宮本から君へ : 特集
胸アツの衝撃!池松壮亮×蒼井優演じる宮本と靖子の“魂の駆け引き”に
手汗と涙が止まらない 四の五の言わず、ただただ、“見てほしい”!
9月27日から公開を迎える真利子哲也監督作「宮本から君へ」を鑑賞したとき、あまりの衝撃に語彙力が吹き飛んでしまい、ただただ「すごい映画だ」とつぶやくほかなかった。魂の駆け引き、全身全霊の芝居、池松壮亮と蒼井優らが刻み込んだすべてを見る間、手汗と涙が止まらなかった。
彼らが体現した“宮本と靖子の生きざま”は、筆舌に尽くしがたい熱量にあふれていた。発せられる“業火”とも言うべき熱は、スクリーンを隔てた観客の心すらもチリチリと焼き、焦がす。本作を語るうえで、美辞麗句はいらない。映画.comから読者の方々に伝えたいことは、シンプルにこれだけだ。
見るべし。
あなたは、“ヘタな言葉で語りたくない映画”に出合ったことはあるか!?
都内の某試写室で、一足先に本作を鑑賞した。直後、感想を問われたら、答えられず逃げ回っていたかもしれない。映画の熱情に比べたら、自分が持ち合わせている言葉なんて陳腐でちっぽけで、口に出せば出すほど最も大切な部分から離れていってしまうのではないか。感想を言葉にすることは、ひどく困難なことのような気がした。
この感動は理屈ではない。申し訳ないが、感想を表現する義務を、放棄することにした。代わりに、試写終了後に目撃した観客の反応を、ここに記しておこう。
・劇場から小走りに退出し、頬を紅潮させながら感想を語り合う2人組の20代女性 ・笑顔だが目には涙のあと 鼻声で「やばいくらい良かった」と明かした40代男性 ・放心状態で虚空を見つめ、一言「アツすぎる」とつぶやいた20代男性 ・満面の笑みで「宮本、最高!」と拳を突き上げる30代女性原作の新井英樹氏は、本作に対し「生きているってのは、誰かから誰かへと、想像もできない感情を生み出してくれます」と言葉を紡いでいる。あなたはこの映画の熱量を受け、果たしてどうなるだろうか――。
原作へのリスペクトがハンパない、池松壮亮&蒼井優が“魅せる”!!
衝撃的な熱演
主役2人を含めた役者陣の熱演は、それはもう半端ではない。池松は主人公・宮本、蒼井はヒロイン・靖子を演じ、“究極の愛の試練”と“極限の人間賛歌”の物語を紡いでいく。
池松と蒼井は、役づくりや芝居という領域を軽々と飛び越え、本作に人生を捧げていたようにも見えた。交わされる魂の応酬、そして愚直なまでの情熱。カメラの前で、2人は己の“魂”をさらけ出していた。
●池松壮亮という男が“見せたもの”映画は、宮本が自身の顔面をぶっ叩くシーンから始まる。セミの鳴き声が耳をつんざき、景色が陽炎で歪む灼熱の公園で、顔が千切れそうなほど自分を痛めつける。
恋人・靖子を襲った“事件”。自分の不甲斐なさと怒りに打ち震える宮本は、敵に立ち向かうも、虫けら同然に返り討ちにあってしまう。池松は宮本の察するに余りある屈辱を身に宿し、自分の顔に拳を叩き込み続け、全身で叫び、泣き、のたうち回り、そして笑った。
22歳の時、池松は原作と出合った。「自分のために描かれていたのではないか」。そう感じるほどの電流が全身を貫いた。彼はずっと、不器用で愚直な主人公に心を重ねあわせてきた。
劇中、宮本は前歯を数本失うが、池松も当初、自らの歯を抜いて撮影に臨むつもりだった。新井氏と蒼井の本気の説得により、その気合いの矛先を演技に向けたが、それだけ人生をかけた挑戦だったのだ。
●蒼井優が靖子を通じて “見せたもの”
蒼井も負けていない。靖子の潔さと強さを体現し、貫禄すら感じる“凄み”をみなぎらせている。「全力で感情をぶつけ合うシーンの連続だったため、撮影3日目にはすでにヘトヘトでした。こんなに早く疲弊した現場は初めて」と、しみじみと振り返る。
靖子が宮本に問いかけるシーンがある。台本では一言、「眠れた?」とだけ書かれていた。しかし蒼井は、原作では「よく眠れた?」というセリフだった意味を重視し、宮本への“皮肉”を込めた「よく」を加えることを、真利子監督に提案したという。
ケンカするように、むさぼるように切実な愛を育み、絶頂の幸福と地獄の絶望を往還する靖子と宮本。どのシークエンスも隙のない、バッチバチに極まった蒼井の熱演を堪能することができる。
キャスト、スタッフ、主題歌、すべてが完璧…これ以上ない“無敵の実写化”
本気で原作を愛し、本気で生身の愛を求めた者が、この時代に集った“奇跡”
池松と蒼井だけではない。共演陣、スタッフ、主題歌など、すべてがこれ以上ない熱量。漫画「宮本から君へ」に人生を捧げるほど愛した人々が、幸運にもこの時代に集い、120%満足できる映画を完成させた――。
●衝動を胸に集い、情熱を“生身の愛”へと昇華させたキャスト陣井浦新、佐藤二朗、松山ケンイチ、柄本時生、星田英利、古舘寛治ら、共演陣は衝動を胸に撮影現場に結集した。なかでも、真淵拓馬を演じた一ノ瀬ワタルがすさまじい。原作の巨躯を再現するため、2カ月で30キロも増量・肉体改造し、「絶対に勝てない」と思わせる肉体を作り上げた。拓馬が飲み屋街に現れるシーンは、原作ファンをも震撼させる仕上がり。必見だ。
●“愚直なヒーロー”具現化し、極限の人間讃歌描いた新鋭・真利子哲也監督
原作とは大学時代に出合ったという真利子監督。時を経て、あの時あこがれた“愚直なヒーロー”を具現化してみせ、コンプライアンスの時代に挑戦状を叩きつけた。
映画化不可能と称された“非常階段の決闘”は、CGを使用せず、ノースタントのリアルファイトの撮影を選んだ。原作の場面や舞台が驚くほど再現されており、真利子監督が創出した“異常な熱気を帯びた映像”に、見る者の拳は自然と突き上がる。この興奮、ぜひとも映画館で味わってもらいたい。
●「宮本から君へ」だからこそ生まれた、唯一無二の主題歌と珠玉のエンドロール
物語が終わりを告げても、エンドロールにも感動が待っている。主題歌は宮本浩次と横山健がコラボした「Do you remember?」。物語とシンクロする熱く切実な歌詞とメロディは、まさに「宮本から君へ」に贈る人生讃歌だ。そして、写真家・佐内正史氏が撮り下ろした池松と蒼井の姿に重なり、多幸感にあふれた爽やかな感慨を観客の胸に運んでいく。
本作はおよそ“正しさ”や“潔白”とはかけ離れ、時代の変わり目に中指を突き立てているように命を燃やす。しかしながら、だからこそ、血と汗と涙にまみれた宮本たちの“存在”は、私たち観客に尋常ならざる勢いで“生きること”について訴えかけてくる。宮本から、君へ。メッセージは託された。