劇場公開日 2019年10月4日

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「善良な市民とは」ジョーカー はるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5善良な市民とは

2019年10月23日
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狂演。迫力すごい。映画賞は好きだよねこういう、キャラに飲み込まれたような演者を高評価するの。皮肉じゃなく。私もそうだし。

キャラっていう言葉出したけど、確かにコミックのキャラであるジョーカーからは抜けてしまったと思う。だからいい。これはジョーカーじゃないだあーだこうだ言ってもらって、良くても悪くても皆でダークナイあたりを見直して、DCコミックのカッコよさ再確認してくれれば、そうそれでいいのだ。

あえて触れるなら、アーサーが今後、いままでのような狂喜的で知的で魅力的なカッコいいジョーカーにならないとしても、この騒動によって産まれた沢山のピエロが全員ジョーカーであるって事でいいのではと思う。あのデモを起こした全員がジョーカーになりうるんだよ。こんなにワクワクして、恐ろしいことはない。引き金を弾いた本人に信念などないがゆえに、より一層怖い。
あのエンディングで、もしかして全部妄想だったのかもと思ったりもした。誰かを殺したいと思ったり、死ねって思ったことあるじゃない。そういう皆の中にもある、一つのジョーカーの話だったのかなとか。
個人的には、シリーズやコミックから切り離して見つつ、オマージュと分かるところは分かって楽しめたから、バッドマンシリーズのジョーカーじゃない云々でうっすい議論するのは勿体ない気がする。完全に日本の売り方が良くない。まぁ見てもらえたらいいんだからあってるっちゃあってるけど。

しかし苦しい映画だった。アーサーって自分からは誰も傷付けようとしてないじゃない。あんなお母さんにすら当たったことない。いつも笑って、笑って、抑えて、笑って、頼れる誰かも、国の補助が無くなって、警察まで電車内の市民に拳銃を振りかざし、光に見えたお父さんと、お母さんの正体で、更なる孤独と貧困の果て。
映画を見て、彼を救えると思えた人なんて居るんだろうか。私はあそこまでの貧困を想像できないほど、幸せなところにいる。

今の世の中だと思った。いま、どこの国もゴッサムシティになりつつある。日本だって、来年のオリンピックが終わってからが恐ろしくて仕方ない。誰が引き金を弾くかなんて分からないし、どう進行を止めるかも分からない。ぶち壊して良くなるとも思えないけど、ぶち壊そうとしなくてもあぁなったんだから時間の問題だと思う。
もう一回しっかりみたい。

は