パパは奮闘中!
劇場公開日 2019年4月27日
解説
「真夜中のピアニスト」「スパニッシュ・アパートメント」などで知られるフランスの人気俳優ロマン・デュリスの主演で、仕事と育児に追われる父親の奮闘の日々と、子どもたちとの絆を描いたドラマ。ネット通販サイトの倉庫でリーダーとして働くオリヴィエは、ある日突然、妻が姿を消してしまったことから、仕事をしながら2人の子どもたちの世話にも追われることに。なぜ妻が姿を消したのか、その理由もわからず混乱しながらも、妻を捜すオリヴィエ。そんな彼のもとにある日、一通のハガキが届き……。仕事一筋でダメなところもあるが心優しい父親でもある主人公オリヴィエを、デュリスが熱演。監督は、初長編作「Keeper」が各国の映画祭に出品され注目を集めたベルギーの新鋭ギョーム・セネズ。
2018年製作/99分/G/ベルギー・フランス合作
原題:Nos Batailles
配給:セテラ・インターナショナル
オフィシャルサイト スタッフ・キャスト
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2021年11月13日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
ネタバレ! クリックして本文を読む
妻が家出して、小さな子供2人の世話に奮闘する夫の話
食事がシリアルばかりだったり
子供の服を着替えさせるにも
どこにどんな服があるかわからず
戸惑ったり
仕事をしながらの子供の世話に疲れ果てて
手伝いに来ている若い叔母とプチ浮気
しちゃったり・・・
あぁ、普段家事育児しないお父さんが
突然そういう立場に立たされると
戸惑い疲れる事ばかりよね・・・
仕事では有能なのに解雇されそうになっているし
結局、子供たちにだけ「愛してる」と出先から
ハガキを送ってきた妻とは何の話し合いも
ないまま昇進して、話は終わるのですが
「真実を語る機会」を設けることが大事、
「(家族や他人と)どう距離を取ればいいのか
考える事」に夫は気づくし、
話の流れ的に子育て大変すぎて疲れた妻が
ちょっとお休み欲しくて、夫にその大変さを
理解してほしかったという事らしいので、
引っ越した家に妻が帰ってきたら、きっと
気分も新たに話し合いをしながら今後は
上手くやっていけるのだろうと思った
良作だけど地味な作品なのでコメディーを
連想させる邦題は合ってない気がしました
2020年9月25日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
「ミセスダウト」の類いだと思っていたので・・鑑賞後しばし重たい気持ちになった。
シリアスで。
僕のかつての妻は言ったものだ
「今の仕事になってからあなたは怖くなった」。
流通業に携わっています。画面見ながら思い当たることしきり。
オリヴィエとクレールと二人の子どもたちの物語。
あまりにも忙しい。
ましてや中間管理職だとなおさら。
声のトーンもきつく、大声に。そして問題解決を急ぐあまり話す言葉も早口になる。
僕の働く現場も同じだ、
効率化が叫ばれ、早足・駆け足が求められ、そして脚がもつれて転んだ者を人事課は見ている。リストラの影がちらつく。
・・荷主の人事担当者が黒い手帳を開いて毎日我々をひとりずつ、ひとりずつ、ずっと上から監視している。
( ⇔ 妻クレールは、女友達のブティックで働いていたが、文字通り生き馬の眼を抜く現場で稼いでいる夫のこんな修羅場とか分かっていたのだろうかなぁ・・)。
夫婦の関係はよく演出されていた、
夫オリヴィエは早出の朝、妻の“最後のコーヒー”をせかせかと受け取り、冷ますためにミルクを入れる、「濃くて美味しいよ」ととりなしは忘れずに言えたがバナナは「いらないッ」と むげに断る。
その日の予定と、(どんくさい、けれど大切な)部下の解雇通告の件で出勤前のオリヴィエの頭はいっぱいいっぱいなのだ。
物言いたげな妻を台所に残して出て行ってしまう。
この男は、間を取ってのゆったりした会話が不得手だ。警官とも、上司とも、妻の同僚や応援に来てくれた母親とも、相手の心を受け取りながらの会話が出来ない。言葉がかぶる。
(演技ホント上手!)。
妻の発病と家出は、もちろん本人の資質もあるから全部が全部オリヴィエのせいであるとは言えない。
でも忙し過ぎたのだ。
・・・・・・・・・・・・
僕の知人の法律家の話だが、
