グリーンブックのレビュー・感想・評価
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車内の前後の位置関係が、まったく異なる二人を優しく近づける。
〇作品全体
生まれも育ちも、人種も、性的嗜好も、何もかもが異なるトニーとシャーリー。旅の序盤、すでにトニーは妻ドロレス宛の手紙で「シャーリーとはウマが合いそうだ」と綴っている。しかし、黒人に対して差別意識を持つトニーにとって、シャーリーと長時間同じ空間に身を置くというのは、やはり簡単なことではなかったはずだ。
そんな中で、ひとつ印象的なアクセントとなっていたのが、車内での“前後”の位置関係だった。
旅の大半を車内で過ごす二人の会話は、必然的に前席と後部座席という“前後”の構図になる。この位置関係では、肌の色や所作といった“育ち”の違いが、視界に入らないぶん薄れていく。たとえば、膝掛けを上品にかけるシャーリーと、人の分のサンドイッチまで食べてしまうトニーの「育ち方の違い」は、カメラを通せば一目瞭然だが、二人にとってはお互いの視界に入らない。後部座席のシャーリーから見れば、トニーが「不衛生」に食べるフライドチキンの姿も直接目に入ることはない。
視線を合わせないからこそ、真正面で対峙する緊張感が和らぐ。相手の許容できる部分はそのまま受け入れ、許容できない部分については本音を出して衝突することもできる。行く先々で「黒人であること」を突きつけられる世界で生きるシャーリーにとって、その空間は肌の色に囚われず、しかも一人ではないという点で、初めて心を開ける場所になったのではないかと思う。
トニーにとっても、見えているのは前方の景色とバックミラーだけ。話すとき、人種を意識するような視線のぶつかり合いはほとんどない。すぐ頭に血がのぼる性格だが、用心棒としての働きぶりや、家族との関係を見る限り、自分勝手な人物ではないことは明らかだ。
少し主観になるが、映画作品において「嫌々仕事を引き受ける」動機は、ネガティブな事情に基づくことが多い。家庭に問題がある、過去に過ちを犯した、などだ。本作でもトニーが「やりすぎた」ことで仕事を失ったという背景はあるが、最終的に旅に出る決断をしたのは、ドロレスの承諾があったからだ。順調な夫婦仲をより強くする、というポジティブな物語線が存在する点が好ましい。そして、トニーがただの乱暴者ではなく、“家庭に責任を持つ男”であるという描き方にも好感が持てる。
話がやや逸れたが、トニーが「2時と10時でハンドルを握る」と語る姿勢には、責任感と、それを時折裏切るようなユーモアが込められている。この運転席という位置こそが、彼のキャラクターと物語のバランスをとっていたように思う。
そもそも二人が対面で視線を合わせるシーンは、車外でさえ稀だ。レストランではシャーリーが新聞に目を落とし、手紙の書き方を教える場面でも、シャーリーは横を向いているか、トニーの周囲を歩いている。宿泊時の会話も、ベッドに横たわりながらのものだった。
このように“ひとつクッションを置いた”距離感のある会話が積み重なっているからこそ、真正面から視線を合わせて交わす言葉には、大きな意味が宿る。たとえば、石を盗んだトニーをシャーリーが咎めるシーン、あるいは浴場で警察を買収した後の駐車場のやりとりがそれにあたる。心の距離を縮めるときは目線を外して柔らかく、ぶつかり合うときは真正面から――。この映像的な緩急が、二人の関係の構築に欠かせない要素になっていた。
Wikipediaを覗いてみたら、この映画が「白人の救世主」ものの典型だとする意見があった。確かに、その指摘も理解できる。ただ、そう断じきれない感覚もある。なぜなら、二人が車内で“前後”に位置し、肌の色や所作が直接的な意味を持たない空間に身を置いていたからだ。その空間においては、“誰が救うか”ではなく、“どう向き合うか”が主軸となっていた。だからこそ、自分はこの映画にただの感動以上の何か――静かで強い友情の物語として、強く惹かれたのだと思う。
〇その他
・終盤、黒人が集まるレストランでシャーリーがピアノを弾くシーンがすごく良かった。孤独から脱却する一歩、みたいに映るし、今までシャーリーがやってきたことは間違いじゃなかった、といような肯定感もある。
おっさんには、オスカーの凋落と打算しか本作には見いだせなかったよ。
去年のアカデミー賞はマイノリティ、ダイバーシティヨイショの極端な過敏反応のせいで、クソみたいな同人誌映画「シェイプ・オブ・ウォーター」が受賞した。
もちろん前向きに見ると、「初の怪獣映画のオスカー受賞、イエイ」といえなくもないが、ただ単に、オタクが会員層の大部分を締め、「難しい」映画を理解できなくなったとも言えなくない。
そんなこんなのアカデミー賞の今年の結果はどうかと言うと、案の定の、会員があたかも全員一斉に集まって、消去法で決めたかのような、各部門の受賞結果。
もはや映画の内容、映画のデキには目を向けず、マイノリティ、ダイバーシティヨイショだけが選考理由。
結果、あげるべき人にあげてないくせに「ダイバーシティ」だとほざきやがる。
アカデミー賞は、業界人による、内輪の賞だが、もはやこんなももらって嬉しいか?というほどに、権威は失墜したと思う。
そんなことがはっきり見えたのが、この
「グリーンブック」
・
・
・
「既視感」というには、あまりにも退屈すぎる。ここで繰り広げられる物語は、表面上で起こったことしか見えない。というより、見せていない。想像力の欠如とでも言おうか、登場するキャラクターの背景が全くと言っていいほど、表面的だ。
ああ、脚本家の一人に、主人公の息子がいるからか。
もちろん、彼にとって父親である主人公は「ヒーロー」である。だがあまりにも物分りが良すぎる。まるで、事の流れに逆らわないように。
ドクに、「自分にしかデキないことをしろ」、というが、そんなキャラだったか?
