新聞記者のレビュー・感想・評価
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凡庸かつ最低のストーリー、よい役者を使いながら手抜きの目立つ映画
先が見えているようなストーリーの流れとシム・ウンギョンの訛りに辟易して、何度か見るのを中断したが、なんとか最後のスタッフロールまで見終わった。
松坂桃李は何をやってもうまい。芝居とわかっていてもその表情に感情移入してしまう。北村有起哉も顔を見ただけで安心する。
シム・ウンギョンもイモトに似ているのが気になったが顔の表情だけ見ているぶんにはやはり一流の役者なんだろうと思う。しかし、訛りというよりトレーニングもしていないような日本語はなんとかならなかったのか。母親がアメリカ在住の韓国人だという設定だけで、この明らかな外国人訛りの日本語の説明をつけようとしたのならひどい手抜きだ。日本語が流暢ならともかく、ふつうに日本人俳優をキャスティングしなかった理由を聞いてみたい。
その手抜きが最後まで頭から離れなかったが、ストーリーは輪をかけてひどいものだった。
最初は望月衣塑子がこのストーリーを考えたのかと、あやうく軽蔑しそうになったが、要素を適当につまみ食いされただけで、映画の完全オリジナルだと知って、犯人は監督、プロデューサー、脚本家だとわかった。今後、この人たちの映画だとわかったものは最初から見ないことにしようと思う。
幼稚な筋立ては勘弁してほしいほどつまらなかった。報道と読み手と世間の反応というものをなめきった認識は憎むべきだと思う。この映画が日本アカデミー? 日本アカデミー賞のレベルがそこまで低いとは嘆かわしい。
松坂桃李の演じた杉原は追い詰められ、信号待ちのシーンのあとに嫌なラストを暗示されて思わせぶりに終わったが、不出来なストーリーを精算することもできないほど終わり方はあざとすぎ、凡庸すぎて声も出ない。子どもが生まれたばかりとはいえ、最悪で官僚をやめればいいだけのこと。外務省のキャリアなら誰でも超優秀なことがわかる。再就職先などどんなに不況でもすぐに見つかる。上司と対峙した時点で机を蹴飛ばしてくればいいだけの話だ。登場人物の知性を一切否定して観客をバカだと思っているようなストーリーにあわせている。ばかばかしい。時間のむだだった。2時間返してもらってすべてを忘れたい。
JFKにはならなかった
前知識無しにレンタル。冒頭、現政権(令和元年の政権)の疑惑をそのまま持ってきたかの様な事件を二つ持ってきた。JFKの様にそれを監督や脚本家なりに、理論的に証拠を見せて独自の結果を出すのかな?と思ったら、それは掴みだけだった。
これは下手すると単なる政権批判のプロパガンダとも思われるだろうなぁと言う感じ。
タイトルが「新聞記者」だが、女新聞記者が主役なのか、官僚の松坂桃李が主役なのか分かりにくい。女新聞記者が主役だとしても、あまり「新聞記者」と言うタイトルが当てはまるとも思えないし、松坂桃李ならよけいにだ。女新聞記者は韓国系の人らしいが、あえて彼女を使う理由が分からない。彼女自体は良い役者なのだろうけども、ストーリー的に彼女を使うと何かの伏線?とも思ってしまうがミスリードに近い感じだった。むしろ、松坂桃李の妻役の本田翼を記者役にした方が良かったかもしれない。正直、演技が上手いとは言えないが、役にハマった時は割りと良い時がある。彼女がガツガツとした新聞記者役と言う方が映画としては面白かった気がする。
ラスト、「えっ?」と言う最後で「それでどうなるの?」という終わり方なのも余計にマイナス。
情報操作の怖さ
なぜ韓国の女優さん?なのか?の疑問が映画みたらわかりました。シムさんは良い女優さんですがね。しがらみで挑めない日本の女優さんたちがなんとも不自由で、残念。この映画で一番気持ち悪かったのは内閣室の面々。まるでマシーンのように無表情で情報操作している怖さ。どこのSNSにも内閣アゲ発言で現れる存在がいるので。しかしまだ政権さなかでこの映画の制作に踏み切ったプロデューサーさんはチャレンジャーだなと感心致しました。面白かったです
真実追求のドラマと云うより、自己愛が強い私映画のフィクション
