グリーンブックのレビュー・感想・評価
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暗い話ではありません! 見て暖かい気持ちになる、素敵な映画
タイトルの意味から、差別を描いた暗い話しかと少し躊躇しましたが、素敵な映画でした。見て良かった!
一方は、教養溢れる天才黒人ピアニスト
他方は、お金の為にそんな黒人にドライバー兼ボディガードとして雇われる立場になった、「粗野な」イタリア系白人
二人が60年代に黒人差別が色濃いディープサウスをコンサートツアーで巡る様子を描いた、一種のロードムービー
差別は描かれますが、それがいちばんのテーマではありません
いろんな状況のなかで対極的な二人が少しずつお互いを受け入れて少し変わっていく、そんな姿を描いた映画です
興味がある方には是非お勧めします!
===== ★以下、個々の話の結末は書かないのでネタバレではないつもりですが、幾つか大まかなプロット展開に触れるので、気にされる方はすみませんが、この先読まないでください★ =====
冒頭、NYの高級クラブで用心棒をしているトニー・リップ
上客が「これは母親から貰った大事な帽子だから命懸けで守れ」とチップを弾んでクロークで帽子を預けるのを見ると、トニーは、それを寄越せと言って係の女性から帽子を取り上げてしまう
いったい何をするつもりなのか??
いきなり話に引き込まれます
彼の世慣れた抜け目なさが印象的に描かれます
その後の、黒人の修理工が家に来たときの彼のさり気ない行動、そしてその後の奥さんのさり気ない行動で、彼と奥さんの黒人全般に対するそれぞれの態度が見られます。こういう人物描写が簡潔で上手いです
陽気で世慣れて現実的で大食いで、愛する妻と子供たちのために生活費を稼ぐ、地元のNYからおそらく外に出たこともないであろう根っからの庶民
もう一人の主人公、ドク・シャーリーは、ロシアの音楽院に黒人として初めて入学を許されたピアニスト。学位を複数持ち、複数のヨーロッパ言語に堪能
服装、立ち居振る舞い、話題や語彙、厳格な道徳観、いつも静かに思索に耽る姿など、凡ゆる面で品格と教養が滲み出てきます。そして孤独でもあります
無学無教養で貧しい黒人というステレオタイプとは対極にある黒人
そんな黒人にドライバーとして雇われる立場になる白人トニーとのデコボココンビ。白人といっても労働者が多い下層であるイタリア系というのもポイントです
公民権運動前夜の時代、旅が南に進むにつれ、いわゆるレッドネック(南部下層白人)や地元警察の差別に会ったりします。そういう地域・時代の有様はいろいろと描かれており、なるほど具体的にこんな扱いを受けたり制約があったりするんだなと、言い方は変ですが、勉強になりました
しかし一番のテーマは差別を描くことではなく、そんな状況のなかで、生い立ちやら境遇やら性格が全く異なる二人が、二ヶ月に及ぶクルマの長旅を通して、少しずつお互いに影響を与えていく、そんな様子を描くことです
先にトニーを「粗野な」と形容しましたが、そうでない彼の人間性がドクとの付き合いのなかで徐々に顕になります
道中、トニーはNYで待つ妻に手紙を書くシーンが何度か出てきますが、それが話のいいアクセントになっており、何度かクスリと笑いました
最後に立ち寄った地元の黒人バーのシーンはいいなあ
そしてトニーの奥さんが可愛くて素敵ですw!
音楽と演技に酔いしれる
アカデミー賞では同性愛や黒人差別といった米国が抱える課題を取り上げた作品が賞を受賞することが多く、作品の質でない部分で評価されていると感じることがあるが、この映画はそのような面を抜きにしても受賞するに相応しい映画作品であると感じた。文句無しのストーリーとは言い難いが、魅力ある登場人物と耳を離れないピアノの音色が作品に深みを与えており深く心に響く作品になっている。ムーンライトでアカデミー助演男優賞を受賞したマハシャーラ・ハリの演技が今作でも飛び抜けて素晴らしい。品格を感じさせながらも愛嬌もあるという人物を見事に演じ切った。再び劇場へ足を運びたくなる映画だった。
鹿、ドロレス。
性格も見た目も真逆な二人のロードムービー。
笑いとシリアスが交互にやってくるけど、案外あっさりと安心して観られた。
計算も含め、人付き合いやコネ作りの上手い運転手トニー・リップ。
ドーンと腹の出た姿に粗野な振る舞いが下品に感じる部分も多く、最初はあまり好きになれなかった。
彼自身の持つ差別意識を序盤で見せられて少し沈む。
どこまでもエレガントなドクター・シャーリー。
創作物や実際の知り合いからなんとなくイメージしている黒人像とは全く異なる彼の言動がすごく綺麗で魅入っていた。
登場シーンのゴスペル衣装みたいな服に教祖様的な要素を感じて笑ってしまった。
というかまずカーネギーホールに人の住まいがあったことに驚き。しかも管理人部屋なんかではなく、あんな豪勢な。知らなかった。
始まる二人の道中はとにかくチグハグで、噛み合わない会話とギャップにハラハラしつつ何回も笑った。
