劇場公開日 2019年3月9日

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「孤独な闘いをしている人の勇気が崇高な意思と行動を呼ぶ」マイ・ブックショップ 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5孤独な闘いをしている人の勇気が崇高な意思と行動を呼ぶ

2019年4月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ガマート夫人とその周辺だけでなく、街の人たち全部も敵に回しているように見えてしまうかもしれませんが、フローレンスにとって、ガマート夫人とその取り巻き的な働きをする人たちや冷たい銀行員を除けば、決して敵ではありません。
実際にその人たちが本を買ってくれてるから(ガマート夫人の画策が具体的になるまでは)経営が成り立っていたのだし、ロリータを250冊も仕入れるほど、街の人たちに対しての手応えと期待があったのですから。

ただ、多くの人たちが「真昼の決闘」のように、いざという時、強い者には逆らえず、立ち向かう人を見殺しとまではいかなくとも、見て見ぬ振りで窮地に追い込んでしまうのだと思います。
だからこそ、ビル・ナイのあの宣言(見て見ぬ振りはできない、自分にできる闘いをする、ということ)がフローレンスにとっては途轍もなく「崇高な意思表示」となるのです。

ヒーロー映画のように最後に勝つ見込みのない、そのうえ理不尽で孤独な闘いを強いられ、やられっ放しであっても、人としての尊厳と優しさを失わなければ、それ自体が〝勇気〟なのだということが、静かに描かれる中で深く観るものの心に沁みわたってきます。そして、そのような勇気が他者の崇高な意思と行動を促すということも教えてくれます。

今日の銀座シネスイッチも観客の多くが50代後半以上と思われる方でしたが、この先進国における、高齢化の進展と高齢者の孤独、という共通課題に対しても勇気を与えてくれたのではないでしょうか。

いくつもの物語と出会いに満ちた『書店』と『映画館』には孤独はない。本好き、映画好きでいられる限り、耐えられないような孤独は回避できるような気がします。
(なのでそのくらいのお小遣いはこれからも許容してくださいね、奥様方‼️)

グレシャムの法則
グレシャムの法則さんのコメント
2019年5月4日

映画を観て、原作が気になったので、読んでみました。

世界は「絶滅させる者」と「絶滅させられる者」に分かれているという作者の世界観が背景にあるからなのか、フローレンスは映画と同じように粛々と書店店主としてできることを行なうだけで、淡々と敗れ去っていきます。
ブランディッシュとの恋愛感情を想像させる場面も無く、クリスティーンによるラストの〝あれ〟はふたつともありません。
原作の最後の一文
『十年近く暮らした町は結局、書店を必要としていなかったのだ。』

グレシャムの法則