内閣情報調査室に配属された元外務省官僚の杉原拓海と東都新聞社会部記者吉岡エリカが、ウイルス研究のための大学新設計画の機密情報をリークする社会派フィクション。権力の不正告発の制作姿勢の映画としての切り口は興味深いも、荒唐無稽な生物兵器の為の特区申請に絡む内閣府の闇とする思い込みが能がない。内閣情報調査室の実態にリアリティがないことも、映画の説得力を大いに削いでいる。また、”官邸権力と情報メディアの現在”という劇中座談会をドラマに何度かインサートして、原案者の望月衣塑子氏と元文科省官僚前川喜平氏の発言を引用する表現が、フィクションとして潔くない。真実追求のドラマリテラシーではなく、自己愛の強い自意識過剰な個人映画に終わっている。故に、松坂桃李とシム・ウンギョンの思い詰めて泣くシーンや、ラストの立ちはだかる権力に悩み彷徨う姿に、感情移入することは出来ない。
官僚の利権と天下り、一部政治家の政治資金の流れ、フェイクニュースで世論操作するマスメディアなど、映画として表現すべき社会派テーマは幾らでもあるのに。ウイルスで云えば、2020年に中国から世界に拡散したコロナウイルスの文明破壊の社会問題が発生した。医療と対策の観点で、細菌学に特化した医学部の新設が国家に求められているとすれば、荒唐無稽だけは訂正しなければならない。
日本アカデミー賞を否定する訳ではないが、日本映画の凋落は予想以上に進んでいるようだ。
頭のいい人ほど嘘がうまい。嘘がうまい人ほど騙せる。うまく騙せればお金儲けができる。映画も世間と同じようなもの。フィクションに騙されて、思わず感動できる新作日本映画に巡り合いたいものです。
イソコはそんなに可愛くないぞ
すげぇ盛ったな
ずいぶんべっぴんさん連れてきたね。
人によってはノンフィクションだとまでいわしめるこの映画だが、まず突っ込ませてもらおう。ノンフィクションだと思ってるヒトは、イソコさんと、この女優を見比べてみることから始めてくれ。本人は生まれも顔つきもこの映画とは大きく違うぞ。
事実に基づいた作品といいながら政府に毒ガス計画まで用意させたのか。もはやどのへんが事実に基づいているのか怪しいな。
中には完全に映画に呑まれてその気になって政権批判してるヒトがたくさん出てしまってるけど、それは架空のウィルスパニック映画を見て現実の製薬会社を非難するのと同じくらいお馬鹿な事だぞ?
◯◯なハズだ!でものが言える、信じてもらえると思っているヒトが相当量いるということが、本作の受賞でよく分かった。
そりゃ、コロナが流行ったら訳もわからない情報に翻弄される訳だわ。
新型コロナ禍の最中
見る前は安倍政権の批判映画だろうと思って見ていた。そして序盤はそうだった。
だが、途中から安倍政権というよりは国家とメディア、その協力者という昔からある構図の話になっていく。
そしてここからネタバレになるが、国家の陰謀がレベル4の生物兵器を製造出来る研究施設の設立であるという事。
それを阻止する為に良心にかられた官僚と圧力に屈したくない新聞記者の苦闘という話になっていく。
中国の武漢にはレベル4の生物研究所が3つもあるらしい。武漢からパンデミックが続発している理由がそのせいと言われているが、これだけ短期間で新型のウイルスが出てくると都市伝説で片付ける方が難しくなっている。
中国、ロシア、アメリカ、フランス、イスラエル…核戦争よりもこれらの軍事目的での生物兵器開発戦争で人類は滅ぶのかも知れない。
流れに身を任せてはいけない
第43回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作。
Amazon Prime Videoで鑑賞(レンタル)。
原案は未読。
正義と信念を懸けて、真相を暴こうとした新聞記者。職務に葛藤しながらも、藪の中の真実に迫った官僚。両者の戦いを通して、日本社会とメディアの深い闇に迫ろうとした作風は、忖度や自主規制が蔓延する風潮に風穴を開けるかの如く、孤高ながらとても勇気に溢れていると思いました。
反政府ととられかねない内容ながら、オファーを受けた俳優たちの本作にこめた想いが画面越しに伝わって来ました。杉原役の松坂桃李なんて人気・実力共に絶好調な時なのに。
吉岡役はことごとく断られたため、なんのしがらみも無い韓国女優シム・ウンギョンが務めたところに残念な気持ちを抱かざるを得ず。実はそう感じたのも印象操作の賜物か?