決してトニーほどではないが私もガサツな方なので、ドクがちょいちょい姿勢を崩し始めるのがなんだか嬉しかった。
初めてケンタッキーフライドチキン、恐る恐る食すドクの仕草が可愛い。
骨なんて窓からポイじゃ!とノリ始めたにもかかわらず、ドリンクのカップは絶対に許さない。わかる。
急に真顔に戻るのやめてほんと笑うから。
初めてドクの演奏を聴いたトニーがめちゃくちゃ感激しているのがまた嬉しい。
相手の技を尊敬することから打ち解けが始まる。
結構マメに妻に宛てた手紙の内容からも、粗野だと思っていた彼の内面の感性豊かな部分が見えてくる。
平和なシーンに挟まれる、色濃く残る黒人差別の描写は胸が痛んだ。
上流階級の人がどれだけ振舞っても拭いきれない空気と全然納得のいかないしきたり。
グリーンブックなんて無ければいい。
しかし、毅然とした態度をあまり崩さないドクの姿によって重々しくなりすぎていなかった。
正直もっとズンと地に押し付けられるような表現が出てくるかと予想していたけど、今までの雰囲気の中に急に苦しすぎることが起きても困ってしまうので良かった。
それより小さなことからもチクチク刺してくる差別の痛みの方が大きい。
この扱いを慢性的に受けることがどれだけ辛いかなんて容易く想像できる。肌の色が違うだけなのに。
更にドクの中途半端な立ち位置が追い打ちをかける。
黒人からは異端児と疎まれ白人からは差別され家族のいない孤独な人。
雨の中車を降りて叫んだ彼に積み重なったものを思うとまた辛くなる。
最後の演奏をキャンセルすることで貫いた己の尊厳と人権。
そしてその後の「私だけのショパン」とジャズのシーンの圧巻さ、楽しさ。
あんなに朗らかに笑うドクが見られて心底良かったと思う。
演奏会後の笑顔とは全く違う表情に見える。
そして立場を代わってでも、友人をクリスマスの家族の元に届けられて良かった。ありがとう。
クリスマスの夜に友人の元に訪れることができて良かった。ありがとう。
ドロレスの「手紙をありがとう」のセリフでなぜか急激に込み上げ決壊した。涙腺崩壊。
良い話だと思いつつ「まあ普通だな、」なんて考えていたけど、この言葉で急激に。
文面の主などお見通し。そりゃそうか。
手紙を通してドロレスはドクと対面していた。
もしかしたらドクは自分の元妻への想いを文章に込めていたのかもしれない。
トニーの意外にも思える愛妻っぷりにももちろん感心だけど、ドクとドロレスの繋がりに非常に胸打たれていた。
この後お兄さんに手紙書けるといいな。
間違いなく良作。
ただ、期待していたよりずっと大味に感じた。
最初はウマの合わなかった二人がお互いを尊重し仲良くなる過程として良かったものの、特にインパクトの無いものに思えてしまう。
実話にケチつけるわけではないけど、なんとなくただの美談のような。まあ全然良いけども。
トリオメンバーの存在感の薄さも気になる。
ドクを理解しているとは思うけど静観が強いし、彼らが何を思っているのかよく伝わってこなかった。
最後取り残されてどうしたんだろうか。
テンポは良かったけどわかりにくい点も。
戻したはずの「お守り」こと翡翠石が戻っていたのは何なのか、ドクが一人で出歩いた理由は何なのか。
予想はつくけど確信が持てない。私が集中できていなかっただけかな。見入っていたはずなんだけど。
何にせよ、ドロレスの言葉だけで全てチャラだしまんまと次の日のディナーにケンタッキーフライドチキンとボンゴレビアンコ食べたしティッツバーグ州に巨乳がいなかったことにがっかりしてるし、心に残る良い作品だった。
新たな差別に気がついた
もちろん
期待通り!文句はない。
これが実話ベースのストーリーであるということに大いに勇気づけられる。
自分と他者との違いを、怖れるのではなく敬い、愛する態度を持った人間でありたい。
ドクターの言う「dignity」という言葉が深く印象に残った。
人としての尊厳はかくも踏み躙られやすいのだ。
彼が徹底して暴力を嫌う様には、Martin Luther King Jr.の演説を思い出した。
"In the process of gaining our rightful place, we must not be guilty of wrongful deeds. Let us not seek to satisfy our thirst for freedom by drinking from the cup of bitterness and hatred. We must forever conduct our struggle on the high plane of dignity and discipline. We must not allow our creative protest to degenerate into physical violence. Again and again, we must rise to the majestic heights of meeting physical force with soul force."
