影裏のレビュー・感想・評価
全113件中、101~113件目を表示
純文学を映画的表現で見事に昇華
1, 純文学の行間をどう表現するのか?
先に原作を既読していたので、本作の実写化にあたってどのような脚本構成にするのだろうと非常に気になっていた。
なぜなら原作は、綺麗なオチもなく、わかりやすい展開も少ない、独特の情景描写や人物描写、核心をあえて避ける心情表現や比喩や暗喩などによって人間の本質について迫る、文学でしか表現できない作品であったから。
しかし本作は見事に純文学を映画的表現に昇華していた。
本にはなかった描写とラストが非常に印象的。
3, ハマり役すぎる役者陣
昨今の役者には、「文学的雰囲気」を持つ俳優と「漫画的雰囲気」を持つ俳優がいると思う。
昨今の流行は後者の漫画的雰囲気を持つ俳優であるが、本作は前者「文学的雰囲気を持つ俳優」の魅力が存分に発揮されていた。
主演の綾野剛、松田龍平はどちらも文学的雰囲気を持っていると思う。
切長な目と心の陰りが垣間見えるミステリアスなポーカーフェイス、ひょろっと長い身体に淡々とした態度。
特に綾野剛の、溢れ出しそうな気持ちが喉の奥でつっかえて言葉にも表情にもできない、ギリギリのところで踏ん張っている主人公の表情は本当に、純文学の行間を見事に体現していた。
また、本作の松田龍平の「目」が凄まじかった。
彼の目の奥の底知れない深淵こそが、まさに「影裏」そのものであった!
ここから若干ネタバレ
本作は文学作品のため、象徴的なものが多かった。
一見よくわからないそれらの意味を知ることで、より作品への理解と深みが増すと思うので説明する。
綾野剛が大事に育てているジャスミン、仕送りの桃⇨
花言葉は優雅など。綾野剛が女性的な趣きがあることを説明している。
松田龍平が持ち寄るザクロ⇨
ギリシア神話では冥界の食べ物として知られる。
それを口にしたものは冥界で暮らさなければならない。これを庭から取ってきてガッツリと口にしていた松田龍平が冥界(社会の暗部)の住人であることを暗喩している。
突然現れた蛇⇨蛇は昔から、日本の神話などで「男性の性」を表していることが多い。男根の象徴として用いられることが多い。勿論、フロイト の夢解釈でも蛇は男根の象徴である。綾野剛の上に蛇が現れたことで、綾野剛が松田龍平への性的な気持ちを抑えきれなくなったことを表現している。
倒れた水楢(みずなら)⇨退廃、崩壊、死、生命の象徴。後半、水楢は命の円環やその先の希望そのもののように見える。
ニジマス⇨誰かが川に放流した外来種。外来種は他の川魚を食べるので、周りからは悪者扱いされ嫌われている。ここでは松田龍平のことを指すのだろうか?
二回捕まえて、一度目は偶然、二度目は故意に逃す。
二度目のシーンは、彼の心情、心の中の松田龍平との決別、を表現している。
【神出鬼没な、"段ボール課長"の表と裏の顔・・。】
ー 序盤は盛岡に転勤し、知人のいない今野(綾野剛)と同僚、日浅(松田龍平)が、徐々に近しくなっていく様が川釣りをする風景を背景に描かれる。ー
・二人の演技は見応えがあり、そこに筒井真理子が彼らの職場の同僚として絡んで来ると期待は高まる。
・突然、職場を辞めた日浅に戸惑いながら、彼が現れると嬉しさを隠しきれない今野。
・が、ここから物語は錯綜して行く。
・あの出来事を絡ませながら、物語が進むのだが、思わせ振りな濁流の川のシーンが随所に挟まれたり、日浅の"屍の上で・・・"という台詞もあざとい感が拭いきれない。
・今野の性癖も劇中露にされるし、昔の"友人"(中村倫也)も登場するが、そこから物語が展開しない。
・日浅の過去が暴かれる場面の父(國村隼)、兄(安田顕)の日浅に対する態度も台詞の根拠が観客にきちんと提示されないため(学歴詐称という事は提示されるが、台詞のみ。)何故、父が縁を切る決断をしたのかが、腑に落ちない。
・作品の風合い、役者達の演技には魅了されたが、何を語ろうとしたのかが、観客に伝わリにくい作品。
<失礼を承知の上で敢えて記すが、大友監督が、”芥川賞作品を映画化するのだ”と気負い過ぎた感が拭えない作品でもある。>
知らなくていいこともある...
芥川賞受賞作「影裏」の原作もそうだったけど
とにかく淡々と進んでいきます。
ぶっちゃけ
ここ最近ハリウッド的な映画を立て続けに観たせいか
観終わった時はなんか物足りなかったけど
でも、しばらくしてジワジワきて満足度は採点より高いかも...
だから、、なに?
ひと言で言うとそんな感じ。
人間ってこんなもんだって、
自分が思ってることと大体同じだから、
真新しい感動とかエグさとかは別にない。
盛岡の描写や音楽関係は、
素直にキレイ。
『光の当たる部分』しか見てなかった人が、
ふとした拍子に思い付いた話なのかな。
『屍のうえに立ってる』ってのも、日々忘れがちだけど、わざわざカッコよく提示してくれなくても、、
同性愛や震災っていうサブテーマ(言い方あってるかな??)を持ち出すの意味は、、
そこについても色々と考えさせたかったからかな??