鑑賞中、中学1年生か2年生の国語の授業で、「メディア・リテラシー」と云う題名の文章を習った記憶が蘇りました。
その時初めて情報と云うものを意識し、ひとつの事柄に様々な捉え方が存在していることを認識した覚えがあります。
SNSが普及した今こそ、垂れ流される情報を取捨選択し、何が正しくて何が間違っているのかを判断することが大切ですが、それ自体が操作されたり故意に流されたものだったとしたら、何をよりしろに自分の考えを表明すれば良いのか?
とにかく、提示されるものについて考えることをやめてはいけないと思いました。すぐに鵜呑みにするのではなく、まずなんでも疑問を持ち、考える。あらゆる方向から物事を確認して自分なりの意見を持つ。ありふれたことかもしれないけれど、そのことの大切さ、重大さを痛感させられました。
※修正(2024/06/24)
誰か教えて…
誰か教えてください…
なぜ最後、杉原は吉岡にごめんとつぶやいたのか…
自分の名前を公表してもいいというほどに腹をくくったのに、(恐らく本当に公表すれば内閣府にはいられないし周囲からの有言無言の圧力で官僚でもいられない気がするのだが、、)
内調で上司から、お前がリソースなのはわかってる、それでも許してやる、外務省に戻れる道を探ってやるからそのかわり持ってる情報は全て忘れろみたいな脅しにのってしまったということなのか?
そんな道が本当にあるのか?
そしてそれよりもわからないのは、政府が生物兵器にも使える技術を要する大学新設を隠していたという情報は既につかんでいるのに、ポストに入れっぱなしで読んでいなかった先輩神崎からの手紙に「今回の大学新設で首相の友人に多額の資金が流れた」、それが神崎の背負った十字架ということがわかったとき、あそこまで驚いたのはなぜなのか?
新聞記事が誤報だったから???
近い将来、国会議員になる望月記者が想像できる。
東京新聞の望月衣塑子記者は菅官房長官の記者会見での質問で有名になり、そのベストセラーを原案にしたということであるから、この映画の政権に批判的な立ち位置は明確である。
そして、実際に起きた事件を題材として、政権は悪、政権が隠す真実を暴こうとする記者は善という設定で物語は進む。わかりやすい。
しかし、設定はわかりやすくても、大きな違和感がいくつもあったので書く。
一つ目、内閣情報調査室のリアリティのなさ。
多くの公務員が働く職場であるが、東都新聞の編集部とは全然違い、室内も廊下も真っ白でかなり薄暗い。各職員の机の上にはパソコンだけがあり、書類はなくてすっきりしている。皆がスーツの上着をきちんと着て、パソコンに向かってツイッター上で世論操作をする役所ってありえるのか。ダークなファンタジーのようでリアリティが感じられなかった。
二つ目、新聞記者の仕事の描写。
シム・ウンギョンが演じる吉岡記者は、公開情報をネットで検索して、ツイッターで自分の意見を発信する。喫茶店で役人に質問をする場面もあったが、大学の獣医学部新設に隠された真実は、役所内の人間に機密書類を盗み見させて容易に全貌が判明する。そこが政権の悪い企みが明確になるポイントとされているのであるが。記者の仕事はその程度のものか。もっと歩いて多くの人に当たって稼ぐのではないか。
三つ目、フィクションでありながら現実との境界があいまいであること。
吉岡が働く新聞社は東京新聞ではなく東都新聞であるが、讀賣新聞や朝日新聞は実名が出るし、望月記者や文部科学事務次官が実名で登場する。その必要性がわからない。
要するに、政権は国民に真実を明らかにしない、政権は悪だという望月記者の事実認識と見解を、現実とフィクションをまぜこぜにして映像化したということだろう。
配給がイオンエンターテイメントともう1社であり、イオンの経営者が旧民主党の岡田克也代表の実兄であることを考えあわせると、近い将来、岡田代議士に近い国会議員になっている望月記者の姿が想像できる。
正義を貫くか
日本アカデミー賞最優秀作品賞と2人の最優秀主演賞を取った話題作なので、鑑賞。
松坂桃李演じる外務省官僚の杉原は内閣調査室に出向しているエリート。身篭った妻がいて、暮らしぶりは良さそうだ。
シムウンギョン演じる吉岡は毎朝新聞に勤める記者で正義感が強い。吉岡の父もまた記者であったが自殺している。序盤、日本語のイントネーションがおかしいので疑問に感じてたが、母親が韓国人で就職するまでアメリカで暮らしてた設定なので本編で解消した。
話はシンプル。ある時、毎朝新聞に匿名で資料が届く。差出人は杉原の元上司となる神崎で、資料の内容は政府がウィルス研究の為の大学を創設するというもの。その後、神崎は投身自殺する。神崎の死を無駄にしたくない杉原と、資料を調査している吉岡が結びつき、政府の大学創設の目的がウィルス研究ではなく、軍事転用であることを暴く。吉岡の毎朝新聞はこれを一面で報じるが、当然政府は反対する。記者にとって誤報は命取りとなる。政府が反対したら実名を出して構わないと言っていた杉原だが、許可を取りに来た吉岡と道路を挟んで対面し何かを言って物語は終わる。
最後、なんと言ったのか?
