることは少ない。個人的に少ない海外訪問経験を踏まえると、かなり日本は豊かで教育も届いていると思う。
平等主義は人を搾取するというセリフも印象に残った。平等は格差と搾取を生み出していく。5カ年計画の実験の失敗と損失。ちょうどロシアとウクライナの問題、銀行の破綻が話題になっている2023年。いろいろなニュースを耳にしても、ほとんどの人は毎日の生活でいっぱいいっぱいでツイートするだけで何かを変えられたつもりになって過ごしていき、大きな変動に飲み込まれていくしかないのかも、そんな無力感も同時に想像した。
こういった作品を見ていると、自分がこの時代にいたらどうやったら抜け出せるのかばかり考えてしまう。作品を見ているとこの国から抜け出せたのは英国技術者と記者、つまり当時の上級階級とわかる。一歩一歩地道なスキルを磨くことがヒントになりそうな気がした。
今、観たい映画。
ロシアのウクライナへの蛮行はたった5か月前に始まったことではない。 それがよく分かる映画です。 1933年頃にはウクライナはロシアの穀物庫の役割を果たしていた訳ですが、 ウクライナ国民はロシアに穀物の殆どを搾取され飢餓でバタバタと死んでいたのです。 そのずうっと以前からウクライナはロシア(ソビエト連邦)に搾取され続けている。 その一端がよく分かる映画です。 2019年(ポーランド/英/ウクライナ)アグニシュカ・ホランド監督。 スターリンの粛清・・・400万人〜1450万人が飢餓やシベリア送り、 弾圧、処刑で亡くなったとされる。 1933年。イギリスのジャーナリストのガレス・ジョーンズ(ジェームズ・ノートン)は、 世界的大恐慌下でのソビエト連邦の繁栄を不思議に思っていた。 真実を探るべく、モスクワに取材に訪れる。 そして禁止されているウクライナへ単身乗り込むのだった。 ガレス・ジョーンズは、実在の人物で、この映画も実話に即しています。 1933年。モスクワの穀物倉庫と言われるウクライナの人々はパン一切れにも 窮して死肉を貪っていた。 寒さと飢え・・・雪道に転がる死体。 馬車に無造作に積み上げられた死体。 目を覆う惨状だった。 (穀物は全てモスクワに送られて、政府高官は栄養栄華パーティーに興じていた) これが西側諸国が思いもしないソビエト連邦スターリン政権の真実だった。 ガレスの告発記事はイギリス政府の手で揉み消され、真実は闇に葬られるか? と、思ったその時・・・ ガレスの咄嗟の機転で、告発記事は日の目を見る。 当時のソビエト連邦の真実を告発した若き記者の、勇敢な行動を描いた映画です。 ウクライナの子供たちの飢えた目が、衝撃的です。 娯楽性は少なくて面白さも限定的ですが、命懸けで真実を伝えようとする ジャーナリスト、ガレット・ジョーンズ。 たった1人での告発は猪突猛進で、やや無謀にも思えました。 彼が暗殺されず無事に生き延びたのは、後ろ盾となったイギリス・アメリカの 新聞社やジャーナリストたちのお陰でしょう。
本作の本当のテーマはこのホロドモールではありません本当のテーマは真実を隠すことの罪ですそして赤い闇の本当の意味
ロシア軍のウクライナ侵攻が始まり50日が経ちました
本作は、そのウクライナでちょうど90年前に起きた恐ろしい悲劇が題材です
第二次世界大戦勃発の5年前、1932年から1933年にかけてホロドモールという、当時ソ連だったロシアによって人為的に引き起こされた大飢饉のことです
ロシアにより、ウクライナは食料や種子にいたるまで強制的に収奪されたのです
その結果、大規模な飢饉が発生し、330万人から数百万人ともされる餓死者・犠牲者を出した「飢餓ジェノサイド」のことです
虐殺ジェノサイド
21世紀のウクライナで今同じことが起きています
しかし本作の本当のテーマはこのホロドモールではありません
本当のテーマは真実を隠すことの罪です
ロシアの猛攻の前に2日もすれば首都キーウは陥落してしまうだろうと言われていました
しかしウクライナはこれを撃退したのです
ロシア軍は一旦撤退し、その後には砲火や爆撃で破壊された町々が残されていました
そしてそこには罪もない普通の民間人の人々が多数殺されて道端に放置されている光景でした
本作の劇中で、1933年3月、90年前のウクライナに入りある地方駅で降り立った主人公が目にする光景
駅のホームに誰か倒れているのに、もう誰も気にしていない
町中には道端に行き倒れた人々が点々ところがっている
それは恐ろしいことに、つい数日まえテレビのニュースでみた光景と同じものなのです
しかし、この90年前の虐殺については、本作の三分の一程度の分量でしかありません
では残りは何に割かれているのか?
