サタンタンゴのレビュー・感想・評価
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異形の傑作。
ある男がかつて住んでいた村に戻ってくることによって、それまで平穏であったコミュニティが次第に崩壊してゆく様を丹念に描いた映画です。アンゲロプロスやタルコフスキーの映画を回転数を落として描いたような映画です。音楽で云えば、ワーグナーの楽劇やブルックナーの交響曲の回転数を落としてみたような映画です。寓意に満ちた映画で、例えば、イリミナーシュにアドルフ・ヒトラーの姿を投影してみることは比較的容易でしょう。様々な解釈を許容する懐の深い映画です。とにかく、鑑賞する映画ではなく、体験する映画です。日本語の字幕がついたDVDが発売されたなら、真っ先に購入するつもりです。正直、劇場で7時間以上座って見続けるのは些か、しんどいので・・・。
映画を体験する。
7時間18分という上映時間につられ、単純な好奇心で見に行きました。オープニングから、映像の美しさにはまってしまいました。あとは、風の音、なんでもない室内の音、雨の音など音も良かった。なんとも言えない暗く、寒い雰囲気のハンガリーの重々しさに、どっぷり浸ってしまいました。映画館で見ることができて、良かったな、と思う映画。
ある意味、業。
長いカットの連なりのため、映画というよりも、スチールをずっと鑑賞しているような感覚だった。
正直、つらい。例えば、写真展にいって、150枚の写真を7時間かけてゆっくりと観察することを想像してもらえれば、この感覚が少しは伝わるかも─。
確かに、なんでこんなシーンをこんなにも長く…なんて思ったりもしたけれど、あの画質と絵づくりを見せられると、作家の意志がなんとなく理解できる、ような気がする。
しかも、1コマごとに修復を加え4Kスキャニングをしたという画質は半端ではなかった。本当にモノクロのスチール写真のレベルで映画が仕上がっている!
眠かった。意識が飛んだ。でも、高尚な芸術で近寄りがたいというだけに終わらず、内容にもかなり惹かれた。
個人的には猫と少女の表現が印象的だった。単に面白いとかそういうものでは片づけられない、凄い表現にあらゆる感情が揺さぶられ、脳が疲労してしまった…
物語を追うときっと欲求不満必至。この映像の素晴らしさを修業がてら気を張って頑張って臨んでください。
時間の映像化
原作は知らない。
結局、イリミアーシュが官憲から命じられた“ミッション”は、今一つ分からなかった。ただ、もともとストーリーなど、どうでもいい映画のようだから、気にする必要はないのかもしれない。
しかし、イリミアーシュの“実写化”という点では、明らかな失敗ではないかと思った。「サタン」とか、公式サイトに書かれているような、村人が恐れ敬うようなカリスマ的影響力をもつ存在には、とても見えない。
驚異的な「長回し」という。
しかし、長回しと言う時は、まとまった意味を持つシーケンスを、切れ目なく映し取るカメラワークのことだろう。細切れにタイミングやカメラ位置を変えずに、あたかも実生活のように、時間と視点の流れを体験する。
しかし、この映画のように、意味ある事象と無意味な事象が無差別に混在し、シーケンスそのものが存在しない時、長回しとは何なのか?
結局、タル・ベーラは、“時間そのもの”の映像化をやりたかったのかな、と思うしかなかった。
そのために、一つのシーンを、どうでもいい瑣事まで含めて、“実際に要する時間の長さ”で描く。観客自身とは無関係に流れる“他者の時間”を、映画館の椅子に縛り付けて体験させる。
そう言うと、単なる“垂れ流し”に聞こえるが、実際そうなのだから仕方がない。
自然ドキュメンタリー系作品のように、映像美があるならば垂れ流しで良いのだが、映像美などは監督自身が、意識的に拒否しているように思われる。雨と泥の世界、送風機を使っていることが見え見えの映像、がらんどうとした薄汚い室内。
「映画」とは、単なる録画映像の再生ではなく、現実の“凝縮”された芸術的再構成であるとするならば、本作品は半分「映画」ではない。
通常、自分は映画を見る時は、最低限の事前情報しか入れない。見終わった後に、いろんなレビューや公式サイトを覗くのが楽しみだ。
だが、本作品については、ネットで事前に調べて(特に、英語版のWikipediaはありがたかった)、筋書きを頭に入れておいて正解だった。そうでなければ、休憩を含めて8時間超の作品を見通すことなどできなかっただろうし、シーンの重複にも気づかなかったかもしれない。
4度ほど、5分程度の心地よい眠りに襲われたが、筋書きを知っていたので、全く問題にならなかった。
やはり中二病は万国共通の病なのか、、、?
残念ながらそう思わざるを得ない内容。
とにかく"中二病"を感じさせる、無意味な長回しのオンパレードである。
長回しをストーリーに対して効果的に使えているアンゲロプロスやタルコフスキーらの作品と比べて、この映画のそれには残念なことに必要性を感じられなかった。
この監督がどのような時期を得て、『ヴェルクマイスターハーモニー』や『ニーチェの馬』の"手法"を手に入れたかを知るには観る価値があるかもしれない。
特別なファンでなければ、奇をてらった宣伝文句に騙され7時間以上もあるこの作品に、貴重な時間とお金を捧げる必要はない。
この映画を撮ったのはまだタル・ベーラがまだ30代?の頃だということを考えれば、まぁ許せなくもないが、、、、
タル・ベーラの頂点はやはり上にあげた2作品である。
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