自身の生活を守るのか?、それとも国を守るのか?(その為には情報をコントロールすることもある)
杉原は妻が出産し子供を抱くと思わず「ゴメン」と呟いた。自分が政府の悪事を暴くことで被られる不利益によって、家族が不幸になることが分かっているからだ。最後に上司から「取り消すことは恥ずかしいことではない」と告げられ(台詞は正確ではなく、こんなことを言ってた)、今なら自身の生活を守ることが出来る。葛藤した杉原はどちらを選択したのだろうか?口の動きは「ゴメン」とは言ってなかった。しかし、なんと言っていたかは分からない。
その他感想は以下。
杉原の葛藤は、あれだけ正義を貫こうとしていたにもかかわらず、上司と接して迷うなんて優柔不断過ぎでは?ちょっと共感出来ないなぁ、、葛藤を描きたいならもっと苦悩して欲しいし時間を掛けて欲しい。だから⭐の数は4が限界。
シムウンギョンの演技は良かったと思う。最優秀主演女優賞を韓国人が取ったことで非常に気になってたけど、素晴らしいと思った。
報道番組が度々流れるんだけど背景が新聞なので、ダサいと思った。これで視聴率を取れるのか?
吉岡と杉原の話が展開していき、中盤で出会って話が進んでいくところは、村上春樹ぽさ(海辺のカフカや1984)を感じた。
杉原の職場の明かりの少なさ。あれでは目が悪くなる。DELLが目立つ。パソコンでTwitterをしている。内閣調査室の人達がTwitterで情報操作してる。こんな地味な活動してるの?
毎朝新聞社のオフィスがリアルなので、作り物だとしたら制作スタッフも結構大変だなぁと感じた。
新聞を印刷して投函するまでの映像は必要なかったかな。全自動で出来るのは凄いとは思ったけども、時間の無駄かなと思う。
コロナ閉館明けのイオンシネマにて
アンコール上映
ガラガラですわ!
今みるとコロナも実話?
日本の女優になり手がなくて
しがらみのないシムウンジョンが演じたらしい。
彼女は、可愛いね。
松坂桃李も頑張ってる。
岡山天音もいいね。
本田翼は、イマイチやわ。
素晴らしい
本田翼さん演じる妻と子の温かい雰囲気が夫の職場の緊張感を引き立たせている。
エンドも秀逸。無理にハッピーエンドにも、バットエンドにも転ばせない、モヤモヤ感を残す魅せ方が素晴らしい。
唯一の心残りはスクリーンに若者の姿が少なかった事。
幅広い年代に届いて欲しい映画だ。
弱さではなく強さの自殺
個人評価:3.5
社会派映画だとは思うが、真相がウィルス兵器なのでリアリティは薄く、よくあるエンタメ系サスペンス映画になっているのが残念。
正義と真実を追う記者と、エリート官僚の正義と人間の弱さの葛藤を対比させ描く。いい作品ではあったが、日本アカデミー作品賞を取る程の、深みのある内容とテーマでは無いと感じる。もう少し自殺をした真意。家族を捨て死んでいく事への理由。弱さではなく、正義への強さ、人間らしさを守り死んでいく価値観を掘り下げてほしかった。
商業新聞の意義と限界、そして『救い』
独立系の製作で、大手資本の配給。
実際の現政権の一スキャンダルをモチーフにした内容。
第43回日本アカデミー賞2020、最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀主演女優賞受賞。
その他、監督賞、脚本賞、編集賞、ノミネート。
先日の日本アカデミー賞では、シム・ウンギョンさんの受賞がハイライトであった。スピーチで涙にくれる彼女を見て、こちらももらい泣きの感動をいただいた。
そして、見逃していたその作品を、ぜひ観たいと思った。
イオンシネマでのアンコール上映を訪れると、200余りの座席に、4~5名の観客。
昨日は、新型感染症の特措法成立を受けた現首相の会見があった。
この作品が、日本アカデミー賞の主要3部門を受賞した理由を考えながらの鑑賞だった。
あらすじは、国民の側であろうとする商業新聞の女性記者と、政権の安定を図る内調〈内閣情報調査室〉に属するエリート官僚が、権力の闇を世に問わんとする硬派な内容。
あれ、これは現政権下でつい最近まで国会を空転させていたスキャンダルではないか。この作品が公開された時、まだ延々と公費の無駄遣いが国会で繰り広げられていたのではなかったか?