それは告発です
真実を隠すことの罪の告発です
数百万人もの人々が犠牲になった虐殺が行われたのに、その真実を隠す事の罪です
そしてその真実を隠すことに手を貸す罪です
真実をごまかすことの罪です
その真実から目を背け、なかったことのように振る舞うことの罪です
単にホロドモールを引き起こし、記者を殺してまでそれを隠そうとしたスターリン支配下のソ連への批判
それだけの映画では決して有りません
21世紀の現在進行形の告発なのです
誰を?
本作では西側のモスクワ駐在記者達です
ソ連の秘密警察から狙われる命欲しさ
ソ連との経済的な利権獲得のうまみ
何よりも、人類の明日の理想と信じる共産主義への期待故に、ソ連にどんな問題があっても目をつむるその行為にです
ジャーナリストとしての背信行為です
人間としての腐敗です
しかし、彼らは良心の呵責にさいなまれ、阿片パーティーで憂さを晴らし、退廃の限りを尽くして良心が痛むのを忘れようとしているのです
そして終盤には、ニューヨークタイムズのある女性記者は、主人公が行ったホロドモール告発記事は根も葉もないフェイクニュースであると署名記事を書くように、ピュリツアー賞受賞に輝いたことのある米国人のデスクから強制されるのです
「赤い闇」という秀逸な邦題はそういう意味なのです
劇中、不気味な小説をタイプする男は現代では有名なジョージ・オーウェル
タイプしているのは彼の出世作「動物農場」
彼も社会主義者として、主人公ジョーンズの告発を認めることができずに否定するのです
しかし次第に認め、ホロドモールをヒントにしてこの小説を書いているのです
あの不朽の名作「1984」はこの4年後のことです
そして、そのような恐ろしい真実の報告を受けてもなお、戦争を恐れてそのようなことはないと目を背ける英国の外務大臣
冒頭、主人公はこの外務大臣と居並ぶ外交委員会のお偉方の面々に、台頭著しいヒトラーに面会してきた報告を行っています
彼は、ヒトラーとゲッペルスと直接会話して得た結論として、ヒトラーは第二次大戦を引き押すことは間違い無いと警告します
しかし、お偉方はみんな呆れて笑い飛ばしてしまうのです
そんな事が現代に起きる訳がないと
そしてそのブリーフィングは途中で打ち切らてしまい、彼は外交顧問の職を失うのです
同じことが、21世紀のウクライナ戦争で起きてはいませんか?
米国が最初に声をあげ、ロシアの侵攻があると警告しました
しかしロシアはもちろんただの軍事演習だと否定しました
世界中のマスコミも戦争まではないだろうとか言っていました
戦争が始まり、民間人や病院などに被害が出だし動かぬ証拠の映像が流れた時、それはウクライナ側のフェイクニュースだとロシアは反論しました
驚いたことにSNSでは、そのロシアの主張を信じる論調の意見が多く見られることです
もちろん圧倒的にロシアへの非難です
しかし民間への被害はフェイクニュースだという
記事やネットの書き込みが日増しに増えていっているのです
キーウ近郊の虐殺のあった町々の惨状
恐ろしい虐殺現場の様子
それをウクライナ側がやったことだと否定する声です
ロシアに軍事行動をさせたウクライナの方が悪いという書き込みまであります
果ては、有名でかなりの影響力がある人物がテレビでウクライナは早く降伏すべきだと言い放ったのです
2022年4月14日、ロシア海軍黒海艦隊の旗艦モスクワが撃沈されたという大ニュースが駆け巡りました
するとやはりロシアは火災と嵐で沈んだだけだと主張しました
ネットでは呆れたことに、もともと沈んですらいない、すべてがフェイクニュースだと強弁する書き込みが多数でました
もちろんロシアのネット工作部隊の書き込みもあるのでしょう
しかし、普通の一般人でもそう信じる人が一定数いるようです
ロシアが侵略してくる!
プーチンはウクライナだけでなく、東欧、北欧の国々も狙っている!