そもそもドクが天才なのは誰でもわかるかもしれないが、彼がそこまでドクに「仕事以上」に心を通わせるのがわからない。
手紙?手紙の反応がトニーに戻ってきた描写はない。
plainとplaneのしょうもない話はともかく、主人公の「美しい平原広がる南部ツアー」の結果が黒人と仲良くなっただけなのも、ロードムービーの体をとってるくせに、つまらなすぎ。
ドクのほうも、全くと言っていいほど、ペラペラのキャラクター。
ちょっとだけホモネタ入れちゃう?とか、どうせ、そんなノリだろ?
南部に行く理由も、「勇気ある行動」で片付けられる。
勇気を示す理由は何よ?そして、そもそも散々引っ張った兄貴の件はどうなったんだよ?
つまり、こういう設定だったら、オスカー取れんじゃね?こういうシーン入れときゃオスカー取れんじゃね?ということしか考えていない映画。
グリーンブックというタイトルも、止まった場所に何かあるわけでもなく、地域性だって、ケンタッキー・フライド・チキンだあ?子供の映画か。(当時のクソ不味いアメリカのKFCをニコニコ食べる二人をギャグにしているのかもしれないが)
「グリーンブック」ってタイトルつけときゃ、アイロニックな感じが出るでしょうみたいなのりだったんだろうが、全く機能していない。
クライマックスに、黒人で溢れるBARでドクの演奏するシーンが有る。トニーが黒人限定BARに入るところこそが、本当は一番ドラマなはずなのだが、そこはお前ら、スルーかよ。
トニーが黒人限定なBARに入る、これこそまさに「『逆』グリーンブック」。
これで評価されるならまだ分かる。
追記
唯一の笑いどころは、銃を実際に持っていたところだけ。だが、これだって相当やばい「ネタ」なのに、もっと高いレベルの笑いにまで昇華できたはずだ。
結果、黒人をダシにして、主人公がお金を稼いで、物分かりのいい性格になり、手紙を書くのが上手になりました、っていうだけの映画。
常識という敵と戦う映画
常識という敵と戦う映画
その常識の象徴がタイトル「グリーンブック」なのだろう。
1960年代のアメリカそこに根付く差別意識がどういったものか
またそれをどう受け入れ変えていくかを描いた作品
大きく世界を変えたわけではないが、
個人と、登場人物の手の届く周りへ変化を与える様子を丁寧に描かれている。
はじめはかなり差別主事として主人公は描かれるが、
出会いをきっかけに人種を受け入れていくさまが描かれるが、
このキャラクターは常識がずれているので、
今までかかわりがなく知らなかっただけで、
知り合いになれば、
簡単に受け入れるといった性格であったので、
受け入れる者の変化という曲線は描いていないが、
本当はかなりの差別というものがこういった形で起きているのだろうなと考えさせられる。
また、この作品の優れた部分は、
差別という孤独を抱えるサブ主人公のキャラクターが、
特殊な才能ゆえに差別される側にも受け入れられず孤独を抱え
さらに、差別主義者達の中でのし上がる彼はそこでも孤独を抱えるといった
3重苦に陥っている点である。
あらゆる場所で孤独を抱える彼は、
世界を変えようと、差別を耐え努力するが実らず苦しむ。
そんな彼が自分自身の出自を受け入れ
最後、主人公の家族に受け入れられるという
小さな変化を感じられてきっと
幸せだったろうと思わせる最後になっていた。
本当はサブ主人公が抱える問題は、
もう1つあるが、それはあまり重荷として作品の中で描き切れていなかった。
また、上記のような
粗雑だが、自身の価値観をきちんと持ち、