そしてトニーの素直さに救われる思いがした。彼は心の底から素直で、オープンで肯定的だ。
彼が彼自身の存在を肯定していることからくる、人間的な温かさ。
ドクターの演奏を聴いて「天才だ」というシーンが良い。耳も(音楽に対しても)素直で柔軟なトニー。
音楽も良かった。ポップソングのBGM、ドクターの演奏シーンともに。
人種差別がテーマでは無い
予告編が良いだけに…
実話と知って驚いた⁉️
あらすじは知っていたが、そうとは知らなかったので、巻頭で実話との表記にびっくり! よく比較される「最強の二人」が実話なのは、鑑賞前から知っていたが、「ドライビングM i s sデイジー」は舞台の映画化だったので、この作品も映画のためのフィクションかと思っていた。最後に本人たちの写真も披露され、本当の話なら、もっと感動的だと思った。イタリア系ではないヴィゴが、体重を20k gも増やして、コテコテに演じていておもしろかった。マハーラシヤが、「ムーンライト」の麻薬の売人とは打って変わって、インテリのピアニストを演じていて、見違えた。私が特に心震えたのは、ドンの孤独だ。カーネギーホールの上階に住んでいて、召使いも抱えて生活はリッチだ。でも、一緒に家族は誰もいなくて寂しそうだ。本当はクラシックを弾きたいのにレコード会社からポピュラーを弾いた方がいいと言われ、それに甘んじている。北部ではまだいいが、南部では白人からは差別され、黒人からは何を気取っているんだという目で見られる。彼はどちら側にも属せない人間なのだ。そんな孤独がひしひしと伝わってきた。あと気に入ったのが、手紙のエピソード。最後にそうかと納得させられた。見終わった後もすごく清々しくて、気持ちよく映画館を後にした。
1962年の晩秋アメリカ南部を車で走る。
60年代が舞台の、粗野な白人と洗練された黒人の物語といえば、そのス...
入れ替える→元に戻す
「黒人運転手」+「白人客」という組み合わせは50-60年代のアメリカにおいては当然のように見かけられる光景だったろう。
だが「白人運転手」+「黒人客」という逆の組み合わせをやってから、元に戻してみる。最後だけ、黒人に運転手をさせてみる。
するとどうだろう。周りの人々からしてみれば当たり前の光景に、当人たちにしか分からない特別な何かが育まれていると感じられる。
当たり前の光景がいかに特別なものであるか、それは長い旅路を経た2人の主人公(そして観客の我々)にしか分からない。
奴隷として強要されたのでもなく、生活のため仕方がなかったのでもなく、親愛の情から、運転手という役割を買って出る。
それは一切の差別のない世界においてかくあるべしとでも言うかのような、「自ら望み、喜んでやる」という自己決定に従った行いであった。
「黒人運転手+白人」という構図はいかなる事情を抜きにしても差別的である、と決めつけるのではない。
「黒人は貧しく粗野」「白人は豊かで教養がある」と一般化するのでもない。
「超富裕層の黒人」「貧困層の白人」という例外的な存在、個別の事例を踏まえ、よくある光景の背後にある物語を読み取ろうとする。
「黒人は皆等しく貧しく、困窮しており、救済が必要である」と考えることもまた差別である。
黒人だから、白人だから、といったフィルターを取り払って、個人の事情をよく知ろうとすること。
それが差別的ではないということの本質ではないか。
個々人の抱える事情=ドラマを経由してみる。
すると、「反差別的なようでいて差別的な人」からみれば差別的にも思える光景の背後に、こわれないよう守りたくなるほどの親愛の情があるのではないか、という可能性に気づかされる。
そのような可能性を見落とさないよう、個々人の事情に耳を傾けようという気にさせられる。
(もちろん、ドクター・シャーリーの金持ちぶりは映画向けに誇張されているだろう。それを差し引いても、当時の黒人として彼は例外的にリッチだったろう。だから黒人運転手と白人の乗客を見るたびに「その背後にドラマがあるかもしれない」などと考えるのも愚かに思える。ポイントはあくまで、黒人(に限らないが)=被差別対象あるいは社会的弱者、のような認識がむしろ弱者を弱者のままに据え置いてしまうこと、への警句にあると思う)
人種差別を扱う作品にしてはめずらしく…
楽しめる映画
また、会いたい。みていたいこの二人を。あの家族を。
いい映画。
高校時代に観ていたような映画に、久しぶりに巡りあったなーという感じだった。
なぜ?
CGメイン・今はやりの映画、ではなかったから?
ロードムービーは鉄板だから?
実話にもとずいている、その奥深さから?
音楽、すごく素敵だから?
抑揚の効いたストーリーはこび、脚本、俳優達の演技が素晴らしいのはもちろんだが、当時の日常、さりげない会話、景色、出来事を積み重ねていくことが魅力的だった。
人種差別を高所から扱うのではなく、二人が遭遇する日常を、たんたんと時系列で重ねていく。温度差なく体験した。だからこそ移入できる。『なんで。こんな仕打ちを受けるのか…!』。
ある意味『この世界の片隅に』みたいでしょ。と思った。
トニー・(リップ)・バレロンガにまた、会いたい。
ドクター・シャーリーのピアノをまた、ききたい。
奥さん、ドロレスがいい。
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