そんなこと声高に言えば、たった3ヵ月前なら、
ネットウヨだと言われ罵倒されたでしょう
劇中の主人公は職まで失ってしまいました
21世紀でも、各国のお偉方は本作の冒頭の会議と同じように、都合の悪い真実から目を背けて、見ないようにしたのです
そして戦争を起こるにまかせてしまったのです
今もなお、戦争に巻き込まれたくないから、ウクライナには小型の兵器、ヘルメット、防弾チョッキぐらいしか支援していません
ウクライナがロシア撃退に必要だと切望する戦闘機や戦車は与えないでいるのです
出兵なんか絶対無理!と言っているのです
本作で描かれたのは、真実から目を背けて現実をみようとしないことが、大惨事を生み出し、戦争を引き起こすのだという警告です
本作は2018年の製作
ウクライナ、ポーランド、英国の共同製作です
ウクライナは本作のホロドモールだけでなく、2014年にあったクリミア紛争で散々な目に合わされましたから本作を作りました
その時も、どこの国も結局助けてくれなかったのです
ポーランドは第二次大戦でドイツとソ連(ロシア)に東西から侵略されて国が無くなってしまった歴史があることから製作に参加しました
カティンの森事件という2万2千人以上ものポーランド人がソ連(ロシア)軍に虐殺され森の中に埋められたのは、1940年の4月頃のことでした
その虐殺命令に署名したは当時のソ連(ロシア)の指導者スターリンです
彼は本作のホロドモールを命令した人物でもあるのです
主人公が穀物を収奪され荒廃したウクライナの町で見上げた巨大な看板に描かれたあの人物です
ポーランドが今必死にウクライナから避難してきた人々を支援しているのは明日は我が身だからです
というか戦前のポーランドの領土は、今のウクライナの西側の四分の一程度にまで広がっていたのです
今の国境線は戦後勝手にソ連に決められたものなのです
だからポーランドの人々にとってはウクライナの戦争は自国の戦争なのです
そして英国
ヒトラーの侵略意図に気付いていながら、宥和的な対応と話合いで解決できるとヒトラーをつけあがらせたのは英国です
主人公はジャーナリストではありません
彼はあくまで首になった外交顧問としての責任を果たそうとしたのです
英国がヒトラーとの戦争に苦しむのは見えている
苦境に陥ったとき、スターリンの正体を知る前の自分と同じようにソ連と手を組むべきだと政府首脳は考えるはず
もし英国と米国がスターリンを支援してしまうことになれば、ヒトラー以上の強大な悪魔を生み出してしまう!
それ故に彼は必死にホロドモールを世界に告発しようとしたのです
スターリンとは手を組むな!
奴は悪魔だ!と
それが一度は英国外務大臣の外交顧問になった者の責任を果たすことだからです
それなのに彼の告発を聞かず
ヒトラーとの第二次世界大戦に苦境に立ったとき、英国と米国はスターリンと手を組み彼に巨大な支援を与えさらに巨大にして東ヨーロッパをスターリンに進呈してしまったのです
英国にはその責任があるのです
つまり本作の製作意図は、これ以上プーチンをつけあがらせてはいけない
プーチンを現代のヒトラーにしてしまうぞ!という警告でもあったのです
しかし結果はこの通りです
21世紀の私達は、真実から目を背けて戦争を招き寄せて、21世紀のヒトラーとしてプーチンを育ててしまったのです
「戦争はウクライナだけの問題とみなされていたが、実際には欧州で原油・天然ガス価格が高騰し、イギリスでも食料価格が実に高くなった。私たちの臆病、ためらいをウラジーミル・プーチン露大統領に利用された。」
これは英国のエルウッド下院国防委員長がつい先日あるメディアに語った記事の引用です
日本はウクライナから遠いアジアの国です
関係ないことでしょうか?
先日、北方領土で夜間砲声のような大音響が一晩中なり響き、暗い夜空を閃光が沢山光るのが、根室から見えたそうです
そして日本海からはロシア海軍の潜水艦からミサイル発射の演習をしたとロシアの発表がありました
北朝鮮はいまにも核実験を再開しそうな雲行き
尖閣諸島ではまたも中国による領海侵犯が繰り返されたそうです
ウクライナの次は台湾に中国が攻め込むとも言われています
「ウクライナ戦争は世界の安全保障がいかに急速に悪化するかを示す警鐘である。と同時に、自己満足に浸り、自分たちの価値を守るための投資を怠るとどうなるかという警告でもある」
これも英国のエルウッド国防委員長の言葉です
私達日本人もまた目の前の現実から逃避しているのではないでしょうか?
