「「ビートルズのいない世界は、たまらなく退屈よ。」」イエスタデイ といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
「ビートルズのいない世界は、たまらなく退屈よ。」
公開当時、めちゃくちゃ話題になっていた作品ですね。
地元の映画館では上映されてなくて観られなかったので、今更ながら鑑賞です。
「ビートルズが存在しない世界の話」という程度の事前知識はある状態での鑑賞です。
結論ですが、めっっっちゃ良かった。
台詞のひとつひとつがお洒落で繊細で、ユーモア溢れる言葉遊びにシビれる。ビートルズを題材にした映画だけあって音楽も素晴らしかったし、音楽業界を皮肉ったブラックジョークには声を出して笑ってしまいました。最後にはほっこりした気持ちになれる、非常に面白い映画だったと思います。「誰にでもおススメできる良い映画」でした。
・・・・・・・・・
イギリスの田舎町でミュージシャンを目指しているジャック・マリク(ヒメーシュ・パテル)は、幼馴染の女友達であるエリー・アップルトン(リリー・ジェームズ)から支えられながら音楽活動を続けていたが全く芽が出ず、アルバイト暮らしを続けていた。音楽の道を諦めかけていた彼だったが、ある日交通事故に遭い、一時的に昏睡状態陥ってしまう。目を覚ましたジャックが目にしたのは、世界一有名なバンド『ビートルズ』を誰も知らない世界だった。
・・・・・・・・・
まず設定が面白い。
もしも自分以外がビートルズのことを知らない世界に行ったならどうなるのか。「私ならどういう行動をとっていただろう」と想像するだけでも楽しい。ビートルズではなく、例えば誰もが知る有名な小説とか映画を知らない世界だったならどうだろう。三日三晩考えていられるほど面白い。
しかしながら、世界的に有名なビートルズの曲であっても、流石に歌詞を一言一句覚えているわけがないから、ジャックが一生懸命、ああでもないこうでもないと記憶を頼りに引っ張り出してくるしかない。その描写が妙にリアルで細かくて、思わず笑ってしまいましたね。
そして脚本が素晴らしい。
言葉の端々にあるお洒落な言い回しが個人的にたまらなくて最高でした。好きな台詞はたくさんあるんですが、個人的にはジャックを勧誘する敏腕女性マネージャーのデブラの台詞で、音楽業界への誘いを「世界一甘い毒杯」と表現しているのが気に入りましたね。その後に「この誘いに乗らないならイギリスの田舎に帰ってぬるいビールでも飲んでろ」っていう台詞も「毒杯」と「ビール」が掛かってて最高ですね。これ以外にも本作の脚本や言葉遊びにはシビれてしまうような絶妙なワードチョイスが多かったので、単調になりがちな会話シーンでも全くダレることなく鑑賞することができました。
そして何より、音楽の素晴らしさ。本作の一番の魅力と言っても良いです。
ビートルズは今から50年以上前の1970年には解散しているバンドなので、「ビートルズリアルタイム世代です」って60代以上の人だけなんですよね。この映画を観ている中にはビートルズを「自分が生まれる前の古い音楽」と認識している人も少なからずいると思います(私もそうでした)。
しかし本作を観てみればわかりますが、不思議なことにほとんどの曲を「知っている」んですよね、全然世代じゃないのに。テレビ番組のBGMだったりコマーシャルソングだったり、私の中学時代には音楽の教科書にビートルズの曲が掲載されていました。それほどまでに、「ビートルズ」という存在は、私たちの生活の中に当たり前のように存在しています。だからこそ、映画の後半に登場する女性の「ビートルズがいない世界は、たまらなく退屈よ」という台詞を聞くと「確かに!」って思っちゃうんですよ。
今から50年も前に活躍していたバンドが、現代の我々にも影響を与えている。
本当に素晴らしいバンドだったんだと実感させられます。ここまで私たちの生活に密着したミュージシャンは他にいない気がします。そういう意味でも、本作のテーマに「ビートルズ」を選択したのは良いチョイスだったと感じました。
本作は「ダニー・ボイル監督からビートルズへのラブレターだ」と言われています。
同じように、このレビューは、本作に感動した私からダニー・ボイル監督へ向けたラブレターです。本当に素晴らしい映画をありがとうございました。
あらゆる人に観てほしい素晴らしい映画でした。オススメです!!