彼のクライアントは相談料も払えない病人や破産者ばかり。よそで断られてきた困窮者が口コミや福祉事務所の紹介で連日列をなしている。受け付けを断ればクライアントが呆気なく命を絶ってしまうことを知っている。だから彼は寝ていない。
その彼は、実は、帰宅前に必ず小一時間、車で走るのだ。そうやって仕事中の荒れた気持ちを収束させ、そうして家で待つ妻にケンの立った表情を見せないように、切羽詰まった語感で妻を傷つけないように、法律家の彼は自分をドライブで必要なだけ疲労させてから、玄関のドアを開けている。
「神経を麻痺させているのさ」と言っていた。
妻との夕食は必ず帰宅して守る。しかし妻が寝てから彼は家を抜け出し0時から明け方4時まで彼は事務所に戻る。
で、そうっと夜明け前けに帰宅し睡眠。妻と一緒に起床して朝食は共に守る。
職場の課題が大きいほど男は崖っぷちなのだ。
ゆとりが無いのはいけないね。
世の中に「オリヴィエ」はたくさんいる。壊れる寸前、本人のバーンアウト寸前で。
・・・・・・・・・・・・
【二組の兄妹、その①】
兄オリヴィエと妹ベティー。
組合仲間の女性と「セックス会議」をして帰宅した兄を妹ベティーが台所で迎え打つシーンが大好き。
病気の妻が失踪して、子供の世話が限界で、それで妹に助けに来てもらっているというのに、心が折れて他の女の体に逃げて逃げてしまった、そんな兄の帰宅。
“浮気”をズバリ言い当てられたあそこ。なんて素敵な妹からの問いかけだろう、
全部のしがらみからいっとき解き放たれて「素の兄ちゃんと妹」の表情に戻る二人。その支え合いが珠玉なんだなー!
台所での二人の会話、
「大したことでは」
「少しぐらいハメを外したって大丈夫よ」
「良かった?まさかダメだった?」
・・二人の表情がどんどん変わる。
こんなに肉親を有り難く思えるシーンはそうない。
ここ是非ともしっかり見てもらいたい。
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【二組の兄妹、その②】
兄エリオットと妹ローズ。
お母さんが行方不明で失語症とおねしょの始まった妹ローズのためにお兄ちゃんがお母さんを捜しに行く。
それぞれ家庭の事情を薄々感じ、両親の脆さ(もろさ)を実はよく見て育ってきたあの子どもたちは、不安定な夫婦関係よりもずっと近い兄妹の同類項で支えあっているかも。
二組の兄妹の物語ですね。
・・・・・・・・・・・・
結局、
パパは仕事と家庭の両立を捨てる。
仕事と家庭の両立は無理だったのです。
子育て、夫婦関係、労使問題と様々なテーマが渦巻いていて動悸が止まりませんでした。
彼らの旅立ちがハッピーエンドになりますように!
【主演ロマン・デュリス】は「ガッジョディーロ」以来気になっている俳優さん。
あのナイーブでユニークなデュリスの良さが、エンディングのスプレーペンキのシーンに出ていて嬉しかった。
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付記 2020.9.27.
男性の(家庭をないがしろにしての)重労働をあるべき姿ではないと評し、それを資本主義の行き過ぎた搾取の姿だと批判するレビューは多い。そこに陥っていく男たちを嘆く声もたくさん聞く。
しかし、
僕もそれに反対するものではないが、この点については確認しておきたい、
つまり、
男は太古より女子供を家に残して、命がけで獲物を獲得し妻子の元へ食糧を持ち帰るという生き方をしてきた。
その衝動と達成感、そして義務感と喜びは、資本家・雇用主から強制された世の仕組みとしてではなく、男の存在の源に“本能”として生まれながらに備わっている行動=生物としての特質なのだ。
家族が大切であればあるほど、男は命を賭けて(過労死さえ喜んで)獲物を探しに家を出る。
マンモスを捕らえるためにアウストラロピテクスが狩りをした本能が、数万年前から現代に至るまで、男の中には厳然として息づいているのだ。
この男特有の内なる要請については妻も夫本人も知っておくべき事、忘れてはいけない人間の基本の姿だと僕は考えている。
女子供が大切であればあるほど男は女たちの知らない理由により、家をあけるのだ。。
2020年6月22日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
