愛のそよ風
1973年製作/108分/アメリカ
原題または英題:Breezy
スタッフ・キャスト
- 監督
- クリント・イーストウッド
- 製作
- ロバート・デイリー
- 脚本
- ジョー・ヘイムズ
- 撮影
- フランク・スタンレー
- 音楽
- ミシェル・ルグラン
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ウィリアム・ホールデン
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ケイ・レンツ
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ロジャー・C・カーメル
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マージ・デュセイ
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ジョーン・ホッチキス
1973年製作/108分/アメリカ
原題または英題:Breezy

ウィリアム・ホールデン

ケイ・レンツ

ロジャー・C・カーメル

マージ・デュセイ

ジョーン・ホッチキス
これまで噂には聞いていたものの全くと言っていい程観る機会が無かった日本劇場未公開の作品である。「恐怖のメロディ ('71) 」、「荒野のストレンジャー ('73) 」に続く、イーストウッドの監督第3作目であり、且つ俳優として主演せず(ヒッチコック的なカメオ出演は果たしているが)、 監督業のみに専念した最初の作品でもある。
想像を遥かに超える素晴らしい出来で、人生の悲哀をしみじみと感じさせてくるこの味わい深い小品が、 個人的には全イーストウッド作品中、最も好きな映画であると言ってもよい程に好感が持てた。
若いヒッピー少女と父娘以上に年が離れた上に地位や財産は有るものの離婚して今は独り暮らしのシガナイ初老の主人公との恋愛劇である。
確かに当時42歳のイーストウッドが自作自演するには年齢的に無理が有り、本作で初めて監督業のみに専念した決断は正しいと思う。丹念な演出に心血が注がれているし、演出自体を楽しんでいることが映画の隅々に感じられる。
なんと言っても主人公を演じる往年の名優ウィリアム・ホールデン (「サンセット大通り ('50) 」、「麗しのサヴリナ ('54) 」、「慕情 ('55) 」、「ピクニック ('55) 」、「戦場にかける橋 ('57) 」、「騎兵隊 ('59) 」、「パリで一緒に ('63) 」、「ワイルド・バンチ ('69) 」)が素晴らしいのだが、この映画の製作当時の1970年代前半には健康上の理由も有ってかなり老け込んでしまっており、その為レンツ演じる自由奔放で溌剌とした若さとの対比が残酷なまでに映ることになり、映画を観る側にとっても一層の孤独感を誘われることになる。
一歩間違えばかなりキワドイ内容にも成りかねない題材だが、主演者二人から自然で説得力のある演技を引き出しつつ、ハリウッド近郊とカリフォルニアの美しい浜辺風景を巧みに織り混ぜながら、サラッとした心地良い感性で…正にタイトルの"Breezy''が相応しく…描かれているので、嫌味が無く納得させられ、映画の終盤には何か心が救われていくようでもあり、一種の人生讃歌みたいな味わいを感じさせてくれる。
一見、当時のイーストウッド作品群とは似ても似つかない真っ向から純愛を取り扱った本作品を今観ることは、それから実に20〜30年以上も後になって製作されることになる「マディソン郡の橋 ('95) 」や「ミリオンダラー・ベイビー ('04) 」に連なる原型が既にこの時代に存在していたのだということを確認することでもあり、感動させられる。そう言った意味でも「愛のそよ風」は、現在のクリント・イーストウッド作品を語る上で最も重要な作品の1本と言えるだろう。
ミシェル・ルグラン作曲による主題歌が美しく、久々に映画を観終わった後も暫くその心地良いメロディが耳に残っていて爽快だった。