「平凡な人生をおくれることの素晴らしさ」エセルとアーネスト ふたりの物語 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
平凡な人生をおくれることの素晴らしさ
平凡な人生を送ることがこんなにも素晴らしく、美しいことだと描いた作品は滅多にお目にかかれない。平凡に結婚し、平凡な家を買い、平凡な仕事をして、平凡に子どもを授かり、平凡に年を取り、天寿を全うする。それこそ人生で最も大切なことだとやさしい語り口で教えてくれる作品だ。貧しい暮らしの厳しさも、老いていくことの残酷さもレイモンド・ブリッグズは隠さない。全ては人生の一部であり、そんな残酷さを隠さずとも人生は素晴らしい。レイモンド・ブリッグズが自分の両親をモデルにしたこの作品、庶民の視点から現代イギリスの歩みを振り返るものであり、それは『この世界の片隅に』にも通じる部分がある。世界は残酷、そんな世界で平凡に天寿を全うできるだけでも、確かに我々の人生は儲けものではないか。あまりにも美しい映画なので、涙が止まらなかった。ブレンダ・ブレッシンの声を久しぶりに聞けたのも嬉しかった。
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