劇場公開日 2020年3月6日

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「よくぞここまで再現したなと驚きました。」Fukushima 50 お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0よくぞここまで再現したなと驚きました。

2020年7月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

CGによる再現がすばらしく、全体として良い仕上がりの映像でした。

ただ、予備知識なしでこの映画を見たら、吉田所長が、ただひたすら怒りを爆発させるばかりの映画だと思うことでしょう。なぜこの所長の下で多くの勇者たちが団結したのか、この映画からは理解できないのが難点でしょう。

これはおそらく原作に問題があると思います。

私も国会事故調査委員会の報告書を大部分、読破しましたが、(たぶん書籍数十冊分の分量がありますが)、吉田所長に対するヒアリング全文から滲み出ていた、所長の健全で優秀な人間性。この人の下で働くことは幸せだな、と、読むものに感じさせる魅力を、渡辺謙演じる吉田所長像から見つけられなかったことが残念です。

上記報告書は、多くの政治家に対しても何時間ずつ掛けてヒアリングをしています。発言を逐語的に文章化したものなので、残酷なまでに政治家一人一人の人間性や品性があぶり出しになっていました。

菅直人首相や枝野官房長官など、人格的には、ほとんど0点だと私は判断しましたが、(なかでも海江田大臣は飛び抜けて酷いですが)、そのような中で、中国から帰化した(きっと苦労も重ねてきたにちがいない)福山副長官の人間性には、私はかなりの驚きと高評価をしたものです。

しかし福山副長官に相当する登場人物が、この映画では官邸側に設定されておらず、「官邸=低能の巣」という画一的な図式に塗りつぶされていたのが、ちょっとフェアではないとは感じました。

実はこの映画、私は観るつもりはなかったのです。

しかし、菅直人の腰巾着みたいなライターが「映画の中での菅首相の描き方が酷過ぎる」という趣旨の記事を書いていたので、そこまで擁護するのなら、それじゃあ鑑賞してみようか、と思い立ったのです。

腰巾着による非難記事とは裏腹で、佐野史郎さんは、菅首相の「人間性と品格」とを、きわめてリアルに正確に演じていました。

菅直人が自分の腰巾着に頼んで記事を書かせたのだろうと推察しますが、こういうことを突発的に行う衝動を心の闇の奥底に抱えている点も含め、「人間の屑の屑」を総理に選んでいた日本の不幸が、よくわかります。

国会事故調のヒアリングに対して、吉田所長は終始冷静に対応をしていましたが、ただ一カ所だけ、感情を高ぶらせる部分があります。
私のジャマをした人たちに、どうか仕返しをしてください、と、死を目前にしていた所長は、ヒアリング担当官に訴えたのです。

この映画によって、吉田所長の仇が討てていると良いのですが、菅の腰巾着の雑文を見るかぎり、まだまだもっと打たねばならないのだろうな、と感じる次第でした。

お水汲み当番