「目を背けつつも陶酔する自分をどう捉えていいものやら」ハウス・ジャック・ビルト ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
目を背けつつも陶酔する自分をどう捉えていいものやら
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なかなかヘヴィーな劇薬だ。シリアルキラーが主人公なだけあり、目を背けたくなる残虐シーンも多いことはR18+というレイティングから容易に推測できるだろう。
これがホラー映画ならその過激さもどんどん右肩上がりを続けるもの。だがラース・フォン・トリアーはそういったジャンル映画とは一線を画し、殺しの不条理さ、時折挟み込まれるコミカルかつシュールな描写を織り交ぜながら、観客をまだ体験したことのない未曾有の境地へと誘い出していく。
鑑賞中、「やばい、このまま観続けたら頭がおかしくなる」と何度危機感を抱いたことか。それでも結局、最後まで目が離せなかった。特に、ダンテの「神曲」をモチーフとした最終章は、怖さ、残虐さから遠く離れ、むしろ深遠な気持ちが湧き出してくるほど。一概に傑作とか良作とか言えないが、こういった実に不可思議な着地点に到達できるのも、トリアー作品を見続ける大きな醍醐味と言えるのだろう。
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