真実に目を背けてはならないのです
アジアでヒトラーやスターリンを育ててはならないのです
アジアで戦争が起こるならばそれは、私達日本人が真実から目を背けているからです
赤い闇に包まれてはいないでしょうか?
最後に
本作は実話です
主人公は実在の人物です
映画的な誇張や演出があるかも知れません
しかし、あからさまに真実をねじ曲げてはいないと思われます
地元のレンタル店ではずっと貸し出し中でした
世間の関心の高さが伺えます
ウクライナの真実
信念を貫いた若き英国人記者ガレス・ジョーンズをジェームズ・ノートンが熱演。
目を疑う程の厳しい現実に衝撃を受けると共に、何も行動を起こしていない自身は、ロシア国民と何ら変わらないという悲しい事実を思い知らされた。
多くの人に観て頂きたい作品。
映画館での鑑賞
プーチンはスタ-リンになりたかった!
あなたは、「ホロドモール」という言葉を知っていますか ? 私は、今週放送されたBS-TBS報道1930で、初めて知りました。 日本では 「ウクライナ飢饉」「スターリン飢饉」「飢餓テロ」「飢餓ジェノサイド」 とも言われています。 1932年から1933年に起きた「ソ連によるウクライナいじめ」により、 ソ連本体は、世界恐慌の後でも繁栄していたのに、 ソ連配下で農業豊かなウクライナでは、 作った作物をソ連に搾取され、 自分達が食べる物が無くなくなり 「500万人」ものウクライナ人が餓死したそうです。 当然かもしれませんが、母親が餓死すれば、 その遺体とともに生きている赤ちゃんまでも葬られました。 これを映画化したのが「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」です。 英国のジャーナリストによる調査報道と体験を基にした実話です。 日本では、2020年8月に公開されましたが、 残念ながら、コロナ禍ゆえに、その存在すら知らない人が、 私を含め殆どだと思います。 BS-TBS報道1930では、当該作品にも触れており、 本日、Amazon Primeで、400円支払って観ました。 まず、誤解されたくありませんが、 当該映画作品は、当時のソ連・ウクライナ・ドイツなどを非難するのではなく 「人間の醜さ」をテーマにしていると思います。 でも、 平和ポケしている私には、吐き気がするほど、すさまじかった。。。 1932年のソ連・スターリンが行った弾圧と 同じやり方で、今回、プーチンが行っている事に驚いた ! プーチンは、スターリンになりたかったんだ! しかし、 当時の世界の悪者は、ヒットラーだったので、 当時のソ連・スターリンを非難するのは、少数だったのです。 しかし、 ウクライナでは、多くの死体は道路脇に放置され、 情報統制の為の「スパイ活動」と「ウソによる国民扇動」は、 90年前も今も全く同じだ。 また、現在でも行われている 「中国によるウイグル族への弾圧ジェノサイド」 と重なって見えました。 ソ連・ロシア人と中国人は、似ている ! 本当に、許せないし、嫌いだ ! 「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」 Amazonなら400円、Youtubeなら440円ですが、 前半は当時のソ連、後半はウクライナの悲劇で構成されており、 特に後半は、嘔吐してしまいそうな映像もあります。。。 お勧めする作品ですが、 決して、気軽に観れる作品ではありません。。。 Michi [追伸] 東部ウクライナの一般人が、「シベリア」に連行されるという報道が ありました。 私の父は、死亡届が母の元に届いてから1年後に帰国しました。 なぜならば、シベリアでの強制労働を強いられていたからです。 ソ連による「強制労働の実態」を常識を逸脱しており 父は、昭和がどんなに平和になっても、 ソ連を受け入れず憎んでいました。。。 当時のソ連は米国と肩を並べる経済力と軍事力を有していました。 そして、その後、 国際社会は、第二次世界大戦の失敗から学んだはずです。 今や、 ロシアのGDPは韓国以下、 軍事力も今回その低さが露呈しました。 でも、 核を有しているロシアだから、 ウクライナの後方支援しかしない米国・NATO・EUと国際社会。 これでよいはずがない!!!