目で見たことを信じ、常識を簡単に捨ててしまえる主人公と、
迫害されるため、自身のコンプレックスを隠し、
世界に併合しながらも変えていきたいともがくサブ主人公
といった形で、あらゆる点で、コンビを対比させることによって
この2人の会話が常に危うさを持っており、見ていて飽きない工夫を入れられている。
自分的には、とても楽しく見えて大満足に思えたが・・・
ピーター・ファレリー監督による2018年製作(130分/G)アメリカ映画。
原題または英題:Green Book、配給:ギャガ、劇場公開日:2019年3月1日。
1960年代米国が舞台で、黒人差別が著しい南部を黒人ピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)と運転手で用心棒のトニー・リップ・バレロンガ(ビゴ・モーテンセン)が演奏旅行を行う。相容れない二人が、次第に信頼関係を構築していくという典型パターン的な展開であったが、黒人差別、同性愛、夫婦家族愛に、いけてるジャズの音楽映画としての要素が加えられ、大いに楽しむことができて大満足であった。
ピアノ演奏の実際は、マハーシャラ・アリではなく音楽担当のクリス・パワーズが弾いていたらしいが、まさにクラシック素養があるジャズピアニストという演奏で、とても良かった。トニーの妻への手紙文面をシャーリーが考えてあげていて、実は妻もそれが十分に分かっていたとのラストのオチも見事だと思った。
トニの息子ニック・バレロンガが製作に加え脚本も担当し、暖かくてとても良い印象を抱いた。しかし、ドクター・シャーリーの家族には、友情関係や孤高の天才描写等は事実と異なるとクレームを入れられている様で、あくまで白人側からの黒人との友情の作り物と見えたということらしい。そこはマイナスポイントであるかも。
監督ピーター・ファレリー、製作ジム・バーク、 チャールズ・B・ウェスラー 、ブライアン・カリー 、ピーター・ファレリー 、ニック・バレロンガ、製作総指揮ジェフ・スコール 、ジョナサン・キング 、オクタビア・スペンサー、 クワミ・L・パーカー 、ジョン・スロス 、スティーブン・ファーネス、脚本ニック・バレロンガ 、ブライアン・カリー 、ピーター・ファレリー、撮影ショーン・ポーター、美術ティム・ガルビン、衣装ベッツィ・ハイマン、編集パトリック・J・ドン・ビト、音楽クリス・バワーズ、音楽監修トム・ウフル マニッシュ・ラバル。
出演
トニー・“リップ”・バレロンガビゴ・モーテンセン、ドクター・ドナルド・シャーリーマハーシャラ・アリ、ドロレスリンダ・カーデリニ、オレグディミテル・D・マリノフ、ジョージマイク・ハットン、セバスティアン・マニスカルコ、P・J・バーン。
オールタイムベスト級❗️
人種差別をテーマにしているけど、そんなに暗い感じになってないのが良い。(もちろんズンっとくるシーンもあるが)
明るくてガサツなトニーと、神経質なドン・シャーリーとのかけ合いがどこかコミカルで楽しい😆
特にお気に入りのシーンは、ケンタッキーを食べるシーン。
思わず顔がほころんでしまう最高のシーンだった❗️
定期的に見直したくなる愛おしい映画になりました😊
心温まる展開とアメリカの美しい自然
トニーとドクターが最初はお互いの距離感を凄く感じておいおい2ヶ月も一緒に仕事できるのかよ…って思いましたが、ぶつかり合いながらお互いの理解を深め最後にはリスペクトし合ってるのが凄くジーンと心温まりました。
道中の車が走ってる映像も美しくてアメリカをロングドライブしている気分になりました!
