「あらゆる映像テクニックが詰まった、挑発的なアイドル映画」ホットギミック ガールミーツボーイ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
あらゆる映像テクニックが詰まった、挑発的なアイドル映画
単なるアイドル映画だと、"ナメるな危険"。
"乃木坂46"の堀未央奈が映画初主演を務めているが、「溺れるナイフ」(2016)の山戸結希監督作品というところが注目。
「溺れるナイフ」で山戸監督は、菅田将暉と小松菜奈という若手注目株を使い、危うい10代の心模様を見事に描き切った。
本作「ホットギミック」も、少女漫画原作だ。オトナの複雑な人間関係が影を落とすコミュニティに暮らす、ティーンエイジャーたちの初恋や性衝動などを、心揺さぶる映像表現で激しく迫ってくる。
高校生同士の恋愛設定でなければ、けっこうドロドロの四角関係だったりする。"男(義兄)・男(同級生)→女→男(幼馴染み)"という片思いの連鎖。しかも親同士が不倫関係だったりして、その相関は目も当てられない。
一方で、本作はカメラワークや編集が斬新で面白い。左右2画面に男女の顔を配し、男は青系、女は赤系にしたり、また画角も特殊な効果を狙って変えたりしている。
細かい連続カット割の中に、スチル写真を使ったり、たびたび俯瞰したフレーミングを一瞬インサートしたりもする。また男女2人の恋愛駆け引きは、それぞれのアップを交互に切り替え、ひじょうに忙しいカット編集で畳み掛ける。
・・・と思ったら、長回しの絶妙なワンカット撮影もある。
序盤の"ゆりかもめ線"の"市場前駅ホーム"でのシーン。主人公・成田初(なりた はつみ/堀未央奈)と橘亮輝(たちばな りょうき/清水尋也)のやり取りが、長回しのワンカット撮影になっている。はつみの秘密を知った亮輝が、秘密を守る代わりに、自分の奴隷になることを約束させる。
ホームに上がった2人の会話が続きながらホーム反対側に移動し、亮輝に"キスしろよ"と言われて、はつみが背伸びをして口づけをする。そこに電車が入線してきて、ホームドアが開き、亮輝がそれに乗車して去っていくまで、カメラは止まらない。電車は通常営業中のようなので、相当に計算されたワンカット撮影である。
しかも作品のエンディングは、モノクロ映像で終わっている。
まるでデパートのように、これだけ多くの映像タイプを盛り込むと、ふつうは作品がガチャガチャになる。ところが山戸監督はそれを見事にバランスさせている。
初見でざっと見ただけなので、撮影・編集テクニックという視点で、もう一度じっくり観たい作品でもある。
さて、人気アイドル乃木坂46の堀 未央奈が演じる成田 初は、平凡な女子高生だ。ところが周囲の人間がマセていて、ひどい状況に巻き込まれていく。
堀 未央奈ファンからすれば、次から次へとキスシーンを見せられ、心穏やかでいられない。しまいには、好きな男に騙されて、自分のスマホでセルフポルノ(自分の全裸動画)を送信してしまうなど、ショッキングな内容もある。
もちろん直接的なヌードシーンがあるわけでもなく、それでもエッチな衝動を掻き立てたり、主人公の心と同じく悲しく震えるのは、女性監督ならでは。かなり挑発的なアイドル映画だ。
(2019/7/7/TOHOシネマズ錦糸町/シネスコ)