という位、旬なテーマであり、それは一部悪役とされた者々の起訴という幕引きが計られているが、未だに決着をみていない。
現政権に対する反権的な要素により、違った覚悟を持って撮影に臨んだであろうスタッフ、キャストの皆さんの仕事は、緊張感のある、やはり素晴らしいものだった。
おちゃらけた遊びは微塵もなく、新聞記者吉岡エリカが夢の中で、やはり新聞記者だった父の誤報を悔いた自死とされた亡骸を前にして泣き崩れる場面や、妻子を人質に囚われた構図の中、正義と保身の狭間で憔悴し、中央官庁街路を挟んで、エリカに向かって『ゴメン』と唇を震わす場面は、胸に来るものがあった。
モノトーンを基調とした内調のシーンと、街路樹の黄葉やスクーターが刷りたての新聞を配り行く街並み等の日常風景の色調の対比により、国家権力の営みと庶民の日々の営みとの解離が強調され、なんとも言えない抑圧感が漂う。
印象的だったのは、国家的スクープ記事が一面に踊る新聞が輪転機から高速で生み出される場面、そしてそれが間も無く、家庭、コンビニ、街売り、と社会に拡がっていく様だ。
近年、インターネットでミニマムな情報が社会に瞬時に行き渡る社会に変貌している中で、精査や選別、さらには造られた情報が均一に発信されるマスコミという形態の意義を感じるとともに、それらのほとんどは見えない大きな力によって操作されているという限界も突きつけられる。
さて、この作品がなぜ日本アカデミー賞の評価を得たのかという問いであるが、その答えは『救い』なのではないか。
国家権力の中にも、国民を守りたいと願う個が存在する事。
神崎が最期に杉原に送った手紙が、検閲されることなくダイレクトメールに混じって配達されている社会。
権力の犠牲となった父の死を乗り越え、自分を信じ疑いながら父と同じ新聞記者を志す吉岡エリカの矜持。
それらをリアリティーありきで演じ切った二人の主役。
そして、現政権の中で現政権のスキャンダルを映画に作り公開できるこの国の在り方。
それらに『救い』を見い出したが故の、日本アカデミー賞の評価だったように思う。
日本人で新聞記者の父と韓国人の母の間に生まれ、米国で育ち、父の遺志を継いで真実を追い求める新聞記者役を、自身のアイデンティティーを基に才能豊かに演じたシム・ウンギョンさんと彼女を輩した韓国の皆さんに、心からの祝福をお贈りします。
あれれ
アカデミー賞受賞でかなりハードルが上がっている状態で見てしまったのがよくなかったのか、最初から置いてきぼりをくったような内容だった。
散々、お前子供が生まれるんだってな、と脅されながらも妻子が狙われるわけでもなく精神的に追い詰めていくやり方なんでしょうが、この短い時間では表現しきれなかった。
ただ、松坂桃李さんのやつれ具合が半端なく、説得力を増した。
シムウンギョンさんは怪しい彼女をみてから大好きな女優さんだが、やはりシリアスよりもコメディの方が合っていると思うのはわたしだけでしょうか。
最後は突然死んでしまったのか、しかしみている方はそこまで追い詰められた感もなく最後まで置いてきぼりだった。
生々しい葛藤
内閣情報調査室の悪事が明るみにされた。悪事というのは、現政権に不都合な情報をコントロールしていることだ。レイプ事件や大学新設など政府が裏で手を引いているような案件に対しての批判的なコメントに対抗するように政府よりのコメントをツイートして世論を操作している。この任務に従事していたのが杉原で外務省から出向している官僚である。杉原は自分の隠蔽工作のような仕事内容に日々疑問を感じていた。そんなある日、かつての上司が投身自殺したことをきっかけに意を決して立ち上がる。国の悪事を暴こうと真相を追及し、新聞社に勤める記者と協力する。表向きは大学であり実態は軍事転用目的の生物兵器研究所の計画を新聞に掲載することにした。しかし、内調からの圧力があり、それに屈した杉原は真相の追及を途中で断念する。最後は自分の信念よりも組織に忖度した杉原が自己嫌悪に苛まれたような悲痛な表情で作品の幕が閉じられる。
シム・ウンギョンの涙から…そして観て良かった