それと後半のシーン。パトカーにまた止められてうわー…またかー…と思っていたらパンクを教えてくれた優しいお巡りさんでした。ここも好きなシーンです。そして吹雪の中車を走らせてるシーン(ここもめちゃくちゃ好き)からトニーの家にドクターが来てみんなで歓迎してるところがもう本当に心温まる…😭
良すぎる
良すぎる〜2人の組み合わせが良すぎる
生半可な精神力では心を病んでしまうような体験を繰り返してなお、南部でのツアーを決め舞台に立つドクの精神力と信念が本当に強い。そんなんできない。
何がそこまで彼を動かすのか、何が原動力になっているのかもっと知りたいと思いました。
ずっと孤独だったドクがレストランで黒人社会に受け入れられるシーンや、最後白人のトニーの家族に歓迎されるシーンは本当に…涙…。ありがとう…。
トニーの自分に正直でまっすぐな人間性もよかったです。
肌の色で決めるのではなく、しっかり1人の人間としてドクに向き合い、純粋に評価していることが伝わってめちゃめちゃいい奴だな!と思いました。
家族やドクなど身内への愛が大きいところもいいですね。
ポイ捨てするし窃盗するし身近にいたら絶対嫌ですけど。
不憫なミュージシャンとワイルドな相棒
実話に基いた話。ドライバー兼用心棒を務めたトニーとピアニストのシャーリーが2013年まで友人であったことにも感動。トニーは最初、黒人に対して毛嫌いしていたけど、シャーリーに会ったことで黒人に対して毛嫌いではなくなっていく様子と頑なに自身の存在を律する事ばかりに囚われていたシャーリーが徐々にトニーに打ち解けていく様子が見どころ。
世界は醜い、でも時々美しい。
心痛む描写は多い。
最初トニーは差別主義者の気難しい粗忽者かと思ってたけど、ドクを守るトニーの姿にだんだんと印象が変わっていった。おしゃべりででたらめで気の強いトニーはなんて頼もしいのかと。
他の車から見られた時、トニーが中指立てるの最高だった。
ラスト、自分を差別する支配人に対して誇りを貫いたこと、その後のバーでクリスマスパーティよろしくシャーリーの音楽を披露して盛り上がったところ、泣いた。
持ってないと言っていた銃を持っていたところ、雪の中出会った警官は差別しなかったところもいいオチ。
ドク(シャーリー)からクリスマスパーティに参加したことも、ドクとトニーはお互いに刺激し合い人として変わったんだと思わされた。
希望の持てるいい終わり方だ。人よ、見えるもので決めつけるのはやめよう。優しくあろう。
アメリカの光と影
古き良きアメリカの雰囲気を伝える、サウンドトラックと美しいアメリカ南部の車窓風景、その対比を成す根強い黒人差別をベースに、白人と黒人を超えた友情を全面に出した映画だった。
これが実話に基づいてなければ読み飛ばし、見逃してしまいそうなベタな演出と演技も、繰り返される淡々とした二人の関わりを見続けてると、ああコレで良いんだと肯定できるものがあった。
タイトルなし(ネタバレ)
『グリーンブック』この映画は、アカデミー賞作品賞・脚本賞他も受賞した、是非観るべき一本だと思う。実話であるということも、たいへん興味深く、大きな意味を持っている。タイトルの『グリーンブック』とは、実に爽やかなイメージの響きがあるが、現実は「黒人旅行者を受け入れるホテルやレストランの一覧が記載された本」だった。という事実もショックだ。
映画の舞台は、1962年のアメリカ。人種差別が常態化していた時代に、高名な黒人ピアニストが白人運転手を雇い、アメリカ南部の演奏ツアーを敢行し、そこで様々な差別や暴力に遭いながらも、2か月の演奏ツアーを終えて、無事にニューヨークまで戻って来る。その間、ピアニストと運転手との間には、人種を越えて堅い友情が芽生え、生涯の親友になったという感動の実話だ。
黒人ピアニストのドクター・ドン・シャーリーは、カーネギーホールの上階に住み、裕福な生活をしている。天才ピアニストであり、礼儀正しく、知識も教養もある物静かな文化人だ。
ドンは、白人のチェロ奏者とベース奏者と共にトリオを組み、敢えて、人種差別が著しいアメリカ南部に演奏ツアーを行うのだが、(これにも深い意味がある)そのツアーの為の運転手を募集するところから、物語は始まる。
ナイトクラブの警備(用心棒)の仕事をしていたトニーは、店が2~3か月改修工事に入る為、その間の仕事を探していた。黒人への偏見もあり、口がうまくて、言葉遣いも悪く、すぐ暴力を振るってしまう粗野なトニーが、ドンの運転手の面接を受けることになった。一旦はトニーから断ったのだが、ドンから電話があり、結局2か月の演奏ツアーの運転手の仕事を引き受けることに…
