ボーダー 二つの世界のレビュー・感想・評価
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思いもよらぬ世界観
僕はこの原作を読んでいて、初めてフライヤーを見て、ティーナの異形さに衝撃を受け、そして作品を観て、原作とはかなり異なる展開だが、ジョーカーの根底にも流れている、僕達の世界の危うさとか醜い部分を感じざるをえないような衝撃を受けた。
僕達のエゴは、既に多くのものを破壊し、多くの種を滅ぼしてきた。
自分たちと異なる人種を受け付けず、排除しようとする者たちは一向に減る気配はない。
トロルは北欧の独特な民族的な世界観の産物だと思うが、もし、ネアンデルタール人やデニソワ人が発見されたら、僕達ホモサピエンスの末裔は、これを観察のために閉じ込めたり、実験に使ったりするのだろうか。
いろいろ考えさせられる作品だ。
そして、この作品のティーナもヴォーレも、容赦がないほど可愛らしさなど排除され、ロード・オブ ・ザ ・リングのトロルとは全く違って、僕達の人間社会とは相容れない異形さを呈している。
因みに、小説のヴォーレは、生きるために人間の赤子をさらうのだが、映画は人間に対する復讐心として、その動機付けが語られ、幼児ポルノは人間の醜い部分として付け足されて比較対照的に描かれている。
他にもいくつか異なる場面はあるが、分かりにくかったという印象を持つ人のために、少し説明すると、ティーナには自分のヴァギナが裏返って男根のようなものが出来て生殖します。また、ヴォーレの人間に似た無精卵は、更に人間の赤子にそっくりになる性質があって、それをヴォーレは、本当の赤子と取り替えるのです。
小説では児童ポルノマニアに売るのではなく、子供を欲しがっている人に売ってお金をかせぐという設定だったように覚えています。反社会的に描く方が、鑑賞者にうったえるものが大きいと考えたのかもしれませんが、こうした片隅で生きるものが怒りを抱いて、復讐心を持つという設定より、オリジナルの切なさの方が僕は好きだったので、ちょっとだけマイナスにしました。
でも、興味深いの作品だった。
北欧作品が大好きなので 公開を楽しみにしていた作品 大地を...
北欧作品が大好きなので
公開を楽しみにしていた作品
大地を覆いつくす優しい苔
緑豊かな苔の合間から
低い空をめがけ伸びる針葉樹
太陽を浴び尽くし焼けた葉を流すせせらぎ
所々に残る白き水の結晶たち
北欧の閉ざされたイメージの風景に
異質に映る彼と彼女
そこに重なる……
作品を観る前に勝手に想像していた
展開や関係性は見事に外れて
想像の斜め上を行く
世界観にすっかりやられました
この世界観に織り込む闇であったり
現実と非現実の交錯させる
描写がとても新鮮だったし
オープニングの対比というか
自我の目覚めの描き方も
分かりやすく素晴らしかった
この世界観を噛みしめながら
エンドロールをみていてさらに驚き
オスカーのノミネートの意味は
そういうことだったのか
期待値高かったけれど途中落ちた
自分のイマジネーションがついて行くことが出来ないほどの創造性あふれる作品だなーと思っているうちに、自らが夢の中に陥ってしまい、まともに作品を評価する資格がございません。
子孫繁栄
どうしたって醜いその姿形、人の心を嗅ぎ分け隠し事を暴く日常、明らかに異質な彼女の正体とは。
知りたいことを全てきちんと示してくれる映画で良かった。
子孫繁栄、自分たちの種族を絶やさない、という本能について真正面から考えさせられる。
カゲロウやセミなどを見る度に、「なぜ子孫繁栄のためだけに生きているのか」と昔から疑問に思っていた。
その答えを少し実感できたような、理屈でまだ説明できないけれど、この映画の中で確かにその感覚を飲み込めた気がする。
子供の頃から疎外され孤独だったティーナ。
共に過ごす人を見つけてこの世界に馴染んだ生き方をしてみても、拭えない違和感。
長年積み重なったそれらがヴォーレと出会ってスッと消えたときの「しっくり来る」感覚にほっとした。
ヴォーレの不気味そのものな言動に対する嫌悪感は相当なもので、最初はこの人が敵か何かかと思った。
執拗に気にしていた彼の匂いは、思えば今までの何よりも特別なもので初めて嗅ぐものだったんだろうな。
遺伝子レベルで惹かれ合う二人の生々しい描写には思わず釘付けになる。
熱いシーンなのにゾワゾワしてしまう。
見てはいけないものをまじまじと凝視してしまったようで、謎の背徳感が生まれた。
そしてまさかの生理現象。この手の気持ち悪さが好き。
このままロマンスとして進むのかと思いきや、サスペンスの方向にまた流れていく物語。
バラバラに思えたエピソードの重なり方がとても上手くてゾクゾクした。
宙ぶらりんのまま終わらせないで〜と思っていたけどしっかり回収してくれる安心感。
冒頭と締めの対比も好き。
自分の正体を知り、やっと生まれたアイデンティティをどう扱い持って生きるのか。
今まで常に持っていた倫理観や価値観をどう変化させて生きるのか。
やっと自分だけの生き方を決められる時に下した選択。悩み苦しみぶつける様は、まるで遅めの思春期が訪れたようだった。
ごちゃごちゃした問題はたんまりあるけれど、結局シンプルな愛情に勝るものは無いのかも。どうかどうか幸せに。
映像のインパクトが強い映画だった。
スウェーデンの美しい自然とその中で走り回る裸体、強調される動物の存在、もちろん諸々の造形も。
もしかしたら今この地球にもひっそりと紛れた異種のモノがいるのかもしれない、なんて考えるとときめくものがある。
彼らが怒りや憎しみのために生きていなければいいけれど。
この星を支配していると思い込んで人間なんて隙を突かれると弱いもの。
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