日本アカデミー最優秀主演女優賞に選ばれて当惑、そして嗚咽する女優さんに胸を鷲掴みにされた。
この映画なぜノーチェックだったのかな。
物語は淡々とそして段々とスリリングに展開する。演出は暗い映像が多いけれど、アップやスローで役者さんの表情をしっかり捉えて見せる。みなさん凄く上手い。だからリアリティが生まれる。
ここまで情報操作されてるの?日々ネットニュースでさらりと見て、知らないで済ませてたことたくさんありそう。
リークする決意をした杉原(松坂桃李)が
"君なら自分の父親にどっちを選択して欲しい?“と放ったシーンは特に胸にぐっと刺さる。
そしてラストの吉岡(シム・ウンギョン)と対峙したシーン。杉原の声なき声で"ごめん"と言った松坂桃李の表情…エリート官僚で、父親になったばかりの彼の揺れ動く胸の内がぐっと伝わってきた。
主演女優について
聡明で骨太で、なお透明感もあって適役。
韓国の方なので日本人のようにセリフに感情を乗せられない。でもそんなことを飛び越して表情で身体全てでこちらに伝わってくるものが凄かった。
逆にこの役を演じることのできる日本の女優は私には思いつかなかった。
日本アカデミー賞、結果にいつもなんだかなぁって思ってしまうけど見て良かった。
この映画見逃さなくて良かった!!
主題の言及が緩い
杉原や神崎の家族が描かれたり、都築が与えられた業務に苦悶する事が描かれ、最後のシーンで、杉原は吉岡を離れることになる。
結局、この映画は何を描きたいのか。
単に問題を投げかけているだけなのか?
そして、キャスティングも不思議ではあるが、いずれも適役に見えた。
主演のシム・ウンギョンは初めて見たが、日本語で演じきれていると感服した。緊張感のある役柄だからか、日本語での演技から来る緊張感か、迫力があり、良かった。
内容が柔らかいのが、せっかくの好演を台無しにしてる気がした。
記者VS国家を描くにしては恐ろしさが足りなさ過ぎる気が…
簡単に言えば、
部下が上司または会社トップの不正を暴こうとしたけど
最終的に賄賂で言いくるめられた、って話
国家権力が相手のわりには、
薄暗い部屋でネット(ツイッター?)上につぶやくだけの情報操作?だけっていうのは
ちょっと弱すぎる。
恐ろしさを全然感じない。
主役女優が日本語カタコトなのも違和感。
見つめ合うだけのシーンとか、立ってるだけのシーンとか、景色だけのシーンとか
無駄なシーンが多い気がして途中ダレた。
重要なシーンで時間を取るのはわかるが、全体的に多い映画は基本的に苦手だなー
それ、今する質問じゃないでしょ。あんたがされたらどう思うの?
映画「新聞記者」(藤井道人監督)から。
作品の中に「インタビュー」のシーンが数多く出てくる。
日本では当たり前のようになっている、
事故、事件、災害などの被害家族に対して、
これでもか、というくらい辛辣な質問を浴びせて、
スクープでもとる勢いで、食らいついていく記者に怒りを覚える。
だからこそ、同じ報道側の「新聞記者」が、噛み付いたシーンが
私の脳裏には、鮮明に残った。
「それ、今する質問じゃないでしょ。あんたがされたらどう思うの?」
一番、辛い思いをしている人に対する思いやりは、
こんなところに表現されていた。
「新聞がこんなネタ出すのっておかしくないですか?」
「そういうのはテレビにまかせておけばいいだろう?」
「嘘をでっちあげるんですか?」
「嘘か本当かを決めるのは国民だ、お前じゃない」
「頓挫ってことは、もうこれ以上追うなってことだ」
「この国の民主主義は形だけでいいんだ」・・・
新聞社の内部事情は知らないけれど、なんとなく納得してしまった。
「記者として真実を届けたい、それだけです」
「そんな理由で、自分で自分を納得させられるんですか」
こんなことを考えて仕事をしてくれる報道関係者ばかりならなぁ。
P.
主役の「松坂桃李」さん、映画「娼年」に続けて観たので焦った(汗)
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