正反対の性格の二人の為、衝突することも度々あったが、ドンが黒人であるということで、差別を受けていることを目の当たりにし、次第にドンに対する考え方や接し方が変わってくる。何度もボディーガードのようにドンを助け、守った。
そして、ドンの演奏を聴いて「凄い、素晴らしい、天才だ」と気づかされる。ホテルで二人が話している時、トニーはドンに「あんたの弾くピアノはスゲエんだよ!」と言う。
トニーが妻のドロレスに手紙を書いているのを見て、ドンは色々アドバイスをし、その手紙を受け取ったドロレスは感激していた。
ある時、ドンが演奏をした会場で、トイレに入ろうとした時、主催者の人に「あなたのトイレは、あの外のトイレです」と言われ、ドンはそのトイレを使うことを拒否し、モーテルまでトニーの運転する車で戻ったことがある。だが、ドンは演奏が終わると、愛想良くお客さん一人ひとりと握手を交わしていた。
その姿を見ているトニーにトリオのメンバーが「これからも、こういうことは何回もあるだろう。でも、我慢するんだ。ドクター(ドン)は、この2か月北部にいれば、パーティーに引っ張りだこで3倍の金を稼げた。彼は自らここに来た」と言う。
トニーは「じゃあ、何で南部に来たんだ?それに何であんなに、にこやかに握手出来るんだ?」と疑問を口にしたが、トリオのメンバーはそのことについて何も言わなかった。後にその答えは、その彼から聞くことになるが。
ある会場に向かう途中、エンジントラブルでトニーは車の修理をしていた。そこには草原が広がり、畑では黒人の人たちが農作業をしていた。ドンは車の外に出て修理が終わるのを待っていると、畑で作業をしていた人たちが全員、ドンの方をじっと見つめていた。その光景を見て、不安そうな顔で車に乗り込むドン…「何でお前は、白人に車の修理をさせて、そんないい服を着ているんだ?」と言いたげな、みんなの目に圧倒されたのだろうと思うが、ちょっと考えさせられるシーンだった。
移動中、買物があると言ってトニーが店に立ち寄った時、店先に売り物の翡翠の石が落ちていて、その翡翠をトニーはポケットに入れた。その様子をトリオのメンバーに見られていて、ドンから「お金を払って来なさい」「翡翠を返して来なさい」と注意され、渋々翡翠を売場に戻しに行った…筈だった。が、後に真相が明かされ、意味を持ってくる。
どしゃ降りの雨の中、パトカーに停められ、トニーは「降りろ、黒人の夜の外出は禁止されている」と言われ車の外に出たが、警官にバカにされ、トニーは警官を殴ってしまう。そして、二人とも留置場に入れられる。ドンは「暴力では勝てない。品位を保つことが勝利をもたらす」とトニーを諭す。ドンは弁護士に電話を掛けさせてくれるよう、権利を主張し、何とか電話を掛けることが出来た。暫くすると電話が掛かってきて、電話の相手は知事だった。ドンが電話を掛けたのはロバート・ケネディだった!二人はすぐ釈放された。これは凄い人脈と言うか、ドンの偉大さがよく判るシーンだ。
その日、車の中で言い争いになり、どしゃ降りの雨の中、ドンは車を降りてしまうが、そこでドンは本音を吐く。「白人相手のステージでは喝采を浴びるが、ステージを降りると、ただのクロとして扱われる。侮辱を受けても、痛みを分かち合える仲間もいない…」それを聞いたトニーは、その夜ドンと同じ黒人専用ホテルの同じ部屋に泊まることにした。トニーはドンにしっかり寄り添っている。もう充分親友の二人だ。
いよいよ最後の演奏の日。ドンが案内されたのは、物置同然の部屋だった。トニーとトリオの二人のメンバーが同じテーブルで食事をしているところで、トニーはメンバーの一人から、以前聞かれたことへの答えを話す。「6年前の1956年にナット・キング・コールはバーミングハムに招かれ、初めて白人施設でショーを行った勇気ある黒人だ。だが、彼が白人の歌を歌い始めると、ステージから引きずり下ろされ、袋叩きにされた」「ドンがわざわざ南部に演奏に来たのは″信念″だ。先人が示した勇気が人の心を変える」…と。
そして、ドンが食事をしようとレストランに行くと、黒人はここでは食事が出来ないと言われる。トニーが間に入って何とか、ドンが食事が出来るように交渉するが、どうにもならなかった。ドンは「演奏しよう。君が望むなら」とトニーに言う。するとトニーは「とっとと、こんなとこ、ずらかろうぜ」と二人は出て行く。何だかこのシーンは、気持ちがスカッとした。
