劇場公開日 2019年9月27日

宮本から君へ : インタビュー

2019年9月24日更新

「宮本から君へ」池松壮亮&蒼井優、間違いのない2人が奏でる究極の愛

「作品のために命をささげる」という言葉が大げさに感じられないほど、取り組む映画への熱量が感じられる池松壮亮蒼井優。そんな2人の役者がタッグを組んだ映画「宮本から君へ」が公開を迎える。原作はモーニングに連載中から、主人公・宮本浩の超無器用ながらも、実直で周囲を巻き込む破天荒さが賛否を呼んだ問題作だ。「軽々しく受けられる役ではない」と語った池松、その言葉に大きく頷いた蒼井が、互いに惹かれ合う理由や、壮絶な撮影現場を振り返った。(取材・文/磯部正和 撮影/堀弥生)

宮本から君へ」は、昨年テレビ東京の「ドラマ25」で放送され、池松演じる主人公・宮本浩の営業マンとしての生き様が描かれた。そして映画では、原作の後半部分にあたる、宮本が出会った年上の恋人・中野靖子との壮絶な恋模様が展開するが、連載当時から、衝撃的な内容は大きな物議を醸した。原作者の新井自身も、舞台挨拶で「相当嫌われた漫画」と話していたが、それだけ演じる側にも覚悟が必要だったのではと感じられる。

池松は「そんなに軽々しく『やります』とは言えない作品ですよね。何かをささげなくてはいけないと思いながら、僕は安直に(宮本が乱闘により前歯が折れてしまう描写があるため)歯を差し出せばいいのかなと思ったんです」と笑いながら語るが、劇中での池松の演技を見ていると、そんな言葉も本気で言っているのだろうと感じられるほど、圧倒的な熱量がスクリーンからは伝わってくる。

池松の発言に蒼井は「いやいや、それはダメでしょ、歯は大事だから」と止めたというが、この作品のためなら、歯を抜いたり、指を折ったりすることも平気でやってしまいそうなぐらい、池松の思いを感じていたようだ。そんな池松演じる宮本にがっぷり四つに向きあうどころか、それを凌駕するほどの熱量で対峙するのが靖子という女性だ。

蒼井は「私自身も本当に楽しみにしていた作品だったのですが、あまりの熱量で、予想していたよりも圧倒的に早く体力がなくなってしまったんです。想像を絶するしんどさでした。もうちょっとペース配分を考えればよかったのですが、最初から50メートル走のテンションでフルマラソンに挑んでしまった感じ」と笑いながら撮影を振り返る。

互いに出身は福岡。当時からその存在は知っていて、同じ作品に出演したこともあった2人だが、2018年に公開された塚本晋也監督の映画「斬、」で、がっつりと共演した。この作品でも池松と蒼井は、魂がぶつかり合うような演技を見せ、観客の度肝を抜いた。

「あの蒼井さんが『斬、』をやったから、次はなんとなくでいいよね、なんて言うはずがないし、どうしたってフルスロットルで来ることはわかっていた」と池松は蒼井のさらなる全力投球を見越していたようだ。蒼井自身も「池松くんと一緒に芝居をするということは、緊張感を維持できるし、ものづくりを楽しむうえで、絶対に裏切らないという安心感もある」と全幅の信頼を置いているという。

さらに池松は「普段、あまり僕は人の言うことを聞かないのですが、蒼井さんには妙な説得力があるんです。歯を抜く話でも、蒼井さんじゃなく、ほかの女優さんだったら、歯を抜いていたと思いますよ」と特別な存在であることを明かすと、「蒼井さんってオオカミみたいな女優ですよね」とポツリ。

「どういうこと?」と突っ込む蒼井に「オオカミって、はたから見ているとものすごく美しくて孤高な存在ですが、いざ対峙すると結構きついですよね。オオカミと遊んだり笑ったり、けんかしたりするのって、大変じゃないですか。気を抜いているとすぐ食べられちゃう。怖い人です」としみじみ語る池松。

こうした感覚は蒼井も池松に感じているようで「確かに、池松くんにも生半可なことはできないという怖さはあります。噛みつかれたら殺されちゃうかもしれないという危機感はあります」と評価すると、「これまで一緒にやっていて、『あーそうくるのね、なるほど』という予定調和的な芝居が一度もないんです。それってものすごくレアなこと。何回でも一緒にやりたいと思える人」と最大級の賛辞を送る。

池松は以前のイベントで「映画というものは、人生を語るものでなければいけない」と映画への絶対条件を述べていた。その概念で言えば、本作はまさに、映画らしい映画と言えるのではないだろうか。「宮本は、昨日までの自分や世界に反逆して、未来を勝ち取る逆転劇を追い求めている。その意味では、誰かのための人生を後押しするような力がある映画だと思います」。

蒼井も「この作品は、他人に認めてもらうことではなく、自分が自分を認められるかというところに向き合っている。私自身にもそのとこを突き付けられた感じがしました」と自身の解釈を述べると「私はうっかりぼんやり生きちゃうタイプなので、令和というおしゃれな時代に、こうした小汚いけれど、ものすごく純粋な思いが詰まった映画に出会えたことは大きかった。原作に恥じないようにと心を込めて作った作品が、こうして公開されるのはうれしい」と笑顔を見せた。

池松と蒼井がタッグを組めば「まず間違いがない」という期待を、本作でも満点回答してくれた2人。互いに「何度でも共演したい」と意欲を見せており、池松は「影響を偏差値というか、心の偏差値がすごく高い人。そういう人とお芝居をするのはワンシーンでも、ものすごく面白い。とても深いところにいけるし、目に見えないやり取りができる」とさらなるコンビネーションを熱望する。しかし、一方で「何が勝ち負けかはわかりませんが、ある程度勝ち続けなければ次に続きませんからね」と気を引き締める。蒼井も「とにかく楽しく映画を作っちゃったので、大満足なのですが、ビジネスとしてもしっかり成功させることも大事ですよね」と質の高い作品に結果が伴うことを願っていた。

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