本作品は原作を読んでいないと何を伝えたいのか?ピンとこない漠然とし...
本作品は原作を読んでいないと何を伝えたいのか?ピンとこない漠然としたストーリーになっていました。BL?震災?孤独?など、見た人によって感じ方が異なるようで、とても幻想的な作品と思います。個人的は、自然の描写が美しく、夕日や川の潺などは一線を描く演出となっており、別の意味でよくできた作品と感じました。
タイトルなし
静かで美しい風景の中
川の流れのような時の中で
心の中の炎が揺れるのがみえてくるような????
そんな印象の映画
.
『見えているのは光が当たっている一部分。
人を見るときは裏側。
影の一番濃いところを見るんだ。』
.
この言葉がこの映画全てを表現している
説明が少ない分
表情から感情を読み取ってみる
人は見た目が1割…なのかもしれない。
表の顔と裏の顔。
どちらの顔が本当の彼なのか。
彼の正体が、ほんの少しずつ少しずつ分かっていくから、ハラハラドキドキ…。
一気に暴かれる訳じゃなくて、ピントがあっちこっちにちょっとずつズレているから、観ていてちょっとイライラしちゃったけど…。
でも、じれったいけど深みにハマっていく感じ。
優しい相方は、お酒を差し入れてくれる、良い人だと思っていたのに…。
実は自分の知らないところで、全然違った表情を見せていたなんて…。
驚愕の真実とまではいかないけれど、ジワジワと人の自尊心をえぐり取ってくるような、裏切り行為が痛すぎる…。
人のことをすぐに信じてしまう私としては、なんだか人間不信になってしまいそう…。
この映画は、これはこうだとか、ああだとか細かい説明が一切ない分、自分でこうなんだろうか、ああなんだろうかと考察を要する映画。
だから、結構頭を使う映画でした。
自分の思っていた事があっていたなら、やっぱりと思ってしまうけど、違っていたなら、なんだと思ってしまうし…。
そして、綾野剛さんの無表情な雰囲気が何考えているのかよく分からないから、余計に色々なことを妄想させられる。
彼は悲しいのか?
嬉しいのか?
信じているのか?
彼のことがどこか気に食わないはずなのに、それでも一緒にいるのは友情か愛情か?
バラバラだった謎のピースを自分で当てはめていかなければならないから、ちょっと野暮ったくなるけれど…。
後半30分はまさかまさかの真実が分かってくるから、思った以上に深い事実に圧倒されました。
また、松田龍平さんの、つっけんどんな雰囲気がなんか役にあっていて面白かった。
凄くフレンドリーなやつだと思っていたら、突然づけづけと言いたいこと言って不機嫌になる。
この人一体何考えてるのか全然わからないなと思ったけど、やっぱり後々彼の本当の姿がわかってくるから、後半は結構辛い気持ちになりました。
結局、彼は何者なのか分からなかったけど。
これは、なかなか難易度の高い映画。
分かりやすい答えを求めるような作品が観たいなら、ちょっと頭が疲れてしまうかも…。
そして、あるがままに人を信じている人にとっては、裏切りの行為に心が病んでしまいそう…。
本当の人の姿っていうのは、見た目だけじゃ分からないってことか…。
最後に、余談…(^^)
脇役の中村倫也さんが、とっても魅力的でした!
いろんな役を見てきたけど、今回もかなりの印象を残す役柄(笑)
この役は彼だからこそ成功したのかもしれない。
なぜなら全然違和感なかったから(o^^o)
今後の中村倫也さんに期待しちゃいます!
今回も素敵な試写会をありがとうございました(^ ^)
内容は、映画の題名そのもの。 始まりからラストまで静かな空気感で話...
内容は、映画の題名そのもの。
始まりからラストまで静かな空気感で話は流れる。
最初は、景色・自然が凄く綺麗だなあ!と思いながら見始める。
そして、今野(綾野剛)と日浅(松田龍平)の二人の会話と表情を観ながら、この二人は、今何を考えているのだろうか?本心は何なんだろうか?などと考えながら最後まで観続けてしまう。
ラストになると、始まりと全く同じ綺麗な景色・自然が、どんより濁って観えるようになってしまう。
【どんより】というのは、映像上の色合いではなく、この作品を観終えた上での心理的なものによる感覚❗️
深層心理などを考えるのが好きな人には向いている作品。
表面ではなく奥底
人間の表と裏や自然の美しさと怖さ、日の当たってる一部を見て分かった気になるけど裏の影の一番濃いところを見ないと本質は見えてこないのだと。人と自然がじわじわ交差して見事に裏表が描がかれていて◎
繊細な
誰にでもある出来事のように、ある時その人と出会い、時を過ごす。
そのみつめる時間はとても繊細で優しさで溢れている。
自分が見てきたものを最後まで信じたい、ってそう思った。自然に降り注ぐ光はあまりにも美しくて、色濃くうつるその影を消し去ってくれるようだった。
全113件中、101~113件目を表示