その後、レストランに入って食事をしていたが、ピアノを弾いてくれと言われ、いつも弾いている「スタインウェイ」ではない、ごく普通のピアノだったが、ピアノを弾くと大喝采で、その店のバンドメンバーとのセッションで大盛り上がり。店を出たドンは「ギャラなしでも、もう一度やりたい」と言っていた。
その後、今出発すればクリスマスイブに家に戻れるということで、ニューヨークに向かって車を走らせるが、天候が悪くなってきて、ドンは「君のあのお守りの石(翡翠)を前に置いたら安心だ」と言うと、トニーはポケットから本当は返した筈の「翡翠」の石を出して車の前に置いた。ドンは全てお見通しだったわけだ。
途中、パトカーにまた停められる。「またかよ」と思うトニーだったが、実は「パンクしているんじゃないか?」と教えてくれたのだった。トニーが外に出てパンク修理をする間、警官は交通整理をしてくれていた。いい警官で良かった。心温まる話だ。
運転を再開したが、天候が更に悪化し、トニーも「眠くてたまらない。今日はモーテルに泊まろう」と言い出したが、場面が変わると、トニーを後ろの席に寝かせ、ドンが運転をしていた。
そして、ニューヨークのトニーの家に到着した。「家族に紹介する」というトニーに「メリークリスマス」と言って車を運転して帰ってしまう。自分がどう思われるか心配だったのだろう。
トニーの家では、クリスマスパーティーが始まっていた。トニーは家族みんなに大歓迎された。
ドンは自宅に戻り、翡翠を手に取って考えていた。
そして…ドンはシャンパン(ワイン?)を持って、トニーの家を訪ねる。トニーとドンはしっかり抱き合う。ドンの「トニーを貸してくれてありがとう」トニーの妻ドロレスの「ステキな手紙をありがとう」…がいい。最高のラストだった。
黒人への偏見があったトニーの気持ちが、段々と変わっていく様子や、孤高のピアニストだったドンが、トニーとの触れ合いをきっかけに心を開いていく様がよく描かれている作品だと思う。
人種差別の実態もよく分かり、勉強にもなる。黒人の人たちにとって、本当に辛い時代だったと思う。今でも、アメリカでは黒人差別は残っているが…
音楽も良かった。リトル・リチャード、アレサ・フランクリン…黒人音楽も大好きな私には、音楽も楽しめた映画だった。
黒人音楽家とブロンクス育ちのイタリア人の友情の旅
素晴らしい映画だ。一気に二回目を見終えた。
この映画は脚本がよくできていて、テンポもとてもよく、ストーリーに起伏がついている。笑いあり、涙もさそう、音楽がとても素晴らしい。黒人音楽がもともと好きな私にとってはとくにそうである。
大まかなストーリーは覚えていたがラストシーン
Christmasに間に合わようにボスが運転して雪の中無事到着する。イタリア人はChristmas家族や仲間たちで暖かい。黒人のボスはいつものように執事がいる広い部屋にかえってくる。執事を帰し静かなChristmasイブを。ここでエンディングでもよかった。いや、むしろ、そのほうが余韻を持って終われるような気がする。
映画では黒人差別があるイタリアンファミリーが最初は驚くが、暖かくむかえる。
このあとChristmasパーティーは黒人クラッシックピアニストとイタリアン人雇われ運転手の話題に花がさくだろう。
東京物語、それのオマージュ作品の東京家族は旅を終えて静かな日常で終わっている。
どちかを好むかは人それぞれかもしれないが。
タイトルなし(ネタバレ)
前から観たい観たいと思いつつ先延ばしにしてたのをやっと観た
ほぼ最後まで普通に良い映画って事で「★4だな」って思ってたけど、最後の期待通りの「ニガーはよせ」とドロレスの「手紙ありがと」で★0.5追加🤣
ロードムービー
旅をするロードムービーが昔から好きでそんな理由で見ようかなと思った一本
ちょっと曲者だけれど家族思いのイタリア系白人トニーと天才ピアニストだけれど目的のために危険な橋を渡ろうとしてしまう黒人のドクが、アメリカ南部をめぐる演奏ツアーの旅路を描いた作品
レトロで美しいデザインの車に昔のアメリカの風景や当時の小道具に音楽は素晴らしいけれどそれとは真逆に人種や同性愛の差別、これが当人に悪意が無くても「昔からなんで・・・」と言ってくる様子がやるせないなと感じた。
でも見ていて感じたのがこの映画は単に差別に対する悲劇だけでなく、それを超えた最初はぶつかり合っていたトニーとドクが分かり合えて親友になったように(盗んだ宝石を車に飾る演出)人間は困難を乗り越えたり理解しあえるそんなメッセージがあるのでないかと思った。
メッセージ性もですが演奏する場面も力が入っているなと思った。
終盤に演奏した木枯らしのエチュードは聞いてて鳥肌が立つほど素晴らしい曲だった
