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いやー、これは傑作ドキュメンタリーでした。
内容もさることながら、外部の視点が一切なく、メンバー3人のインタビューのみを使用した構成は、生々しくリアルでした。
特に、ハイスタの活動休止から『荒野の10年』といえるゼロ年代をメンバーが振り返る姿にはグッと来ました。
Pizza of Deathを立ち上げてから、社長となって実務をすべて引き受けざるを得なかったケンが、他のメンバーたちに対して溝を感じるようになる場面は自分の体験と少し重なるところがあり、めちゃめちゃ共感しました。
バンド内の運営役ってできる人が限られているんですよね。運営役は1人で苦労を背負ってしまい、そして他のメンバーはその苦労を理解できないことは多いと思います。運営に携わらないメンバーがケロっとしているのも、また腹が立つんですよ。フラカンのグレートマエカワのようなマネージャー気質のメンバーに恵まれるバンドは数少ないと思います。
活動休止後のナンバの苦悩もよく理解できます。ケンは社長として現実面に向かい合えたのですが、ナンバにとってはハイスタが人生のすべてだったのでしょう。ケンが立ち直って自分のバンドを率いる姿を見ると、なんとも言えないモヤモヤを感じてしまうのも無理もないと思います。
メンバーの関係はこじれていましたが、友情があるがゆえに、ハイスタを愛するがゆえにこじれていたように感じました。
ケンは結構「大義」という言葉を使っていた印象があります。だからこそ、エゴによる再結成は意味がない。自分たちを超えたもののためでなければ再結成は不可能だったのでしょう。そう考えると、震災での再結成はある意味必然だったのかもしれません。
ハイスタは友情ベースのバンドだったように思います。不器用だったり、若さゆえの視野狭窄だったりと、すれ違ってはいるものの、基本は互いを思いやろうとしていました。だからこそ再結成も一時的ではなく、現在まで続けることができているのだと思います。
山を乗り越えた者たちだけが語れる「今が最高!」との言葉は、単なる掛け声ではない、強靭な説得力を感じています。同世代でもミッシェルのように再結成が叶わないバンドもいます。試練をクリアして生き残ったハイスタには頑張ってほしいと切に願います。