タイトルからするとコメディだろうと勝手に決めつけて観てしまった。あ、いきなり笑えない展開に!通販サイトの過酷な労働。労働組合はあるものの、暖房を入れずに帽子を被らされたり、人事はかなり厳しい決断をする。53歳の同僚がいきなり解雇されるし、他の従業員も更新しないとかアガトの一存で決められる。こりゃ契約という名の非正規労働者だな・・・
amazonのような大会社(多分)だろうけど、かなり厳しい内容のブラック企業っぷり。おまけに夫婦共働きじゃないと満足な生活ができない状況も窺える。そんなパパでも人付き合いが良さそうで、誰からも頼られる存在。しかし、仕事ばかりで家庭を顧みない性格のため、妻ローラが行方不明になってからは家事や子どもの送迎で天手古舞。母親や妹までも総動員するが、ローラが帰ってくる様子がないのだ・・・
ローラは心の病を抱えていたようだったが知る由もないオリヴィエ。妻が居なくなってようやく家族の大切さを知るのですが、その忙しさもなんとかこなす器用さは伝わってくる。妹ベティの優しさも感じられるし、いい人ばっかりが目立ってしまいます。それにしてもフランスの労働条件も過酷な様子。息子が「民主主義って何?」などと質問するもんだから、その問いを観客にぶつけてるんでしょうね。頑張れ!と言いたくなるようなラストでした。
2020年6月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
-脚本が粗いが、キチンと観ればオリヴィエ(ロマン・デュリス)の妻、ローラ(レティシア・ドッシュ)が家出をした理由が仄かに理解出来てくる。-
オリヴィエが働く物流倉庫会社の労働環境、雇用条件が相当劣悪な事が徐々に明らかになる。
・年齢の影響なのか、生産性が落ちたオリヴィエの同僚、ジャン=リュックは人事担当の女性から、あっさりと馘首され、自ら手首を切る。
・同様にオリヴィエの同僚の女性は妊娠を理由に契約を更新されない・・。
ーおい、フランス。相当ブラックな企業をかかえているな・・。日本も同様だが・・。-
オリヴィエは彼らのリーダーとして、”会社では”奮闘中であったようだが、家庭ではそうではなかったようで、妻ローラは二人の子供を愛していたが、アパレル店の店員として働く中”ある客の姿を見て:キャッシュカードで支払いをしようとしたが、カード残高が足りなかった・・”気を失い、そのまま失踪する。
又、息子、エリオットの火傷も遠因であるようだ。
ーこの辺りも、描き方が粗い。だが、徐々にローラが不安定な精神状態にあったことが仄めかされる。理由もはっきりとは描かれないが、夜遅くにならないと会社から帰ってこないオリヴィエにも一因があるようだ・・。-
ある日、ローラから”子供たちに”絵はがきが届く。文面は子どもたちへの愛の言葉で埋まっている。(オリヴィエには、一言も言及されていない・・)
投函先はフランス北部のカレーのヴィッサン、ローラの故郷である。
オリヴィエはそのはがきを読み、怒りのあまり、破り捨てる。子供たちはセロテープでつなぎ合わせる・・。
オリヴィエは仕事の関係もあり、妹のベティに二人の子供の面倒を頼むが、時折”父譲りの上から目線の言葉”をベティに”自ら気付くことなく”述べてしまう。それをベティから”お父さんそっくり”と非難されるが、意に介さない。
ー成程、ローラが家を出た理由が見えてきたぞ・・。-
オリヴィエは会社の労働組合活動に従事するクレールと、関係を持ってしまうが、組合活動に深入りしたくないと表明すると、クレールから関係を途絶されてしまう。
ーおいおい、労働問題と男女関係を同テーブルで描くのかい?-
そのクレールも組合活動は合わないと身を引くし、会社側の人事担当の女性も馘首されたことが、新たな人事担当の男性からオリヴィエに告げられ、
ー明らかに、人事担当としては権力の乱用が理由であることは明らかであろう。-
オリヴィエは人事部門に来ないかと誘われる。
そこで、オリヴィエの取った選択肢とは・・
〈ヌルイ邦題と(センスの欠片もない!)、可成り粗いストーリー展開に戸惑いつつも、フランスの”ある業界”の劣悪な雇用環境・条件を背景にした、家族をテーマにした物語。
確かに”パパは奮闘していた”が、本来奮闘するべき場”家庭、子育て”で父親としての役割を果たしていなかったことに彼自身が気づき、妻との関係性を修復しようと新たな一歩を踏み出す姿を描いた作品。
”可成り上から目線で”、ギヨーム・セネズ監督、もう少し脚本を練り込まないと、観客はついてこないぞ!と思った作品でもある。>
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