不思議と心にしみる
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クラブの用心棒だったトニーが失業し、運転手として雇われる。
雇い主は黒人のドク。天才ピアニストで2人の白人とトリオを組んでた。
クリスマスまでの3ヵ月間、アメリカ南部のツアーに行った。
古い時代であり、南部は特に黒人差別がひどかった。
ドクは天才奏者なので金持ちの白人客からもてはやされる。
でも彼らは自らの教養のために来るだけで、差別は普通にあった。
例えば楽屋が物置だったり、トイレが白人専用で使えなかったり。
洋服の試着を断られたり、バーで絡まれたり、不当逮捕されたり。
ドクはマジメで神経質で口うるさい所があった。
トニーは元々は黒人を見下す品の無い男なので、それが煩わしかった。
でも音楽センスは認めてたし、差別に立ち向かう姿勢に次第に敬意を抱く。
ドクは天才ならではの孤独というか、いつもあまり楽しそうではなかった。
でもケンチキを食ったことがないというのでトニーが無理に勧めたら、
うまそうに食ったりして純粋な男だった。
そして最後の公演の前、会場のレストランで入場を断られる。
この頃には完全に差別を憎むようになってたトニーはキレる。
でもドクが制し、そこでの公演を断った。
こうして2人で街に繰り出し、黒人しかいない店で飲む。
そこにはピアノがあり、トニーの勧めでドクは演奏した。
あまりの質の高さに誰もが聞き入った。
やがて常連が別の楽器を持って乱入、共に演奏する。
この時のドクは、普段見せない本当に楽しそうな顔だった。
こうしてNYに帰る。トニーの家ではクリスマスパーティをしてた。
間に合わすために交代で運転を手伝ってくれたドク。
トニーは寄ってけよと言うが、ドクは断って帰る。
白人のパーティだから、微妙な空気になると知ってたから。
そう思うとトニーはあまりパーティを楽しめなかった。
そしてふと表を見ると、帰宅後寂しくなったドクがまた来てた。
喜んで迎え入れるトニー。そして嫁にも紹介。
嫁はトニーからの手紙が美文過ぎて、ドクの言葉だと分かってた。
なので耳元で手紙ありがとうと言った。
こうしてトニーとドクの交流は死ぬまで友人として続いた。
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劇場で見た。事実をベースとした話らしい。
何でやろ?いい映画って、時間が経つのを忘れるよな。
テンポのいい作品ではないけど、それでも不思議とそうなる。
正直言ってトニーはあんまり好きではなかったけどな。
でも最後は黒人に対しても敬意を持てる男に変貌できた。
決して仲良しって感じではなかったが、心が通じてる感じがした。
最後の方のバーでの演奏は涙が止まらんかったわ。
音楽を愛してるのは間違いないだろう、でも楽しいが一番。
天才であっても、根本の部分ではそれは変わらない。
最後に再会するところも相当泣いたわ。
トニーの嫁は元々黒人に差別意識を全く持ってなかったし、
事実上の代筆ながら、そこにドクの人柄を感じ取ってたのだろう。
世の中みんな何かを抱えてる
ゲイで黒人のピアニストとその運転手のイギリスの移民が友情で繋がる話。
堅物であるピアニストが、段々と打ち解けてゆく。
人種は違っていても、同じ人間で、お腹も減るし怒ったり泣いたりする。
フライドチキンを食べたくなる映画、かなぁ。
すごくいい話だった。
グリーンブック
【ピロシの映画レビュー
①②】
こんばんは、水野晴郎です。
邦題 グリーンブック
原題 Green Book
⚫︎監督
ピーター・ファレリー
⚫︎脚本
ニック・ヴァレロンガ
ブライアン・ヘインズ・カリー
ピーター・ファレリ
⚫︎製作
ジム・バーク
ニック・ヴァレロンガ
ブライアン・ヘインズ・カリー
⚫︎出演者
ヴィゴ・モーテンセン
マハーシャラ・アリ
リンダ・カーデリー
⚫︎公開
2018年
⚫︎上映時間
130分
⚫︎製作国
アメリカ合衆国
⚫︎ジャンル
ヒューマンドラマ系
⚠️⚠️⚠️⚠️ネタバレ注意⚠️⚠️⚠️⚠️
黒人&白人のコンビ、バディムービーといえば、『最強のふたり』(2011)が思い浮かびますが、役柄として逆転しているのが興味深い本作。
黒人差別が激しい1962年のアメリカ南部が舞台。
粗雑、粗野、粗暴、な元ナイトクラブ支配人と黒人売れっ子ピアノマンが主人公。
一度視聴したのですが、前半そうでもなさそう(ってどう言う意味?)なので中途ストップ。しかしながら各種レビューサイトを見るとなかなか面白いとされていたため、再開(会)しますた。
