「ラストに納得いかない」フォードvsフェラーリ ジョニーデブさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストに納得いかない
タイトルに騙されました。もちろんフォードとフェラーリの対決のお話なのですが、タイトルからもっと軽いノリの話しかと思ってましたが、意外に深い人間ドラマでした。
ルマン24時間レースと言うと、スティーヴ・マックイーンが主演した栄光のルマンを思い出します。あの作品が1971年製作なので、この映画の背景となっている1966年とあまり違わないのでレーシングマシーン等を比べてみるのも面白いと思います。栄光のルマンは実際のレースのドキュメンタリー映像を多用しているに対して、こちらは年代物のレーシングカーをよく集めた(あるい作った?)ものだと感心しました。
ラストでマイルズがあえて減速して、フォード3台同時フィニッシュするのを選んだシーンでは、涙が出るほどジーンときた。
これで彼に対して反感を持っていたチームリーダーやフォード社長が彼に対して感謝して、シェルビーや妻や子供からも祝福されるような展開だったら満点の評価をあげられる素晴らしい映画になったはず。
ところが何というエンディング!
規定上1位はマクラーレンであるのは納得できるが、どう考えてもマスコミ的に脚光を浴びるのはマイルズの方ではないか(実際にそうだったとしたら、この時代のマスコミもかなりいい加減だな)。カメラマンがみんなマクラーレンの方に行き、フラッシュを浴びせるシーンの演出にはかなり違和感を覚えた(実際にそうだったとしても、マクラーレンを称える映像が不要)。彼を悲劇のヒーローにしたい演出かもしれないが、全く納得できない。その後のテスト走行のシーンになった時、悲劇のヒーローはきっと事故死するのではないかと嫌な予感がしたが、案の定そうなってしまった。実際そうだったらしいが、映画としては余分なエピソードだと思う。後日アメリカモータースポーツ殿堂入りしたというコメント同様、彼の事故死もコメントだけでよかったのではないか。