ホロモドール
今ロシアの侵略により大変な思いをしているウクライナ。
過去にはこんなことがあったのか、という事実を知る上で観ておいた方がいいかなと思って観た。
この時も何百万人?もの人達が亡くなっている。
この時はスターリン。
そして今はプーチン。
独裁者達はどこまでも自分の思い通りにしたいらしい。
パンを奪い合う人々。
道端に横たわる死体。
それを集める人。
亡くなったお兄ちゃんの肉を食べて飢えを凌ぐ幼い妹弟達。
事実を伝えることもままならない時代。
一度は諦めかけた記者が、なんとか伝えることが出来たのはたまたまだったのか。
それによってウクライナ国民の命はどれくらい助かったのかはよくわからなかった。
今は新聞よりネットの時代。
伝達の速さは比べものにならないが、操作も安易なのがしれない。
恐ろしい国…
世界恐慌の中、景気が良いソ連を探るべく、単身潜り込む英国人記者ジョーンズ。同様に探った記者仲間は殺された。鍵であるのがウクライナの地と聞くと、政府高官を騙しながらも向かう精神はまさに命懸けのジャーナリズムだが、彼がその地で見たものは人為的飢饉=ホロモドールだった。強制労働で、穀物を次から次へとモスクワ行きのトラックに乗せる人々。列車の中で捨てたみかんの皮に群がる人々、兄の死骸に手を付けてしまう痩せ細った子供たち、彼自身もソ連に追われ、木の皮を食べ、飢えを凌ぐ。死体もその辺に転がっている。やがて、仲間6人と共に捕らえられるが、公言しないことを条件に彼だけ解放される。それは仲間が人質ということでもあった。紆余曲折あり、報じるも権力者によりフェイクニュースとされる。また、ここでも揺るぎない信念のもと、ライバル社に直談判し、遂に国家による虐殺を告発する。ヴァネッサ・カービーとの多少のロマンスなどの脚色はあるが、実話だけに全体的に淡々としていた。本人はその後殺されたとエンドロールではあったが、記者魂とはまさに彼のためにある言葉だ。しかし、あの国は今も昔も怖い国だ。
史実の重さと、カタルシスの大切さ
第二次大戦前のソ連の惨状を目の当たりにする外交補佐官の物語。 史実を基に創られた映画のようです。 重たく残酷な歴史を、しっかりとした演出で再現したドラマです。 ウクライナの描写が秀逸です。絢爛煌びやかなモスクワ。それに対して、ウクライナは一転してモノトーン。降り積もる雪、荒廃した家屋、生気を失った顔・・・汽車の中で唯一色彩を宿した蜜柑のオレンジ色が印象的です。 そして、幼い姉弟・・・実際に起こり得るような状況だったのでしょうね。 現地女性記者とのロマンス、尊敬する敏腕記者との関係、これらのサイドストーリーもしかっりとして好感が持てます。 非情に完成度の高い作品だと思いますが、映画としてみると、カタルシスを感じることが出来ないのが残念。史実なので仕方がないのですが、モヤモヤな気持ちが残ってしまいました。
巨大な力には勝てないのか😣
ヒトラーに取材経験のあるジョーンズは、スターリンにも取材したいとソ連に向かうが頼りにしていたジャーナリストの友人は強盗に襲われて死んでしまう。きっと強盗ではなく殺されたんだろう。ホテルにも2泊しか泊まれなかったりと圧力をかけられる。政府に取り込まれたアメリカの記者はジョーンズに取材を辞めさせようと酒と美女そしてアヘンを(男も)勧めるが、そんな誘惑にはのらず、仕事ひと筋。
なんとかウクライナ行きの汽車に乗り、北へ向かうのだが、、、人々の様子に驚く。汽車を降り、逃げ延びた村での地獄のような生活。道端に死体が転がり、それを片付けるリヤカー、母親の死体の横で泣き続ける赤ちゃんもまるでゴミのようにリヤカーに放る。歌を歌ってくれる子供達をカメラに収めようとすると、その隙をついて子供達はジョーンズの荷物を奪う。わずかながらのスープを分けてくれた兄妹、スープの中身は、、、悲惨な状況が観ていてとてもつらい。
なんとか事実を記事にしたいジョーンズだが、6人の人質となった人達のことを考えて諦める。しばらくして漸く記事を出す事ができたが、最後の解説で30歳を前にして強盗に襲われて死亡したとのこと。消されてしまったんだろう。正義を暴けば命はない。悪には勝てないのか、、、。
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