時代背景としては仕方ないんですかね。終盤まで言われのない差別(法的&人的両面)を受け続けるピアニスト。
徹頭徹尾ここまで馬鹿にされて、人間としての尊厳などありはしません。ただ本作がそれほどグロくならないのはどれだけdisrespectされても決してキレたりしないドクの性格と荒くれ者だけれど優しさに溢れたリップのおかげですよね。
終盤のセッションは展開的に泣ける名場面。
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『映画って本当に素晴らしいですね!』
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二人
南北戦争からもだいぶ経つというのにまだまだ黒人差別が残っていた時代の南部へ黒人の有名ピアニストドクター•シャーリーが敢えてコンサートにまわる。そこにクラブの臨時休業の間だけ運転手として口達者な頼り甲斐のある白人トニー•リップが雇われ3ケ月少し一緒に旅をする。
あれだけVIP扱いし丁重に対応した会場の支配人であっても、黒人だから、この地域の決まりで前例が無いから、とテーブルで食事をするのを断る。泊まれない白人専用ホテル。警官でさえ乗っているのが黒人というだけで職務質問。運転手が白人で後ろの席に座るのが黒人という図に驚くカップル。差別、差別、差別‥‥。
わかりきっていた事なのでどんな目に合っても、ドクター•シャーリーは動揺せずにあるがままを受け入れる。当然トニーは抗議し、二人は何度も討論し合う。そのうちドクター•シャーリーが南部に来た訳を話す。それを聞いたトムは仕事上だけではなくドクターの心意気に打たれ気持ちを尊重するようになる。
日程をこなし、クリスマスに間に合うように疲れ切ったトムの代わりに運転するドクター•シャーリー。
豪華な邸宅に戻ったドクター•シャーリーを待っていた執事を帰すと広い家に一人。
トムとの友情を信じてトムの家を訪問すると、旅に出る前は黒人差別に満ち満ちでいたトムの親族が、帰って来たトムの様子からいろいろ察したのか、ドクター•シャーリーの訪問を歓待する。
是非もう一度観たい作品である。
キャラが良いコメディ
黒人差別の映画だが、コメディで楽しく最後はほっこり幸せな気持ちになれる作品なので万人にオススメ。
何が良いって2人ともキャラが良い。
車の運転中にイタリア系白人のトニーがフライドチキンを食べ、食べかすを道に捨てる
お前も真似しろよ!と黒人のシャーリーに言って、紳士なシャーリーも押されて捨てて、二人で笑い合う
いやこういう関係がいいのよ
そしてその後に紙コップを道に捨てたトニーのシーン
→ 車がバックして取りに行かせるシーンの流れが面白い!
生ゴミは良いけど紙のゴミはダメ!みたいなね
痛々しい場面ももちろんあるけれど、2人のおかげでそこまで重くはなかった
実話ベースなので見ごたえもあって良いと思います
KFCが食べたくなった
上品な黒人、野蛮な白人のチグハグコンビのロードムービー。
ドクターのピアノが上手くて、ピアニストを俳優に起用したのかと思ったけど調べたら特訓の成果だそうでびっくりした。何回も出てくる演奏シーンにとっても満足な気分にさせてくれるレベルだった。
ドクターが堰を切ったように叫んだ「黒人でもなくて家族がいなくて男でもない私は誰なんだよ」のところに心揺さぶられた。自分をアイデンティファイするものを迫害されることの苦しさを、私は知らないし、もういまの時代ではめったに味わうこともないだろう。でもこの映画を見たことで、あの感情の発露を目の当たりにしたことで、少しは理解できただろうか。
名前、言語、言葉遣い、盗み癖、聞く音楽、食べ物、運転の仕方、服装、手紙で綴る文章等、アイデンティティを象徴する要素として多数盛り込まれていた。でも最後らへんの「自分がどれほどすごいやつなのか誰なのかいってやれよ」「言わないで、聴かせてよ」とジャズの即興演奏へもちこむシーンすごい良かった。彼を彼たらしめるの一番の要素はピアノの演奏なんだと、楽しくイキイキする様子が語っていた。
難しかったところ 考察しなきゃ
・なぜ差別の激しい南部へのツアーをすることにしたのか
・なぜトリオの3人車一台でいかないのか
・トリオはなぜロシア語で話すのか
・ツアー最終日、9回裏まで来ていたところをなぜ今までのように我慢しなかったのか
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